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20. ライブのあと、動と静
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ドームツアーの初日は、熱狂のうちに幕を閉じた。
伊勢への想い、桐生への想い。そして、こんなオレを応援してくれるファンのこと。
すべての感情が混ざり合い、オレのダンスと歌は、尋常ではない熱を帯びた。
花道を駆け抜け、センターステージでバク転を決める。本番で披露するのは久しぶりだった。
伊勢と蒼真は、驚いたようにオレを見ていたが、構わずにその激情をすべて爆発させた。
「片倉、最高!」
終演後、興奮した伊勢が肩を組みに来た。
「ソロパートのとき、鳥肌立ったもん。どうしたんだよ、急に」
「さあ? 気合いが入りすぎただけだろ」
オレは、最高の笑顔で伊勢の腕を叩いた。伊勢の瞳には、オレへの疑念など微塵もない。ただ純粋に、相棒の成功を喜んでいる。
この笑顔のそばにいたい。そう思うのは、今も変わらない。
その夜、すすきのでスタッフや関係者を交えた打ち上げが開かれた。成功の余韻とアルコールの高揚感で、会場は賑わっている。
オレはビールを片手に、笑顔でスタッフと会話を交わした。しかし、意識は常にポケットの中のスマホに向いていた。
賑やかな喧騒の中にいながら、オレは飲んでも酔えない自分に気づいた。アルコールは、体内の熱を冷ますだけで、心の奥にある小さな炎は燻っている。
連絡は、ない。
スキャンダルが報じられた後、桐生さんからの連絡は、当然ながら一切なかった。
日付が変わる頃、打ち上げは解散となった。
「まだ明日もあるから、ゆっくり休んでくださいね!」
ホテルに行くと、お酒で少し頬をあからめた湊さんが、オレたちにカギを配る。
「おやすみなさい、片倉くん」
「おつかれさまでした」
伊勢がさりげなく湊さんを連れて行くのが視界に入った。
今までなら心が痛む光景だった。今は、もう気にならない。気になるのは、沈黙を保つスマホだけ。
ひとり暗い部屋に入る。ドアを閉めた途端、喧騒から切り離され、重く、底なしの静寂がオレを襲う。
コートを脱ぐことも忘れ、オレはベッドに倒れ込んだ。遮光カーテンが閉められた室内は真っ暗で、まるで深海の底にいるようだ。
さっきまでのドームの熱狂、打ち上げの笑い声、アルコールの匂い、全てが遠い幻のように消え去った。
「やっぱり、遊びだったのかな」
桐生さんの声が、耳の奥で何度も反響する。
堪えきれず、オレは声を押し殺して泣き始めた。シーツを握りしめ、枕に顔を埋める。
「嘘つき……っ」
涙と鼻水でシーツがぐしゃぐしゃになったそのとき。
振動音が重い静寂を切り裂いた。
オレは飛び起き、ベッドサイドに投げ出していたスマホを慌てて手に取った。
時刻は、午前2時17分。
涙でゆがんだ視界に、着信画面に表示されたのは、『桐生翔』という待ちわびた名前だった。
伊勢への想い、桐生への想い。そして、こんなオレを応援してくれるファンのこと。
すべての感情が混ざり合い、オレのダンスと歌は、尋常ではない熱を帯びた。
花道を駆け抜け、センターステージでバク転を決める。本番で披露するのは久しぶりだった。
伊勢と蒼真は、驚いたようにオレを見ていたが、構わずにその激情をすべて爆発させた。
「片倉、最高!」
終演後、興奮した伊勢が肩を組みに来た。
「ソロパートのとき、鳥肌立ったもん。どうしたんだよ、急に」
「さあ? 気合いが入りすぎただけだろ」
オレは、最高の笑顔で伊勢の腕を叩いた。伊勢の瞳には、オレへの疑念など微塵もない。ただ純粋に、相棒の成功を喜んでいる。
この笑顔のそばにいたい。そう思うのは、今も変わらない。
その夜、すすきのでスタッフや関係者を交えた打ち上げが開かれた。成功の余韻とアルコールの高揚感で、会場は賑わっている。
オレはビールを片手に、笑顔でスタッフと会話を交わした。しかし、意識は常にポケットの中のスマホに向いていた。
賑やかな喧騒の中にいながら、オレは飲んでも酔えない自分に気づいた。アルコールは、体内の熱を冷ますだけで、心の奥にある小さな炎は燻っている。
連絡は、ない。
スキャンダルが報じられた後、桐生さんからの連絡は、当然ながら一切なかった。
日付が変わる頃、打ち上げは解散となった。
「まだ明日もあるから、ゆっくり休んでくださいね!」
ホテルに行くと、お酒で少し頬をあからめた湊さんが、オレたちにカギを配る。
「おやすみなさい、片倉くん」
「おつかれさまでした」
伊勢がさりげなく湊さんを連れて行くのが視界に入った。
今までなら心が痛む光景だった。今は、もう気にならない。気になるのは、沈黙を保つスマホだけ。
ひとり暗い部屋に入る。ドアを閉めた途端、喧騒から切り離され、重く、底なしの静寂がオレを襲う。
コートを脱ぐことも忘れ、オレはベッドに倒れ込んだ。遮光カーテンが閉められた室内は真っ暗で、まるで深海の底にいるようだ。
さっきまでのドームの熱狂、打ち上げの笑い声、アルコールの匂い、全てが遠い幻のように消え去った。
「やっぱり、遊びだったのかな」
桐生さんの声が、耳の奥で何度も反響する。
堪えきれず、オレは声を押し殺して泣き始めた。シーツを握りしめ、枕に顔を埋める。
「嘘つき……っ」
涙と鼻水でシーツがぐしゃぐしゃになったそのとき。
振動音が重い静寂を切り裂いた。
オレは飛び起き、ベッドサイドに投げ出していたスマホを慌てて手に取った。
時刻は、午前2時17分。
涙でゆがんだ視界に、着信画面に表示されたのは、『桐生翔』という待ちわびた名前だった。
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