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第十九節「Uの世界 師と死重ね 裏返る力」
~u no se ka i~
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ヒョォォォ……
風の音だけが響くアルライの里のある土地……彼の目に映るのはその入口の階段。
「ハァッ……ハァッ……!!」
その場に居たはずの御味であろう自身の足をしきりに動かし石の階段を駆け上り、只ひたすらに願う。
『勘違いであってくれ』と。
『思い過ごしであって欲しい』と。
だが……彼が登りきった先で見た光景は余りにも現実的で……絶望的な光景であった。
「アア……アアアッ……!!」
辺り一面の……血溜まり。
里の者達が多く倒れ、いずれも背中等に大きな切り傷を負って倒れている。
女、子供、老人、いずれも関係なく、多くの者達が血を流し身動き一つせず。
そんな光景をただ……頭を抱え目を震わせて見つめる。
「ダメだ、統也……それ以上は……!!」
これが統也のやった事であるかどうかは定かではない。
だが、今まで見せつけられた光景が統也を中心としたものだったからこそ……彼の名前を叫び、里を駆け抜けた。
バシャッ、バシャッ!!
無我夢中で走り、血溜まりすら踏み避ける事すら忘れ……踏みつけたと同時に赤い液体が跳び散るが、それでもなおその足を怯ませる事無く動かし続けた。
里の家々が並ぶ間を駆け抜け道を行く。
道を抜けきった時……彼の前にはそれ以上の絶望が待っていた。
「うわぁぁぁーーーーーーッ!!」
カプロ、バノ、ジヨヨ村長……彼等の倒れる姿。
その傍らにはカプロの取り巻きの子供達も倒れていた。
その中央には統也唯一人が立ち尽くす。
手に握られた大地の楔は真っ赤に染まり、今なおその雫を「ポタリ」と幾度と無く滴らせていた。
「あぁ、御味さん……終わったよ。 魔者共はこれで全部だ」
そう言い放った統也の顔は……やりきった様に笑顔で……だがその顔や服には返り血であろう血のりがまばらに付きシミを作る。
ドクッ、ドクッ……!!
胸が締め付けられていく様に息が苦しくなる。
叫び声が喉元まで出て来る様な錯覚を催すが……胸が、体がそれを拒否する。
「アグッ……ウゥウッ!!」
目を見開いたまま苦しさで立っていられず膝を突き胸を抑える。
途端、暗闇が周囲を覆い始め……「次」が瞬く間に彼の意識に襲い掛かった。
「―――やぁ、君が統也君だね……僕の名前は獅堂雄英……君と同じ魔剣使いさ」
その声が自分の背後から聞こえ、苦しい胸を押さえながらも振り返る……そこに居るのは統也と獅堂が語り合う姿。
今までとは違う、誰かからの視点ではない、全く別の視点。
まるで映像を見るかの様にぼんやりとした感覚が周囲を囲み、二人のやりとりだけを映す。
「君の事は福留さんから聞いていてね……是非とも君と共に戦いたいと思っているんだ」
「ならどうして今まで姿を現さなかったんだ?」
「ハハ、ごめんごめん……実はね、僕は今魔者の一団体を治めた君主として動いている訳さ……その関係で少し手間取ってねぇ」
「魔者を……? なんで殲滅しない? 奴らは生かしておく訳にはいかないだろ」
「ハハッ、確かにそうだね……けど、物は考え様さ。 確かに奴らは役に立たないクソ共さぁ……けど、戦う為に使う分には多少なりに役に立つもんさ。 処理するのは後でいい」
「成程な、それなら合点がいく……俺達気が合いそうだなァ」
「あぁ、実にそう思うよ」
その言葉を最後に声は聞こえなくなり……暗闇が彼等の姿を潰していく。
またしても光が差し込み……彼の目に次なる光景が映りこむ。
彼等二人だけでオンズ族と立ち向かう姿……もはやそこに茶奈の姿は無かった。
再び暗転し……次々と光景が切り替わっていく。
アージとマヴォを撃退する光景。
ジョゾウ達を使い捨ててロゴウ達を倒す光景。
ナイーヴァ族を倒す光景。
………
……
…
幾つもの光景がいずれもが統也視点で世界を流していく……その様子が余りにも今の彼と対極的で……。
非現実であったのだろう……だが不思議と実感出来てしまう。
異常な光景を見続けた所為か、彼にとって何が現実であるのか、既にわからなくなっていた。
無数の『映像』が流れた後……気付けばそれもいつの間にか映らなくなり……体も自由に動く様になっていた。
相も変わらずの暗闇で、どこが地面で、どこに空間が有るのか……それすらわからないままではあるが。
「こんな光景を見せて……苦しんでいる俺の姿を見てほくそ笑んでいるのか……!! 誰だ……こんな光景を俺に見せる奴はッ!!」
周囲を威嚇する様に喚き散らし、居ない敵へと敵意を向ける。
既に手を離し見失った魔剣を探す事も忘れ、ただひたすらに何も見えない周りを見回し敵を探すが……何も見つかりはしない。
「どこだッ!! どこに居るッ!? 出てこいよォッ!!」
彼の言葉が空しく暗闇の中に木霊し、淡い山彦として響くのみであった……。
風の音だけが響くアルライの里のある土地……彼の目に映るのはその入口の階段。
「ハァッ……ハァッ……!!」
その場に居たはずの御味であろう自身の足をしきりに動かし石の階段を駆け上り、只ひたすらに願う。
『勘違いであってくれ』と。
『思い過ごしであって欲しい』と。
だが……彼が登りきった先で見た光景は余りにも現実的で……絶望的な光景であった。
「アア……アアアッ……!!」
辺り一面の……血溜まり。
里の者達が多く倒れ、いずれも背中等に大きな切り傷を負って倒れている。
女、子供、老人、いずれも関係なく、多くの者達が血を流し身動き一つせず。
そんな光景をただ……頭を抱え目を震わせて見つめる。
「ダメだ、統也……それ以上は……!!」
これが統也のやった事であるかどうかは定かではない。
だが、今まで見せつけられた光景が統也を中心としたものだったからこそ……彼の名前を叫び、里を駆け抜けた。
バシャッ、バシャッ!!
