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第十九節「Uの世界 師と死重ね 裏返る力」
~U の 世 界~
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―――とにかく今は……「俺」を探そう―――
気を取り直し、路地裏から出ていくと……太陽が赤々とした眩しい逆光を見舞って瞳が嫌う。
あの時の景色、あの時の状況……まるであの時に戻った……いや、実際に戻っている感覚。
世界が変容した日の出来事が思い起こされていく様であった。
彼は当時の「藤咲勇」が逃げたであろう道を思い出しながら、統也を連れてビルの合間を歩き進んでいた。
「しっかし……かなり重そうな剣持ってますね……よく片手で持てるもんですわ」
「あぁ、これはちょっとしたコツがあるのさ……ハハ」
歩きながら会話し、場の緊張を解す。
かつて通った道を再び通る……一度往復した事のある道だが、長い年月が経てば忘れるものだ。
あの時はしっかり覚えていたが、当時は無我夢中だったからこそ印象は薄く……写る景色がいずれも初めて見た光景の様に感じ取っていた。
初めての様であるが懐かしさを帯びる光景。
夢であればここまでハッキリと映る景色や物の感触は感じるはずも無い。
狭い裏路地、壁から生えた緑色の太いツタや樹木、気味の悪い柄の虫、苔の感触……何から何までリアル過ぎるのだ。
まるで、本当は今までが夢だったのではないかと思える程に。
「ッつか、今の時代に剣ってどうなんですか?」
統也はまだ彼の事を軍隊の人間か何かだと思っているのだろう。
魔剣を携えるその姿に違和感を感じる様だ。
事情を知らない人間が見ればそう思うのは無理も無い。
「あぁ、あいつらはこれじゃないと効かないんだよ」
「へェ……そういうモンなんでしょうか」
そんな理由も詳細な説明が無ければ途端に眉唾物へと変わり果てる。
まるで魔法のようだ……そう捉えられても仕方の無い事なのだから。
そもそもが彼自身も命力という事象に対して全てを把握してはいない訳で。
そんな会話が続く中、彼は一抹の不安を抱えていた。
―――でももしこのまま「俺」と合流したら
……きっと本物の剣聖さんが……―――
「藤咲勇」に出会うという事は、本物の剣聖と出会うという事に繋がる。
今頃は本物の剣聖によって茶奈と共に命を救われている頃だからだ。
もしも出会ってしまえばどうなるのか……予想も付かない。
「確かこの先……」
うろ覚えの細い道を進み、ビルの谷間が作る影の先から差しこむ光を求める様に足を踏み出す。
そして逆光……そこからの光景。
それは、かつての彼等の姿。
異形の者……散らばるダッゾ族の死骸。
泣き喚き、助けを請う少年。
その傍らには蹲った少女。
そして彼の向く先には……一人の大男の姿があった。
「勇ッ!! 無事か勇ッ!!」
すると、彼の背中とビルの間からすり抜ける様に統也が飛び出し声を上げる。
その声に反応し……少年が頭をゆっくり向け……そして大きな笑顔を浮かべた。
「と、統也!! 生きてた……生きてたァ!! 」
涙を浮かべながらも大きな笑顔を見せた少年が立ち上がり、駆け寄ってきた統也と相まみえる。
お互いが歓びを分かち合う様に笑顔を向け合い……そしてハイタッチする。
これは二人がよく昔やっていた……息を合わせる為の儀式の様な行為だ。
「懐かしいな……」
その光景を彼はしみじみと遠くから見つめ笑顔を浮かべる。
だがその途端、「ゾクゾクッ」とした感覚が背筋に走った。
彼等のすぐ隣に立つ大男……剣聖の凍り付くような視線が突き刺さる様に彼へと向けられていたのだ。
「剣聖……さん……ッ」
彼が小さく呟く……少年達には聞こえないほどの小さな声で。
だがそれが聞こえたかどうかなど関係なく……剣聖は一歩、また一歩と踏み出し彼の下へと迫っていった。
「テメェ……一体何者だ? その左手に持ってる魔剣……そいつぁどう見ても……!!」
彼が携えたアラクラルフ……それは剣聖より借り受けし魔剣。
だが目の前に居るのがかつての剣聖なのであれば、きっと彼が背負う箱の中にも……。
命力を感じ取る力に長けた剣聖……恐らく背負った箱に魔剣が在る事は把握済みなのだろう。
