時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
3 / 1,197
第一節「全て始まり 地に還れ 命を手に」

~誘い の 街にて~

しおりを挟む
 翌日、土曜日の昼前。

 空には青を遮る白雲の欠片さえ覗きはしない。
 お陰で肌を刺す日差しが一直線にアスファルトを照り付けてくる。
 まるで大地を覆う別の熱気へ拍車を掛けんばかりに。

 そんな熱気漂うこの場所は大都市東京が誇る繁華街の一つ、渋谷しぶたに
 人という熱気が渦巻く願望のるつぼだ。

 駅から一歩踏み出せば、すぐに無数の店の並ぶ巨大なビル群が出迎えてくれて。
 更には無数の広告や街頭ディスプレイが街を飾り、多様な意欲を掻き立ててくれる。
 それも老若男女、世代や趣向も関係無く。

 そして何より、欲しい物がすぐ見つかる。
 ほんの少し歩くだけで、あるいは狙って探すだけで。
 そんな何でも揃うこの街だからこそ、人はこぞって集まるのである。
 一途に自分だけの出会いを求めて。



 そんな街に今日、あの二人もが訪れていた。



 それというのも今日は授業の無い休日で。
 いつもならそれでも剣道の練習に赴いたりもするのだけれど。
 今日に限っては統也の提案もあり、折角だからと遊びにやってきていたのだ。

 その目的はと言えば―――ただの映画鑑賞。

 何でも、統也が親伝いで運良く入場券を入手したとのこと。
 しかも期待の最新作【スターボゥズ 最期のジュラァイ】の4DXプレミアチケットを。
 こんな誘いがあれば行かないのも損というものだろう。

 ちなみに、【スターボゥズ】とは長編シリーズのSF映画作品だ。
 二人が生まれる以前より始まり、今なお続編が続く大人気作である。

 ざっくりと説明すると、宇宙を守る為に数人の選ばれし坊主が戦うというもの。
 なのに何故か宇宙戦争を仕掛けたり、異星人と共闘したりと半ばコメディに近い。
 特に、頭から放つ光の剣でアクロバティックな殺陣タテを見せる所が有名で。
 おまけに各作で必ず「ジュラァ~イ!!」と叫ぶシーンがあり、これが何故かヒット。
 故に多くのファンに愛され続け、論争さえ絶えない屈指の名作となっている。

 もちろんファン以外にも好んで観られる良作である事に変わりはない。
 なので二人も熱烈ファンという訳では無いものの、気にはなっていたらしい。
 勇もこの人気沸騰の話題作を前にはさすがに首を横に振れなかった様だ。

 という訳で早速観賞を終え、二人が上映室から出て来る。
 よほど楽しかったのだろう、揃って絶えずニッコニコだ。
 その所為か、ゲートから出た後も映画の話題で盛り上がりっきりで。

 遂には興奮の余り、揃って顔を歪め―――

「「んん、ジュラァ~~~イ!!」」

 こうして恥ずかしげもなく台詞をも叫ぶ。
 それも下手に仲が良いので息までピッタリという。

「あッそこでジュラァイはねーよな!!」
「あれは汚い! 絶対笑う! 堪えるの無理だろ!!」

 これはファンなら観た後に必ず行う恒例行事の様なもの。
 周囲でも他の視聴者達が同様に仲良く叫んでいるので違和感は無い。
 でも、そんな中でも二人の姿はやたらと目立っていた。
 他の誰よりも大袈裟なくらいに笑い、腹を抱える仕草まで見せていたから。

 とうとうそんな笑いも堪えられなくなり、揃って壁に向けてもたれる姿が。
 二人して笑うものだからきっと相乗効果もあったに違いない。

 だからか、どちらも凄く楽しそう。
 ほんの少しネタバレを絡め、面白かった所を共有してしまう程に。
 例え騒がしくとも、礼節を欠いていようと関係は無い。
 そんな些細な事など気にもならなかったくらいなのだから。

 こうして趣味も合えば感性も寄って来る。
 ここまで似通っているからおのずと惹かれ合ったのだろう。

 才能や努力も所詮はキッカケ。
 二人は、この二人だったから親友になれたのかもしれない。





 愉快な一時を満喫し、ようやく語る話題も尽きた。
 そんな訳で次は昼食でも摂ろうかと、映画館から出る事に。

 ただ勇はと言えば、出るや否やにどこか不思議と首を傾げていて。

「でもさ、気になったんだけど……なんで誘ったのが俺なんだ? こういうのに連れて来るのって普通カノジョとかだろ?」

 それというのも、統也が何故自分を誘ったのかがわからなかったから。

 先程、上映室内を見渡して気付いていたのだ。
 客の殆どがカップルばかりだったという事に。

 今日は土曜日ともあり、街に訪れる人の数は当然多い。
 となればデートスポットに挙げられ易い映画館はカップルに人気となる。
 プレミアムだろうが何だろうが違うのは客層くらいで、基本的に大差は無いのだ。

 そんな中に紛れる男二人。
 これはさすがに少し不自然とも思うだろう。
 チケットがあるから会場の選択肢が無いのは仕方ないとしても。

 なので少し疑問を感じずにはいられなかったらしい。

「そりゃまァそうだけどさ。 でもアイツカノジョこういうの興味ねェし。 なら勇を誘って馬鹿笑いした方がずっと楽しいだろ?」

「そりゃま、そうか……」

 統也には彼女が居る。
 相思相愛という程では無いが、本音をぶつけられる良い理解者同士として。
 勇もその事を知っているし、何なら同級生で同じクラスなので気さくに話だってする。
 だからこその疑問だったのだが。

 どうやら理解者だからこその判断だったらしい。
 勇もこう言われて「あ、確かに」と初めて気付いた様だ。

「少なくとも俺は満足だ。 一緒にジュラァイが出来ただけでも来た甲斐があった。 アイツはゼッテーこんな事しねェからな。 シンの奴もな」

「そこ重要か?」

「当たり前だろ。 【スターボゥズ】っつったらジュラァイだぜ? だとしたら選ばれし坊主はお前しかいねェ」
 
「その論調で言ったら統也も坊主になるんだが?」

 それに選択肢がそもそも少ないという事実もあるけども。

 実の所、統也は人当たりこそ良いが友達自体はそこまで多くない。
 大体は勇繋がりでの友人ばかりだ。

 それというのも、統也が余りにも凄過ぎるから。
 なまじ天才という事で一目置かれ、大体の人間はどこか一歩引いてしまう。
 その所為で深く話せるのは勇か彼女か、今言った『シン』という人物くらいしか居ない。
 その人物も勇繋がりなので、おのずと交友関係は察せよう。
 天才なりの悩みの一つである。

 ならば勇にこうも依存してしまうだろう。
 本音を言い合える唯一の友だからこそ。
 そこには決して友情以上の不純な理由がある訳では無い。



 もっとも、統也が勇を選んだのには他の目的もあった訳だが。
 それこそ別の意味で不純な理由が。

 しかし勇はまだその事にはちっとも気付いていない。
 その所為でこれからちょっとした騒動が巻き起こるなど、知る由も無かったのだ。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...