時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」

第十節 後日談 ~魔法少女の様に~

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※このお話は後日談につき、物語となんら関係はありませんので読み飛ばしても支障ありません。



///第十節 後日談 ~魔法少女の様に~///



 ロゴウとの戦いが終えてから翌々日、通学中にちゃなは心輝達に自分が空を飛んだ事を告白した。

「マジかよ……ついに空まで……」
「もう何でもありよね、次はどこに行くの? 海底? 宇宙?」
「ねぇねぇちゃなちゃん、今度私を空に連れてってよ!」
「海底にも宇宙にも行かないよ……それと空飛んだらあずーちゃん落ちて死んじゃうかもしれないよ? そうなったら助けられないよ?」

 あずーが白目で固まって立ち止まっている事に目もくれず、4人は歩きながら会話を続ける。

「これはあれだな……もう田中ちゃんは魔法少女と名乗ってもいいレベルだな」
「魔法少女……?」

 聞き馴れない言葉にちゃなは心輝に聞き返すと、待ってましたと言わんばかりに心輝がノリノリで話を続ける。

「田中ちゃあん……魔法少女を知らないのは女の子として罪だよ!?」
「え、ええ!?」

 すると心輝はおもむろにスマートフォンを取り出して何やら検索すると、ちゃなにその画面を見せる。
 そこには『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん』と書かれた文字がでかでかと表示されていた。

「まじかる……?」
「そう……魔法少女……それは女の子の憧れ……夢と希望……そして大きなお友達の切望」
「余計なのが1個混じってるんだけど?」

 瀬玲の一言を聞くと、心輝が彼女の顔を見て舌打ちする。
 それを聞いた瀬玲が顔をしかめ、勇が苦笑いを浮かべた。

「彼女達は魔法を使って世界を乱す悪人達と戦い、そして仲間と友情を育み……世界を救う……まさに至高の展開ッ!!」
「おおー……」
「さぁこれを見るんだ田中ちゃんっ!!」

 心輝がちゃなにその番組のプロモーション動画を見せると、食い入るようにちゃながその動画を見る。
 そこには煌びやかな衣装を纏った可愛い女の子達が空を舞い、時には戦い、華麗な姿を見せていた。

「か、かわいい……」
「だろぉ!? しかもその衣装がなんとコスプレ用に販売されているという……!!」

 ちゃなからスマートフォンを受け取ると再び検索を始め、再度ちゃなにその画面を見せつける。

 そこには『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん  マジカルセンターツキミ衣装セット15000円』と書かれた通販の頁が開かれていた。

「わぁー……これ本物の衣装なの?」
「まぁアニメに使われている衣装を象ったコスプレ衣装が売ってるだけなんだけどさ。 出来は凄いらしいぜ?」
「はわぁ……」

 そんな様子を遠くから眺める勇と瀬玲。

「……これでいいの?」
「俺はあんまり人の趣味にケチ付けたくないからなぁ」
「……次の戦闘の時、コスプレで田中さんが参戦したらどう思う訳?」
「う……ま、まあ俺の目のやりどころが困るだけ……多分」



―――正直それは困る―――



 でもはっきり言えない勇は彼女達のやり取りをただ見守る事しか出来なかった。



 その日の夜、キッチンで洗い物をしている勇の母親にちゃなが不意に話し掛ける。

「あ、あのお母さん……?」
「ん? どうしたのちゃなちゃん?」

 もじもじしながら言いあぐねいているちゃなの仕草にキュンとする勇の母親。

「あの……ですね……この家の住所って教えてもらっていいですか?」
「あぁ、いいわよ。 ほら、そこの封筒に書いてあるのがそうだから……それ使っていいわよ」
「あ、ありがとうございます」

 母親に言われた封筒に書かれた住所を必死に打っているのだろう、ちゃなはスマートフォンを触りながら何かを行っている様だった。



 翌日、勇達の家に一箱の荷物が届く。
 「OMOUZON」と書かれたその箱には「藤咲 茶奈様」と書かれた宛先が貼られていた。

「あれ……なんで苗字が藤咲なんだ田中さん……」

 恐らく家を間違えない様にという優しさの表れだろうか、少し嬉しいような気分になる勇であった。

「田中さん、荷物届いてるよ?」

 勇が声を上げてちゃなを呼ぶと、ドタドタと足音を立ててちゃなが自分の部屋からすごい勢いで駆け降りてきた。

「ああああありがとうございますもらいます!!」

 勇が持ち上げたその箱をバシッと音を立てて受け取ると、再び猛ダッシュで自分の部屋に戻っていく。
 入った途端、扉に備え付けられた鍵がバチッと閉まり、締めたのを確認したのかドアノブがガチャガチャと音を立てて揺れた。

 勇はその出来事を前にポカンと呆然し立ち尽くしていた。



 ハァハァと息を荒立ててちゃなはその箱を見つめ、そっとその場に座り込んで箱を丁寧に開封していく。
 すると、仰々しく包装されたその中から、『魔法少女マジカルチアーズつきみちゃん  マジカルセンターツキミ衣装セット』と書かれた物が出てきた。

「こっ……こここ……ウヘヘ……」

 その目にはクマの様な物が浮かんでおり、淀んだ視界が妙に彼女の表情を崩す。
 その言動も何か怪しい。

 実は先日から彼女はずっと動画を見たまま寝ていない。
 貫徹をした後、その商品がずっと届くのを待っていたのだ。

 封を開き、衣装をさらっと持ち上げると、そこには動画にあったキャラクターの衣装と同じ衣装が映り込んだ。
 ちゃなの顔のニヤニヤが止まらない。

「これを……こうして……」

 待っていたと言わんばかりにちゃなはその衣装を探り始め、おもむろに着始めた。
 纏っていた服をぽいぽいと脱いでは放り投げ、ついには下着までその床へ転がっていく。

「よっ……えい……できた……!」

 するとそこには魔法少女の衣装を着たちゃなの姿があり、部屋に備え付けられた縦長のミラーが彼女の全身を映す。

「オオッホホホッホホ!!!」

 興奮したちゃなが奇妙な笑い声を発する。
 大きな胸が若干窮屈ではあるが、大体は丁度いい感じに着こなしている。
 鏡の前で一周し、その姿を万遍なく眺めるちゃなの顔はどこかご満悦の様だ。

「最後はあれをやるしか……ゴクリ……」

 すると突然ポージングし、顔を真っ赤にしながらちゃながその体を動かす。



「キラッっと参上マジカルチアーズ! センターツキミ! 今日もみんなでGOファイッ―――」



ビバリィ!!



「カハァッ!?」



 彼女の動きが止まり、突然の静けさが部屋に漂う。

 彼女の顔が急に真顔になると、その捻った体を普通に戻してそそくさと衣装を脱ぎ始めた。
 よく見るとその衣装の背面部が破れ、背中を留めるホックが全て外れていた。

 彼女は自分が着ていた服に着替えると、真顔のままその衣装をせっせと箱へ詰め込み封をする。
 その箱をまだ荷物の数が殆ど無い押し入れの奥深くへ押し込むと、その扉を静かに締めた。



「寝よ……」



 その日、ちゃなは嫌な思い出を忘れる為の様に、遅すぎる就寝へと入り込んだのだった。


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