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第二十五節「双塔堕つ 襲撃の猛威 世界が揺らいだ日」
~暴かれた現実~
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デュゼローが語った暴論は、勇達へ強い憤りをもたらす程に理不尽なものだった。
他者を恨み、妬み、忌み嫌う、そして殺し合う。
それが世界を救う方法などとは信じられる訳も無くて。
『―――それこそが今の状況を止めるただ一つの手段なのです』
「ふざけるなッ!! それじゃあ【フララジカ】が成り立たなくたって世界が滅ぶじゃないかあッ!!」
ガゴォンッ!!
怒りの余り、勇の拳が机へ強く叩き付けられる。
命力もが籠められていたのだろう、たちまちその机もひしゃげて形を崩していて。
だがもはやそんな物に気を止める者など、この場には居ない。
誰しもが勇と同じ想いだったからこそ。
デュゼローの語った手段とは言わば「終わり無き終焉」だ。
〝常に喉元へ刃物を突き付けられながら生き続けろ〟という事に他ならない。
それも、いつまで続くかわからないという条件付きの。
その先に待っているのは淘汰された世界。
強い者や賢い者しか生き残れない、熾烈な時代が到来するだろう。
まるでかの世界と同じ様な暗黒時代が。
そしてそれは根本的な解決には至らない。
二つの世界が一つになり続けている限りは。
故に納得出来る訳も無かったのだ。
デュゼローの導き出した答えが最善策などとは。
例え、世界を救う手段がまだそれしかわからずとも。
ただ、それと同時に不安も過る。
もしデュゼローの言う事が本当だったら。
もしその手以外に世界が救えないとしたら。
そんな不安を払拭出来ない程に、手に持つ情報が少な過ぎるから。
剣聖もラクアンツェも戻ってこない。
「世界を分断する」と言い残して消えたまま。
その手段も、方法も教えてくれないままに。
〝果たして本当に世界は元に戻せるのか?〟
〝デュゼローの言った事が本当なのではないか?〟
勇達の心にそういった疑念すら渦巻き苛ませる。
『皆様が平和を愛し、争いの無い世界を構築したいという想いは理解出来ます。 私もまた、この様な事態が無ければ平和を享受し平穏に過ごしたい―――そう思っております』
「ならどうしてッ!! その方向で解決出来る方法を選ばないんだッ!!」
そんな不安と憤りがぶつかり合い、勇の中には苛立ちさえ生まれていて。
理不尽とはわかっていても、こう言わざるを得ない。
それ程までに心が追い詰められていたから。
デュゼローの語りを聴けば聴く程、真実味が滲み出てくるからこそ。
『ですが、事はもはや理想論では解決出来ない所まで発展してしまったのです。 今なお世界では転移が行われ続け、しかもその間隔は徐々に加速しています。 もしかしたら、我々には言う程の猶予は残されていないのかもしれません』
新しい転移と言えば、記憶に新しいのはオッファノ族やクラカッゾ族だろう。
でもそれ以外にも、今またどこかで起き続けているのかもしれない。
勇達どころか、世界すらも認知していない様な場所で。
もしそれらの出現が世界融合の加速した結果なのならば。
再び渋谷や埼玉で起きた悲劇が繰り返されるかもしれない。
魔者との争いはこれからも止まらないかもしれない。
そうなったら、否が応にもデュゼローが提唱する手段を講じなければならなくなる。
否定出来る程の理論武装を持ち得ていないから、勇達も融和行動を制限される事になる。
もしそうなれば、世界は地獄と化すだろう。
魔者が蹂躙し、現代人が殺され、文化が破壊される。
逆の可能性もまた然りだ。
対抗手段が生み出されれば、たちまち魔者が追い詰められ、皆殺しにされる。
それはアルライ族やカラクラ族とて例外ではない。
待っているのは殺し合う世界。
そんな世界など、認められる訳が無い。
例え矛盾を孕んでいても、認めたくない想いがここにある。
剣聖達を信じ、笑い合える世界を創りたいという願いがここにある。
だからこそ憤るのだ。
