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第二十二節「戦列の条件 託されし絆の真実 目覚めの胎動」
~それは懐かしきヒストリカ~
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勇が本部へ到着した頃……工房では、カプロが一人机に座り本を読む姿があった。
読んでいるのは……もちろんライトノベルではなく、いつぞやに勇から受け取った『グゥの日誌』である。
二年前、勇が初めて対話を成立させた魔者、グゥ。
彼が勇を認め託した日誌には彼の一族の記録だけではなく、彼の一族が受け継いだ魔剣の製造方法が記されていた。
それを元にカプロが作り上げたのが勇の持つ『翠星剣』や茶奈の『クゥファーライデ』等、規格外の能力を有した魔剣である。
もっとも、その魔剣の製造方法こそ日誌の知識であれど、魔剣の仕組みを構築したのはカプロ自身ではあるが。
大半が古代文字で描かれているという事もあり……それを解読する事がカプロの趣味でもあり、彼が自身に課す使命でもあった。
常に仕事をしている訳でも無く……人も居ないという事もあり、今日も今日とて彼は日誌に目を通しているという訳である。
彼が腕を置く机の上には何処から手に入れたのかわからないライトノベル冊子が幾つも積まれてはいるが。
「ん~どうにもこの部分が読めねッス……古代人はどうしてこう使う文字の幅が広いッスかねぇ……」
誰に語る訳でも無く、ぼそりと独り言を零しながらページを行ったり来たりとめくっては戻す。
本に書かれた文字はページが変わる度に規則性が変わり、同じ言語とは思えない様子を見せていた。
それは日誌が長きに渡り多くの者達によって書き連ねられた結果の形なのだろう。
読む方としては苦労しかない訳だが……それでも解読に至ればそこに描かれた過去の事が何かわかるかもしれない、そんな想いがあるからこそ彼は真面目に向き合う事を決めたのだ。
そんなカプロがぶつぶつと呟きながらも日記とにらめっこをしていると……不意に工房に足音が響き、それに気付いた彼が面を上げた。
「誰ッスか?」
「おう、俺だ」
野太い声を上げてそこに現れたのは剣聖。
物珍しそうな表情を浮かべ周囲を見渡しながら工房にやってきた彼を、1/2の身長しかないカプロが見上げる様に彼の顔を覗き込む。
「剣聖さんがここ来るなんて珍しいッスね。 つか、初めてじゃねッスか?」
「おう、暇なんでなぁ。 いつもの瞑想は済んじまったし、ちぃと思い立ったんで遊びに来てやったぜ」
剣聖が魔剣に興味を持っているという事は、彼の通り名から察せるであろう。
だが、彼が興味を持つのはあくまでも古代の戦争……『あちら側』の世界が二つに分断される前に生み出された魔剣のみ。
新しく作られた魔剣には全く興味を見せない彼が工房になど興味を持つ訳も無かったのだが……予想外の展開にカプロもポカンとしていた。
食堂で毎日の様に顔を合わせている為か……どうやら彼に対する恐怖などはもう微塵も有してはいない素振りを見せる。
「こないだおめぇが作った『魔装』っつったか……あの服がよぉ、なかなか面白かったからちぃとばかり興味を持ったのよ」
「ほほー……さすが剣聖さん、見る目が違うッスね……!」
カプロが唸る様に喉を鳴らす。
それ程までに、彼にとって『魔装』と『魔甲』は自信作。
剣聖が興味を持ったという事にどこかむず痒さを感じたのか、はにかんだ笑顔を浮かべながら毛に覆われた後頭部を掻き毟っていた。
「なんなら、剣聖さんの分も作ってあげるッスよ……?」
いじらしい流し目を向けながら調子の良い事を口走るカプロ。
だが全く反応する素振りすら見せず、ただ周囲を眺める剣聖と彼の間には何とも言えぬ冷めた空気が漂うのみ。
すると……不意に剣聖が何かを見つけ、ノシノシとカプロへ近寄っていく。
