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22. 嫉妬と告白 ♡
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桐生さんの胸の中で、ようやくオレの涙は止まった。
激しい感情の波が去った後、残ったのは、彼の体温に包まれているという確かな安堵だけだった。
「……嫉妬、しました」
オレは、桐生さんの胸に顔を埋めたまま、静かに言葉を絞り出した。
「あのニュースを見たとき、あなたの『イメージ戦略』のために、オレの覚悟が踏みにじられたと思った。それが、悔しくて、悲しくて、……憎かった」
オレが言葉を区切ると、桐生さんはゆっくりとオレの顔を上げさせた。
「憎かった、か。正直でいい」
彼の目から逃れるように視線を下に向けた。
「女でも男でも関係ない。他の誰かに、あなたの隣を取られるのが、たまらなく嫌だった」
桐生さんは、オレの額にそっと唇を押し当てた。優しく、慈しむような温度。
「もう、辛い片想いは嫌なんだ」
「そうだったな、ごめん。また悲しい想いをさせた」
額なら頬、そして唇へと口づけが下りてくる。軽く触れるだけの、優しいキスだった。
「泣くほど俺を好きになってくれて、ありがとう」
その言葉で、オレの胸の奥にあった最後のわだかまりが溶けた。
「ちゃんと伝えるけど、あのスキャンダルは事実無根だよ」
「疑ってごめん」
「ヤキモチの度合いは愛情と比例するからね。それだけ好きになってくれたんだ、光栄だよ」
桐生さんは、ベッドの縁に座り直し、オレの手を取った。
「理久への想いは、偽りでも踏み台でもないよ」
オレは、彼の目を見つめ返した。この熱と、この真剣な眼差しこそが、オレが求めていた真実だ。
「翔……!」
オレは自ら桐生さんの首に腕を回し、力強く唇を合わせた。これまでは、桐生さんにリードされるがままだったが、今回は違う。
「翔が、ほしいんだ……」
その言葉と同時に、オレは桐生さんの身体をベッドに押し倒した。オレが上に乗ると、桐生さんは驚いたように目を丸くしたが、すぐに意地悪な笑みを浮かべた。
「いいね。君が求めてくれるなんて」
オレは彼のシャツを乱暴に捲り上げ、その鍛えられた胸板に胸を埋めた。
二人の吐息が混ざる。
彼のスキャンダルへの怒り、海外へ行ってしまうことへの焦燥、そして恋人になれたことへの歓喜。すべての感情が、欲望という形になってオレを突き動かした。
「好きです、自分でも驚くくらい」
桐生さんは、オレの積極性に応えてくれる。
彼の指先がオレの髪を愛おしそうに撫で、その熱い視線が、オレの行動のすべてを肯定していた。
「理久の全てを受け入れるよ」
これまでの熱い戯れとは違う、互いの存在を確かめ合う、激しくも切実な時間が過ぎた。
明日もライブなのに、声が枯れるほど、何度もオレは桐生さんの名前を呼び、夜に溺れていった。
◆◆◆
時計の針が、午前6時を指した。冬の北海道はまだ夜明け前だ。
桐生さんは、オレの頬を優しく撫でた後、静かにベッドから抜け出した。
「理久」
オレは、その声で目を覚ました。桐生さんが黒いコートを羽織り、出発の準備を整えている。
「そろそろ行くよ」
「……うん、」
オレはベッドから身を起こす。
桐生さんはオレの隣に座ると、オレの両手を強く握りしめた。
「ドームツアーがんばれよ。ただし、ケガの無いようにね」
「うん、翔も海外生活で大変だろうけど」
「お互いな」
軽くキスをした後、オレの目を見ると、ふわりと微笑んだ。
「理久。浮気はするよ?」
「どの口が言うんだよ」
そもそも、桐生翔という俳優は色々な噂が絶えなかった。
「はは、もっと信頼されるよう努力する」
「次に会うときは、過去も含めて尋問してやる」
「俺の恋人は、思った以上に嫉妬深いみたいだな」
嬉しそうに笑った。
恋人。そうか、オレたちはそういう関係になれたんだ。昨日までとは違う、じんわりと暖かい気持ちが広がる。
「愛しているよ」
深く長いキスのあと、桐生さんは部屋を出て行った。ドアが閉まり、再び静寂が訪れる。
オレはベッドの上に一人取り残された。枕に顔を埋めると、桐生さんの香水の香りが、まだ微かに残っている。
身体には、彼に愛された熱がまだ残っている。