たった一つだけの結論を世界に押し付けたデュゼローに対して。
だが、その憤りの中で、画面の先のデュゼローが突然その雰囲気を変える。
それはまるで彼もまた憤るかの如く。
途端に強張らせた顔をカメラへと向けていたのだ。
強く尖った感情を乗せたその素顔を。
『では何故、世界が混ざり合う事象が加速しているのでしょうか? ……その答えは簡単です。 今、世界は人間と魔者が争う事の無いよう、多くの国々が手を取り合おうとしているからです。 そう、憎む事、恐れる事、その対義は―――受け入れる事、理解する事。 相互理解する事で、逆に世界融合を推し進めてしまうでしょう』
憤りの理由はきっと、平和を選んだ世界が許せなかったからだろう。
その結果、世界融合を推し進めてしまったからこそ。
例え知らずとも、追い込んでしまった事には変わりはないのだから。
平和な世界を構築する事が世界を滅ぼす鍵となる。
なんとも皮肉な話であろうか。
でも憤りの理由が一つだけとは限らない。
むしろ、真の理由が別にこそ存在するからこそ―――
この時、突如として福留が立ち上がる。
座っていた椅子さえも弾き転ばして。
それも、目を見開いて愕然としながら。
福留はデュゼローの真意に気付いてしまったのだ。
都庁を占拠してまで事を起こそうとした、その真の目的を。
『ですが実は、事情を知らないまでも平和を作ろうと奔走し、世界融合を加速させている団体が存在するのです。 それもこの日本に……!!』
「しまった……やられたあッ!!」
そうして見せたのは、あの福留とは思えない憤りの素顔。
仁王の如く顔が歪みきり、それでいて苦味溢れる苦悩の表情だ。
あの老獪とも言える福留が堪らず咆える程の。
そして彼の懸念は今、現実と成るだろう。
想像通り、この告白こそがデュゼローの真の目的なのだから。
『それが正式名称【対魔者特殊戦闘部隊】、通称・魔特隊。 日本政府が主導し、世界各国の庇護の下、魔者を唯一傷つける事の出来る【魔剣】という武器を所持する非公式の軍事団体です。 彼等はその武器を持って魔者と争い、時には魔者と馴れ合い、世界の影で暗躍してきたのです』
それが秘密組織である魔特隊の存在暴露。
勇達を世界の敵として公表する事こそがデュゼローの狙いだったのである。
他者を恨み、妬み、忌み嫌う、そして殺し合う。
それが世界を救う方法などとは信じられる訳も無くて。
『―――それこそが今の状況を止めるただ一つの手段なのです』
「ふざけるなッ!! それじゃあ【フララジカ】が成り立たなくたって世界が滅ぶじゃないかあッ!!」
ガゴォンッ!!
怒りの余り、勇の拳が机へ強く叩き付けられる。
命力もが籠められていたのだろう、たちまちその机もひしゃげて形を崩していて。
だがもはやそんな物に気を止める者など、この場には居ない。
誰しもが勇と同じ想いだったからこそ。
デュゼローの語った手段とは言わば「終わり無き終焉」だ。
〝常に喉元へ刃物を突き付けられながら生き続けろ〟という事に他ならない。
それも、いつまで続くかわからないという条件付きの。
その先に待っているのは淘汰された世界。
強い者や賢い者しか生き残れない、熾烈な時代が到来するだろう。
まるでかの世界と同じ様な暗黒時代が。
そしてそれは根本的な解決には至らない。
二つの世界が一つになり続けている限りは。
故に納得出来る訳も無かったのだ。
デュゼローの導き出した答えが最善策などとは。
例え、世界を救う手段がまだそれしかわからずとも。
ただ、それと同時に不安も過る。
もしデュゼローの言う事が本当だったら。
もしその手以外に世界が救えないとしたら。
そんな不安を払拭出来ない程に、手に持つ情報が少な過ぎるから。
剣聖もラクアンツェも戻ってこない。
「世界を分断する」と言い残して消えたまま。
その手段も、方法も教えてくれないままに。
〝果たして本当に世界は元に戻せるのか?〟
〝デュゼローの言った事が本当なのではないか?〟
勇達の心にそういった疑念すら渦巻き苛ませる。
『皆様が平和を愛し、争いの無い世界を構築したいという想いは理解出来ます。 私もまた、この様な事態が無ければ平和を享受し平穏に過ごしたい―――そう思っております』
