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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~なぁお前、伝説の剣なんだろ?~
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はぐれカラクラ族との戦いは本当に激戦だった。
軍隊と魔者との共同作戦、生身での空中戦。
人類史上初の試みの連続に、当事者の勇ですら終始振り回されたものだ。
ただ、それでいて失ったモノも多い。
魔者であろうと、情の湧いた相手が死ねば辛くなる。
それが例え数日の友だったのだとしても。
故に、その事実は勇の心に陰りを生んだ。
もう二度と友人を失いたくないという願いを叶えられなかったから。
いつか見た悲劇を再び目の当たりにしてしまったから。
でも、生まれたのは決して後悔や無念だけではない。
敢えて挙げるならば、嫉妬もである。
それもちゃなという相棒に対しての。
あの戦いにおいて、ちゃなの成長は目に見えて著しかった。
超高速で空を飛び、敵を瞬時に焼き切るなど常軌を逸していて。
もはやその力は魔剣使いどころか、現代人にとっても驚異的だ。
そんな才能という無限の可能性を見せつけられれば妬みもするだろう。
〝もしあんな力が自分にもあれば〟
〝もし才能があれば、苦労なんて無かったかもしれない〟
そう思わずにはいられないくらいに。
「俺にもっと才能があればなぁ……はぁ」
そんな悩ましい想いを口からも滑らせ、椅子に座らせた体を揺らす。
机に立てた頬杖を幾度も傾き変えて。
その姿はまるで恋にうら悩む乙女か。
あの戦い以降、勇はいつもこんな感じだ。
学校から帰っては、机の上に乗せた魔剣の前で呟き悩むという。
それだけ悶々としているのだろう。
加えて誰にも相談出来ない悩みだから魔剣に相談役となってもらっている。
魔剣もまた一種の相棒だからこその形である。
「なぁお前、伝説の剣なんだろ? なら俺が強くなる方法とか知ってるんじゃないのか?」
けれど当然、問いかけても答えが返って来る訳もない。
意思の様な物はあっても、実際に示すのは知識ではないから。
戦いの折に閃きはくれるが教えてくれる訳ではないのだ。
ただ、勇としてはそれでも充分だった。
聞いてくれるなら相手が何だって。
少なくとも、余計な言葉で返してくる友人よりはよっぽど。
「もし知ってるなら教えてくれよ。俺は一体どうしたら、皆を守れるくらいに強くなれるんだ?」
それだけ思い悩んでいるのだ。
自分は一体どこまで鍛えればいいのか、と。
今日この日まで色々と挑戦してきて。
魔剣使いとなって開いた伸びしろを上げ続けて来た。
それでも届かない、守れない。
そこで、いつか剣聖に言われた事が気にかかる。
〝【守る】とは、相応の力を持つ奴だけが使っていい言葉だ〟と。
ならその相応の力とは何なのか。
どこまで力を上げればいいのだろうか。
天井が全く見えないからこそ更に悩ましい。
それに、下手に力が伸び続けるからこそ際限を感じなくて。
どこまで成長したらいいのかもわからない。
だからずっとがむしゃらに鍛え上げ続けて来たのだけれど。
そんな努力も、才能の前には儚いもので。
先日のちゃなを前にして、改めてそう思い知らされた。
故に今、勇は壁にぶつかっている。
才能という、果てしなく大きく見える壁に。
「俺、このまま鍛え続けていいのかなぁ。本当に正しく成長出来てるのかな……」
でもきっと、その壁はそこまで大きくはないだろう。
勇は気付いていないのだ。
己の力もまた飛躍して成長している事に。
それも、あのちゃなが憧れ目指すほど強靭と。
そして何より、この二人の関係が重要だという事にも。
そう、今のちゃなとの関係はかつての親友と同じ。
互いを目標とし合う相棒となっているのである。
そうとは思いも寄らず、勇はなお悩みを重ねよう。
だが、これでいいのだ。
答えは真の意味でまだ誰も知らないのだから。
故に今は悩み、己の在り方を模索すればいい。
勇とちゃな。
この二人が今の時代の先駆者であるからこそ。
「せめて近道くらい教えてくれよ。なぁ、相棒さん」
そんな先駆者が悩みに悩んだ挙句、剣を指で突く。
何度も何度も、ゴトリゴトリと鈍い音を立てて揺らさせて。
その度に宝石がキラリと瞬き、まるで行為に反応しているかのよう。
あたかも「やめろ」と言わんばかりにチラチラと。
するとその途端――
「いってッ!?」
突如、小突いていた指に痛みが走る。
剣から小さな放電が放たれたのだ。
さしずめ魔剣からのお返し、と言った所か。
とはいえ、静電気現象と同程度の細やかなものだが。
「お前、やったなぁ~? コイツぅ~!」
するとたちまち、一人と一本の間で妙な攻防戦が始まる事に。
先の悩みは一体どこへ行ったのやら。
確かに魔剣は意思を持つのだろう。
こうして使用者に反応するくらいには。
だから今まで勇達の力になってくれた。
そしてきっとこれからも力となってくれるに違いない。
勇と魔剣【大地の楔】。
この関係もまたちゃなと同様の、心強い相棒と言うべき存在なのだから。
しかしこの時、勇は気付いていなかった。
そんな相棒との妙なやりとりに夢中で。
己が背にする部屋の扉。
僅かに開いたその隙間から、疑惑の眼が二つ覗いていた事に。
「どうしたんでしょうか、勇さん」
「なんて事無いわよ、思春期だもの」
「これが、思春期……!」
そして変な誤解が生まれていた事にも。
悩ましい想いが交錯する今日、十二月中旬。
