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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~なかなかどうして面白そうではありませんか~
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皆の期待が勇の背に圧し掛かる。
これ以上無い責任感を伴って。
ただのクリスマスパーティ、開催有無程度の話なのだけれども。
そんなこんなで母親も去り、部屋に再び静寂が訪れて。
勇もさすがに机破壊にまで至れば落ち着きもする様だ。
ただもう壊れた机に感慨は無い。
意識を向けているのはもはやスマートフォンへのみ。
いつ来るかも知れない福留からの返信をただただ待つばかりである。
すると遂に待望の相手から連絡が。
ならばと颯爽と通話を受けては耳へと押し当てる。
期待と不安を抱いたままに。
「も、もしもし!」
『おや勇君、どうしたのですか? そんなに慌てて……』
そんな感情が焦りをも呼び込んだ様で。
口調はまるで緊張のそれそのもの。
だからか、応対する福留もなんだか少し頑なだ。
「まさかクリスマスとか年末年始は戦い、なんて言わないですよね……」
でも勇は今や藁にも縋る想い。
福留に運命を握られている状態にも等しいので、やっぱり気が気でない模様。
なのでこう尋ねる声はまるで子犬の様に弱々しいという。
で、それを聞いた福留からはと言えば。
『おや、誰に聞いたのでしょうか。ハハハ、よく当てましたね』
「だぁーーーーーーッ!!」
無情か必然か。
返って来た一言は勇の心を千切り飛ばす程に強烈で。
その所為か――今、勇は宙を舞っていた。
余りのショックで、跳ばずには居られなかったらしい。
そのままダイナミックな空中バック転でベッドにダイブである。
これによってまたしても騒音が生まれる訳だが、もう苦情は上がってこない。
母親はきっともう諦めたのだろう。
「ヒドイ、ヒドイよ福留さん、もう俺安心して生きていけないよ……」
『ハハハ、そうですか、それは大変ですねぇ。でも安心してください、今のはほんの冗談です』
「へっ?」
ただ、そんな仰天ムーブも徒労に消えた訳だけれども。
興奮し過ぎる余り、勇には今の返しが嘘とさえ思えたに違いない。
今のやりとりが只の福留の悪戯だと気付けなかったが故に。
『これくらいの嘘は見抜けないといけませんよ? それとも、それだけ何かに追い詰められていたのでしょうか?』
それにやはり福留は頼りにもなる。
事情こそ知らなさそうだが、勇の口調から大体は悟ったらしい。
『男子たるもの、如何なる事も堂々と対応出来ねば立つ瀬がありません。ですので、まずは落ち着きましょう。それだけの事が出来るくらいに、君は成長したのですから』
「は、はい……!」
そして励ましにも足る言葉が重圧をこれ以上無く和らげてくれる。
そんな今の一言がどれだけ勇にとって救いだったか。
『それで年末年始ですが、戦闘の予定はありません。例年通りに日常を過ごせると思います』
「そうなんですね。やった、やった……ッ!」
お陰で今、勇は完全に報われた。
障害が無かった事と、皆の想いに応えられそうなのと。
年末年始をゆっくりと過ごせるという安心感を得た事によって。
それが今、勇の心に勝利宣言をもたらした。
大きく両手を振り上げる程に強く、強く。
――だがここでも油断は禁物だ。
油断して後の流れに任せてしまえば、この間のフェノーダラ訪問の様になりかねない。
あの時は折角楽しみにしていたのに、急な戦いで予定を潰されてしまったから。
ならば今度は完璧に役目を果たして見せよう。
今の勇には何故かそんな新たな責任感が生まれていた。
「それなら福留さん、相談があるんです。俺、クリスマスパーティがやりたいんです!」
『ほぉ、それはまた急ですね。さしずめ、お友達の皆さんから任されたといった所でしょうか』
「そうなんですよぉ~……で、でも俺もやりたくて。折角だからエウリィさんとかカプロも呼びたい。アージさんやマヴォさん、ジョゾウさん達も」
『ふむ、それはそれはなかなかどうして面白そうではありませんか』
それに、福留もこんな前向きな話を否定するほど器量は狭くない。
むしろ勇と同様に乗り気の声色さえ返していて。
『実は私も莉那ちゃんにせがまれていましてね。なら盛大にやってしまいましょうか』
「さっすが福留さん、話わかるぅ!!」
『ハハハ。今年は色々ありましたから、その清算も兼ねてパーッと行きましょう』
お金持ちの福留がこうも言うのだ。
これなら勇だって期待せざるを得ない。
今までに貰ったお金を放出する事だって厭わないと思えるくらいに。
『でしたらまずは私の方で日取りをセッティング致しますので、調整が終わり次第連絡致しますねぇ。 勇君は学生メンバーの皆さんに企画決行の連絡をしておいてください』
「わかりましたっ!!」
こうもなればもう止まらない。
既に予定は決定事項。
福留がこうも言えばもはや現実味しか残らないだろう。
だからこそ勇はこう思わざるを得ない。
〝福留さんマジ天使!!〟と。
余りの悦びに、布団さえ抱き締めて興奮を体現する。
一体どんなパーティになるのだろうか。
皆はどれくらい楽しんでくれるだろうか。
そんな期待と歓びさえ交えて。
しかしこの時、勇は気付いていなかった。
そんな福留とのやりとりに夢中で。
己が背にする部屋の扉。
僅かに開いたその隙間から、疑惑の眼が二つ覗いていた事に。
「またどうしたんでしょうか、勇さん」
「なんて事無いわよ、これも思春期だもの」
「これも、思春期……!」
そして変な誤解がまた生まれていた事にも。
最強最高の同志を味方に付け、企画は突如として加速する。
それこそまさにロケットの如き急加速で。
果たして、勇の願いはどこまで叶うのか。
そして相談を引き受けた福留の思惑とは。
年末に向けて動き出す幾多もの思惑。
少年少女達の抱く夢はもう、打ち上げ花火の如く止まりそうも無い。
これ以上無い責任感を伴って。
ただのクリスマスパーティ、開催有無程度の話なのだけれども。
そんなこんなで母親も去り、部屋に再び静寂が訪れて。
勇もさすがに机破壊にまで至れば落ち着きもする様だ。
ただもう壊れた机に感慨は無い。
意識を向けているのはもはやスマートフォンへのみ。
いつ来るかも知れない福留からの返信をただただ待つばかりである。
すると遂に待望の相手から連絡が。
ならばと颯爽と通話を受けては耳へと押し当てる。
期待と不安を抱いたままに。
「も、もしもし!」
『おや勇君、どうしたのですか? そんなに慌てて……』
そんな感情が焦りをも呼び込んだ様で。
口調はまるで緊張のそれそのもの。
だからか、応対する福留もなんだか少し頑なだ。
「まさかクリスマスとか年末年始は戦い、なんて言わないですよね……」
でも勇は今や藁にも縋る想い。
福留に運命を握られている状態にも等しいので、やっぱり気が気でない模様。
なのでこう尋ねる声はまるで子犬の様に弱々しいという。
で、それを聞いた福留からはと言えば。
『おや、誰に聞いたのでしょうか。ハハハ、よく当てましたね』
「だぁーーーーーーッ!!」
無情か必然か。
返って来た一言は勇の心を千切り飛ばす程に強烈で。
その所為か――今、勇は宙を舞っていた。
余りのショックで、跳ばずには居られなかったらしい。
そのままダイナミックな空中バック転でベッドにダイブである。
これによってまたしても騒音が生まれる訳だが、もう苦情は上がってこない。
母親はきっともう諦めたのだろう。
「ヒドイ、ヒドイよ福留さん、もう俺安心して生きていけないよ……」
『ハハハ、そうですか、それは大変ですねぇ。でも安心してください、今のはほんの冗談です』
「へっ?」
ただ、そんな仰天ムーブも徒労に消えた訳だけれども。
興奮し過ぎる余り、勇には今の返しが嘘とさえ思えたに違いない。
今のやりとりが只の福留の悪戯だと気付けなかったが故に。
『これくらいの嘘は見抜けないといけませんよ? それとも、それだけ何かに追い詰められていたのでしょうか?』
それにやはり福留は頼りにもなる。
事情こそ知らなさそうだが、勇の口調から大体は悟ったらしい。
『男子たるもの、如何なる事も堂々と対応出来ねば立つ瀬がありません。ですので、まずは落ち着きましょう。それだけの事が出来るくらいに、君は成長したのですから』
「は、はい……!」
そして励ましにも足る言葉が重圧をこれ以上無く和らげてくれる。
そんな今の一言がどれだけ勇にとって救いだったか。
『それで年末年始ですが、戦闘の予定はありません。例年通りに日常を過ごせると思います』
「そうなんですね。やった、やった……ッ!」
お陰で今、勇は完全に報われた。
障害が無かった事と、皆の想いに応えられそうなのと。
年末年始をゆっくりと過ごせるという安心感を得た事によって。
それが今、勇の心に勝利宣言をもたらした。
大きく両手を振り上げる程に強く、強く。
――だがここでも油断は禁物だ。
油断して後の流れに任せてしまえば、この間のフェノーダラ訪問の様になりかねない。
あの時は折角楽しみにしていたのに、急な戦いで予定を潰されてしまったから。
ならば今度は完璧に役目を果たして見せよう。
今の勇には何故かそんな新たな責任感が生まれていた。
「それなら福留さん、相談があるんです。俺、クリスマスパーティがやりたいんです!」
『ほぉ、それはまた急ですね。さしずめ、お友達の皆さんから任されたといった所でしょうか』
「そうなんですよぉ~……で、でも俺もやりたくて。折角だからエウリィさんとかカプロも呼びたい。アージさんやマヴォさん、ジョゾウさん達も」
『ふむ、それはそれはなかなかどうして面白そうではありませんか』
それに、福留もこんな前向きな話を否定するほど器量は狭くない。
むしろ勇と同様に乗り気の声色さえ返していて。
『実は私も莉那ちゃんにせがまれていましてね。なら盛大にやってしまいましょうか』
「さっすが福留さん、話わかるぅ!!」
『ハハハ。今年は色々ありましたから、その清算も兼ねてパーッと行きましょう』
お金持ちの福留がこうも言うのだ。
これなら勇だって期待せざるを得ない。
今までに貰ったお金を放出する事だって厭わないと思えるくらいに。
『でしたらまずは私の方で日取りをセッティング致しますので、調整が終わり次第連絡致しますねぇ。 勇君は学生メンバーの皆さんに企画決行の連絡をしておいてください』
「わかりましたっ!!」
こうもなればもう止まらない。
既に予定は決定事項。
福留がこうも言えばもはや現実味しか残らないだろう。
だからこそ勇はこう思わざるを得ない。
〝福留さんマジ天使!!〟と。
余りの悦びに、布団さえ抱き締めて興奮を体現する。
一体どんなパーティになるのだろうか。
皆はどれくらい楽しんでくれるだろうか。
そんな期待と歓びさえ交えて。
しかしこの時、勇は気付いていなかった。
そんな福留とのやりとりに夢中で。
己が背にする部屋の扉。
僅かに開いたその隙間から、疑惑の眼が二つ覗いていた事に。
「またどうしたんでしょうか、勇さん」
「なんて事無いわよ、これも思春期だもの」
「これも、思春期……!」
そして変な誤解がまた生まれていた事にも。
最強最高の同志を味方に付け、企画は突如として加速する。
それこそまさにロケットの如き急加速で。
果たして、勇の願いはどこまで叶うのか。
そして相談を引き受けた福留の思惑とは。
年末に向けて動き出す幾多もの思惑。
少年少女達の抱く夢はもう、打ち上げ花火の如く止まりそうも無い。
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