「ならどうしてッ!! その方向で解決出来る方法を選ばないんだッ!!」
そんな不安と憤りがぶつかり合い、勇の中には苛立ちさえ生まれていて。
理不尽とはわかっていても、こう言わざるを得ない。
それ程までに心が追い詰められていたから。
デュゼローの語りを聴けば聴く程、真実味が滲み出てくるからこそ。
『ですが、事はもはや理想論では解決出来ない所まで発展してしまったのです。 今なお世界では転移が行われ続け、しかもその間隔は徐々に加速しています。 もしかしたら、我々には言う程の猶予は残されていないのかもしれません』
新しい転移と言えば、記憶に新しいのはオッファノ族やクラカッゾ族だろう。
でもそれ以外にも、今またどこかで起き続けているのかもしれない。
勇達どころか、世界すらも認知していない様な場所で。
もしそれらの出現が世界融合の加速した結果なのならば。
再び渋谷や埼玉で起きた悲劇が繰り返されるかもしれない。
魔者との争いはこれからも止まらないかもしれない。
そうなったら、否が応にもデュゼローが提唱する手段を講じなければならなくなる。
否定出来る程の理論武装を持ち得ていないから、勇達も融和行動を制限される事になる。
もしそうなれば、世界は地獄と化すだろう。
魔者が蹂躙し、現代人が殺され、文化が破壊される。
逆の可能性もまた然りだ。
対抗手段が生み出されれば、たちまち魔者が追い詰められ、皆殺しにされる。
それはアルライ族やカラクラ族とて例外ではない。
待っているのは殺し合う世界。
そんな世界など、認められる訳が無い。
例え矛盾を孕んでいても、認めたくない想いがここにある。
剣聖達を信じ、笑い合える世界を創りたいという願いがここにある。
だからこそ憤るのだ。
たった一つだけの結論を世界に押し付けたデュゼローに対して。
だが、その憤りの中で、画面の先のデュゼローが突然その雰囲気を変える。
それはまるで彼もまた憤るかの如く。
途端に強張らせた顔をカメラへと向けていたのだ。
強く尖った感情を乗せたその素顔を。
『では何故、世界が混ざり合う事象が加速しているのでしょうか? ……その答えは簡単です。 今、世界は人間と魔者が争う事の無いよう、多くの国々が手を取り合おうとしているからです。 そう、憎む事、恐れる事、その対義は―――受け入れる事、理解する事。 相互理解する事で、逆に世界融合を推し進めてしまうでしょう』
憤りの理由はきっと、平和を選んだ世界が許せなかったからだろう。
その結果、世界融合を推し進めてしまったからこそ。
例え知らずとも、追い込んでしまった事には変わりはないのだから。
平和な世界を構築する事が世界を滅ぼす鍵となる。
なんとも皮肉な話であろうか。
でも憤りの理由が一つだけとは限らない。
むしろ、真の理由が別にこそ存在するからこそ―――
この時、突如として福留が立ち上がる。
座っていた椅子さえも弾き転ばして。
それも、目を見開いて愕然としながら。
福留はデュゼローの真意に気付いてしまったのだ。
都庁を占拠してまで事を起こそうとした、その真の目的を。
『ですが実は、事情を知らないまでも平和を作ろうと奔走し、世界融合を加速させている団体が存在するのです。 それもこの日本に……!!』
「しまった……やられたあッ!!」
そうして見せたのは、あの福留とは思えない憤りの素顔。
仁王の如く顔が歪みきり、それでいて苦味溢れる苦悩の表情だ。
あの老獪とも言える福留が堪らず咆える程の。
そして彼の懸念は今、現実と成るだろう。
想像通り、この告白こそがデュゼローの真の目的なのだから。
『それが正式名称【対魔者特殊戦闘部隊】、通称・魔特隊。 日本政府が主導し、世界各国の庇護の下、魔者を唯一傷つける事の出来る【魔剣】という武器を所持する非公式の軍事団体です。 彼等はその武器を持って魔者と争い、時には魔者と馴れ合い、世界の影で暗躍してきたのです』
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