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はじまって
【繋】きらきらの箱
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そこに入ったのは、本当にたまたまだったんだ。
大きい家だなあって。
きっと、金がいっぱいあるんだろうなあって。
そしたら、腹いっぱい食べられるんだろうなあって。
それなら、少しくらい貰っても良いよな? って。
それだけ。
でも、そこで、それを見付けたんだ。
きらきらした青い箱。
周りに小さな星が散らばってた。
ただ、それが欲しいと思った。
だって、凄い綺麗でぽかぽかだったんだ。
「何してんだい、アンタ?」
「ええっ!?」
それを手に取った時、いきなり声を掛けられた。後ろから。
何で!?
って、思った。
だって、おいら、姿消してるから、人間には見えないはずなのに。
それなのに、何で見えるんだって。
「…それッ!! 雪緒君のだよ。お返しッ!!」
「ひいっ!!」
こいつ、お仲間だっ!
人間から、おいら達は妖って呼ばれて嫌われている。
人間を襲って食べる化け物だって。
でも、おいらは今まで人間を食べた事が無い。
だから、仲間からは嫌われていたし、いじめられていた。
それが嫌で、もう、仲間と同じ姿じゃいられないけど、人の姿になる事にしたんだ。
人間は、人間同士なら優しいって話だったから。
人間同士、仲良く助け合って生きてるって聞いたから。
それで、仲間が最後に襲った人間の姿を真似て人の姿を取った。
ううん、もう、仲間じゃない。
おいらは、もう人間だから。
でも。
人間になったけど、どうすれば良いんだろ?
腹が空いて、落ちていた食べ物を手にしたら『お金』って言われた。
『お金』? 何、それ?
『知らない』って、言ったら『泥棒!!』って、怒鳴られたから、慌てて逃げた。食べ物を持ったまま。
それで、どこへ行っても『お金』って、言われた。
『お金』が無いと、人間は何も食べられないみたい。
でも、それって、どうしたら手に入るんだ?
そう思って、人間達を見てたら『それ』を見た。
一人の人間が、人間にぶつかって、その時に懐に手を入れて、何かを抜いていた。
そしたら、その人間は物陰に隠れて、抜いた物を手に嬉しそうにしてた。
だから。
「何が嬉しいんだ?」
「うわ!?」
「今、ぶつかって、何をしたんだ? それ、ぶつかる…もがっ!?」
「何だてめえ!? そんなナリでガキみたいな喋り方しやがって!」
「もがもが…」
口を押さえられたら、話す事が出来ないだろ。
そんな、ナリ? ガキ?
それから、その人間に『盗み』を教わった。
『お金』は、こうやって手に入れるんだって。
そっか、簡単なんだな。
けど『分け前』が、多分だけど、少なくて。
腹いっぱい食べられなくて。
おいらは『恩人』から、離れる事にした。
『恩人』の居ない街で『盗み』をした。
姿を消して、人間に近付いて『財布』を抜き取って、食べ物が買えるだけの『お金』を貰ったら、そっと『財布』を返す。
そんで、たまに『お家』に入る。
『お家』の中にも『お金』があるから。
そんな事を繰り返して来て、今日、きらきらの箱を見付けた。
何か、見た瞬間に、身体が凄く温かくなった。
ぽかぽかした。
だから、金なんかより、そのきらきらの箱が欲しくなった。
のに。
「お離しよッ! アンタ! 居るんだろうッ!? 泥棒だよッ!!」
「えっ、みくちゃん!?」
「何の騒ぎかと思ったら~。みくちゃん、何時の間に来たの~?」
お仲間が叫んだら、人間が出て来た。
わあ、凄く大きい人間が居る。
逃げなきゃ。
でも、このきらきらの箱は諦めたくない。
「うぅ~っ!!」
「ああッ!?」
力任せに引っ張ったら、グシャッて音がしたから、思わず手を離してしまった。
「ああああああああああああッ! 雪緒君に怒られちまうッ!!」
「ひいんっ!!」
お仲間が、もう、目を剥いて叫んで来たから、おいらは逃げ出した。
怖い、怖い、怖いよーっ!!
