時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
315 / 1,197
第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」

第十節 後日談 ~魔法少女の様に~

しおりを挟む
※このお話は後日談につき、物語となんら関係はありませんので読み飛ばしても支障ありません。



///第十節 後日談 ~魔法少女の様に~///



 ロゴウとの戦いが終えてから翌々日、通学中にちゃなは心輝達に自分が空を飛んだ事を告白した。

「マジかよ……ついに空まで……」
「もう何でもありよね、次はどこに行くの? 海底? 宇宙?」
「ねぇねぇちゃなちゃん、今度私を空に連れてってよ!」
「海底にも宇宙にも行かないよ……それと空飛んだらあずーちゃん落ちて死んじゃうかもしれないよ? そうなったら助けられないよ?」

 あずーが白目で固まって立ち止まっている事に目もくれず、4人は歩きながら会話を続ける。

「これはあれだな……もう田中ちゃんは魔法少女と名乗ってもいいレベルだな」
「魔法少女……?」

 聞き馴れない言葉にちゃなは心輝に聞き返すと、待ってましたと言わんばかりに心輝がノリノリで話を続ける。

「田中ちゃあん……魔法少女を知らないのは女の子として罪だよ!?」
「え、ええ!?」

 すると心輝はおもむろにスマートフォンを取り出して何やら検索すると、ちゃなにその画面を見せる。
 そこには『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん』と書かれた文字がでかでかと表示されていた。

「まじかる……?」
「そう……魔法少女……それは女の子の憧れ……夢と希望……そして大きなお友達の切望」
「余計なのが1個混じってるんだけど?」

 瀬玲の一言を聞くと、心輝が彼女の顔を見て舌打ちする。
 それを聞いた瀬玲が顔をしかめ、勇が苦笑いを浮かべた。

「彼女達は魔法を使って世界を乱す悪人達と戦い、そして仲間と友情を育み……世界を救う……まさに至高の展開ッ!!」
「おおー……」
「さぁこれを見るんだ田中ちゃんっ!!」

 心輝がちゃなにその番組のプロモーション動画を見せると、食い入るようにちゃながその動画を見る。
 そこには煌びやかな衣装を纏った可愛い女の子達が空を舞い、時には戦い、華麗な姿を見せていた。

「か、かわいい……」
「だろぉ!? しかもその衣装がなんとコスプレ用に販売されているという……!!」

 ちゃなからスマートフォンを受け取ると再び検索を始め、再度ちゃなにその画面を見せつける。

 そこには『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん  マジカルセンターツキミ衣装セット15000円』と書かれた通販の頁が開かれていた。

「わぁー……これ本物の衣装なの?」
「まぁアニメに使われている衣装を象ったコスプレ衣装が売ってるだけなんだけどさ。 出来は凄いらしいぜ?」
「はわぁ……」

 そんな様子を遠くから眺める勇と瀬玲。

「……これでいいの?」
「俺はあんまり人の趣味にケチ付けたくないからなぁ」
「……次の戦闘の時、コスプレで田中さんが参戦したらどう思う訳?」
「う……ま、まあ俺の目のやりどころが困るだけ……多分」



―――正直それは困る―――



 でもはっきり言えない勇は彼女達のやり取りをただ見守る事しか出来なかった。



 その日の夜、キッチンで洗い物をしている勇の母親にちゃなが不意に話し掛ける。

「あ、あのお母さん……?」
「ん? どうしたのちゃなちゃん?」

 もじもじしながら言いあぐねいているちゃなの仕草にキュンとする勇の母親。

「あの……ですね……この家の住所って教えてもらっていいですか?」
「あぁ、いいわよ。 ほら、そこの封筒に書いてあるのがそうだから……それ使っていいわよ」
「あ、ありがとうございます」

 母親に言われた封筒に書かれた住所を必死に打っているのだろう、ちゃなはスマートフォンを触りながら何かを行っている様だった。



 翌日、勇達の家に一箱の荷物が届く。
 「OMOUZON」と書かれたその箱には「藤咲 茶奈様」と書かれた宛先が貼られていた。

「あれ……なんで苗字が藤咲なんだ田中さん……」

 恐らく家を間違えない様にという優しさの表れだろうか、少し嬉しいような気分になる勇であった。

「田中さん、荷物届いてるよ?」

 勇が声を上げてちゃなを呼ぶと、ドタドタと足音を立ててちゃなが自分の部屋からすごい勢いで駆け降りてきた。

「ああああありがとうございますもらいます!!」

 勇が持ち上げたその箱をバシッと音を立てて受け取ると、再び猛ダッシュで自分の部屋に戻っていく。
 入った途端、扉に備え付けられた鍵がバチッと閉まり、締めたのを確認したのかドアノブがガチャガチャと音を立てて揺れた。

 勇はその出来事を前にポカンと呆然し立ち尽くしていた。



 ハァハァと息を荒立ててちゃなはその箱を見つめ、そっとその場に座り込んで箱を丁寧に開封していく。
 すると、仰々しく包装されたその中から、『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん  マジカルセンターツキミ衣装セット』と書かれた物が出てきた。

「こっ……こここ……ウヘヘ……」

 その目にはクマの様な物が浮かんでおり、淀んだ視界が妙に彼女の表情を崩す。
 その言動も何か怪しい。

 実は先日から彼女はずっと動画を見たまま寝ていない。
 貫徹をした後、その商品がずっと届くのを待っていたのだ。

 封を開き、衣装をさらっと持ち上げると、そこには動画にあったキャラクターの衣装と同じ衣装が映り込んだ。
 ちゃなの顔のニヤニヤが止まらない。

「これを……こうして……」

 待っていたと言わんばかりにちゃなはその衣装を探り始め、おもむろに着始めた。
 纏っていた服をぽいぽいと脱いでは放り投げ、ついには下着までその床へ転がっていく。

「よっ……えい……できた……!」

 するとそこには魔法少女の衣装を着たちゃなの姿があり、部屋に備え付けられた縦長のミラーが彼女の全身を映す。

「オオッホホホッホホ!!!」

 興奮したちゃなが奇妙な笑い声を発する。
 大きな胸が若干窮屈ではあるが、大体は丁度いい感じに着こなしている。
 鏡の前で一周し、その姿を万遍なく眺めるちゃなの顔はどこかご満悦の様だ。

「最後はあれをやるしか……ゴクリ……」

 すると突然ポージングし、顔を真っ赤にしながらちゃながその体を動かす。



「キラッっと参上マジカルチアーズ! センターツキミ! 今日もみんなでGOファイッ―――」



ビバリィ!!



「カハァッ!?」



 彼女の動きが止まり、突然の静けさが部屋に漂う。

 彼女の顔が急に真顔になると、その捻った体を普通に戻してそそくさと衣装を脱ぎ始めた。
 よく見るとその衣装の背面部が破れ、背中を留めるホックが全て外れていた。

 彼女は自分が着ていた服に着替えると、真顔のままその衣装をせっせと箱へ詰め込み封をする。
 その箱をまだ荷物の数が殆ど無い押し入れの奥深くへ押し込むと、その扉を静かに締めた。



「寝よ……」



 その日、ちゃなは嫌な思い出を忘れる為の様に、遅すぎる就寝へと入り込んだのだった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...