運命の君とふたりで

沢渡奈々子

文字の大きさ
7 / 7

運命の君とふたりで7【終】

しおりを挟む
 凛は長身のため、使っているベッドは特注のセミダブルで二人で寝るのにさほど窮屈ではなかった。凛はそっと蒼を抱きしめ、蒼は彼の肩口に顔を埋めた。ボディソープの匂いと凛の体臭が混ざり蒼の鼻腔に入る。抑制剤を飲んでいなかったら、きっとこの香りでまた欲情してただろう。しかし今は心地がよいと思える。
「明日の夜は淋しいだろうな……一人で寝なきゃならないし」
 蒼がぽつりと言った。
「毎日こうして一緒に寝たいね」
「ん……」
「高校卒業したら一緒に住みたいな」
「うーん……俺も一緒に住みたいのはやまやまだけど、大学卒業までは許してもらえないかも……姉ちゃんに」
「あぁ……翠さんは強敵だね」
 凛がくすくすと笑み零す。その後すぐに蒼は大きな欠伸をした。
「ふぁ……すげぇ眠い。今日はいろいろあったもんなぁ。午前中もエッチしてたし。ってか、凛やりすぎだろ」
「だって蒼ってばこんな可愛い顔してるのに『もっとしたい』とか『りんのおおきいのをいれて』とか『きもちよくてしんじゃう』とか言うんだよ? もうコンドーム何箱あっても足りない」
「俺の言葉とか再現しなくていいからっ」
 前日は昼間に交わり、夜遅くに浴室で交わり、今日も起きてから昼近くまでずっと抱き合っていたという、爛れたひとときを送っていた。
 初めて身体をつなげた二日前から、ずいぶんと濃い性生活を送ってしまったな、と蒼は少々反省した。しかしまともな抑制剤がなかった頃のオメガたちは、発情期にはこういった生活をしていたんだろうことを考えると、いい薬が開発された現代に生まれて本当によかったと蒼は思った。
(薬がなかったら、もっとやりまくってたんだろうな……怖ぇよ)
「俺……他には何も要らないから、ずっと蒼といちゃいちゃしていたいな」
「ダメ人間になるぞ」
「蒼に関して言えば俺はもうダメになっちゃってるよ。俺、性的なことに関しては割と淡泊な方だと思っていたけど、蒼の身体を知っちゃったらもうダメ。今も蒼のここに入りたくてしょうがないよ」
 さりげなく蒼の尻回りを撫でる凛。
「こら、変な触り方すんなよ。同じ屋根の下におまえの家族がいるんだぞ?」
「……分かってる。我慢するよ」
 叱られた子供のようにしょんぼりとした口調で呟く凛。
「昨日も言ったけどさ、俺は凛に相応しい人間になれるよう、これから努力するつもりだよ。多分、今の俺は凛に相応しいとは周りには思われないだろうし……。だから俺はダメ人間になってはいられないんだって」
 未覚醒の自分に無理矢理言い募ることなく、ひたすら待っていてくれた凛に恥ずかしくない人間になりたい。
 凛の可愛いわがままに流されてついつい言うことを聞いてしまう自分だけれど。そんな凛とずっと一緒に人生を歩んで行きたいから。凛を幸せにしたいから。
 やる時はやるぞ、と心に決めた。
「誰がそんなこと言うの。むしろ蒼は俺にはもったいない、って今でも少し思ってるよ、俺は。……でも離すつもりは一ミリもないけど」
「ん……ありが……と……」
 まぶたの重みに耐えられなくなったのか、蒼が寝息を立て始めた。そんな蒼の耳に、
「蒼、可愛い……愛してる」
 と、凛が何度も吹き込むように囁き、顔中にキスをしていたことなど――すやすやと眠る蒼には知る由もなかった。

【終】
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

リリスモン
2020.08.13 リリスモン

詩織さんと翠ちゃんの再会にも唯さんやくんだろうなぁとちょっと思いました。
前作の運命の君から合わせて単行本一冊位程よく読めました。
学校で凄い騒ぎも読みたかったです。

2020.08.13 沢渡奈々子

♪リリスモンさま

ご感想をありがとうございます。
唯も凛同様ヤキモチ妬きなので、きっと翠との再会でも妬きますね!でもその後は気が合いそうです😊
いつか番外編をまた書きたいお話なので、その時にはまたよろしくお願いいたします。
ありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

虐げられた氷の聖子は隣国の野獣皇帝に執着(愛)されすぎて溶かされる

たら昆布
BL
暴君皇帝×薄幸の聖子

白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる
BL
フレア王国の第3王子シルティ(18歳.Ω)は、王宮騎士団の団長を務める、キーファ侯爵家現当主のアリウス(29歳.α)に、ずっと片想いをしている。 そんなシルティは、Ωの成人王族の務めとして、自分は隣国のαの王族に輿入れするのだろうと、人生を半ば諦めていた。 だが、ある日突然、父である国王から、アリウスとの婚姻を勧められる。 二つ返事でアリウスとの婚姻を受けたシルティだったが、何もできない自分の事を、アリウスは迷惑に思っていないだろうかと心配になる。 ─が、そんなシルティの心配をよそに、アリウスは天にも登る気持ち(無表情)で、いそいそと婚姻の準備を進めていた。 受けを好きすぎて、発情期にしか触れる事ができない攻めと、発情期の記憶が一切ない受けのお話です。 拗らせ両片想いの大人の恋(?) オメガバースの設定をお借りしています。ぼんやり設定です。 Rシーンは※つけます。 1話1,000~2,000字程度です。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。