317 / 1,197
第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~歯がゆいって言うのもわかって~
しおりを挟む
もうすぐ冬休みがやってくる。
学生も就業者もが待ち望む長期休暇が。
それも数多くのイベントと共に。
だからこそ浮かれずにはいられない。
今年最後をより良く締めくくる為に、誰しもが夢見る事だろう。
例えば、クリスマスはどうやって過ごすか、とか。
中には友人と夜通し遊び回る者だっている。
家族や親戚、近所とパーティを催す事もあるかもしれない。
なら蜜月な恋人が居れば、共に愉しむ事もあるだろう。
話題を欲しがる者ほど、そういった行事に積極的で。
若者ならば更に顕著と言えよう。
そして、その理屈は決して勇達も例外とはならない。
そう、この時期がやってくれば嫌が応にも期待してしまうというもの。
特に、こんなシチュエーションが訪れてしまえばきっと、誰だって。
「ごめんね、いきなりで」
「いや、俺は部活無いから構わないけど」
今日この日、勇は瀬玲と二人きりで帰路に就いていた。
ふと瀬玲から「今日一緒に帰らない?」と誘われた事が発端となって。
「でもセリはいいのか? 部活あるだろ」
「いいのいいの、そこまで本気って訳じゃないし。この時期で袴とか寒くてやってらんない」
「それなんで弓道選んだんだよ……」
もちろん意図はわからないままだ。
誘った理由は頑なに話してくれなくて。
でもどうやら何か相談事はあるらしい。
なのでちょっとショッピングモールまで一緒に来て欲しいのだとか。
きっと学校では話せない内容なのだろう。
だからこそ勇の期待が弾む。
もうすぐクリスマスだからという事もあって。
お陰で、こう愚痴りつつも悪い気はしていない様だ。
「珍しいし、何となく面白そうだったから?」
「じゃあ今は?」
「メンドクサいかな」
「だよな。セリらしい返しだと思った」
いや、厳密に言えばこれが普通か。
素っ気ない会話だけど、これが二人の日常で。
それでいて意気投合し合っているのだろう。
なので間も無く、瀬玲からの平手打ちが勇の肩へと飛ぶ事に。
こんなスキンシップも慣れたものだ。
微笑み混じりの舌打ちなんて、勇には可愛いとさえ感じてならない。
「ちょっと、肩硬過ぎない? なにこれ岩じゃん」
「俺はセリみたいにサボって無いしな」
「はーヤダヤダ、努力家の自慢はこれだから。私も岩になれって?」
「セリは今のままでいいと思うよ。そもそも俺に合わせる必要なんて無いだろ」
こんな関係だからこそ、恋人同士だと間違われた事もある。
きっと今も、周りからはそう見えているに違いない。
「んー……でも正直、助けになりたいって思う事はあるよ」
ただ、瀬玲としては友人以上の想いがある事に間違いはない様だが。
とはいえそれは決して愛情だとかいう感情などではなくて。
そんな会話の中で、瀬玲が一冊のノートを取り出して差し出す。
勇が休んでいた間の授業内容を書いたものだ。
やはり人前で渡すのは憚れていたらしい。
「それってどういう事?」
「こんなガッコの手伝いとかじゃなくてさ。勇だけ戦わせるのはなんかなって思って。そっちで手伝えたらなぁなんて思う事もあるワケ」
「俺一人で戦ってる訳じゃないよ。田中さんだって居るし」
「それはわかってるケド……」
勇もそれとなくノートを受け取り、手早く鞄へ仕舞う。
受け取った当人もやはり恥ずかしかった様だ。
調子に乗って飾り過ぎたブツだから尚の事。
けれど、先程までの緩みはもう顔から消えている。
勇としてはあまり面白くない話題だったからこそ。
「それに、もしセリが戦いに参加しても守り切れる自信が無い。俺はまだ弱いからさ」
「それわかんないじゃん。いきなり私の方が強くなる可能性だってあるんでしょ?」
「まぁそれはそうだけど……俺はそれでも、皆には戦って欲しくないかな」
例え心が強くなったとはいえ、仲間の死は堪えるもので。
だから先日の戦いでの悲しみはまだ勇の心に引っ掛かったままだ。
仲間を守れるくらいの強さには至っていない。
どこまで強くなればいいのかわからない。
そんな責任感と重圧と、自分の強さへの自信の無さが拍車を掛ける。
