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第九節「人が結ぶ世界 白下の誓い 闇に消えぬ」
~騒ぎ前のめり 継~
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勇が意気揚々と家を出た頃。
所変わってショッピングモールの一角、フードコートの座席にて。
そこに、ちゃなと愛希達のいつもの四人組で座る姿が。
ただし、その様子はと言えば―――
「愛希ちゃん、どうしたの? 顔真っ赤だよ?」
「ヤベェ……ちゃなごめん、私の勝ちかもしんない」
「え?」
「……藤咲先輩からデート誘われた」
「「「ええー!?」」」
早速、大興奮の真っ最中。
渦中の愛希は興奮の余りか、頬が真っ赤に染め上がり。
でも唇を尖る程に窄め、チョマチョマと音なき声を口ずさませる。
可愛い顔が実に台無しである。
風香と藍は信じられないと言わんばかりに眼を見開かせて唖然一方だ。
別に他意は無いのだが、やはり勇とは不釣り合いと思っていた節があったのだろう。
そして本来呼ばれるはずだったちゃなはと言うと―――
「わぁ! 良かったね、愛希ちゃん!」
全力で祝う姿がここに。
彼女に嫉妬という感情は無いのだろうか。
それともただ単に勇の事をそこまで想っていないだけか。
どちらにしろ、この背景を知らぬ勇の如何に間抜けな事か。
哀しいかな、勇君とても報われない。
しかし今は彼を密かに想う子がここにも居る。
デートに誘われた(と勘違いした)子が。
それが唯一の救いか。
いつもは勝気強気な清水愛希も、今この時は純情乙女。
ならば誘いを受けたら行かねばなるまい。
という訳で。
「ご、ごめんアタシちょっと先に帰るわ。 着替えてこないとヤバイ。 うおァァァーーー……」
「気を付けてねー!」
欲望の赴くまま、三人を置いて颯爽と走り去っていく。
屋内だというのに土煙が立ちそうな勢いで。
心は純情乙女でも、その身体はもはやアスリートの鬼である。
「ちゃな~いいの? 行かせちゃって~」
「え? なんで?」
「ダメね。 ちゃな全然その気無いわぁ……」
「えぇ~?」
そんで残された三人はと言えば、相変わらずのマイペースを貫いている模様。
特にちゃなは二人の言葉も理解出来ず、ただただ首を傾げるばかりで。
そんな疑問をも飲み込まんばかりに、手に持っていたクレープをはむはむと頬張る姿がそこにあった。
なお、その後の愛希を偶然目撃した同級生は語る。
陽気の下、自転車のペダルを超速回転させる姿はまさに秋楓疾風の如し。
車前に突き出したその顔は、とてもとても鬼気迫るものがあったという。
◇◇◇
先に出発していた勇が、早速目的地に降り立つ。
それなりに責任感もあるからか、中々早いお着きである。
とはいえ、『ちゃなちゃん』からは〝準備するので時間が欲しい〟と言われている。
そうなると、駅前でただ待つのも何だか福留に悪い気がして。
〝時間があるなら〟と、一足早く本部へ向かう事に。
上野に着いてしまえば後はあっという間だ。
速足気味に向かえば、すぐにでも本部敷地がお目見えで。
相変わらず厳重なゲートを越え、そのまま真っ直ぐ事務棟へと駆け抜ける。
しかしいざ事務室に訪れても、やってきたのは勇一人な訳で。
それを見掛けた福留が思わず眉間を寄せさせる。
「おや? 勇君お一人ですか?」
「すいません福留さん、田中さんちょっと遅れてくるって」
ただ事情を知ればそんな顔もたちまち緩む事に。
更には「あぁ~ははは」と理解の笑みを交え、ウンウンと頷いていて。
「なるほど、それなら。 まぁ大丈夫ですよ、予定まであと四時間ほどありますしね」
「えぇ、そんなに!? じゃあ急ぐ必要無かったのか。 田中さんに悪い事したなぁ」
「いやぁ申し訳ありませんねぇ~……。 実は私の友人と会って頂きたかったのですが、彼等はあまり時間取れませんので。 四時間後と決まったのもつい今しがたなんです」
おまけに事情がそれほど急でも無かったからか、互いにバツが悪そう。
苦笑いを向け合う姿がそこに。
会わせたい相手というのは余程多忙な身なのだろう。
