時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」

~訪れた者は人生が変わるでしょう~

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 一二月二三日。
 それは街が聖夜の前準備で慌ただしくなる日。
 とはいえ一般人には翌日が本番で、基本的には落ち着いていると言えよう。

 しかし真の仕掛け人ならばもう既に支度は整えているだろう。
 少なくとも、より多くのイベントを抱える者ならば尚の事。



 そしてそれはある二人の企画者とて同じ事である。



「福留さん、もはや後戻りは出来ませんよ?」

「えぇそうですね、勇君。ですが迷いもありません」

 その二人が並び立つのは、とある高層ビル中腹にある一フロア端。
 東京を見下ろせるその場所で、共にニヒルな笑みを浮かべて怪しげだ。
 どちらも何故か黒サングラスを掛け、ビシッと黒スーツを身に纏っているという。

「しかし、予算は平気なんですか?」

「場所を貸切るのに少し値は張りましたが、問題はありません。明日とは別に、明後日も別口のイベントを入れて契約したので。おかげで比較的安価で済みました」

「さすがですね」

 そんな雰囲気はどこかのマフィア風。
 でも何だか二人ともノリノリである。

 揃ってサングラスを上げる仕草は特にもう。

「勇君の方はどうです? 既に幾つかブツは届いている様ですが」

「差し支えありません。【OMOUZONネット通販】の提示期日は全てクリアです。今日中に全ての逸品がここに届くでしょう」

「よろしい。ただ管理は我々の仕事ですから、滞りなくよろしくお願い致します」

「任せてください。もう冬休みに入った俺に死角は有りません」

 それで勇が懐からスマートフォンを取り出して見せれば。
 購入履歴ページが福留のサングラスを瞬かせる事に。

 それを目の当たりにした福留からはニヤリとした笑みが零れる。

「ほう、中々奮発したようですね。これは皆さんの反応が楽しみです」

「でしょう? 明日の為にならばもう金など惜しくは有りませんから」

「フフ、その思い切り……戦いと同じでとても切れ味が鋭い」

 それだけ二人には自信があるのだろう。
 翌日に行われる予定のクリスマスパーティの出来栄えには。



 そう、今二人が立つのはまさにその会場。
 なんと高層ビルの一フロアを丸ごと貸し切ったというのだ。



 たかがクリスマスパーティ、されどクリスマスパーティ。
 その規模はもはや当初の想定を遥かに凌駕している。

 なんという大規模企画か。
 でも確かにこれなら全ての対象者を入れても余裕だろう。
 これには二人の本気度が垣間見えてならない。

「そう思い切らさせたのは福留さんですよ? 俺は皆の想いに応えたかっただけですから。フフ」

「えぇ、ならばきっと報われるでしょう。フフフ……」

 その先に見えるのはもはや成功のみ。
 ここまでやって失敗など有り得はしない。

 だからこそ今、二人は高らかと笑う。
 なんだか怪しげに、高らかと笑う。

 ただ単に、明日のイベントへ訪れる者達の驚く顔を見たいが為に。



「明日、訪れた者は人生が変わる事でしょう。『本当に来てよかった』と……」



 全てにおいて抜かりはない。
 故にその自信は揺るがない。
 明日の為に、今日まで入念に準備を整えて来たのだから。

 この日、冬晴れ。
 二人の笑い声はそんな澄んだ青空に向けて消えていく。

 きっと明日も晴れるだろう。
 そんな希望と願望を乗せて。










 そして来たるべき翌日、二四日。
 待ちに待った時が遂にやってきた。
 勇&福留プレゼンツ、大規模クリスマスパーティ開催の時が。

 とはいえ今は開始まで、まだあと一時間と早めの時刻。
 それまでの準備で会場はまだまだ慌ただしい。
 多くのスタッフが歩き回り、食器や調理器具を並べるなどで。

 その中で勇と福留が相変わらずのスーツ姿でポツリと立つ。
 どうやらこれ、今日の為の正装だったらしい。
 首元にはネクタイの代わりに赤リボンと、とてもチャーミングである。

 なおサングラスはもう掛けていない。
 さすがにやっぱり怪し過ぎたらしい。
 それに、誰かが見てもわからなければここに立つ意味は無いので。

「福留さん、もうすぐ第一陣が来るそうです。今ビルに着いたって」

「おぉ、なかなかお早めですね。開始まで退屈させないかがいささか不安です」

 というのも、二人には参加者の歓迎という役目もあるから。
 受付係も別で居るけれど、知り合いが迎えねば落ち着けないだろう。
 なのでこうして参加者を待ち構えているという訳だ。

「そういえばアージさんとマヴォさんはやはり来られないそうです。まだマヴォさんには養生が必要なのだそうで」

「そうかぁ残念。でもマヴォさん、昨日訓練室でトレーニングしてたはずなんだけどなぁ」

「まぁ体のいい断り理由なのでしょう。そのマヴォさんに浮かれさせたくないが為の」

「あーなるほど。なら必要なのは養生じゃなくて矯正かな?」

 ただ残念ながら全ての知り合いを呼ぶ事は叶わなかった。
 アージとマヴォもだが、ジョゾウ達カラクラ精鋭もまた同様に。

 やはり価値観の違いもあれば、事に挑む姿勢も異なるのだろう。
 戦いに明け暮れて、それが普通になった者達には祭りなんて縁も無いだろうから。
 それにまだ人とも馴れ合って浅いから不安もあるのかもしれない。

 だから今はまだ叶わなくても仕方がない。
 いずれ今以上に打ち解ける事が出来たなら、その時に騒げばいいだけだ。
 またこんなパーティを催せるかどうかはわからないけれど。

「それでも開催する事に意味がありますから、俺はこれでもいいって思いますよ」

「えぇそうですね。是非とも最高のパーティにしましょう。来なかった方が羨むくらいにねぇ」

 そんな想いで今日に挑む。
 訪れた人が後悔しない様に。
 皆に充分楽しんで貰う為に。

 今日の企画はそれだけ、二人の熱意がより強く籠もっている。
 だからか、今の二人の背筋は自信に満ち溢れんばかりに伸び上がっていた。


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