無我夢中で走り、血溜まりすら踏み避ける事すら忘れ……踏みつけたと同時に赤い液体が跳び散るが、それでもなおその足を怯ませる事無く動かし続けた。
里の家々が並ぶ間を駆け抜け道を行く。
道を抜けきった時……彼の前にはそれ以上の絶望が待っていた。
「うわぁぁぁーーーーーーッ!!」
カプロ、バノ、ジヨヨ村長……彼等の倒れる姿。
その傍らにはカプロの取り巻きの子供達も倒れていた。
その中央には統也唯一人が立ち尽くす。
手に握られた大地の楔は真っ赤に染まり、今なおその雫を「ポタリ」と幾度と無く滴らせていた。
「あぁ、御味さん……終わったよ。 魔者共はこれで全部だ」
そう言い放った統也の顔は……やりきった様に笑顔で……だがその顔や服には返り血であろう血のりがまばらに付きシミを作る。
ドクッ、ドクッ……!!
胸が締め付けられていく様に息が苦しくなる。
叫び声が喉元まで出て来る様な錯覚を催すが……胸が、体がそれを拒否する。
「アグッ……ウゥウッ!!」
目を見開いたまま苦しさで立っていられず膝を突き胸を抑える。
途端、暗闇が周囲を覆い始め……「次」が瞬く間に彼の意識に襲い掛かった。
「―――やぁ、君が統也君だね……僕の名前は獅堂雄英……君と同じ魔剣使いさ」
その声が自分の背後から聞こえ、苦しい胸を押さえながらも振り返る……そこに居るのは統也と獅堂が語り合う姿。
今までとは違う、誰かからの視点ではない、全く別の視点。
まるで映像を見るかの様にぼんやりとした感覚が周囲を囲み、二人のやりとりだけを映す。
「君の事は福留さんから聞いていてね……是非とも君と共に戦いたいと思っているんだ」
「ならどうして今まで姿を現さなかったんだ?」
「ハハ、ごめんごめん……実はね、僕は今魔者の一団体を治めた君主として動いている訳さ……その関係で少し手間取ってねぇ」
「魔者を……? なんで殲滅しない? 奴らは生かしておく訳にはいかないだろ」
「ハハッ、確かにそうだね……けど、物は考え様さ。 確かに奴らは役に立たないクソ共さぁ……けど、戦う為に使う分には多少なりに役に立つもんさ。 処理するのは後でいい」
「成程な、それなら合点がいく……俺達気が合いそうだなァ」
「あぁ、実にそう思うよ」
その言葉を最後に声は聞こえなくなり……暗闇が彼等の姿を潰していく。
またしても光が差し込み……彼の目に次なる光景が映りこむ。
彼等二人だけでオンズ族と立ち向かう姿……もはやそこに茶奈の姿は無かった。
再び暗転し……次々と光景が切り替わっていく。
アージとマヴォを撃退する光景。
ジョゾウ達を使い捨ててロゴウ達を倒す光景。
ナイーヴァ族を倒す光景。
………
……
…
幾つもの光景がいずれもが統也視点で世界を流していく……その様子が余りにも今の彼と対極的で……。
非現実であったのだろう……だが不思議と実感出来てしまう。
異常な光景を見続けた所為か、彼にとって何が現実であるのか、既にわからなくなっていた。
無数の『映像』が流れた後……気付けばそれもいつの間にか映らなくなり……体も自由に動く様になっていた。
相も変わらずの暗闇で、どこが地面で、どこに空間が有るのか……それすらわからないままではあるが。
「こんな光景を見せて……苦しんでいる俺の姿を見てほくそ笑んでいるのか……!! 誰だ……こんな光景を俺に見せる奴はッ!!」
周囲を威嚇する様に喚き散らし、居ない敵へと敵意を向ける。
既に手を離し見失った魔剣を探す事も忘れ、ただひたすらに何も見えない周りを見回し敵を探すが……何も見つかりはしない。
「どこだッ!! どこに居るッ!? 出てこいよォッ!!」
彼の言葉が空しく暗闇の中に木霊し、淡い山彦として響くのみであった……。
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