没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

文字の大きさ
100 / 234
新たな時代編

343

しおりを挟む

レオンとマークが王宮の衛兵に案内されて中を進んでいくと、連れて行かれたのはヒースクリフの執務用の部屋だった。

衛兵が扉をノックし、二人を中へ入れる。
部屋の中には執務用の机に座っているヒースクリフとその横で立つダレンの姿があった。


マークが予想した通り、二人はレオン達が余りにも早く着いたので驚いた様子だった。

レオンがマークにしたのと同じような説明を二人にすると、二人とも驚愕しつつもどこか納得したような表情で頷いていた。


「それで、俺たちを呼んだ理由はなんなんだ」


驚き続ける二人を見てらちが明かないと痺れを切らしたマークが話を切り出す。


ヒースクリフは我に帰った後、一つ咳払いをしてから


「重要な話が二つある。君達にも大きく関係する話だ」


と言って、レオン達に紙の書類を手渡した。


「これは?」


レオンはその紙にさっと目を通してから、少し顔をしかめてヒースクリフに問い返した。

紙には悪魔についての文言が並べられている。

さっと流し読みしただけのレオンにもその内容が悪魔達の行動を制限するための契約書であることがわかった。


「すまない。色々と手を尽くしたんだが、悪魔達を危険視する連中の言及を止められない。彼らが危険ではないとわかるまで彼らの行動を制限する規約を作り、契約を結んでもらうことになった」


ヒースクリフが本当に申し訳なさそうに言うので、レオンにはそれがヒースクリフの本意ではないことは十分に伝わった。


「彼らを国を救った英雄だと言う声もあるが、一方で全てが悪魔達の計略なのではと疑う声も大きい。……苦肉の策だが、こうするしかない」


ヒースクリフの言葉を補足するようにダレンが言う。

王国内では悪魔達を民として認めることに懐疑的な意見が集まっていた。

それは決して貴族達からだけではなく、平民達からも寄せられている。

民衆の意見を最大限に取り入れるという方針のヒースクリフにとってそれは無視できないほどの数だったのだ。


「具体的にはいつまで? 彼らはどうしたら安心して暮らせるんだい」


レオンも領主として引き下がるわけにはいかなかった。

クルザナシュという土地に悪魔達を受け入れると決めた時から悪魔達の行動の一切を受け持つ覚悟を持っていた。

契約の中には「人間に対して魔法を使わない」や「行動を定期的に報告する」という内容のものまであり、悪魔達の自由を奪う可能性があったのだ。


「何も永遠に閉じ込めておくというわけじゃない。クルザナシュでの彼らの行動はレオンに一任する。その契約書はクルザナシュの外に悪魔達を出さないようにするためのものだ」


ダレンは淡々と説明する。
ダレンとて悪魔達に恨みがあるわけではない。

ヒースクリフやマークがそうであるようにレオンのことを信頼している。

ただ、魔法騎士団の団長代理として、国王ヒースクリフの補佐として伝えなければならないことはハッキリと伝えなければならない。

レオンにもそれがわかっているため、話は平行線のままだった。


結局、レオンがそれを許可したとしても従うかどうかは悪魔達の判断になるという方向に話は向かっていき


「一度クルザナシュに帰ってディーレイン達にも聞いてみる」


とレオンが言ったところでその話は一度終わりになった。


「それではもう一つの方の話だ」

とヒースクリフが切り出したのは昼を少し過ぎた頃合いだった。

「これもまた悪魔達に関係する話だが」

とヒースクリフが切り出したのでレオンはごくりと唾を飲み込んだ。

ヒースクリフは神妙な面持ちで、


「他国の人間がこの国やってくる」


とレオンとマークの二人に告げた。
しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。