時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
322 / 1,197
第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」

~訪れた者は人生が変わるでしょう~

しおりを挟む
 一二月二三日。
 それは街が聖夜の前準備で慌ただしくなる日。
 とはいえ一般人には翌日が本番で、基本的には落ち着いていると言えよう。

 しかし真の仕掛け人ならばもう既に支度は整えているだろう。
 少なくとも、より多くのイベントを抱える者ならば尚の事。



 そしてそれはある二人の企画者とて同じ事である。



「福留さん、もはや後戻りは出来ませんよ?」

「えぇそうですね、勇君。ですが迷いもありません」

 その二人が並び立つのは、とある高層ビル中腹にある一フロア端。
 東京を見下ろせるその場所で、共にニヒルな笑みを浮かべて怪しげだ。
 どちらも何故か黒サングラスを掛け、ビシッと黒スーツを身に纏っているという。

「しかし、予算は平気なんですか?」

「場所を貸切るのに少し値は張りましたが、問題はありません。明日とは別に、明後日も別口のイベントを入れて契約したので。おかげで比較的安価で済みました」

「さすがですね」

 そんな雰囲気はどこかのマフィア風。
 でも何だか二人ともノリノリである。

 揃ってサングラスを上げる仕草は特にもう。

「勇君の方はどうです? 既に幾つかブツは届いている様ですが」

「差し支えありません。【OMOUZONネット通販】の提示期日は全てクリアです。今日中に全ての逸品がここに届くでしょう」

「よろしい。ただ管理は我々の仕事ですから、滞りなくよろしくお願い致します」

「任せてください。もう冬休みに入った俺に死角は有りません」

 それで勇が懐からスマートフォンを取り出して見せれば。
 購入履歴ページが福留のサングラスを瞬かせる事に。

 それを目の当たりにした福留からはニヤリとした笑みが零れる。

「ほう、中々奮発したようですね。これは皆さんの反応が楽しみです」

「でしょう? 明日の為にならばもう金など惜しくは有りませんから」

「フフ、その思い切り……戦いと同じでとても切れ味が鋭い」

 それだけ二人には自信があるのだろう。
 翌日に行われる予定のクリスマスパーティの出来栄えには。



 そう、今二人が立つのはまさにその会場。
 なんと高層ビルの一フロアを丸ごと貸し切ったというのだ。



 たかがクリスマスパーティ、されどクリスマスパーティ。
 その規模はもはや当初の想定を遥かに凌駕している。

 なんという大規模企画か。
 でも確かにこれなら全ての対象者を入れても余裕だろう。
 これには二人の本気度が垣間見えてならない。

「そう思い切らさせたのは福留さんですよ? 俺は皆の想いに応えたかっただけですから。フフ」

「えぇ、ならばきっと報われるでしょう。フフフ……」

 その先に見えるのはもはや成功のみ。
 ここまでやって失敗など有り得はしない。

 だからこそ今、二人は高らかと笑う。
 なんだか怪しげに、高らかと笑う。

 ただ単に、明日のイベントへ訪れる者達の驚く顔を見たいが為に。



「明日、訪れた者は人生が変わる事でしょう。『本当に来てよかった』と……」



 全てにおいて抜かりはない。
 故にその自信は揺るがない。
 明日の為に、今日まで入念に準備を整えて来たのだから。

 この日、冬晴れ。
 二人の笑い声はそんな澄んだ青空に向けて消えていく。

 きっと明日も晴れるだろう。
 そんな希望と願望を乗せて。










 そして来たるべき翌日、二四日。
 待ちに待った時が遂にやってきた。
 勇&福留プレゼンツ、大規模クリスマスパーティ開催の時が。

 とはいえ今は開始まで、まだあと一時間と早めの時刻。
 それまでの準備で会場はまだまだ慌ただしい。
 多くのスタッフが歩き回り、食器や調理器具を並べるなどで。

 その中で勇と福留が相変わらずのスーツ姿でポツリと立つ。
 どうやらこれ、今日の為の正装だったらしい。
 首元にはネクタイの代わりに赤リボンと、とてもチャーミングである。

 なおサングラスはもう掛けていない。
 さすがにやっぱり怪し過ぎたらしい。
 それに、誰かが見てもわからなければここに立つ意味は無いので。

「福留さん、もうすぐ第一陣が来るそうです。今ビルに着いたって」

「おぉ、なかなかお早めですね。開始まで退屈させないかがいささか不安です」

 というのも、二人には参加者の歓迎という役目もあるから。
 受付係も別で居るけれど、知り合いが迎えねば落ち着けないだろう。
 なのでこうして参加者を待ち構えているという訳だ。

「そういえばアージさんとマヴォさんはやはり来られないそうです。まだマヴォさんには養生が必要なのだそうで」

「そうかぁ残念。でもマヴォさん、昨日訓練室でトレーニングしてたはずなんだけどなぁ」

「まぁ体のいい断り理由なのでしょう。そのマヴォさんに浮かれさせたくないが為の」

「あーなるほど。なら必要なのは養生じゃなくて矯正かな?」

 ただ残念ながら全ての知り合いを呼ぶ事は叶わなかった。
 アージとマヴォもだが、ジョゾウ達カラクラ精鋭もまた同様に。

 やはり価値観の違いもあれば、事に挑む姿勢も異なるのだろう。
 戦いに明け暮れて、それが普通になった者達には祭りなんて縁も無いだろうから。
 それにまだ人とも馴れ合って浅いから不安もあるのかもしれない。

 だから今はまだ叶わなくても仕方がない。
 いずれ今以上に打ち解ける事が出来たなら、その時に騒げばいいだけだ。
 またこんなパーティを催せるかどうかはわからないけれど。

「それでも開催する事に意味がありますから、俺はこれでもいいって思いますよ」

「えぇそうですね。是非とも最高のパーティにしましょう。来なかった方が羨むくらいにねぇ」

 そんな想いで今日に挑む。
 訪れた人が後悔しない様に。
 皆に充分楽しんで貰う為に。

 今日の企画はそれだけ、二人の熱意がより強く籠もっている。
 だからか、今の二人の背筋は自信に満ち溢れんばかりに伸び上がっていた。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...