自身に影を落とす巨体を前に、カプロは目をまんまると見開き驚きの表情を浮かべた。
「おう、『ソイツ』が例の魔剣の造り方が乗ってたっつう本かよ?」
「あ、こ、これは……」
剣聖の目に映るのは、カプロの前に開かれ置いてあったグゥの日誌。
彼に見つかったのがどこか不安を禁じ得なかったのか……カプロはそっと机に置かれた日誌に片手を乗せ、ズリズリと引きずる様に剣聖から引き離していく。
だが、そんな様子を見せるカプロを前に首を傾げた剣聖は……おもむろに日誌へと手を伸ばした。
「あ、これはダメっす!! ボクが勇さんから譲り受けた本ッスよ!!」
「かてぇ事言うんじゃねぇよぉ~!! ちぃとばかし見るだけだぁよぉ~!!」
途端、カプロが「バシッ」と音を立てて日誌を手に取り、腹部へ抱え込む。
頑なな意思を体で現すが、剣聖が止まるはずも無く……その小さな体の腰を両手で掴み上げた。
「んぎゃわあーーーー!? これだけは譲れねぇッス!!」
「こんガキャ……ちぃたぁ素直さを見せやがぁれってんだ!!」
上げられたその体がユサユサと上下に揺らされ、カプロの顎から「ンガガ」と声が漏れる。
だが一向に日誌を離そうともしないカプロに痺れを切らし、その大きな片手でむんずと腰を掴み取ると……もう片方の手が彼の両足首へと掴みかかった。
「これだけは~!! これだけはァ~~~!!」
「変な勘違いするんじゃねぇ!!」
掴み上げた時にカプロの脚が暴れるのを嫌がったのだろう、ただそれを抑える為に掴み取っただけだったのが……どうにかしてしまいそうな構図に、カプロ自身も気が気でない様だ。
「け、剣聖さん何してるんですか!?」
そこに姿を現したのは勇であった。
カプロの腰と足を掴み上げ、天井に突きそうな程に高々と持ち上げる剣聖の姿が妙に暴力的に見え、勇が思わず慌てた口ぶりで声を上げた。
それに気付いた剣聖とカプロは、訪れた勇へ向けて首をぐるりと回して振り向く。
二人の首が同時に動く様はまるでコントの様だ。
「あぁん? コイツがよォ……本を見せねぇっつうから実力行使に出たまでよ」
「そこまでして読む物じゃないでしょう!?」
しょうもない理由を耳にした勇が素っ頓狂な声を上げる。
そんな勇の反応を前に、剣聖は面倒臭そうに眉間を寄せた表情を浮かべながらゆっくりとカプロを降ろした。
「ゆ、勇さん助かったッス……危うく食べられるところだったッス」
「だぁれが食べるかァ!?」
剣聖が堪らず適当な事を言うカプロに怒鳴り散らす。
激しい怒鳴りを上げた拍子に無数の唾がカプロへと飛び散っていた。
「カプロもカプロだぞ……別に見せるくらいいいじゃないか」
「うぐっ……すまねッス……」
どうやら間近くで見た剣聖の顔が思った以上に怖かったという事もあった様で。
魔剣使いの頂点という彼の存在に対する潜在的な畏れも相まって、カプロの中に防衛本能的なモノが働いたのだろう。
理由はわからずとも、カプロの顔から心境が伺えたのか……勇はそっとその頭に「ポンポン」と手の平を当て彼を励ました。
すると反省したのか……カプロはおもむろに抱えていた本をゆっくりと剣聖に差し出す。
「おう、いい心掛けだぁよ」
剣聖が差し出された日誌をむんずと掴み取ると……冊子を開く事無く表紙を舐める様に見つめ始めた。
「んん~なんとまぁ懐かしいモンが出て来たなぁ」
「えっ?」
その時、突如剣聖の口から放たれたのは、誰もが予想もしえなかった一言。
「剣聖さん、グゥさんの日誌の事知ってるんですか……?」
奇妙な接点を感じた勇が声を上げ剣聖に問う。
彼にとってグゥとの思い出は未だ心に残る大きな出来事。
そんなグゥと剣聖に繋がりがあると思えば焦るのもいざ仕方の無い事なのだろう。
「ラクアンツェから何も聞いてねぇのか? コイツぁ日誌なんかじゃねぇよぉ」
だが、剣聖はそっと首を横に振り……ニヤリと笑みを浮かべ答えた。
