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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~働くという事、生きるという事~
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きっとカプロはずっと真実を伝えたかったのだろう。
今だけでなく、知り合ってから。
ホームステイの時だって。
でもそれは何よりも硬く禁じられていたから。
まだ小さい子供でさえ口を開いてはいけないと戒められるくらいに。
それでどんなに仲が良くても伝えられはしなかった。
だけど今ようやく伝える事が出来たのだ。
何もかもを曝け出した勇に応える事が出来たのだ。
だからこそ今、カプロは右腕を天へと一杯に伸ばしてその喜びを体現する。
立ち上がり、椅子に片足を掛け、指先までを立てて力強く。
「そして何を隠そうッ!! ボクはその伝承を受け継ぐバノ師匠の一番弟子なんッス!!」
ただ単に、こんな自慢がしたかったからこそ。
渾身の告白だった。
勇が驚愕する程に。
ジヨヨとバノが失笑する程に。
そしてこの無意味なポージングで呆れられる程に。
「なんやそのポーズは」
「【バニファイVI】のマイキャラ【グォーム】の勝利ポーズッス」
「まーたけったいな事ばっかり覚えて来よってからに……」
で、やりたい事を済ませたら粛々と椅子へ戻るという。
その何とも言えないシュールな姿に、驚いていた勇も今や無表情である。
ほんのちょっとだけ憐れみが見える感じの。
「って事はつまり、バノさんが魔剣を修理出来るって事ですか……!?」
「あぁ、出来るでなぁ。こちとら技術を奮って四三年のベテランよぉ」
「そうだったのか……!」
「で、ボクがその一番弟子ッス」
「あ、うん、それは今聞いた」
けれどそんなカプロと違い、バノの方はさすがに貫禄が見える。
大柄な体付きも鍛冶師だと言えば確かに頷けるもので。
それにカプロが買って帰ったお土産のチョイスもこれで納得がいく。
あの巨大な金槌はバノが鍛冶で使う為の物だったのだろう。
それに加えて性格も図太い上にしっかりしているから。
まさに職人と言わんばかりに。
ならもうこれで頼れない訳が無い。
だから勇も腕肘を腰に引かせて止まらない。
「よし! やった!」と堪らず歓びを露わにしていて。
そんな様子にバノも悪い気はしない様で、横にてニヤニヤとしながら見届ける姿が。
「にしても、カプロってもう働いてるんだな」
「勇さんそれ、さりげなくボクの事バカにしてないッスか?」
「あ、いやそういう訳じゃなく。俺達の世界じゃ働くのって俺くらいの歳からだからさ」
そんな気合い入れも収まると、ふとした疑問が口から零れる。
カプロが実はもう働いていたなんて思っても見なくて。
ただそれは勇がまだアルライの――『あちら側』の常識を知らないだけなのだけど。
「アルライの里じゃあ早くて五歳くらいから働くんや。親や職持ちに付いてのぉ。んで師匠に常識や知識、学問を教わりながら技術も学ぶんじゃ。じゃから働かん奴なんぞほぼおらん。プカ達だってもう働いとるぞ」
「そ、そうだったんだ……凄いな」
「凄かねぇ。当たり前の事じゃからの、そうしねぇと生きていけねぇんじゃあ」
『あちら側』は言わば現代で言う中世初期ほどの年代観を持っている。
だから学校に行くどころか文字を学ぶ暇さえ無い。
少しでも生産的な事をしなければ生きていく事が出来ないからだ。
それと比べればアルライの里はまだ文明的で。
戦いから切り離されているから、働く場所もあるし備蓄だってある。
働きながら勉学を学ぶというスタイルは時代柄らしく最適化された文化だと言えよう。
そんな事実を知ったからこそ、改めて現代が如何に恵まれているかわかる。
『あちら側』の様な世界ならスネカジリや生活保護者なんて生まれないだろうから。
困窮した世界だからこそ、例えどんなに劣っていても必要とされる事だろう。
そしてその中でカプロは魔剣修復という技術を学んでいた。
まさか求めた手段を持つ者がこうも間近に居たなどとは思うはずも無く。
故に勇は感謝を隠せない。
だからか笑顔でカプロの頭をポンポンと叩いていて。
その上でバノへと真剣な眼を向ける。
示された希望を相棒へと注いでもらう為に。
「バノさん、お願いします。【大地の楔】を修復してください! その為なら俺は何だってしますから!!」
「礼なんざ要らん。それがワシの役目じゃからのぉ。さぁてと、一仕事やったるけぇな」
「うぴぴ、最高の腕前を見せてやるッスよ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
バノ達もまた、そんな勇の熱意に応えない訳が無い。
転移で困窮する里を救ってくれた恩人に手を差し伸べないなど。
そんな恩義に報いる事もまた、彼等の常識の一つなのだから。
こうなればもう話は早かった。
机の上に置かれていた魔剣をバノ自身が大事に持ち上げては家を出て。
勇とカプロもまた一礼をしつつ後に続く。
そうして残されたそのジヨヨはと言えば、「ホホッ」と軽い笑いを上げていて。
「自信満々じゃがバノの奴、本格的な修復なんぞ十何年振りじゃろに。ま、なる様にしかならんしのぉ、上手く行くと……ええのぉ~~~」
ただ、その口からは不安を過らせる様な一言がゆるりと飛び出す事に。
勇達が既に退出した後なのが幸いといった所か。
