405 / 1,197
第十三節「想い遠く 心の信 彼方へ放て」
~無情の光、想い遠く~
しおりを挟む
順調に走り続けた勇達のアルファーダは栃木へと入り、一般道へと降りていた。
その道を誘導する様に警察が道を作り彼らの補助を行う。
栃木県警はフェノーダラの件もあり、以前から勇達の事を認識している。
それに相まって福留の指示があったのだろう……勇達の進むべき道を素早く構築し、その道を開いていた。
「これならいけるか!?」
「間に合ってくれ……頼む……!!」
残り5分……そこでようやくフェノーダラまで直線の道へと到達する。
後はただ突っ切るのみ。
「よし、勇飛ばすぞ!!」
一気にアクセルを踏み込み高速道路と何ら変わらないスピードで駆け抜ける。
いつものコンビニを通り越え、とうとうフロントガラスにフェノーダラ城の姿が小さく映り込んだ。
「見えた!!」
「あと2分!!」
いつもの通行止めの道を越え、道がオフロードへと切り替わる。
エンジンが轟音を鳴らして高回転し、猛スピードで走っていく。
徐々にフェノーダラ城が近づき、その全貌を完全に捉えた。
「いけえええ!!」
だが、次の瞬間……アルファーダの前輪がバーストし、激しく車体が揺れた。
ガガガガッ!!
「うおお!?」
「うおあーーーッ!? 勇ぅーーー行けえーーーーーー!!」
それを聞いた途端勇は座席を吹き飛ばしながら飛び上がる。
間も無く地面に着地すると、力の限り大地を踏み付け駆け抜けていった。
その後方でアルファーダがバランスを崩し横転し、跳ねる様に転がっていく。
父親が座席を屈む様に頭を押さえた瞬間、エアバッグが展開されてその体を包む。
だが、弾けて飛んだ天板から覗かせた大地がエアバッグを引っ掛け……破裂音を高く鳴り響かせた。
父親の安否は不明……その様子を跡目に見ていた勇に動揺が走る。
だが彼は言った……「行け」と。
「きっと大丈夫だ」……そう言い聞かせ、勇は止まる事無く大地を蹴り続けた。
すると手に持ったスマートフォンが振動し、先程の獅堂の電話番号が再び表示される。
それに気付いた勇は駆けながらもすぐさま手に取り耳へと充てた。
『おやおや……どうやら間に合いそうも無いね……』
「もう着いた!だからもう辞めるんだ!!」
『勇君……嘘はダメだよ……ちゃんと城に触れるくらいに近くに行かなきゃ……さあカウントダウンを始めよう』
「や、やめろ……!!」
無情にも電話先から告げられるカウントダウン。
『5……4……』
止まらない。
そして間に合わない。
「やめろおーーーーーーーーーッ!!」
その高らかな叫びも虚しく……最後の刻を刻む。
『2……1……はい、ゲームオーバー』
その言葉を最後に、通話は途切れた。
すると不意に勇の視界に一人の人影が映る。
遠くの城壁の上から勇をいつもの様に迎え、手を振るエウリィの姿であった。
「勇様~!!」
その姿を見た勇はその足を動かしたまま……彼女を見つめ……そして叫んだ。
「逃げろ……逃げろエウリィ……逃げろおーーーーーー!!」
勇の「逃げろ」という声と共に大きく手を振り上げられた腕は、エウリィには迎えに対する応えに見えていた。
エウリィはその応えに喜びを見せ、いつもよりも大きく手を振り返す。
そんな彼女の頭上に……太陽とは違う大きな光が瞬いた。
それに気付いたエウリィがふと空を見上げる。
赤く滲む空に輝く白い光……それは彼女の心を誘う。
「まぁ……綺麗……」
その瞬間……城を大きな白の光が覆い隠し、その場を無音が包み込んだ。
強く輝く光がフェノーダラ城を焼きながら飲み込んでいく。
