【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

文字の大きさ
22 / 32
♯1

21. 深夜ホテルで密会

しおりを挟む
「……もしもし」

かすれた声が、真夜中の部屋に響く。

『理久?』

低く、少しかすれた桐生さんの声。それが、現実の夜気の中で鼓膜を震わせる。

「何のつもりですか」


精一杯、冷たく言おうとした。けれど、唇が震えてうまく声が出ない。


『あのニュース、見た?』

「見ました」

『理久が泣いているかと思ってね』

「何をばかなことを」

乾いた声が出た。言葉の奥で、喉の奥が焼けるように痛い。

『どっちを信じたの?報道の内容か、あの夜のこと』


答えられず沈黙する。桐生さんは、なにかを飲み込むように息を整えた。


『明日、日本を発つ』


オレの全身が、一瞬で熱くなった。


「明日?」


海外の映画の撮影があることは聞いていた。全編マレーシアで撮影をするため、マレー語と英語のレッスンを受けていた。


『法を犯したわけでもないのに、高跳びだなんてさ。スケジュールを急遽前倒しにされて、明日の昼前には空の上だ』

「そうですか……、それは大変ですね」

『会いたい』


オレはスマホを握りしめ、言葉を失った。自分でだって、会いたいと願ってしまう本心がせめぎ合う。


「冗談はやめてください。オレは北海道で、明日もライブがあるんだ」


そのとき、違和感に気がついた。
受話器越しに、さっきから足音と何かを引きずるような音が漏れ聞こえた。電波が悪いのかと思ったが……。

その瞬間、コンコンと、控えめだが確かなノックが部屋のドアに響いた。


『理久。ドアを開けて』

「え、うそだろ?」


喉が焼けるように熱い。体が勝手に動いた。

ドアを開けると、夜の廊下の向こうに、黒いコートの男が立っていた。


「……どうして?」


桐生さんは、オレの頬に手を伸ばした。彼の指先が、オレの涙の跡を優しくなぞった。


「ひどい顔だ。本当に泣いていたんだな」

そのまま、桐生さんはスマホを耳から離し、通話を終了させた。

「泣いてなんか!」


オレが声を抑えながらも怒鳴ると、桐生さんは一歩踏み出し、ドアを押し開けてオレの部屋に入ってきた。


「どうやって、部屋を……?」

「湊くんに聞いた。事情があって、どうしても伝えたいことがあるとね。すぐに教えてくれたよ。君たちのマネージャーは、純粋で扱いやすいな」


桐生さんは、意地悪い笑みを浮かべた。その表情を見て、オレは再び怒りが湧き上がるのを感じた。


「こんなところに来るより、キレイな彼女のそばにいたらいい」

「彼女なんていないよ、恋人にしたい男は目の前にいるけどね」

「え?」


桐生さんは、オレの肩を掴み、そのまま壁に押し付けた。


そして、唇が触れた。拒めなかった。涙と一緒に、あの夜の記憶が甦る。


「嘘つき……っ」

「嘘なんて、ついてない」


息が絡み合い、ふたりの影が、暗い部屋の中でひとつに溶けた。


「んっ……。やめ、やめろよ」

「いやだ」


支配的なキスだった。スキャンダルの報道後、何よりも欲しかった彼の熱が、今、オレの全身を焼き尽くしていく。

ようやく唇が離れると、部屋に二人の荒い息遣いだけが響いた。


「なんのつもり?」


オレの問いに、桐生さんは黒いコートを床に投げ捨てる。


「事務所から『イメージアップのために女優との交際しろ』と言われたのは事実だよ」


桐生さんは、少しだけ目を伏せる。


「俺たちは会社の商品だからな。理久にはわかるだろう?」


当然だ。よく理解をしている。イメージダウンは最大の敵だと、何度も事務所から言われてきた。


「だったら、オレの部屋になんて来たらダメだ。せっかく、ゲイだなんて噂を払拭できたのに」

「理久も困るよな?人気アイドルがツアー中に、年上の俳優と密会だなんてさ。しかも、このままだと泥沼三角関係だ」

「な、笑い事じゃない!」

「ごめん、だけど……」


桐生さんは再び、オレの唇に軽く触れた。

「理久が泣いていると思ったら、どうしても会いたくて。羽田から最終便で飛んできた。君は、俺の全てを狂わせる」

「翔……」

張り詰めていた緊張と怒りが一気に崩壊し、オレは桐生さんの胸に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。

桐生さんは何も言わず、ただ優しくオレの背中を抱きしめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

腐男子完全計画!

葉津緒
BL
『王道脇役平凡・嫌われ→総受け』を見たい腐男子主人公が、全寮制学園で王道転入生役を演じつつ舞台を整えていく……? そんな、よくあるお話。 BLコメディ。

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

無自覚オメガとオメガ嫌いの上司

蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。 ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、 ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。 そして、なぜか課長にキスされてしまい…?? 無自覚オメガ→小国直樹(24) オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ 第一部・完 お読みいただき、ありがとうございました。 第二部 白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。 プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。 相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。 第三部 入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。 第四部 入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。 直樹が取引先のアルファに目をつけられて…… ※続きもいずれ更新します。お待ちください。 直樹のイラスト、描いてもらいました。

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

「溺愛ビギナー」◆幼馴染みで相方。ずっと片想いしてたのに――まさかの溺愛宣言!◆

星井 悠里
BL
幼稚園からの幼馴染みで、今は二人組アーティストとして活躍する蒼紫と涼。 女の子にモテまくる完璧イケメン・蒼紫。 涼の秘密は――蒼紫が初恋で、今もずっと好きだということ。 仕事は順調。友情も壊したくない。 だから涼はこの気持ちを胸にしまい込んで、「いつか忘れる」って思っていた。 でも、本番前の楽屋で二人きり。あることをきっかけに急接近。 蒼紫の真顔、低い声、近づいてくる気配。 「涼、オレ……」 蒼紫から飛び出したのは、涼が夢にも思わなかった、びっくり大告白♥だった✨

処理中です...