しかしその緩さのままに欠伸を上げ、ぽてりと椅子に背を預ける。
どうやら事が大事でも、ジヨヨにとっては他人事の一環にしか過ぎない様だ。
今だけでなく、知り合ってから。
ホームステイの時だって。
でもそれは何よりも硬く禁じられていたから。
まだ小さい子供でさえ口を開いてはいけないと戒められるくらいに。
それでどんなに仲が良くても伝えられはしなかった。
だけど今ようやく伝える事が出来たのだ。
何もかもを曝け出した勇に応える事が出来たのだ。
だからこそ今、カプロは右腕を天へと一杯に伸ばしてその喜びを体現する。
立ち上がり、椅子に片足を掛け、指先までを立てて力強く。
「そして何を隠そうッ!! ボクはその伝承を受け継ぐバノ師匠の一番弟子なんッス!!」
ただ単に、こんな自慢がしたかったからこそ。
渾身の告白だった。
勇が驚愕する程に。
ジヨヨとバノが失笑する程に。
そしてこの無意味なポージングで呆れられる程に。
「なんやそのポーズは」
「【バニファイVI】のマイキャラ【グォーム】の勝利ポーズッス」
「まーたけったいな事ばっかり覚えて来よってからに……」
で、やりたい事を済ませたら粛々と椅子へ戻るという。
その何とも言えないシュールな姿に、驚いていた勇も今や無表情である。
ほんのちょっとだけ憐れみが見える感じの。
「って事はつまり、バノさんが魔剣を修理出来るって事ですか……!?」
「あぁ、出来るでなぁ。こちとら技術を奮って四三年のベテランよぉ」
「そうだったのか……!」
「で、ボクがその一番弟子ッス」
「あ、うん、それは今聞いた」
けれどそんなカプロと違い、バノの方はさすがに貫禄が見える。
大柄な体付きも鍛冶師だと言えば確かに頷けるもので。
それにカプロが買って帰ったお土産のチョイスもこれで納得がいく。
あの巨大な金槌はバノが鍛冶で使う為の物だったのだろう。
それに加えて性格も図太い上にしっかりしているから。
まさに職人と言わんばかりに。
ならもうこれで頼れない訳が無い。
だから勇も腕肘を腰に引かせて止まらない。
「よし! やった!」と堪らず歓びを露わにしていて。
そんな様子にバノも悪い気はしない様で、横にてニヤニヤとしながら見届ける姿が。
「にしても、カプロってもう働いてるんだな」
「勇さんそれ、さりげなくボクの事バカにしてないッスか?」
「あ、いやそういう訳じゃなく。俺達の世界じゃ働くのって俺くらいの歳からだからさ」
そんな気合い入れも収まると、ふとした疑問が口から零れる。
カプロが実はもう働いていたなんて思っても見なくて。
ただそれは勇がまだアルライの――『あちら側』の常識を知らないだけなのだけど。
「アルライの里じゃあ早くて五歳くらいから働くんや。親や職持ちに付いてのぉ。んで師匠に常識や知識、学問を教わりながら技術も学ぶんじゃ。じゃから働かん奴なんぞほぼおらん。プカ達だってもう働いとるぞ」
「そ、そうだったんだ……凄いな」
「凄かねぇ。当たり前の事じゃからの、そうしねぇと生きていけねぇんじゃあ」
『あちら側』は言わば現代で言う中世初期ほどの年代観を持っている。
だから学校に行くどころか文字を学ぶ暇さえ無い。
少しでも生産的な事をしなければ生きていく事が出来ないからだ。
それと比べればアルライの里はまだ文明的で。
戦いから切り離されているから、働く場所もあるし備蓄だってある。
働きながら勉学を学ぶというスタイルは時代柄らしく最適化された文化だと言えよう。
そんな事実を知ったからこそ、改めて現代が如何に恵まれているかわかる。
『あちら側』の様な世界ならスネカジリや生活保護者なんて生まれないだろうから。
困窮した世界だからこそ、例えどんなに劣っていても必要とされる事だろう。
そしてその中でカプロは魔剣修復という技術を学んでいた。
まさか求めた手段を持つ者がこうも間近に居たなどとは思うはずも無く。
故に勇は感謝を隠せない。
だからか笑顔でカプロの頭をポンポンと叩いていて。
その上でバノへと真剣な眼を向ける。
示された希望を相棒へと注いでもらう為に。
「バノさん、お願いします。【大地の楔】を修復してください! その為なら俺は何だってしますから!!」
「礼なんざ要らん。それがワシの役目じゃからのぉ。さぁてと、一仕事やったるけぇな」
「うぴぴ、最高の腕前を見せてやるッスよ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
バノ達もまた、そんな勇の熱意に応えない訳が無い。
転移で困窮する里を救ってくれた恩人に手を差し伸べないなど。
そんな恩義に報いる事もまた、彼等の常識の一つなのだから。
こうなればもう話は早かった。
机の上に置かれていた魔剣をバノ自身が大事に持ち上げては家を出て。
勇とカプロもまた一礼をしつつ後に続く。
そうして残されたそのジヨヨはと言えば、「ホホッ」と軽い笑いを上げていて。
「自信満々じゃがバノの奴、本格的な修復なんぞ十何年振りじゃろに。ま、なる様にしかならんしのぉ、上手く行くと……ええのぉ~~~」
ただ、その口からは不安を過らせる様な一言がゆるりと飛び出す事に。
勇達が既に退出した後なのが幸いといった所か。
しかしその緩さのままに欠伸を上げ、ぽてりと椅子に背を預ける。
どうやら事が大事でも、ジヨヨにとっては他人事の一環にしか過ぎない様だ。
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