「この本は『おわりトはじまりノ書』っつう、フララジカにまつわる記述がされた古文書だぁよ」
彼の口から放たれたのは誰しもが予想をしえない衝撃の事実であった。
読んでいるのは……もちろんライトノベルではなく、いつぞやに勇から受け取った『グゥの日誌』である。
二年前、勇が初めて対話を成立させた魔者、グゥ。
彼が勇を認め託した日誌には彼の一族の記録だけではなく、彼の一族が受け継いだ魔剣の製造方法が記されていた。
それを元にカプロが作り上げたのが勇の持つ『翠星剣』や茶奈の『クゥファーライデ』等、規格外の能力を有した魔剣である。
もっとも、その魔剣の製造方法こそ日誌の知識であれど、魔剣の仕組みを構築したのはカプロ自身ではあるが。
大半が古代文字で描かれているという事もあり……それを解読する事がカプロの趣味でもあり、彼が自身に課す使命でもあった。
常に仕事をしている訳でも無く……人も居ないという事もあり、今日も今日とて彼は日誌に目を通しているという訳である。
彼が腕を置く机の上には何処から手に入れたのかわからないライトノベル冊子が幾つも積まれてはいるが。
「ん~どうにもこの部分が読めねッス……古代人はどうしてこう使う文字の幅が広いッスかねぇ……」
誰に語る訳でも無く、ぼそりと独り言を零しながらページを行ったり来たりとめくっては戻す。
本に書かれた文字はページが変わる度に規則性が変わり、同じ言語とは思えない様子を見せていた。
それは日誌が長きに渡り多くの者達によって書き連ねられた結果の形なのだろう。
読む方としては苦労しかない訳だが……それでも解読に至ればそこに描かれた過去の事が何かわかるかもしれない、そんな想いがあるからこそ彼は真面目に向き合う事を決めたのだ。
そんなカプロがぶつぶつと呟きながらも日記とにらめっこをしていると……不意に工房に足音が響き、それに気付いた彼が面を上げた。
「誰ッスか?」
「おう、俺だ」
野太い声を上げてそこに現れたのは剣聖。
物珍しそうな表情を浮かべ周囲を見渡しながら工房にやってきた彼を、1/2の身長しかないカプロが見上げる様に彼の顔を覗き込む。
「剣聖さんがここ来るなんて珍しいッスね。 つか、初めてじゃねッスか?」
「おう、暇なんでなぁ。 いつもの瞑想は済んじまったし、ちぃと思い立ったんで遊びに来てやったぜ」
剣聖が魔剣に興味を持っているという事は、彼の通り名から察せるであろう。
だが、彼が興味を持つのはあくまでも古代の戦争……『あちら側』の世界が二つに分断される前に生み出された魔剣のみ。
新しく作られた魔剣には全く興味を見せない彼が工房になど興味を持つ訳も無かったのだが……予想外の展開にカプロもポカンとしていた。
食堂で毎日の様に顔を合わせている為か……どうやら彼に対する恐怖などはもう微塵も有してはいない素振りを見せる。
「こないだおめぇが作った『魔装』っつったか……あの服がよぉ、なかなか面白かったからちぃとばかり興味を持ったのよ」
「ほほー……さすが剣聖さん、見る目が違うッスね……!」
カプロが唸る様に喉を鳴らす。
それ程までに、彼にとって『魔装』と『魔甲』は自信作。
剣聖が興味を持ったという事にどこかむず痒さを感じたのか、はにかんだ笑顔を浮かべながら毛に覆われた後頭部を掻き毟っていた。
「なんなら、剣聖さんの分も作ってあげるッスよ……?」
いじらしい流し目を向けながら調子の良い事を口走るカプロ。
だが全く反応する素振りすら見せず、ただ周囲を眺める剣聖と彼の間には何とも言えぬ冷めた空気が漂うのみ。
すると……不意に剣聖が何かを見つけ、ノシノシとカプロへ近寄っていく。
自身に影を落とす巨体を前に、カプロは目をまんまると見開き驚きの表情を浮かべた。
「おう、『ソイツ』が例の魔剣の造り方が乗ってたっつう本かよ?」
「あ、こ、これは……」
剣聖の目に映るのは、カプロの前に開かれ置いてあったグゥの日誌。