果たして、勇達はそんな煩悩を振り払って新年を迎える事が出来るのだろうか。
悩み多き少年少女達の今年はまだまだ前途多難である。
軍隊と魔者との共同作戦、生身での空中戦。
人類史上初の試みの連続に、当事者の勇ですら終始振り回されたものだ。
ただ、それでいて失ったモノも多い。
魔者であろうと、情の湧いた相手が死ねば辛くなる。
それが例え数日の友だったのだとしても。
故に、その事実は勇の心に陰りを生んだ。
もう二度と友人を失いたくないという願いを叶えられなかったから。
いつか見た悲劇を再び目の当たりにしてしまったから。
でも、生まれたのは決して後悔や無念だけではない。
敢えて挙げるならば、嫉妬もである。
それもちゃなという相棒に対しての。
あの戦いにおいて、ちゃなの成長は目に見えて著しかった。
超高速で空を飛び、敵を瞬時に焼き切るなど常軌を逸していて。
もはやその力は魔剣使いどころか、現代人にとっても驚異的だ。
そんな才能という無限の可能性を見せつけられれば妬みもするだろう。
〝もしあんな力が自分にもあれば〟
〝もし才能があれば、苦労なんて無かったかもしれない〟
そう思わずにはいられないくらいに。
「俺にもっと才能があればなぁ……はぁ」
そんな悩ましい想いを口からも滑らせ、椅子に座らせた体を揺らす。
机に立てた頬杖を幾度も傾き変えて。
その姿はまるで恋にうら悩む乙女か。
あの戦い以降、勇はいつもこんな感じだ。
学校から帰っては、机の上に乗せた魔剣の前で呟き悩むという。
それだけ悶々としているのだろう。
加えて誰にも相談出来ない悩みだから魔剣に相談役となってもらっている。
魔剣もまた一種の相棒だからこその形である。
「なぁお前、伝説の剣なんだろ? なら俺が強くなる方法とか知ってるんじゃないのか?」
けれど当然、問いかけても答えが返って来る訳もない。
意思の様な物はあっても、実際に示すのは知識ではないから。
戦いの折に閃きはくれるが教えてくれる訳ではないのだ。
ただ、勇としてはそれでも充分だった。
聞いてくれるなら相手が何だって。
少なくとも、余計な言葉で返してくる友人よりはよっぽど。
「もし知ってるなら教えてくれよ。俺は一体どうしたら、皆を守れるくらいに強くなれるんだ?」
それだけ思い悩んでいるのだ。
自分は一体どこまで鍛えればいいのか、と。
今日この日まで色々と挑戦してきて。
魔剣使いとなって開いた伸びしろを上げ続けて来た。
それでも届かない、守れない。
そこで、いつか剣聖に言われた事が気にかかる。
〝【守る】とは、相応の力を持つ奴だけが使っていい言葉だ〟と。
ならその相応の力とは何なのか。
どこまで力を上げればいいのだろうか。
天井が全く見えないからこそ更に悩ましい。
それに、下手に力が伸び続けるからこそ際限を感じなくて。
どこまで成長したらいいのかもわからない。
だからずっとがむしゃらに鍛え上げ続けて来たのだけれど。
そんな努力も、才能の前には儚いもので。
先日のちゃなを前にして、改めてそう思い知らされた。
故に今、勇は壁にぶつかっている。
才能という、果てしなく大きく見える壁に。
「俺、このまま鍛え続けていいのかなぁ。本当に正しく成長出来てるのかな……」
でもきっと、その壁はそこまで大きくはないだろう。
勇は気付いていないのだ。
己の力もまた飛躍して成長している事に。
それも、あのちゃなが憧れ目指すほど強靭と。
そして何より、この二人の関係が重要だという事にも。
そう、今のちゃなとの関係はかつての親友と同じ。
互いを目標とし合う相棒となっているのである。
そうとは思いも寄らず、勇はなお悩みを重ねよう。
だが、これでいいのだ。
答えは真の意味でまだ誰も知らないのだから。
故に今は悩み、己の在り方を模索すればいい。
勇とちゃな。
この二人が今の時代の先駆者であるからこそ。
「せめて近道くらい教えてくれよ。なぁ、相棒さん」
そんな先駆者が悩みに悩んだ挙句、剣を指で突く。
何度も何度も、ゴトリゴトリと鈍い音を立てて揺らさせて。
その度に宝石がキラリと瞬き、まるで行為に反応しているかのよう。
あたかも「やめろ」と言わんばかりにチラチラと。
するとその途端――
「いってッ!?」
突如、小突いていた指に痛みが走る。
剣から小さな放電が放たれたのだ。
さしずめ魔剣からのお返し、と言った所か。
とはいえ、静電気現象と同程度の細やかなものだが。
「お前、やったなぁ~? コイツぅ~!」
するとたちまち、一人と一本の間で妙な攻防戦が始まる事に。
先の悩みは一体どこへ行ったのやら。
確かに魔剣は意思を持つのだろう。
こうして使用者に反応するくらいには。
だから今まで勇達の力になってくれた。
そしてきっとこれからも力となってくれるに違いない。
勇と魔剣【大地の楔】。
この関係もまたちゃなと同様の、心強い相棒と言うべき存在なのだから。
しかしこの時、勇は気付いていなかった。
そんな相棒との妙なやりとりに夢中で。
己が背にする部屋の扉。
僅かに開いたその隙間から、疑惑の眼が二つ覗いていた事に。
「どうしたんでしょうか、勇さん」
「なんて事無いわよ、思春期だもの」
「これが、思春期……!」
そして変な誤解が生まれていた事にも。
悩ましい想いが交錯する今日、十二月中旬。
果たして、勇達はそんな煩悩を振り払って新年を迎える事が出来るのだろうか。
悩み多き少年少女達の今年はまだまだ前途多難である。
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