でも、結局逃げ切れなくて、捕まった。背中が痛い。何て乱暴なお仲間なんだ。
けど、その時、あのきらきらの箱と同じぽかぽかの人間の気配を感じた。
多分、あのきらきらの箱の持ち主だ。
おいらの上に乗ってたお仲間が、何かさっきまでとは違う気持ち悪い声で、ぽかぽかに話しかけてる。
おいら、これ知ってる。『猫かぶり』だ。
ぽかぽか、どんなヤツなんだろ?
けど、顔を良く見る前に、おいらは『連行』された。
で、連れてかれた先で、腹が減ったって言ったら、腹いっぱい食べさせて貰った。
『子供みたいだな』、『幼体か?』とか、言ってる。
『これぐらいになれるか?』って、人間の姿が描かれた物を見せられた。
『なれるぞ』って、言って、その姿になってみせた。
そしたら『その方がしっくりくるな』、『十五、六歳ぐらいか?』、『名前は?』って、言われた。
『名前』? おいらたちに、そんなの無い。けど、人間は『名前』が無いと不便みたいだ。
「じゃあ、きらきらのぽかぽかした名前を付けてくれよ」
って、言ったら、周りの人間が、一斉に頭を押さえた。何で?
人間は頭が良いって聞いたけど、違うのかな?
でも、まあ、いいや。
何か『ジョウシキ』とか『マナビヤ』とか、難しい事言ってるけど、やっぱり、人間は人間に優しいんだな。
おいら、消されずに済むみたいだし。
そしたら、あのきらきらのぽかぽかに会えるかな?
会いたいな。
会えたら、ごめんって言うんだ。
きらきらをグシャッてして、ごめんって。
◇
「ほら、おいで、星。ここが学び舎だ」
「ん!」
星って名前を貰って、夏になる頃、おいらは初めてそこに足を踏み入れた。
大きい家だなあって。
きっと、金がいっぱいあるんだろうなあって。
そしたら、腹いっぱい食べられるんだろうなあって。
それなら、少しくらい貰っても良いよな? って。
それだけ。
でも、そこで、それを見付けたんだ。
きらきらした青い箱。
周りに小さな星が散らばってた。
ただ、それが欲しいと思った。
だって、凄い綺麗でぽかぽかだったんだ。
「何してんだい、アンタ?」
「ええっ!?」
それを手に取った時、いきなり声を掛けられた。後ろから。
何で!?
って、思った。
だって、おいら、姿消してるから、人間には見えないはずなのに。
それなのに、何で見えるんだって。
「…それッ!! 雪緒君のだよ。お返しッ!!」
「ひいっ!!」
こいつ、お仲間だっ!
人間から、おいら達は妖って呼ばれて嫌われている。
人間を襲って食べる化け物だって。
でも、おいらは今まで人間を食べた事が無い。
だから、仲間からは嫌われていたし、いじめられていた。
それが嫌で、もう、仲間と同じ姿じゃいられないけど、人の姿になる事にしたんだ。
人間は、人間同士なら優しいって話だったから。
人間同士、仲良く助け合って生きてるって聞いたから。
それで、仲間が最後に襲った人間の姿を真似て人の姿を取った。
ううん、もう、仲間じゃない。
おいらは、もう人間だから。
でも。
人間になったけど、どうすれば良いんだろ?
腹が空いて、落ちていた食べ物を手にしたら『お金』って言われた。
『お金』? 何、それ?
『知らない』って、言ったら『泥棒!!』って、怒鳴られたから、慌てて逃げた。食べ物を持ったまま。
それで、どこへ行っても『お金』って、言われた。
『お金』が無いと、人間は何も食べられないみたい。
でも、それって、どうしたら手に入るんだ?
そう思って、人間達を見てたら『それ』を見た。
一人の人間が、人間にぶつかって、その時に懐に手を入れて、何かを抜いていた。
そしたら、その人間は物陰に隠れて、抜いた物を手に嬉しそうにしてた。
だから。
「何が嬉しいんだ?」
「うわ!?」
「今、ぶつかって、何をしたんだ? それ、ぶつかる…もがっ!?」
「何だてめえ!? そんなナリでガキみたいな喋り方しやがって!」
「もがもが…」
口を押さえられたら、話す事が出来ないだろ。
そんな、ナリ? ガキ?
それから、その人間に『盗み』を教わった。
『お金』は、こうやって手に入れるんだって。
そっか、簡単なんだな。
けど『分け前』が、多分だけど、少なくて。
腹いっぱい食べられなくて。
おいらは『恩人』から、離れる事にした。
『恩人』の居ない街で『盗み』をした。
姿を消して、人間に近付いて『財布』を抜き取って、食べ物が買えるだけの『お金』を貰ったら、そっと『財布』を返す。
そんで、たまに『お家』に入る。
『お家』の中にも『お金』があるから。
そんな事を繰り返して来て、今日、きらきらの箱を見付けた。
何か、見た瞬間に、身体が凄く温かくなった。
ぽかぽかした。
だから、金なんかより、そのきらきらの箱が欲しくなった。
のに。
「お離しよッ! アンタ! 居るんだろうッ!? 泥棒だよッ!!」
「えっ、みくちゃん!?」
「何の騒ぎかと思ったら~。みくちゃん、何時の間に来たの~?」
お仲間が叫んだら、人間が出て来た。
わあ、凄く大きい人間が居る。
逃げなきゃ。
でも、このきらきらの箱は諦めたくない。
「うぅ~っ!!」
「ああッ!?」
力任せに引っ張ったら、グシャッて音がしたから、思わず手を離してしまった。
「ああああああああああああッ! 雪緒君に怒られちまうッ!!」
「ひいんっ!!」
お仲間が、もう、目を剥いて叫んで来たから、おいらは逃げ出した。
怖い、怖い、怖いよーっ!!
でも、結局逃げ切れなくて、捕まった。背中が痛い。何て乱暴なお仲間なんだ。
けど、その時、あのきらきらの箱と同じぽかぽかの人間の気配を感じた。
多分、あのきらきらの箱の持ち主だ。
おいらの上に乗ってたお仲間が、何かさっきまでとは違う気持ち悪い声で、ぽかぽかに話しかけてる。
おいら、これ知ってる。『猫かぶり』だ。
ぽかぽか、どんなヤツなんだろ?
けど、顔を良く見る前に、おいらは『連行』された。
で、連れてかれた先で、腹が減ったって言ったら、腹いっぱい食べさせて貰った。
『子供みたいだな』、『幼体か?』とか、言ってる。
『これぐらいになれるか?』って、人間の姿が描かれた物を見せられた。
『なれるぞ』って、言って、その姿になってみせた。
そしたら『その方がしっくりくるな』、『十五、六歳ぐらいか?』、『名前は?』って、言われた。
『名前』? おいらたちに、そんなの無い。けど、人間は『名前』が無いと不便みたいだ。
「じゃあ、きらきらのぽかぽかした名前を付けてくれよ」
って、言ったら、周りの人間が、一斉に頭を押さえた。何で?
人間は頭が良いって聞いたけど、違うのかな?
でも、まあ、いいや。
何か『ジョウシキ』とか『マナビヤ』とか、難しい事言ってるけど、やっぱり、人間は人間に優しいんだな。
おいら、消されずに済むみたいだし。
そしたら、あのきらきらのぽかぽかに会えるかな?
会いたいな。
会えたら、ごめんって言うんだ。
きらきらをグシャッてして、ごめんって。
◇
「ほら、おいで、星。ここが学び舎だ」
「ん!」
星って名前を貰って、夏になる頃、おいらは初めてそこに足を踏み入れた。
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