彼に見つかったのがどこか不安を禁じ得なかったのか……カプロはそっと机に置かれた日誌に片手を乗せ、ズリズリと引きずる様に剣聖から引き離していく。
だが、そんな様子を見せるカプロを前に首を傾げた剣聖は……おもむろに日誌へと手を伸ばした。
「あ、これはダメっす!! ボクが勇さんから譲り受けた本ッスよ!!」
「かてぇ事言うんじゃねぇよぉ~!! ちぃとばかし見るだけだぁよぉ~!!」
途端、カプロが「バシッ」と音を立てて日誌を手に取り、腹部へ抱え込む。
頑なな意思を体で現すが、剣聖が止まるはずも無く……その小さな体の腰を両手で掴み上げた。
「んぎゃわあーーーー!? これだけは譲れねぇッス!!」
「こんガキャ……ちぃたぁ素直さを見せやがぁれってんだ!!」
上げられたその体がユサユサと上下に揺らされ、カプロの顎から「ンガガ」と声が漏れる。
だが一向に日誌を離そうともしないカプロに痺れを切らし、その大きな片手でむんずと腰を掴み取ると……もう片方の手が彼の両足首へと掴みかかった。
「これだけは~!! これだけはァ~~~!!」
「変な勘違いするんじゃねぇ!!」
掴み上げた時にカプロの脚が暴れるのを嫌がったのだろう、ただそれを抑える為に掴み取っただけだったのが……どうにかしてしまいそうな構図に、カプロ自身も気が気でない様だ。
「け、剣聖さん何してるんですか!?」
そこに姿を現したのは勇であった。
カプロの腰と足を掴み上げ、天井に突きそうな程に高々と持ち上げる剣聖の姿が妙に暴力的に見え、勇が思わず慌てた口ぶりで声を上げた。
それに気付いた剣聖とカプロは、訪れた勇へ向けて首をぐるりと回して振り向く。
二人の首が同時に動く様はまるでコントの様だ。
「あぁん? コイツがよォ……本を見せねぇっつうから実力行使に出たまでよ」
「そこまでして読む物じゃないでしょう!?」
しょうもない理由を耳にした勇が素っ頓狂な声を上げる。
そんな勇の反応を前に、剣聖は面倒臭そうに眉間を寄せた表情を浮かべながらゆっくりとカプロを降ろした。
「ゆ、勇さん助かったッス……危うく食べられるところだったッス」
「だぁれが食べるかァ!?」
剣聖が堪らず適当な事を言うカプロに怒鳴り散らす。
激しい怒鳴りを上げた拍子に無数の唾がカプロへと飛び散っていた。
「カプロもカプロだぞ……別に見せるくらいいいじゃないか」
「うぐっ……すまねッス……」
どうやら間近くで見た剣聖の顔が思った以上に怖かったという事もあった様で。
魔剣使いの頂点という彼の存在に対する潜在的な畏れも相まって、カプロの中に防衛本能的なモノが働いたのだろう。
理由はわからずとも、カプロの顔から心境が伺えたのか……勇はそっとその頭に「ポンポン」と手の平を当て彼を励ました。
すると反省したのか……カプロはおもむろに抱えていた本をゆっくりと剣聖に差し出す。
「おう、いい心掛けだぁよ」
剣聖が差し出された日誌をむんずと掴み取ると……冊子を開く事無く表紙を舐める様に見つめ始めた。
「んん~なんとまぁ懐かしいモンが出て来たなぁ」
「えっ?」
その時、突如剣聖の口から放たれたのは、誰もが予想もしえなかった一言。
「剣聖さん、グゥさんの日誌の事知ってるんですか……?」
奇妙な接点を感じた勇が声を上げ剣聖に問う。
彼にとってグゥとの思い出は未だ心に残る大きな出来事。
そんなグゥと剣聖に繋がりがあると思えば焦るのもいざ仕方の無い事なのだろう。
「ラクアンツェから何も聞いてねぇのか? コイツぁ日誌なんかじゃねぇよぉ」
だが、剣聖はそっと首を横に振り……ニヤリと笑みを浮かべ答えた。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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