悲しみを引っ掛ける釣り針を長く長くしてしまう程に。
それ故の想いがあったからこそ、瀬玲の願いを否定した。
単に、また大切な人を失いたくないからこそ。
「ま、アンタがそう言うならいいけどさ。だから歯がゆいって言うのもわかって?」
「気持ちだけは受け取るよ。ノート、ありがとな」
「ん、じゃあコーヒー奢ってもらう事で許す。あと相談に乗ってくれたらなおOK」
だがこれは所詮、勇の一方的な押し付けに過ぎない。
故に、瀬玲はこう言うも内心ではきっと納得していないだろう。
ただ勇もそれがわかった上で応じている。
同時に、瀬玲がこれ以上踏み込まないという事も知ってて。
この関係性を保っている限り、二人は恋人になれない。
いや、むしろそうなるつもりなんて無いのだろう。
こうして本音で言い合える友人関係を壊したくないから。
そんな今の関係性が最も心地良いと思えている二人だからこそ。
だから二人はまた笑顔に戻れるのだ。
鼻で笑って、叩き合って、愚痴り合って。
そしてまた本音をぶつけ合う。
それが二人にとっての都合の良い関係だから。
「で、その相談って?」
「それは後で話す」
もっとも、こうしてお預けされる今の勇に限っては例外だが。
この状況から〝本当に一歩踏み出して来たらどうしよう〟なんて期待を抱かずにはいられない。
その所為か、顔には照れの混じったニヤケが浮かぶ。
万が一など無いとはわかっていても、正直者にはもう止めようがないらしい。
「なにニヤけてんの~? 変な想像してない?」
「お前が変に溜めるからだろ……何なら帰るけど」
「待って、せめて話だけ聞いてホント」
「仕方ないなぁ~……」
なので、こんな言葉で返すが内心は嬉しい。
特に、物珍しい瀬玲の下手具合が見れたのは儲けものだった様だ。
そんな中、二人のショッピングモールが姿を現す。
目指すは店内にあるコーヒーショップ【スターブーケス】。
誰もが気軽と会話に華を咲かせられる憩いの場だ。
果たしてそこで待ち受ける展開とは。
瀬玲の相談とは如何に。
季節は冬だが気持ちは春。
エウリィに続き、瀬玲という穴馬参入は有り得るのだろうか。
なお、ちゃなは当人に興味が無さそうなので諦めた模様。
学生も就業者もが待ち望む長期休暇が。
それも数多くのイベントと共に。
だからこそ浮かれずにはいられない。
今年最後をより良く締めくくる為に、誰しもが夢見る事だろう。
例えば、クリスマスはどうやって過ごすか、とか。
中には友人と夜通し遊び回る者だっている。
家族や親戚、近所とパーティを催す事もあるかもしれない。
なら蜜月な恋人が居れば、共に愉しむ事もあるだろう。
話題を欲しがる者ほど、そういった行事に積極的で。
若者ならば更に顕著と言えよう。
そして、その理屈は決して勇達も例外とはならない。
そう、この時期がやってくれば嫌が応にも期待してしまうというもの。
特に、こんなシチュエーションが訪れてしまえばきっと、誰だって。
「ごめんね、いきなりで」
「いや、俺は部活無いから構わないけど」
今日この日、勇は瀬玲と二人きりで帰路に就いていた。
ふと瀬玲から「今日一緒に帰らない?」と誘われた事が発端となって。
「でもセリはいいのか? 部活あるだろ」
「いいのいいの、そこまで本気って訳じゃないし。この時期で袴とか寒くてやってらんない」
「それなんで弓道選んだんだよ……」
もちろん意図はわからないままだ。
誘った理由は頑なに話してくれなくて。
でもどうやら何か相談事はあるらしい。
なのでちょっとショッピングモールまで一緒に来て欲しいのだとか。
きっと学校では話せない内容なのだろう。
だからこそ勇の期待が弾む。
もうすぐクリスマスだからという事もあって。
お陰で、こう愚痴りつつも悪い気はしていない様だ。
「珍しいし、何となく面白そうだったから?」
「じゃあ今は?」
「メンドクサいかな」
「だよな。セリらしい返しだと思った」
いや、厳密に言えばこれが普通か。
素っ気ない会話だけど、これが二人の日常で。
それでいて意気投合し合っているのだろう。
なので間も無く、瀬玲からの平手打ちが勇の肩へと飛ぶ事に。
こんなスキンシップも慣れたものだ。
微笑み混じりの舌打ちなんて、勇には可愛いとさえ感じてならない。