ようやく空が淡い紫色色に染まる。窓の外は雪景色だけど、その先に待つ春のゴールを信じて、オレはツアーに挑む決意を固めた。
激しい感情の波が去った後、残ったのは、彼の体温に包まれているという確かな安堵だけだった。
「……嫉妬、しました」
オレは、桐生さんの胸に顔を埋めたまま、静かに言葉を絞り出した。
「あのニュースを見たとき、あなたの『イメージ戦略』のために、オレの覚悟が踏みにじられたと思った。それが、悔しくて、悲しくて、……憎かった」
オレが言葉を区切ると、桐生さんはゆっくりとオレの顔を上げさせた。
「憎かった、か。正直でいい」
彼の目から逃れるように視線を下に向けた。
「女でも男でも関係ない。他の誰かに、あなたの隣を取られるのが、たまらなく嫌だった」
桐生さんは、オレの額にそっと唇を押し当てた。優しく、慈しむような温度。
「もう、辛い片想いは嫌なんだ」
「そうだったな、ごめん。また悲しい想いをさせた」
額なら頬、そして唇へと口づけが下りてくる。軽く触れるだけの、優しいキスだった。
「泣くほど俺を好きになってくれて、ありがとう」
その言葉で、オレの胸の奥にあった最後のわだかまりが溶けた。
「ちゃんと伝えるけど、あのスキャンダルは事実無根だよ」
「疑ってごめん」
「ヤキモチの度合いは愛情と比例するからね。それだけ好きになってくれたんだ、光栄だよ」
桐生さんは、ベッドの縁に座り直し、オレの手を取った。
「理久への想いは、偽りでも踏み台でもないよ」
オレは、彼の目を見つめ返した。この熱と、この真剣な眼差しこそが、オレが求めていた真実だ。
「翔……!」
オレは自ら桐生さんの首に腕を回し、力強く唇を合わせた。これまでは、桐生さんにリードされるがままだったが、今回は違う。
「翔が、ほしいんだ……」
その言葉と同時に、オレは桐生さんの身体をベッドに押し倒した。オレが上に乗ると、桐生さんは驚いたように目を丸くしたが、すぐに意地悪な笑みを浮かべた。
「いいね。君が求めてくれるなんて」
オレは彼のシャツを乱暴に捲り上げ、その鍛えられた胸板に胸を埋めた。
二人の吐息が混ざる。
彼のスキャンダルへの怒り、海外へ行ってしまうことへの焦燥、そして恋人になれたことへの歓喜。すべての感情が、欲望という形になってオレを突き動かした。
「好きです、自分でも驚くくらい」
桐生さんは、オレの積極性に応えてくれる。
彼の指先がオレの髪を愛おしそうに撫で、その熱い視線が、オレの行動のすべてを肯定していた。
「理久の全てを受け入れるよ」
これまでの熱い戯れとは違う、互いの存在を確かめ合う、激しくも切実な時間が過ぎた。
明日もライブなのに、声が枯れるほど、何度もオレは桐生さんの名前を呼び、夜に溺れていった。
◆◆◆
時計の針が、午前6時を指した。冬の北海道はまだ夜明け前だ。
桐生さんは、オレの頬を優しく撫でた後、静かにベッドから抜け出した。
「理久」
オレは、その声で目を覚ました。桐生さんが黒いコートを羽織り、出発の準備を整えている。
「そろそろ行くよ」
「……うん、」
オレはベッドから身を起こす。
桐生さんはオレの隣に座ると、オレの両手を強く握りしめた。
「ドームツアーがんばれよ。ただし、ケガの無いようにね」
「うん、翔も海外生活で大変だろうけど」
「お互いな」
軽くキスをした後、オレの目を見ると、ふわりと微笑んだ。
「理久。浮気はするよ?」
「どの口が言うんだよ」
そもそも、桐生翔という俳優は色々な噂が絶えなかった。
「はは、もっと信頼されるよう努力する」
「次に会うときは、過去も含めて尋問してやる」
「俺の恋人は、思った以上に嫉妬深いみたいだな」
嬉しそうに笑った。
恋人。そうか、オレたちはそういう関係になれたんだ。昨日までとは違う、じんわりと暖かい気持ちが広がる。
「愛しているよ」
深く長いキスのあと、桐生さんは部屋を出て行った。ドアが閉まり、再び静寂が訪れる。
オレはベッドの上に一人取り残された。枕に顔を埋めると、桐生さんの香水の香りが、まだ微かに残っている。
身体には、彼に愛された熱がまだ残っている。
ようやく空が淡い紫色色に染まる。窓の外は雪景色だけど、その先に待つ春のゴールを信じて、オレはツアーに挑む決意を固めた。
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