あの福留の知人なのだから当然と言えば当然か。
となると勇としてもそれなりに興味がある様だ。
自分達に会わせたい人がどんな人物なのか、と。
気付けば苦笑いが好奇心のニヤつきに変わっていて。
それに感づいた福留もが嬉しそうな笑みを零す。
「お小遣いを差し上げますので、折角ですから街でもブラブラしてきては如何でしょう? 上野動物園もありますしねぇ。 お二人なら丁度いい息抜き場所でしょう」
「アハハ、それくらいは自分達でやりくりしますよ。 それに、ここに来たなら戦いの練習もしなきゃ。 田中さんとトレーニングでもして待ってるつもりです」
「あ、訓練棟は今ちょっと修理改装中でして……」
「あ……」
だがその途端にまたしても二人の顔が歪む事になったが。
というのも実は勇、その修理改装に至った原因を知っている。
ちゃなが先週、うっかり訓練棟の壁を撃ち抜いてしまった事を。
性能実験で撃ち放った【複合熱榴弾】によって。
充分に厳重な下準備はしていた。
防火防音、防弾対策もしっかりと。
後は試験用鉄板に撃ち込み、性能を評価するだけだったのに。
なのにまさか超極厚の鉄板をも貫通してしまうとは。
幸いにも、貫通した弾は敷地内に着弾したので事無きを得たけれど。
でも危うく大惨事に成り掛けたとあってやはり問題に。
だから〝改装〟なのだ。
〝問題があったら即是正〟は今に始まった事ではない。
実に福留らしいフットワークの軽さである。
とはいえ、そうなるとトレーニングのしようも無い。
なら言われた通りに上野散策をした方が良さそうだ。
という訳で。
「それじゃちょっと田中さん迎えに行ってブラブラしてきます」
「一六時には戻ってきてくださいね」
今回ばかりは戦いを忘れて遊びに行く事に。
折角の休みなので、こういう時があってもいいだろう。
だが忘れてはいけない。
これから迎える子が、ちゃなではなく『ちゃなちゃん』であるという事を。
現実は時に非情である。
先週の事件が無ければこんな事態には発展しなかっただろうに。
いっそ本部で待っておけば、間違いに気付く可能性はあっただろうに。
この様な不幸が積み重なって今、遂に珍騒動が山場を迎えようとしていた……。
所変わってショッピングモールの一角、フードコートの座席にて。
そこに、ちゃなと愛希達のいつもの四人組で座る姿が。
ただし、その様子はと言えば―――
「愛希ちゃん、どうしたの? 顔真っ赤だよ?」
「ヤベェ……ちゃなごめん、私の勝ちかもしんない」
「え?」
「……藤咲先輩からデート誘われた」
「「「ええー!?」」」
早速、大興奮の真っ最中。
渦中の愛希は興奮の余りか、頬が真っ赤に染め上がり。
でも唇を尖る程に窄め、チョマチョマと音なき声を口ずさませる。
可愛い顔が実に台無しである。
風香と藍は信じられないと言わんばかりに眼を見開かせて唖然一方だ。
別に他意は無いのだが、やはり勇とは不釣り合いと思っていた節があったのだろう。
そして本来呼ばれるはずだったちゃなはと言うと―――
「わぁ! 良かったね、愛希ちゃん!」
全力で祝う姿がここに。
彼女に嫉妬という感情は無いのだろうか。
それともただ単に勇の事をそこまで想っていないだけか。
どちらにしろ、この背景を知らぬ勇の如何に間抜けな事か。
哀しいかな、勇君とても報われない。
しかし今は彼を密かに想う子がここにも居る。
デートに誘われた(と勘違いした)子が。
それが唯一の救いか。
いつもは勝気強気な清水愛希も、今この時は純情乙女。
ならば誘いを受けたら行かねばなるまい。
という訳で。
「ご、ごめんアタシちょっと先に帰るわ。 着替えてこないとヤバイ。 うおァァァーーー……」
「気を付けてねー!」
欲望の赴くまま、三人を置いて颯爽と走り去っていく。
屋内だというのに土煙が立ちそうな勢いで。
心は純情乙女でも、その身体はもはやアスリートの鬼である。
「ちゃな~いいの? 行かせちゃって~」
「え? なんで?」
「ダメね。 ちゃな全然その気無いわぁ……」
「えぇ~?」
そんで残された三人はと言えば、相変わらずのマイペースを貫いている模様。