調べる事も無く、ただ彼を見つめながら……一歩づつ距離を詰めていく。
その時、彼が狼狽えながらも制止する様に声を上げた。
「ま、待ってください……これは確かにアラクラルフですが違うんです……!!」
「なぁにぃ?」
剣聖が眉間にシワを寄せ、彼の言う事に耳を傾ける。
何せ有るはずも無い3本目のアラクラルフが目の前にあるのだ……その存在理由が気になるのも無理は無いだろう。
だが何よりも……彼の声が「青み」を帯びていたから―――
「……フン、そうかよォ。 よくわかりゃあしねぇが……おめぇの言う事に嘘は感じねぇ。 まずはそういう事にしておいてやらぁ」
「あ、ありがとうございます……」
真っ直ぐな性格が功を奏した希有な例と言えるのだろうか。
ほっと胸を撫で下ろした彼は「ふぅ……」と一息吐くと、剣聖の横から見える少年達をチラリと覗き込む。
相も変わらず楽しそうに話を続ける二人の姿が見え……自分の知らない過去の未来が、目の当たりにした彼の顔に微笑みを呼び込んでいた。
―――もし統也が生きていたら……俺はどうなっていたんだろうな―――
かつて勇は、親友統也を先程失い、失意する事になる。
だが剣聖に出会い、短剣型魔剣エブレを今受け取る事で……彼はこれから戦いの道へと歩み始める事になるのだ。
だがもし統也が生きていた場合、勇は戦う意味を見出す理由は無くなる……かもしれない。
もしここがかつての過去そのものであれば……SF物語などでよくあるタイムパラドクスという現象が起こり、自分の存在が消えてしまうのではないか……そうすら思い付く。
だがこう考えてる余裕もあるのだからそれも無いのだろう。
では何故、自分はここに居るのか。
さっきからその疑問が頭から離れない。
「オイおめぇ、ちょっと聞きたい事がある」
すると不意に剣聖から声が掛かり、彼の意識が思考から呼び戻された。
「……なんですか?」
いつの間にか俯いていた顔を上げて剣聖を見上げると、真剣な面持ちの顔が視界に映り込む。
だが、妙にぼんやりとしていた。
「オメェ、名前はなんてぇんだ?」
思いがけない質問……だが心なしか嬉しい気持ちがそこにあった。
「名前……俺の名前は―――」
その途端……急に周囲が暗転し全てが闇に包まれた。
気を取り直し、路地裏から出ていくと……太陽が赤々とした眩しい逆光を見舞って瞳が嫌う。
あの時の景色、あの時の状況……まるであの時に戻った……いや、実際に戻っている感覚。
世界が変容した日の出来事が思い起こされていく様であった。
彼は当時の「藤咲勇」が逃げたであろう道を思い出しながら、統也を連れてビルの合間を歩き進んでいた。
「しっかし……かなり重そうな剣持ってますね……よく片手で持てるもんですわ」
「あぁ、これはちょっとしたコツがあるのさ……ハハ」
歩きながら会話し、場の緊張を解す。
かつて通った道を再び通る……一度往復した事のある道だが、長い年月が経てば忘れるものだ。
あの時はしっかり覚えていたが、当時は無我夢中だったからこそ印象は薄く……写る景色がいずれも初めて見た光景の様に感じ取っていた。
初めての様であるが懐かしさを帯びる光景。
夢であればここまでハッキリと映る景色や物の感触は感じるはずも無い。
狭い裏路地、壁から生えた緑色の太いツタや樹木、気味の悪い柄の虫、苔の感触……何から何までリアル過ぎるのだ。
まるで、本当は今までが夢だったのではないかと思える程に。
「ッつか、今の時代に剣ってどうなんですか?」
統也はまだ彼の事を軍隊の人間か何かだと思っているのだろう。
魔剣を携えるその姿に違和感を感じる様だ。
事情を知らない人間が見ればそう思うのは無理も無い。
「あぁ、あいつらはこれじゃないと効かないんだよ」
「へェ……そういうモンなんでしょうか」
そんな理由も詳細な説明が無ければ途端に眉唾物へと変わり果てる。
まるで魔法のようだ……そう捉えられても仕方の無い事なのだから。
そもそもが彼自身も命力という事象に対して全てを把握してはいない訳で。
そんな会話が続く中、彼は一抹の不安を抱えていた。
―――でももしこのまま「俺」と合流したら
……きっと本物の剣聖さんが……―――
「藤咲勇」に出会うという事は、本物の剣聖と出会うという事に繋がる。