そして城壁に立っていたエウリィもまた……勇へ振り向きながら……光の中へと消えていった……。
「エウリィイイーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
その途端、光の余波が勇をも包み……その体を大きく吹き飛ばす。
大きな衝撃が、大きな光が、彼の体を、彼の目を……焼いた。
大きな、とても大きな光だった。
城の全てを覆い、光の柱となったそれは……無慈悲の光として……その全てを焼き尽くしたのだった。
その後に残ったのは……焼けて溶けぬ岩の城壁のみ……中に居た者も、物も全てが……焼けて消えた。
光が徐々に小さくなり大気に消え……周囲が再び赤い空の光に照らされ始める。
全てが元の色へと戻った時……ただ静かに、風の音が虚しく響き渡っていた。
風が大地を煽り、乾いた土を巻き上げる。
勇はそんな荒野に一人、仰向けに倒れていた。
光を受けて焼けた目が見開き、口が開けっ放しとなったまま動かない。
息はしているが……その顔はまるで死んだ様な蒼白な顔付きであった。
「ゆ、勇……」
その傍へ勇の父親がヨロヨロとふらつきながら近づいていく。
辛うじて大事は無かったのだろう……僅かに出血が見られる程度だった。
その時、勇の体がピクリと動く。
「ア……アア……」
「ゆ、勇!?」
すると突然震え始め、彼の開いた口から震えた呻き声が上がる。
「アァ……アアアアアアアッ!!」
そして見開いた目を掻き毟るかの様に……その両手でガリガリと顔を引っかき始めた。
「や、やめろ!! やめろお!!」
父親が体で圧し掛かり、顔を掻き毟る勇の手を力一杯に抑え制止させる。
「アアアッ!! アア……アアアアアァァ!!?」
勇の目からは涙が溢れ、苦しみを物語る……彼は目が痛くて苦しんでいるのではない……その瞬間を見届けてしまった目が憎かったのだ。
潰してしまいたいと思う程に。
エウリィが光に包まれた瞬間、感覚鋭化によって彼は全てが見えていた。
光に包まれて消える直前……彼女はそっと勇に振り向き目を合わせた。
振り向き様の青い左目が彼の目と合った瞬間……彼女の体がドロリと溶けて蒸発していく瞬間を彼は見えてしまっていたのだ。
「アアアアアアアアアアアアーーー―――!!!」
勇の叫びが夕日を前に木霊する。
勇達を迎える様に遅れてやってくる福留達。
しかしそんな彼等を前になおその声は止むことなく……。
その苦しみが……その悲しみが……全ての負の感情がその叫び声に包まれ空の彼方へ消えていった……。
その道を誘導する様に警察が道を作り彼らの補助を行う。
栃木県警はフェノーダラの件もあり、以前から勇達の事を認識している。
それに相まって福留の指示があったのだろう……勇達の進むべき道を素早く構築し、その道を開いていた。
「これならいけるか!?」
「間に合ってくれ……頼む……!!」
残り5分……そこでようやくフェノーダラまで直線の道へと到達する。
後はただ突っ切るのみ。
「よし、勇飛ばすぞ!!」
一気にアクセルを踏み込み高速道路と何ら変わらないスピードで駆け抜ける。
いつものコンビニを通り越え、とうとうフロントガラスにフェノーダラ城の姿が小さく映り込んだ。
「見えた!!」
「あと2分!!」
いつもの通行止めの道を越え、道がオフロードへと切り替わる。
エンジンが轟音を鳴らして高回転し、猛スピードで走っていく。
徐々にフェノーダラ城が近づき、その全貌を完全に捉えた。
「いけえええ!!」
だが、次の瞬間……アルファーダの前輪がバーストし、激しく車体が揺れた。
ガガガガッ!!