「ちょっと、肩硬過ぎない? なにこれ岩じゃん」
「俺はセリみたいにサボって無いしな」
「はーヤダヤダ、努力家の自慢はこれだから。私も岩になれって?」
「セリは今のままでいいと思うよ。そもそも俺に合わせる必要なんて無いだろ」
こんな関係だからこそ、恋人同士だと間違われた事もある。
きっと今も、周りからはそう見えているに違いない。
「んー……でも正直、助けになりたいって思う事はあるよ」
ただ、瀬玲としては友人以上の想いがある事に間違いはない様だが。
とはいえそれは決して愛情だとかいう感情などではなくて。
そんな会話の中で、瀬玲が一冊のノートを取り出して差し出す。
勇が休んでいた間の授業内容を書いたものだ。
やはり人前で渡すのは憚れていたらしい。
「それってどういう事?」
「こんなガッコの手伝いとかじゃなくてさ。勇だけ戦わせるのはなんかなって思って。そっちで手伝えたらなぁなんて思う事もあるワケ」
「俺一人で戦ってる訳じゃないよ。田中さんだって居るし」
「それはわかってるケド……」
勇もそれとなくノートを受け取り、手早く鞄へ仕舞う。
受け取った当人もやはり恥ずかしかった様だ。
調子に乗って飾り過ぎたブツだから尚の事。
けれど、先程までの緩みはもう顔から消えている。
勇としてはあまり面白くない話題だったからこそ。
「それに、もしセリが戦いに参加しても守り切れる自信が無い。俺はまだ弱いからさ」
「それわかんないじゃん。いきなり私の方が強くなる可能性だってあるんでしょ?」
「まぁそれはそうだけど……俺はそれでも、皆には戦って欲しくないかな」
例え心が強くなったとはいえ、仲間の死は堪えるもので。
だから先日の戦いでの悲しみはまだ勇の心に引っ掛かったままだ。
仲間を守れるくらいの強さには至っていない。
どこまで強くなればいいのかわからない。
そんな責任感と重圧と、自分の強さへの自信の無さが拍車を掛ける。
悲しみを引っ掛ける釣り針を長く長くしてしまう程に。
それ故の想いがあったからこそ、瀬玲の願いを否定した。
単に、また大切な人を失いたくないからこそ。
「ま、アンタがそう言うならいいけどさ。だから歯がゆいって言うのもわかって?」
「気持ちだけは受け取るよ。ノート、ありがとな」
「ん、じゃあコーヒー奢ってもらう事で許す。あと相談に乗ってくれたらなおOK」
だがこれは所詮、勇の一方的な押し付けに過ぎない。
故に、瀬玲はこう言うも内心ではきっと納得していないだろう。
ただ勇もそれがわかった上で応じている。
同時に、瀬玲がこれ以上踏み込まないという事も知ってて。
この関係性を保っている限り、二人は恋人になれない。
いや、むしろそうなるつもりなんて無いのだろう。
こうして本音で言い合える友人関係を壊したくないから。
そんな今の関係性が最も心地良いと思えている二人だからこそ。
だから二人はまた笑顔に戻れるのだ。
鼻で笑って、叩き合って、愚痴り合って。
そしてまた本音をぶつけ合う。
それが二人にとっての都合の良い関係だから。
「で、その相談って?」
「それは後で話す」
もっとも、こうしてお預けされる今の勇に限っては例外だが。
この状況から〝本当に一歩踏み出して来たらどうしよう〟なんて期待を抱かずにはいられない。
その所為か、顔には照れの混じったニヤケが浮かぶ。
万が一など無いとはわかっていても、正直者にはもう止めようがないらしい。
「なにニヤけてんの~? 変な想像してない?」
「お前が変に溜めるからだろ……何なら帰るけど」
「待って、せめて話だけ聞いてホント」
「仕方ないなぁ~……」
なので、こんな言葉で返すが内心は嬉しい。
特に、物珍しい瀬玲の下手具合が見れたのは儲けものだった様だ。
そんな中、二人のショッピングモールが姿を現す。
目指すは店内にあるコーヒーショップ【スターブーケス】。
誰もが気軽と会話に華を咲かせられる憩いの場だ。
果たしてそこで待ち受ける展開とは。
瀬玲の相談とは如何に。
季節は冬だが気持ちは春。
エウリィに続き、瀬玲という穴馬参入は有り得るのだろうか。
なお、ちゃなは当人に興味が無さそうなので諦めた模様。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる