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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~望みに馳せて~
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勇がとうとう京都へと辿り着く。
たった一つの荷物、魔剣だけを携えて。
京都に発つ事はもうちゃなに伝えてある。
両親はまだ仕事中だからなのと、授業時刻は知っているから丁度良くて。
それに彼女ならきっと余計な事を言わずに送り出してくれるだろうから、と。
結果はそう予想した通りだった。
話もスムーズに、すぐに言伝を受け取ってくれて。
勇が帰って来ると思っていたからか残念そうだったけれども。
でも両親の様に小言を挟まないからずっと楽だろう。
おかげで道中は安心して寝る事も出来て。
アルライの里への旅路にも備える事が出来た。
なら後はどうにかして自力で現地へと向かうだけだ。
なお今回、勇は御味に力を借りるつもりなど無かった。
それというのもアージとマヴォの意思を尊重したいから。
御味を呼べば、きっと京都に訪れた理由を尋ねられる。
そうなれば魔剣を救う秘密がアルライの里にあるかもしれないと悟られるだろう。
それでは二人が勇だけに伝えようとした意味が無くなってしまう。
だから今日だけは自力で向かうつもりだったのだ。
こればかりは何にも譲れないと心に誓って。
ただその道中はと言えば、困難の一言に尽きる。
左足は相変わらずポンコツのままで。
夢中だった時は走れたけれど、今はまた役立たずに戻っているという。
おまけに里の場所を世間に悟られない様にとタクシーさえ使えない。
利用出来るのは精々公共バスくらいだ。
しかも最寄りから二つくらい離れた停留所で降りなければならない。
そして待っているのは山間の道と、片足で歩くにはとてもきつい道程で。
「やっと、着いたぁ……」
おかげで、アルライの里に辿り着いたのは夕刻に差し掛かった頃。
京都に着いたのは昼過ぎだったのだが。
随分と時間が掛かったものだ。
おまけに命力機動も使えないから疲労も困憊で。
冬にも拘らず汗だくに、それだけ必死で進んで来たのだろう。
だからかもうフラフラで、今にも倒れてしまいそう。
これでは里へ続く階段を登れきれるかどうか。
そう思い悩んでいた時だった。
勇の視界の先の階段から、大きな人影がのしのしと降りて来ていて。
「やはり勇殿じゃったか。随分とまぁ突然な来訪じゃのぉ」
そう、あの巨漢バノである。
勇の気配を察知して自ら降りて来た様だ。
こんな里の守護神っぷりは相変わらずらしい。
「どうもバノさん、お久しぶりです」
「堅苦しい挨拶なんざどうでもええ。随分と疲れとる様やないけ」
その守護神は身体状況も命力の色から読み取れるのだろう。
ならば当然、不自然な左足の不調理由も。
そんな勇の疲れ果てた姿を前にして、思わず口元が捻られる事に。
「その左足、相当に命力を酷使した様じゃのぉ。そんなんでここまで歩いて来たんか」
「はい、どうしても直接来たかったんで。はは……」
それでも勇にとってはこれ以上無い救いだ。
辿り着けたという実感が向こうから歩いて来たのだから。
そんな実感が不意に、棒となった右足をふらつかさせる。
たちまち堪らず体を揺らしては今にも倒れそうに。
しかしその時、空かさず巨大な掌が勇の体を支えていて。
「うわわっ!?」
更には勇の身体がヒョイと宙へ浮く事に。
そしてそのまま巨漢の肩の上へ。
なんとバノが勇を肩車してみせたのだ。
まるで子供を扱う様に軽々と。
でもこの巨漢にとっては勇も小さい子供となんら変わらない。
例え里を拓いてくれた恩人であろうとも関係無く。
だからこうして肩を貸すくらいはなんて事無いのだろう。
年頃の勇にとってはきっと恥ずかしい事この上無かったに違いない。
まさか高校生になってまで肩車されるとは思っても見なくて。
それでも、決して嫌では無かった。
バノの優しさがとても心地良かったから。
それになんだかここまでの頑張りが報われた様な気もしていて。
「で、ジヨヨんとこまで連れてきゃええんか?」
「はい、お願いします!」
おかげで返事がこうも弾む。
バノが堪らず顔をしかめてしまうくらいに。
どうやら興奮の余り、耳元に居るという事も忘れてしまったらしい。
そんなこんなで、勇が背負われたままアルライの里へ。
鳥居を潜るのは少し怖かったけれど、思ったより高かったので難もなく。
そうして現れた今までとは違う光景に、思わず感激の声もが溢れる事に。
まるで全てを見下ろしたかの様な景色だった。
里全体を奥まで一望出来るくらいの。
それだけバノの背が高かったから。
「あ、勇さんじゃねッスか!」
するとそんな中、聞いた事のある声が響く。
カプロである。
あの毛玉がいつの間にやら足元に。
どうやら背が高過ぎた所為で気付けなかった様だ。
「一週間ぶりッスねぇ! どうして来たんスか? 皆元気にしてるッスか?」
「カプロォ、足元でウロチョロするんじゃねっつう!!」
ただしそれはバノも同様に。
とはいえ相手がカプロとなれば遠慮はしない。
チョロチョロと走り回る毛玉に咆え上げては、その尻を爪先で蹴り上げていて。
「いでっ!? す、すまねッス!!」
これにはカプロも堪らずコロコロとのたうち回る事に。
相変わらずバノには頭が上がらないらしい。
当人が懲りない性格というのもあるのだけれども。
こうして毛玉も加え、背負われたままに勇が行く。
アージとマヴォに伝えられた事を確かめる為に、ジヨヨ村長の下へと。
多くの絆に支えられて出来た道はまだ続く。
その先に見える希望の光は、果たして勇をどこまで導いてくれるのだろうか。
たった一つの荷物、魔剣だけを携えて。
京都に発つ事はもうちゃなに伝えてある。
両親はまだ仕事中だからなのと、授業時刻は知っているから丁度良くて。
それに彼女ならきっと余計な事を言わずに送り出してくれるだろうから、と。
結果はそう予想した通りだった。
話もスムーズに、すぐに言伝を受け取ってくれて。
勇が帰って来ると思っていたからか残念そうだったけれども。
でも両親の様に小言を挟まないからずっと楽だろう。
おかげで道中は安心して寝る事も出来て。
アルライの里への旅路にも備える事が出来た。
なら後はどうにかして自力で現地へと向かうだけだ。
なお今回、勇は御味に力を借りるつもりなど無かった。
それというのもアージとマヴォの意思を尊重したいから。
御味を呼べば、きっと京都に訪れた理由を尋ねられる。
そうなれば魔剣を救う秘密がアルライの里にあるかもしれないと悟られるだろう。
それでは二人が勇だけに伝えようとした意味が無くなってしまう。
だから今日だけは自力で向かうつもりだったのだ。
こればかりは何にも譲れないと心に誓って。
ただその道中はと言えば、困難の一言に尽きる。
左足は相変わらずポンコツのままで。
夢中だった時は走れたけれど、今はまた役立たずに戻っているという。
おまけに里の場所を世間に悟られない様にとタクシーさえ使えない。
利用出来るのは精々公共バスくらいだ。
しかも最寄りから二つくらい離れた停留所で降りなければならない。
そして待っているのは山間の道と、片足で歩くにはとてもきつい道程で。
「やっと、着いたぁ……」
おかげで、アルライの里に辿り着いたのは夕刻に差し掛かった頃。
京都に着いたのは昼過ぎだったのだが。
随分と時間が掛かったものだ。
おまけに命力機動も使えないから疲労も困憊で。
冬にも拘らず汗だくに、それだけ必死で進んで来たのだろう。
だからかもうフラフラで、今にも倒れてしまいそう。
これでは里へ続く階段を登れきれるかどうか。
そう思い悩んでいた時だった。
勇の視界の先の階段から、大きな人影がのしのしと降りて来ていて。
「やはり勇殿じゃったか。随分とまぁ突然な来訪じゃのぉ」
そう、あの巨漢バノである。
勇の気配を察知して自ら降りて来た様だ。
こんな里の守護神っぷりは相変わらずらしい。
「どうもバノさん、お久しぶりです」
「堅苦しい挨拶なんざどうでもええ。随分と疲れとる様やないけ」
その守護神は身体状況も命力の色から読み取れるのだろう。
ならば当然、不自然な左足の不調理由も。
そんな勇の疲れ果てた姿を前にして、思わず口元が捻られる事に。
「その左足、相当に命力を酷使した様じゃのぉ。そんなんでここまで歩いて来たんか」
「はい、どうしても直接来たかったんで。はは……」
それでも勇にとってはこれ以上無い救いだ。
辿り着けたという実感が向こうから歩いて来たのだから。
そんな実感が不意に、棒となった右足をふらつかさせる。
たちまち堪らず体を揺らしては今にも倒れそうに。
しかしその時、空かさず巨大な掌が勇の体を支えていて。
「うわわっ!?」
更には勇の身体がヒョイと宙へ浮く事に。
そしてそのまま巨漢の肩の上へ。
なんとバノが勇を肩車してみせたのだ。
まるで子供を扱う様に軽々と。
でもこの巨漢にとっては勇も小さい子供となんら変わらない。
例え里を拓いてくれた恩人であろうとも関係無く。
だからこうして肩を貸すくらいはなんて事無いのだろう。
年頃の勇にとってはきっと恥ずかしい事この上無かったに違いない。
まさか高校生になってまで肩車されるとは思っても見なくて。
それでも、決して嫌では無かった。
バノの優しさがとても心地良かったから。
それになんだかここまでの頑張りが報われた様な気もしていて。
「で、ジヨヨんとこまで連れてきゃええんか?」
「はい、お願いします!」
おかげで返事がこうも弾む。
バノが堪らず顔をしかめてしまうくらいに。
どうやら興奮の余り、耳元に居るという事も忘れてしまったらしい。
そんなこんなで、勇が背負われたままアルライの里へ。
鳥居を潜るのは少し怖かったけれど、思ったより高かったので難もなく。
そうして現れた今までとは違う光景に、思わず感激の声もが溢れる事に。
まるで全てを見下ろしたかの様な景色だった。
里全体を奥まで一望出来るくらいの。
それだけバノの背が高かったから。
「あ、勇さんじゃねッスか!」
するとそんな中、聞いた事のある声が響く。
カプロである。
あの毛玉がいつの間にやら足元に。
どうやら背が高過ぎた所為で気付けなかった様だ。
「一週間ぶりッスねぇ! どうして来たんスか? 皆元気にしてるッスか?」
「カプロォ、足元でウロチョロするんじゃねっつう!!」
ただしそれはバノも同様に。
とはいえ相手がカプロとなれば遠慮はしない。
チョロチョロと走り回る毛玉に咆え上げては、その尻を爪先で蹴り上げていて。
「いでっ!? す、すまねッス!!」
これにはカプロも堪らずコロコロとのたうち回る事に。
相変わらずバノには頭が上がらないらしい。
当人が懲りない性格というのもあるのだけれども。
こうして毛玉も加え、背負われたままに勇が行く。
アージとマヴォに伝えられた事を確かめる為に、ジヨヨ村長の下へと。
多くの絆に支えられて出来た道はまだ続く。
その先に見える希望の光は、果たして勇をどこまで導いてくれるのだろうか。
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