時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」

~歯がゆいって言うのもわかって~

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 もうすぐ冬休みがやってくる。
 学生も就業者もが待ち望む長期休暇が。
 それも数多くのイベントと共に。

 だからこそ浮かれずにはいられない。
 今年最後をより良く締めくくる為に、誰しもが夢見る事だろう。

 例えば、クリスマスはどうやって過ごすか、とか。

 中には友人と夜通し遊び回る者だっている。
 家族や親戚、近所とパーティを催す事もあるかもしれない。

 なら蜜月な恋人が居れば、共に愉しむ事もあるだろう。

 話題を欲しがる者ほど、そういった行事に積極的で。
 若者ならば更に顕著と言えよう。
 そして、その理屈は決して勇達も例外とはならない。



 そう、この時期がやってくれば嫌が応にも期待してしまうというもの。
 特に、こんなシチュエーションが訪れてしまえばきっと、誰だって。



「ごめんね、いきなりで」

「いや、俺は部活無いから構わないけど」

 今日この日、勇は瀬玲と二人きりで帰路に就いていた。
 ふと瀬玲から「今日一緒に帰らない?」と誘われた事が発端となって。

「でもセリはいいのか? 部活あるだろ」

「いいのいいの、そこまで本気って訳じゃないし。この時期で袴とか寒くてやってらんない」

「それなんで弓道選んだんだよ……」

 もちろん意図はわからないままだ。
 誘った理由は頑なに話してくれなくて。

 でもどうやら何か相談事はあるらしい。
 なのでちょっとショッピングモールまで一緒に来て欲しいのだとか。
 きっと学校では話せない内容なのだろう。

 だからこそ勇の期待が弾む。
 もうすぐクリスマスだからという事もあって。

 お陰で、こう愚痴りつつも悪い気はしていない様だ。

「珍しいし、何となく面白そうだったから?」 
 
「じゃあ今は?」

「メンドクサいかな」

「だよな。セリらしい返しだと思った」

 いや、厳密に言えばこれが普通か。

 素っ気ない会話だけど、これが二人の日常で。
 それでいて意気投合し合っているのだろう。

 なので間も無く、瀬玲からの平手打ちが勇の肩へと飛ぶ事に。

 こんなスキンシップも慣れたものだ。
 微笑み混じりの舌打ちなんて、勇には可愛いとさえ感じてならない。

「ちょっと、肩硬過ぎない? なにこれ岩じゃん」

「俺はセリみたいにサボって無いしな」

「はーヤダヤダ、努力家の自慢はこれだから。私も岩になれって?」

「セリは今のままでいいと思うよ。そもそも俺に合わせる必要なんて無いだろ」

 こんな関係だからこそ、恋人同士だと間違われた事もある。
 きっと今も、周りからはそう見えているに違いない。

「んー……でも正直、助けになりたいって思う事はあるよ」

 ただ、瀬玲としては友人以上の想いがある事に間違いはない様だが。
 とはいえそれは決して愛情だとかいう感情などではなくて。

 そんな会話の中で、瀬玲が一冊のノートを取り出して差し出す。
 勇が休んでいた間の授業内容を書いたものだ。
 やはり人前で渡すのは憚れていたらしい。

「それってどういう事?」

「こんなガッコの手伝いとかじゃなくてさ。勇だけ戦わせるのはなんかなって思って。そっちで手伝えたらなぁなんて思う事もあるワケ」

「俺一人で戦ってる訳じゃないよ。田中さんだって居るし」

「それはわかってるケド……」

 勇もそれとなくノートを受け取り、手早く鞄へ仕舞う。
 受け取った当人もやはり恥ずかしかった様だ。
 調子に乗ってデコり過ぎたブツだから尚の事。

 けれど、先程までの緩みはもう顔から消えている。
 勇としてはあまり面白くない話題だったからこそ。

「それに、もしセリが戦いに参加しても守り切れる自信が無い。俺はまだ弱いからさ」

「それわかんないじゃん。いきなり私の方が強くなる可能性だってあるんでしょ?」

「まぁそれはそうだけど……俺はそれでも、皆には戦って欲しくないかな」

 例え心が強くなったとはいえ、仲間の死は堪えるもので。
 だから先日の戦いでの悲しみはまだ勇の心に引っ掛かったままだ。

 仲間を守れるくらいの強さには至っていない。
 どこまで強くなればいいのかわからない。
 そんな責任感と重圧と、自分の強さへの自信の無さが拍車を掛ける。
 悲しみを引っ掛ける釣り針を長く長くしてしまう程に。

 それ故の想いがあったからこそ、瀬玲の願いを否定した。
 単に、また大切なともだちを失いたくないからこそ。

「ま、アンタがそう言うならいいけどさ。だから歯がゆいって言うのもわかって?」

「気持ちだけは受け取るよ。ノート、ありがとな」

「ん、じゃあコーヒー奢ってもらう事で許す。あと相談に乗ってくれたらなおOK」

 だがこれは所詮、勇の一方的な押し付けに過ぎない。
 故に、瀬玲はこう言うも内心ではきっと納得していないだろう。

 ただ勇もそれがわかった上で応じている。
 同時に、瀬玲がこれ以上踏み込まないという事も知ってて。

 この関係性を保っている限り、二人は恋人になれない。
 いや、むしろそうなるつもりなんて無いのだろう。
 こうして本音で言い合える友人関係を壊したくないから。



 そんな今の関係性が最も心地良いと思えている二人だからこそ。



 だから二人はまた笑顔に戻れるのだ。
 鼻で笑って、叩き合って、愚痴り合って。
 そしてまた本音をぶつけ合う。

 それが二人にとっての都合の良い関係だから。

「で、その相談って?」

「それは後で話す」

 もっとも、こうしてお預けされる今の勇に限っては例外だが。
 この状況から〝本当に一歩踏み出して来たらどうしよう〟なんて期待を抱かずにはいられない。

 その所為か、顔には照れの混じったニヤケが浮かぶ。
 万が一など無いとはわかっていても、正直者にはもう止めようがないらしい。

「なにニヤけてんの~? 変な想像してない?」

「お前が変に溜めるからだろ……何なら帰るけど」

「待って、せめて話だけ聞いてホント」

「仕方ないなぁ~……」

 なので、こんな言葉で返すが内心は嬉しい。
 特に、物珍しい瀬玲の下手具合が見れたのは儲けものだった様だ。
 
 そんな中、二人のショッピングモールが姿を現す。
 目指すは店内にあるコーヒーショップ【スターブーケス】。
 誰もが気軽と会話に華を咲かせられる憩いの場だ。

 果たしてそこで待ち受ける展開とは。
 瀬玲の相談とは如何に。



 季節は冬だが気持ちは春。
 エウリィに続き、瀬玲という穴馬ダークホース参入は有り得るのだろうか。

 なお、ちゃなは当人に興味が無さそうなので諦めた模様。


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