特にちゃなは二人の言葉も理解出来ず、ただただ首を傾げるばかりで。
そんな疑問をも飲み込まんばかりに、手に持っていたクレープをはむはむと頬張る姿がそこにあった。
なお、その後の愛希を偶然目撃した同級生は語る。
陽気の下、自転車のペダルを超速回転させる姿はまさに秋楓疾風の如し。
車前に突き出したその顔は、とてもとても鬼気迫るものがあったという。
◇◇◇
先に出発していた勇が、早速目的地に降り立つ。
それなりに責任感もあるからか、中々早いお着きである。
とはいえ、『ちゃなちゃん』からは〝準備するので時間が欲しい〟と言われている。
そうなると、駅前でただ待つのも何だか福留に悪い気がして。
〝時間があるなら〟と、一足早く本部へ向かう事に。
上野に着いてしまえば後はあっという間だ。
速足気味に向かえば、すぐにでも本部敷地がお目見えで。
相変わらず厳重なゲートを越え、そのまま真っ直ぐ事務棟へと駆け抜ける。
しかしいざ事務室に訪れても、やってきたのは勇一人な訳で。
それを見掛けた福留が思わず眉間を寄せさせる。
「おや? 勇君お一人ですか?」
「すいません福留さん、田中さんちょっと遅れてくるって」
ただ事情を知ればそんな顔もたちまち緩む事に。
更には「あぁ~ははは」と理解の笑みを交え、ウンウンと頷いていて。
「なるほど、それなら。 まぁ大丈夫ですよ、予定まであと四時間ほどありますしね」
「えぇ、そんなに!? じゃあ急ぐ必要無かったのか。 田中さんに悪い事したなぁ」
「いやぁ申し訳ありませんねぇ~……。 実は私の友人と会って頂きたかったのですが、彼等はあまり時間取れませんので。 四時間後と決まったのもつい今しがたなんです」
おまけに事情がそれほど急でも無かったからか、互いにバツが悪そう。
苦笑いを向け合う姿がそこに。
会わせたい相手というのは余程多忙な身なのだろう。
あの福留の知人なのだから当然と言えば当然か。
となると勇としてもそれなりに興味がある様だ。
自分達に会わせたい人がどんな人物なのか、と。
気付けば苦笑いが好奇心のニヤつきに変わっていて。
それに感づいた福留もが嬉しそうな笑みを零す。
「お小遣いを差し上げますので、折角ですから街でもブラブラしてきては如何でしょう? 上野動物園もありますしねぇ。 お二人なら丁度いい息抜き場所でしょう」
「アハハ、それくらいは自分達でやりくりしますよ。 それに、ここに来たなら戦いの練習もしなきゃ。 田中さんとトレーニングでもして待ってるつもりです」
「あ、訓練棟は今ちょっと修理改装中でして……」
「あ……」
だがその途端にまたしても二人の顔が歪む事になったが。
というのも実は勇、その修理改装に至った原因を知っている。
ちゃなが先週、うっかり訓練棟の壁を撃ち抜いてしまった事を。
性能実験で撃ち放った【複合熱榴弾】によって。
充分に厳重な下準備はしていた。
防火防音、防弾対策もしっかりと。
後は試験用鉄板に撃ち込み、性能を評価するだけだったのに。
なのにまさか超極厚の鉄板をも貫通してしまうとは。
幸いにも、貫通した弾は敷地内に着弾したので事無きを得たけれど。
でも危うく大惨事に成り掛けたとあってやはり問題に。
だから〝改装〟なのだ。
〝問題があったら即是正〟は今に始まった事ではない。
実に福留らしいフットワークの軽さである。
とはいえ、そうなるとトレーニングのしようも無い。
なら言われた通りに上野散策をした方が良さそうだ。
という訳で。
「それじゃちょっと田中さん迎えに行ってブラブラしてきます」
「一六時には戻ってきてくださいね」
今回ばかりは戦いを忘れて遊びに行く事に。
折角の休みなので、こういう時があってもいいだろう。
だが忘れてはいけない。
これから迎える子が、ちゃなではなく『ちゃなちゃん』であるという事を。
現実は時に非情である。
先週の事件が無ければこんな事態には発展しなかっただろうに。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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