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第二十四節「密林包囲網 切望した過去 闇に紛れ蠢きて」
~宴~
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南米、チリ。
コモドゥロ・アルトゥーレ・メリノ・ベニテス国際空港。
サンティエゴ国際空港とも言われるこの場所に勇達は降り立った。
長旅という事もあり、体を癒す為にサンティエゴへと寄港……一泊後、ブラジルへ発つという予定である。
地球を半周したという事もあり、彼等の為に用意された特別な航空機を使用しても疲れは溜まるものだ。
サンティエゴを選んだのは、その疲れを癒す為の寄港先としては順路的に丁度良かった事が挙げられる。
だが、それ以外にももう一つ……彼等にとってメリットがある理由があった。
それはこの街が、既に魔者との融和を始めた街であったからだ。
魔者の事が公表されてから既に2年余り……だが実は、彼等にとってはそれ以上に魔者との交流は長い。
フララジカが起きたその日、サンティエゴ北部の街中で突如転移が行われたのである。
まるでそれは渋谷で起きた変容事変と同じ様な状況。
その後、チリ政府によって閉鎖された同地域は封鎖地域として扱われたが……実は秘密裏に市民との交流が行われていたというのだ。
それもそのはず……転移してきたのは隠れ里。
敵意の無い魔者達だったからこそ、彼等は分かり合うのも早かったという訳である。
アシャバ族と呼ばれた彼等はオッファノ族と似た、全身短毛の大柄な種族。
恐らくオッファノ族との血族なのだろう。
だが性格は至って温厚で、転移後は戦う気を持たない人間と普通に接していたのだという。
警察や軍隊との衝突はあったが、決して彼等から戦いを挑む事は無く。
そして魔者の存在が公表されて以来、彼等と和解し今に至る。
街中にはちらほらとアシャバ族が歩き、人と挨拶を交わす姿が見受けられる程。
こうした人間と魔者との垣根が低いこの街であれば、アージとマヴォが出歩く事も適う。
それがこの場所を選んだ理由という訳だ。
たった一夜だけではあるが……羽根を伸ばす為に、彼等の乗る車は街中を駆け巡った。
チリ政府も今回の寄港には前向きだった様で、魔特隊に協力を惜しまなかった。
専用車両に運転手付き……おまけにガイドまで。
そして何より……アシャバ族の一人が彼等を迎えたのだった。
勇達の力添え無しに人間と和解した彼等の存在は、勇達にとっての希望以外の何物でもない。
おまけに彼はこれほどまでに無い程陽気な性格で……初対面の勇達でも明るく接し、彼等の心を掴むには時間は掛からなかった。
大柄で陽気な者同士……マヴォとは特に『相棒』などと呼び合う程に意気投合出来た様だ。
時間が押す中……彼等のガイドの下で、ぐるりとサンティエゴの街中を回る様に車を走らせる。
空港の周りの殆どが屋根の低い建物が連なるが、街中に近づくと途端に大きな建物が目立ち始めていた。
そして間も無く……街の空気が一変する。
アシャバの里とサンティエゴの境目へと訪れたからだ。
そこは勇達にとっても驚く場所であった。
それもそのはず、アシャバだけではない……他の種族の魔者までもがその場所に居たのだから。
その場所はいわゆる魔者特区……チリ政府と国連が共同で設立した、魔者が住める街【共存街】。
そこへ各国が手を取り合った、あるいは保護した魔者達が集まり、人と共に生活している。
その中には空島で国連に保護された魔者も居るというのだから驚きだろう。
魔者に関心を持つ『こちら側』の人間が、彼等と交流を持つ為にこの地へ訪れる者も少なくない……実はそれなりにメジャーな地とも言える。
観光と、交流と、そして発展を踏まえたその街は、世界初とも言える試みを行う最先端の異文化交流場の一つなのである。
この場所と比べれば、日本の魔者に対する環境は不十分と言いきれる程に、深く浸透しているのだ。
その街で、勇達は食事を摂る事となった。
チリ料理、そしてアシャバの伝統料理……様々な彩りを持つ料理が振る舞われる歓迎っぷりに、さすがの勇達も驚きを隠せない。
宴は夜まで続き……初めて会ったのにも関わらず、人間と魔者、そして魔剣使い……彼等はなんら変わり映えの無い笑顔を浮かべ、陽気な時間を大いに楽しんだのだった。
楽しい宴が終わりを告げ、勇達はアシャバのガイドと別れを告げると……車両に乗って彼等の泊まる予定のホテルへと向かう。
彼等を迎えたのは高級ホテル。
華やかさを感じさせる外観に、彼等の心を躍らせた。
当然待つのは豪華な部屋。
二人一部屋で割り当てられ、おかしくない組み合わせでそれぞれの夜を過ごす事となった。
その組み合わせに異議を唱える者も約一名居たが当然通る訳も無く……こうして彼等はようやく床に就く事が出来たのであった。
静かな朝を迎えた勇達は、朝食を摂った後……ブラジルへ向かう為に再び国際空港へと足を運ぶ。
先日彼等を迎えてくれたアシャバのガイドや現地の人々が見送る中……勇達は彼等との再会の約束を交わし、その場を後にした。