今頃は本物の剣聖によって茶奈と共に命を救われている頃だからだ。
もしも出会ってしまえばどうなるのか……予想も付かない。
「確かこの先……」
うろ覚えの細い道を進み、ビルの谷間が作る影の先から差しこむ光を求める様に足を踏み出す。
そして逆光……そこからの光景。
それは、かつての彼等の姿。
異形の者……散らばるダッゾ族の死骸。
泣き喚き、助けを請う少年。
その傍らには蹲った少女。
そして彼の向く先には……一人の大男の姿があった。
「勇ッ!! 無事か勇ッ!!」
すると、彼の背中とビルの間からすり抜ける様に統也が飛び出し声を上げる。
その声に反応し……少年が頭をゆっくり向け……そして大きな笑顔を浮かべた。
「と、統也!! 生きてた……生きてたァ!! 」
涙を浮かべながらも大きな笑顔を見せた少年が立ち上がり、駆け寄ってきた統也と相まみえる。
お互いが歓びを分かち合う様に笑顔を向け合い……そしてハイタッチする。
これは二人がよく昔やっていた……息を合わせる為の儀式の様な行為だ。
「懐かしいな……」
その光景を彼はしみじみと遠くから見つめ笑顔を浮かべる。
だがその途端、「ゾクゾクッ」とした感覚が背筋に走った。
彼等のすぐ隣に立つ大男……剣聖の凍り付くような視線が突き刺さる様に彼へと向けられていたのだ。
「剣聖……さん……ッ」
彼が小さく呟く……少年達には聞こえないほどの小さな声で。
だがそれが聞こえたかどうかなど関係なく……剣聖は一歩、また一歩と踏み出し彼の下へと迫っていった。
「テメェ……一体何者だ? その左手に持ってる魔剣……そいつぁどう見ても……!!」
彼が携えたアラクラルフ……それは剣聖より借り受けし魔剣。
だが目の前に居るのがかつての剣聖なのであれば、きっと彼が背負う箱の中にも……。
命力を感じ取る力に長けた剣聖……恐らく背負った箱に魔剣が在る事は把握済みなのだろう。
調べる事も無く、ただ彼を見つめながら……一歩づつ距離を詰めていく。
その時、彼が狼狽えながらも制止する様に声を上げた。
「ま、待ってください……これは確かにアラクラルフですが違うんです……!!」
「なぁにぃ?」
剣聖が眉間にシワを寄せ、彼の言う事に耳を傾ける。
何せ有るはずも無い3本目のアラクラルフが目の前にあるのだ……その存在理由が気になるのも無理は無いだろう。
だが何よりも……彼の声が「青み」を帯びていたから―――
「……フン、そうかよォ。 よくわかりゃあしねぇが……おめぇの言う事に嘘は感じねぇ。 まずはそういう事にしておいてやらぁ」
「あ、ありがとうございます……」
真っ直ぐな性格が功を奏した希有な例と言えるのだろうか。
ほっと胸を撫で下ろした彼は「ふぅ……」と一息吐くと、剣聖の横から見える少年達をチラリと覗き込む。
相も変わらず楽しそうに話を続ける二人の姿が見え……自分の知らない過去の未来が、目の当たりにした彼の顔に微笑みを呼び込んでいた。
―――もし統也が生きていたら……俺はどうなっていたんだろうな―――
かつて勇は、親友統也を先程失い、失意する事になる。
だが剣聖に出会い、短剣型魔剣エブレを今受け取る事で……彼はこれから戦いの道へと歩み始める事になるのだ。
だがもし統也が生きていた場合、勇は戦う意味を見出す理由は無くなる……かもしれない。
もしここがかつての過去そのものであれば……SF物語などでよくあるタイムパラドクスという現象が起こり、自分の存在が消えてしまうのではないか……そうすら思い付く。
だがこう考えてる余裕もあるのだからそれも無いのだろう。
では何故、自分はここに居るのか。
さっきからその疑問が頭から離れない。
「オイおめぇ、ちょっと聞きたい事がある」
すると不意に剣聖から声が掛かり、彼の意識が思考から呼び戻された。
「……なんですか?」
いつの間にか俯いていた顔を上げて剣聖を見上げると、真剣な面持ちの顔が視界に映り込む。
だが、妙にぼんやりとしていた。
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本当に、ありがとうございます。
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