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向日葵―奇跡の時間―
向日葵の想い【四】
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「診療所、ですか? 僕の様な物にそちらは不要です。僕の様な物に使いますお金があるのでしたら、違う方へと使って下さい。お部屋も、あの様に広くて暖かいお部屋は落ち着きませんので、僕はやはり物置小屋を希望します。処でお風呂掃除の後は何を致しましょうか? あ、厠のお掃除がまだですね。では、失礼致します」
「待て待て待て!!」
お風呂掃除を終えて、茶の間へと来て正座をする雪緒君に診療所へと行く旨を話したら…ああ…頭痛がしますわ…。
頭を下げて立ち上がろうとする雪緒君の腕を紫様が掴みます。
「お前の健康状態を確認するんだ! どう見ても健康とは言えんだろう! 昨日も今朝も然程食っていないとお妙さんから聞いた! 診察を拒否するのなら、食える様になってからにしろ!!」
ああああああ…そんなに声を荒げては雪緒君が怯えてしまうのではないのかしら? 端へと寄りましたお妙さんもハラハラとしていますわ…ああ、本当に頭痛が…。
「けんこう…」
雪緒君が真顔で、こてんと首を傾げて小さく呟きます。その仕草もとても愛らしいのに…。
「…ああ、そうですね。僕自身では気付いていませんでしたし、村の皆様もお元気でしたから解りませんでしたが、未知の病を患っている可能性がありますか。それを広めてしまわない様にとの配慮なのですね? そこまで考えが至りませんで申し訳ございません。ですが、そうだとして、病を持ちます僕が診療所へと行きましたら病を広げてしまう事になるのではないでしょうか? それでしたら、やはり僕はそちらへは行かずに人里離れた山お」
その可愛らしい口から紡がれる言葉は、到底可愛いとは言えない物で…。
「ええいっ!! 行くぞ、鞠子!」
「ええ」
延々と続きそうな雪緒君の言葉に痺れを切らした紫様が、また雪緒君を肩に担いでしまいました。
「あの、僕は病持ちですので、この様にされますと旦那様にお移りし」
「お前はもう話すな!!」
「ですが、奥様のお顔の色が優れない様です。僕の病が移ってしまったのかも知れません。ですから、僕を下ろして下さい」
「何?」
「え?」
肩に担がれて私を見ながら話す雪緒君の言葉に、紫様が背後に立つ私を振り返り、私も思わず頬に手をあててしまいました。
「奥様、失礼します」
茶の間の隅に居たお妙さんが歩みよって来まして、軽く背伸びをして私の額に触れます。
「…ああ…少し、お熱が高い様です」
「…解った。診療所には俺と雪緒だけで行く。鞠子は休んでいろ」
少しだけ眉を下げて言いますお妙さんの言葉に、紫様は一つ頷くと気遣わし気な声でそう言いましたが、雪緒君の健康状態は気に掛かる処です。私も、その場で相楽大医師の言葉を聞きたいです。ああ、大医師とは紫様の御友人の柚子様のお父様の事です。大医師は内的診療に長けており、柚子様は外的診療に長けております。
「あらあら。これくらい何時もの事ですわ。私も参ります」
「いや。先に雪緒が口にした様に、他の患者から病を貰うかも知れん。頼むから休んでいてくれ」
「…仕方がありませんわね。気を付けて行って来て下さいな」
ですが、軽く首を振って懇願する様に言われてしまえば、大人しく下がるしかありませんわね。
「ああ。では行って来る」
そう言って紫様はお出掛けになりました。…雪緒君を担いだままで…。
あ。逃げない様にとの事なら、手を繋いで歩いた方が良いと言えば良かったですわ。
「あ。お妙さん。お買い物に行くついでに文を出して置いて欲しいのだけれど、頼めるかしら?」
「ええ、勿論ですとも。ささ、ベッドへと」
昨夜書いた文の事をお妙さんに頼んだら、返事と共に、ぐいぐいと背中を押されてしまいましたので、私は大人しく自室へと向かいます。
…それにしても…と、私は小さく頬を綻ばせました。
雪緒君が来てから、まだ一日しか経っていませんが、何て目まぐるしいのでしょう。あんなに怒鳴る紫様なんて、初めて見ましたわ。声を荒げる事はありましても、こんなにも感情のままに叫ぶ事等ありませんでしたのに。やはり私と居る事で、気を遣わせてしまっているのかも知れませんわね。雪緒君が来てくれた事で、それを知る事が出来て良かったですわ。ああ、これも文に認めましょう。昨夜の文には書きませんでしたが、雪緒君の小さな笑顔を見た時の、紫様のあの暖かく優しい表情もしっかりと書きませんとね。
あ。診療所での雪緒君の様子もどうだったのか、懇切丁寧に話して戴きましょう。井戸端会議の場所となっていますが、お年を召した方ばかりですから、きっと雪緒君に酷い言葉を投げ掛けたりとかはしませんよね? 柚子様もいらっしゃる筈ですし。
……紫様が雪緒君を担いだまま行きましたら…柚子様がここぞとばかりに紫様をからかいだしそうですわね…ああ…見られないのが残念ですわ…。
「待て待て待て!!」
お風呂掃除を終えて、茶の間へと来て正座をする雪緒君に診療所へと行く旨を話したら…ああ…頭痛がしますわ…。
頭を下げて立ち上がろうとする雪緒君の腕を紫様が掴みます。
「お前の健康状態を確認するんだ! どう見ても健康とは言えんだろう! 昨日も今朝も然程食っていないとお妙さんから聞いた! 診察を拒否するのなら、食える様になってからにしろ!!」
ああああああ…そんなに声を荒げては雪緒君が怯えてしまうのではないのかしら? 端へと寄りましたお妙さんもハラハラとしていますわ…ああ、本当に頭痛が…。
「けんこう…」
雪緒君が真顔で、こてんと首を傾げて小さく呟きます。その仕草もとても愛らしいのに…。
「…ああ、そうですね。僕自身では気付いていませんでしたし、村の皆様もお元気でしたから解りませんでしたが、未知の病を患っている可能性がありますか。それを広めてしまわない様にとの配慮なのですね? そこまで考えが至りませんで申し訳ございません。ですが、そうだとして、病を持ちます僕が診療所へと行きましたら病を広げてしまう事になるのではないでしょうか? それでしたら、やはり僕はそちらへは行かずに人里離れた山お」
その可愛らしい口から紡がれる言葉は、到底可愛いとは言えない物で…。
「ええいっ!! 行くぞ、鞠子!」
「ええ」
延々と続きそうな雪緒君の言葉に痺れを切らした紫様が、また雪緒君を肩に担いでしまいました。
「あの、僕は病持ちですので、この様にされますと旦那様にお移りし」
「お前はもう話すな!!」
「ですが、奥様のお顔の色が優れない様です。僕の病が移ってしまったのかも知れません。ですから、僕を下ろして下さい」
「何?」
「え?」
肩に担がれて私を見ながら話す雪緒君の言葉に、紫様が背後に立つ私を振り返り、私も思わず頬に手をあててしまいました。
「奥様、失礼します」
茶の間の隅に居たお妙さんが歩みよって来まして、軽く背伸びをして私の額に触れます。
「…ああ…少し、お熱が高い様です」
「…解った。診療所には俺と雪緒だけで行く。鞠子は休んでいろ」
少しだけ眉を下げて言いますお妙さんの言葉に、紫様は一つ頷くと気遣わし気な声でそう言いましたが、雪緒君の健康状態は気に掛かる処です。私も、その場で相楽大医師の言葉を聞きたいです。ああ、大医師とは紫様の御友人の柚子様のお父様の事です。大医師は内的診療に長けており、柚子様は外的診療に長けております。
「あらあら。これくらい何時もの事ですわ。私も参ります」
「いや。先に雪緒が口にした様に、他の患者から病を貰うかも知れん。頼むから休んでいてくれ」
「…仕方がありませんわね。気を付けて行って来て下さいな」
ですが、軽く首を振って懇願する様に言われてしまえば、大人しく下がるしかありませんわね。
「ああ。では行って来る」
そう言って紫様はお出掛けになりました。…雪緒君を担いだままで…。
あ。逃げない様にとの事なら、手を繋いで歩いた方が良いと言えば良かったですわ。
「あ。お妙さん。お買い物に行くついでに文を出して置いて欲しいのだけれど、頼めるかしら?」
「ええ、勿論ですとも。ささ、ベッドへと」
昨夜書いた文の事をお妙さんに頼んだら、返事と共に、ぐいぐいと背中を押されてしまいましたので、私は大人しく自室へと向かいます。
…それにしても…と、私は小さく頬を綻ばせました。
雪緒君が来てから、まだ一日しか経っていませんが、何て目まぐるしいのでしょう。あんなに怒鳴る紫様なんて、初めて見ましたわ。声を荒げる事はありましても、こんなにも感情のままに叫ぶ事等ありませんでしたのに。やはり私と居る事で、気を遣わせてしまっているのかも知れませんわね。雪緒君が来てくれた事で、それを知る事が出来て良かったですわ。ああ、これも文に認めましょう。昨夜の文には書きませんでしたが、雪緒君の小さな笑顔を見た時の、紫様のあの暖かく優しい表情もしっかりと書きませんとね。
あ。診療所での雪緒君の様子もどうだったのか、懇切丁寧に話して戴きましょう。井戸端会議の場所となっていますが、お年を召した方ばかりですから、きっと雪緒君に酷い言葉を投げ掛けたりとかはしませんよね? 柚子様もいらっしゃる筈ですし。
……紫様が雪緒君を担いだまま行きましたら…柚子様がここぞとばかりに紫様をからかいだしそうですわね…ああ…見られないのが残念ですわ…。
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