【完結】鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

はづも

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3章 新しい関係

1 いつもと違う帰り道

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 ある日の帰り道。
 一緒に馬車に乗り込んだアーロンは、なんだかそわそわしていた。
 いつもなら、にこにことマリアベルの話を聞いてくれたり、授業でよくわからなかった部分を先輩の彼に教えてもらったりと、二人からは会話も笑顔も絶えない。
 ……たまに、疲れたマリアベルが、馬車の中で眠ってしまうこともあるが。
 マリアベルが寝てしまった日は、アーロンは彼女の寝顔を眺めて幸せに浸っていたり、一緒になって隣で眠っていたりする。

 まあ、そんな具合で、婚約者でもない幼馴染の二人は、日ごろからとても和やかに登下校していた。
 しかし、だ。

「……それで、今度グラセス伯爵家でお泊まり会をすることになったんです! 夜遅くまでお話して、お菓子を食べて、みんなで同じ部屋で寝ようって。私もコレットも、今からすごく楽しみにしてて……」

 こちらは、上級生のアーロンはいない時間に、1年生女子三人で決めた話だ。
 アーロンは、マリアベルが友人を欲しがっていたことをよく知っている。
 だからか、普段なら、こういった話もにこにこと聞いて、「よかったね」「楽しみだね」と相槌をうってくれるのであるが……。
 何故だか、今日はあまりマリアベルのほうを見ず、落ち着きなく窓の外を見たりしながら、「うん」「そっか」と生返事をしている。
 塩対応、というほどではないのだが、いつだって彼に笑顔を向けられてきたマリアベルは、アーロンの態度を不思議に思った。

「あの、アーロン様。今日はお疲れでしたか……?」

 もしかしたら、アーロンは疲れているのかもしれない。
 彼は選択授業でも剣技を学んでおり、放課後も武術系の部活動に精を出している。
 最近は、魔法研究会にも顔を出すようになった。
 公爵家の嫡男だから、家でも相応の教育を受けていることだろう。
 身体も頭もよく使う人だ。帰りぐらいゆっくりしたい日があったって、なにもおかしくはない。

――アーロン様の都合も考えず、一方的に話しすぎてしまったかしら。

 そう思い、マリアベルはちょっとしゅんとしながら口を閉じた。
 なんだか普段と様子が違うアーロンだったが、愛しのベルが俯いてしまったことには、すぐに気が付いて。
 慌てた様子で彼女に向き直った。

「いや、ごめん。そういうわけじゃないんだ。……ただ、ちょっと、その……気になることがあって……」
「気になること……?」
「ええと……」

 言いづらいようで、アーロンはマリアベルから目をそらしながら頬をかく。
 この反応からして、アーロンはなにか悩んでいるのだろうか。
 マリアベルは、昔から色々な面で彼に助けてもらっている。
 アーロンは公爵家の生まれで、本人もとてもしっかりしているから、彼が困っている場面や、マリアベルに助けを求めてくる場面には、ほとんど遭遇したことがない。
 けれど、もし、彼が困っていて、自分が力になれる場面があるのなら――。

「……アーロン様。なにかお困りでしたら、力になります! ……私ごときでは、できることは少ないかもしれませんが! 貧乏伯爵家の娘になにができるんだと、自分でも少し思いますが! それでも、ちょっとぐらいは、きっと……!」

 意気込みすぎているマリアベルを見て、アーロンは苦笑する。
 アーロンから見れば、「そこまで張りきらなくても大丈夫だよー」といったところだろうか。
 けれど、彼のはちみつ色の瞳には、愛おしさがにじんでいて。

「ありがとう、ベル」

 静かにそう言うと、彼はマリアベルの銀の髪をひと房とり、そっと口づけた。
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