とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第13話 可能性は無限大

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「お、クリス。まさか、お前が対戦相手とはな、これは少し楽しくなってきたな」
「張り切るルーク様も素敵」
「うわぁ…ルーク…と、あれは」

 ルークの姿に隠れて見えなかったが、銀色の綺麗な長い髪を見て、その人物を思い出した。

「あっ、思い出した。ジュリル・ハイナンスだ……って事は、あいつが二代目月の魔女!?」
「あら、誰かしら私の名前を大声叫ぶ人は。おや、貴方確か数日前に会った…転入生」
「何だクリス、ジュリルと知り合いなのか?」
「知り合いと言うか、一度会った程度かな」

 直後、突然ジュリルが俺に近付いて来て、小声で話し掛けて来た。

「何貴方、ルーク様とご知り合いだったの。それを早く言いなさいよ、全く。ルーク様の前で恥をかく所だったでしょ」

 それだけを言い終えると、再びルークの元へと戻って行った。
 すると次に、モランが小声で話し掛けて来た。

「クリス君、ジュリル…さんと知り合いだったの?」
「どうなんだだろうな、俺にも分からん。てか、何であいつはルークを様付けで呼んでんだ?」
「ジュリルさんは、ルーク王子に一目ぼれしてるの。初等部の頃に会ってから、ずっと一筋なんだよ。でも、ルーク王子には告白とかはしてないみたい」
「ははーん、なるほどね~」

 色々と衝撃だったけど、間近で二代目月の魔女の力を見れるいい機会だ。
 それに、ルークとも再戦できるのも一石二鳥だ。
 ここでガツンと勝って、少しはマウント取らせてもらう。

 にしても、あんなにルークにデレデレしているのが、本当に二代目月の魔女なのか?
 全くそんな風には感じないんだけど。
 私が二代目月の魔女こと、ジュリルに疑念を持っていると、教員の方から位置に付くように言われる。
 直線に500メートルの線が引かれているスタートラインに、私たちとルークたちのペアが位置に付く。

「あれ以来の再戦だね。今日は、俺に勝てるのかな?」
「ムカつくいいかなするな、ルーク。負けても泣くんじゃねぇよ」
「ちょっと、貴方! ルーク様に何と言う暴言を!」
「いいだよ、ジュリル。それより、今日も頼むぞ」
「はい! お任せ下さい!」

 ジュリルはルークの言葉に、犬がご主人様に尻尾を振る様に答える。
 私は何故ルークに、そこまでの忠誠心を持てるのか不思議でしょうがなかった。
 何考えているか分からないし、興味がないと無視するし、変に小さいこと気にしているみたいだし…
 言い出すと、意外といっぱい出てくるので、そこで理由を考えるのは止めた。

「これは、相手が悪いね。まさか、ルーク王子に二代目月の魔女のジュリルさんだし、これは負けても…」
「何言ってるんだ、モラン。気持ちで負けてたら、勝てる勝負も勝てないぞ。相手の名前だけで、弱気になるな」
「で、でも…」
「学生の可能性は無限大だ」
「へぇ?」
「お父様の口癖。俺たちはまだ、自分でも知らない可能性が眠ってるんだよ。それをここで目覚めさせてやろうぜ!」

 私の言葉にモランは、相手の名前で負けそうな雰囲気の表情が変わった。
 力強く頷き、深く深呼吸をした。

「それでは、ルーク・ジュリルペアとクリス・モランペアによる競技を開始します。スタート!」

 教員が大きく片手を振り下げて合図をすると、私たちとルークたちは一斉に魔力を目の前の地面に流した。
 先に地面から土の塊を創り上げたのは、ルークたちであった。
 すると、直ぐにルークとジュリルが同時に魔力の技量を行い初め、造形を開始した。
 そこに至るまで、1分もかからずだった。

 一方私たちは、ルークたちが造形に入った時には、やっと地面から土の塊を創りだしていた。
 モランの魔力は、創造が得意でなく私が補助的に魔力を流して創り上げた。
 直ぐに私も土の塊の造形に入った。
 技量の高い私で、時間を縮めようと両腕で魔力を通すが、その時にはルークたちはほぼ造形が終わりかけていた。

「ルーク様、ここからは私にお任せ下さい。相手に私の力を見せつけてあげますわ!」

 すると、ジュリルに言われるがまま、ルークの腕が止まる。
 ジュリルは、そこから四輪車の乗り物を創り上げ、そこから更に地面から土を取り上げ、補強を行いつつ、造形と推進力の魔力注入を行った。
 私は自身の造形を行いながら、横目でその技術を目にして驚愕した。
 その時ジュリルは、魔力の創造・技量・質量を同時に行っていたのだ。

 本当に3つも同時に使えるか!? マズイ、このままじゃこっちが完成させる前に、あっちがゴールしてしまう。
 少し焦りながら、私はモランの方を見て合図を送る。
 すると、モランは私の補助を止め、両手を握り合わせ息を整え始める。
 それをルークは、腕を組んで横目で見ていた。

 直後、ジュリルが造形を完成させ、注入した魔力を一気に動力へと流し始め、四輪車をゴールへと走り始めた。
 それから3秒後に、荒削りながら私は、二輪車を創りだし、背後には2つのブーストできる筒を付けた。
 その筒に私は、魔法を込めてモランに一度視線を送り、頷くのを確認して唱える。

「エクスプロージョン」

 すると、2つの筒から大きな爆発が発生し、一気に二輪車が走り出し、先に走り出した四輪車を追う。
 だが、今のスピードでは絶対に追いつけないのは明らかだった。
 初めの爆発力のスピードは基本維持出来ないが、そこをうちはモランの魔力制御で爆破の威力を細く長くして、二輪車の加速を行った。

「っ!」

 それを見たルークは、直ぐに腕を前に突き出し、ジュリルの動かす四輪車に魔力を流し回転率を上げた

「ルーク様!?」
「ジュリルはそのまま操作しろ。このまま一気に駆け抜けるんだ」
「は、はい!」

 四輪車は、ゴールまであと200メートル付近で、二輪車は残り400メートル付近だった。
 そこからモランの魔力制御により、加速したことで一気に距離を縮めた。
 その差は100メートルになるが、四輪車のゴールまでも100メートルであった。
 そして先にゴールを駆け抜けたのは、四輪車だった。

 二輪車は、残り50メートル付近で急に原則してしまい、その場に止まっていた。
 理由は、モランの魔力制御が切れてしまい、最初の爆発力が維持できなくなってしまったためだ。

「はぁ…はぁ…ごめん、クリス君…途中で…止まっちゃ…た…」

 息切れし、額から汗を流すモランを見て、私は肩に手を当てて消費した魔力を私の分から受け渡した。

「クリス君…やっぱり、クリス君の言う通りだったよ。私、魔力治療より制御の方が、長けてるみたい」

 笑顔で答えたモランを見て、私も笑顔で答えた。

「うん! やっぱり、モランは制御の方が長けてるよ。今日は、いきなり細かい事をお願いしたけど、あそこまで忠実に出来たのは君の才能だよ!」

 私とモランは、勝負に負けはしたが私はモランの手を握って、褒めちぎっていた。
 そこに教員が近付いて私たちの前で立ち止まった。

「失格」
「「へぇ?」」

 私たちは、思いもしない言葉に驚きの声を上げた。
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