再び大空へ舞い上がる彼等の乗った専用機……それを見つめ見送る者達。
各々の想いを胸に、間も無く始まるであろう戦いに決意を固めるのであった。
コモドゥロ・アルトゥーレ・メリノ・ベニテス国際空港。
サンティエゴ国際空港とも言われるこの場所に勇達は降り立った。
長旅という事もあり、体を癒す為にサンティエゴへと寄港……一泊後、ブラジルへ発つという予定である。
地球を半周したという事もあり、彼等の為に用意された特別な航空機を使用しても疲れは溜まるものだ。
サンティエゴを選んだのは、その疲れを癒す為の寄港先としては順路的に丁度良かった事が挙げられる。
だが、それ以外にももう一つ……彼等にとってメリットがある理由があった。
それはこの街が、既に魔者との融和を始めた街であったからだ。
魔者の事が公表されてから既に2年余り……だが実は、彼等にとってはそれ以上に魔者との交流は長い。
フララジカが起きたその日、サンティエゴ北部の街中で突如転移が行われたのである。
まるでそれは渋谷で起きた変容事変と同じ様な状況。
その後、チリ政府によって閉鎖された同地域は封鎖地域として扱われたが……実は秘密裏に市民との交流が行われていたというのだ。
それもそのはず……転移してきたのは隠れ里。
敵意の無い魔者達だったからこそ、彼等は分かり合うのも早かったという訳である。
アシャバ族と呼ばれた彼等はオッファノ族と似た、全身短毛の大柄な種族。
恐らくオッファノ族との血族なのだろう。
だが性格は至って温厚で、転移後は戦う気を持たない人間と普通に接していたのだという。
警察や軍隊との衝突はあったが、決して彼等から戦いを挑む事は無く。
そして魔者の存在が公表されて以来、彼等と和解し今に至る。
街中にはちらほらとアシャバ族が歩き、人と挨拶を交わす姿が見受けられる程。
こうした人間と魔者との垣根が低いこの街であれば、アージとマヴォが出歩く事も適う。
それがこの場所を選んだ理由という訳だ。
たった一夜だけではあるが……羽根を伸ばす為に、彼等の乗る車は街中を駆け巡った。
チリ政府も今回の寄港には前向きだった様で、魔特隊に協力を惜しまなかった。
専用車両に運転手付き……おまけにガイドまで。
そして何より……アシャバ族の一人が彼等を迎えたのだった。
勇達の力添え無しに人間と和解した彼等の存在は、勇達にとっての希望以外の何物でもない。
おまけに彼はこれほどまでに無い程陽気な性格で……初対面の勇達でも明るく接し、彼等の心を掴むには時間は掛からなかった。
大柄で陽気な者同士……マヴォとは特に『相棒』などと呼び合う程に意気投合出来た様だ。
時間が押す中……彼等のガイドの下で、ぐるりとサンティエゴの街中を回る様に車を走らせる。
空港の周りの殆どが屋根の低い建物が連なるが、街中に近づくと途端に大きな建物が目立ち始めていた。
そして間も無く……街の空気が一変する。
アシャバの里とサンティエゴの境目へと訪れたからだ。
そこは勇達にとっても驚く場所であった。
それもそのはず、アシャバだけではない……他の種族の魔者までもがその場所に居たのだから。
その場所はいわゆる魔者特区……チリ政府と国連が共同で設立した、魔者が住める街【共存街】。
そこへ各国が手を取り合った、あるいは保護した魔者達が集まり、人と共に生活している。
その中には空島で国連に保護された魔者も居るというのだから驚きだろう。
魔者に関心を持つ『こちら側』の人間が、彼等と交流を持つ為にこの地へ訪れる者も少なくない……実はそれなりにメジャーな地とも言える。
観光と、交流と、そして発展を踏まえたその街は、世界初とも言える試みを行う最先端の異文化交流場の一つなのである。
この場所と比べれば、日本の魔者に対する環境は不十分と言いきれる程に、深く浸透しているのだ。
その街で、勇達は食事を摂る事となった。
チリ料理、そしてアシャバの伝統料理……様々な彩りを持つ料理が振る舞われる歓迎っぷりに、さすがの勇達も驚きを隠せない。
宴は夜まで続き……初めて会ったのにも関わらず、人間と魔者、そして魔剣使い……彼等はなんら変わり映えの無い笑顔を浮かべ、陽気な時間を大いに楽しんだのだった。
楽しい宴が終わりを告げ、勇達はアシャバのガイドと別れを告げると……車両に乗って彼等の泊まる予定のホテルへと向かう。
彼等を迎えたのは高級ホテル。
華やかさを感じさせる外観に、彼等の心を躍らせた。
当然待つのは豪華な部屋。
二人一部屋で割り当てられ、おかしくない組み合わせでそれぞれの夜を過ごす事となった。
その組み合わせに異議を唱える者も約一名居たが当然通る訳も無く……こうして彼等はようやく床に就く事が出来たのであった。
静かな朝を迎えた勇達は、朝食を摂った後……ブラジルへ向かう為に再び国際空港へと足を運ぶ。
先日彼等を迎えてくれたアシャバのガイドや現地の人々が見送る中……勇達は彼等との再会の約束を交わし、その場を後にした。
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