「うおお!?」
「うおあーーーッ!? 勇ぅーーー行けえーーーーーー!!」
それを聞いた途端勇は座席を吹き飛ばしながら飛び上がる。
間も無く地面に着地すると、力の限り大地を踏み付け駆け抜けていった。
その後方でアルファーダがバランスを崩し横転し、跳ねる様に転がっていく。
父親が座席を屈む様に頭を押さえた瞬間、エアバッグが展開されてその体を包む。
だが、弾けて飛んだ天板から覗かせた大地がエアバッグを引っ掛け……破裂音を高く鳴り響かせた。
父親の安否は不明……その様子を跡目に見ていた勇に動揺が走る。
だが彼は言った……「行け」と。
「きっと大丈夫だ」……そう言い聞かせ、勇は止まる事無く大地を蹴り続けた。
すると手に持ったスマートフォンが振動し、先程の獅堂の電話番号が再び表示される。
それに気付いた勇は駆けながらもすぐさま手に取り耳へと充てた。
『おやおや……どうやら間に合いそうも無いね……』
「もう着いた!だからもう辞めるんだ!!」
『勇君……嘘はダメだよ……ちゃんと城に触れるくらいに近くに行かなきゃ……さあカウントダウンを始めよう』
「や、やめろ……!!」
無情にも電話先から告げられるカウントダウン。
『5……4……』
止まらない。
そして間に合わない。
「やめろおーーーーーーーーーッ!!」
その高らかな叫びも虚しく……最後の刻を刻む。
『2……1……はい、ゲームオーバー』
その言葉を最後に、通話は途切れた。
すると不意に勇の視界に一人の人影が映る。
遠くの城壁の上から勇をいつもの様に迎え、手を振るエウリィの姿であった。
「勇様~!!」
その姿を見た勇はその足を動かしたまま……彼女を見つめ……そして叫んだ。
「逃げろ……逃げろエウリィ……逃げろおーーーーーー!!」
勇の「逃げろ」という声と共に大きく手を振り上げられた腕は、エウリィには迎えに対する応えに見えていた。
エウリィはその応えに喜びを見せ、いつもよりも大きく手を振り返す。
そんな彼女の頭上に……太陽とは違う大きな光が瞬いた。
それに気付いたエウリィがふと空を見上げる。
赤く滲む空に輝く白い光……それは彼女の心を誘う。
「まぁ……綺麗……」
その瞬間……城を大きな白の光が覆い隠し、その場を無音が包み込んだ。
強く輝く光がフェノーダラ城を焼きながら飲み込んでいく。
そして城壁に立っていたエウリィもまた……勇へ振り向きながら……光の中へと消えていった……。
「エウリィイイーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
その途端、光の余波が勇をも包み……その体を大きく吹き飛ばす。
大きな衝撃が、大きな光が、彼の体を、彼の目を……焼いた。
大きな、とても大きな光だった。
城の全てを覆い、光の柱となったそれは……無慈悲の光として……その全てを焼き尽くしたのだった。
その後に残ったのは……焼けて溶けぬ岩の城壁のみ……中に居た者も、物も全てが……焼けて消えた。
光が徐々に小さくなり大気に消え……周囲が再び赤い空の光に照らされ始める。
全てが元の色へと戻った時……ただ静かに、風の音が虚しく響き渡っていた。
風が大地を煽り、乾いた土を巻き上げる。
勇はそんな荒野に一人、仰向けに倒れていた。
光を受けて焼けた目が見開き、口が開けっ放しとなったまま動かない。
息はしているが……その顔はまるで死んだ様な蒼白な顔付きであった。
「ゆ、勇……」
その傍へ勇の父親がヨロヨロとふらつきながら近づいていく。
辛うじて大事は無かったのだろう……僅かに出血が見られる程度だった。
その時、勇の体がピクリと動く。
「ア……アア……」
「ゆ、勇!?」
すると突然震え始め、彼の開いた口から震えた呻き声が上がる。
「アァ……アアアアアアアッ!!」
そして見開いた目を掻き毟るかの様に……その両手でガリガリと顔を引っかき始めた。
「や、やめろ!! やめろお!!」
父親が体で圧し掛かり、顔を掻き毟る勇の手を力一杯に抑え制止させる。
「アアアッ!! アア……アアアアアァァ!!?」
勇の目からは涙が溢れ、苦しみを物語る……彼は目が痛くて苦しんでいるのではない……その瞬間を見届けてしまった目が憎かったのだ。
潰してしまいたいと思う程に。
エウリィが光に包まれた瞬間、感覚鋭化によって彼は全てが見えていた。
光に包まれて消える直前……彼女はそっと勇に振り向き目を合わせた。
振り向き様の青い左目が彼の目と合った瞬間……彼女の体がドロリと溶けて蒸発していく瞬間を彼は見えてしまっていたのだ。
「アアアアアアアアアアアアーーー―――!!!」
勇の叫びが夕日を前に木霊する。
勇達を迎える様に遅れてやってくる福留達。
しかしそんな彼等を前になおその声は止むことなく……。
その苦しみが……その悲しみが……全ての負の感情がその叫び声に包まれ空の彼方へ消えていった……。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる