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第二十七節「空白の年月 無念重ねて なお想い途切れず」
~それが世界の選択~
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大衆心理とは恐ろしいものだ。
例え間違っていても、正しいと信じて疑わない者が集まり、声を上げると……途端にそれが集団による正義となって対象に襲い掛かる。
インターネットが普及し、あらゆる情報が不確定のまま流れる時代になった昨今で、その在り方は更に強く、速く、そして巨大になっていった。
それをコントロールする事が出来るのは、それすらも凌駕する程の力か、絶対的な説得力。
政府圧力だったり、武力闘争だったり……あるいは著名人の発言だったり。
その中でも最も力があると言われているのは……象徴的な存在の発言。
いつの世も、そういった人物が声を上げ、民衆の心を掴み、国を、世界を変えて来た。
歴史に名を刻み、功績を積み、支持を得る……それはいわゆる偉人と呼ばれる者達の所業。
そしてこの時代に……また一人、歴史に名を刻もうとしている人物がいた。
その名はデュゼロー。
『あちら側』の人間でありながら、世界を救う為に業を背負うと宣言した男だ。
【東京事変】からおおよそ半年。
彼が没してからというものの、世界は大きく揺れ動いていた。
最初は小さな燻りだった。
世界を救う……そんなバカげた事を言う狂者なのだと。
だが日を追ってその燻りは徐々に燃え上がり、次第にその火は飛び火し大きな炎と成る。
『彼の代わりに私達が世界を救わねばならない』
たったその一文がキッカケ。
そこから同様の言葉を上げる者が次々に現れた。
日本だけではない。
アメリカでも、中国でも、ロシアでも、ヨーロッパでも、アラブでも。
世界中のあらゆる国際圏でその声が上がり始め、次第にそれは集まり、大きな形と成る。
それが後に世界を揺るがす事となる【救世同盟】の誕生であった。
デュゼローを『同志』と呼び、世界を救う為に互いの世界を否定し合う。
それを成すのにもはや種族も、人種も、別世界も、何も関係無かった。
それを信じた者は相手を否定し、拒絶する。
彼等の信じられる者は自分と家族や友人のみ。
そして彼等の思想を信じる者は特に……正義感が溢れる人物が多かった。
多くは愛国心に溢れる軍人や、治安を維持する警官。
彼等は自分達の仲間達を守る為に、仇名す者達を必要以上に嫌ったのだ。
それは現代ではよくある光景だろう。
かつて戦争でいがみ合った国同士が今も互いに憎み、恨み、否定し合う。
その延長の様なものだった。
戦争が起きる訳ではない。
だが、否定の力がより一層厳しく、強く、激しくなったのだ。
【救世同盟】の所業はそれだけに尽きない。
異端と呼ばれる者達……詰まる所、犯罪者と呼ばれる者達への徹底した排除が彼等によって行われる事となる。
表だけで言えば良い事だと思われるだろう。
だがそれはとても凄惨なものだった。
例えどんなに良いことをしてきた人間でも、その者が一つ大きなミスを犯せば途端に集団からの非難を浴び、排除され、そして命をも―――
名声を浴びた者であればあるほどその排斥は度を増して激しくなる。
そんな犯罪が増え、沢山の人間が逮捕された。
だがそれでも止まらない。
それほどまでに、大きくなってしまっていた。
〝世界を救う為に〟
その免罪符たる言葉は世界を大きく包み込み、暴力を肯定し続ける。
気付けば世界では、【救世同盟】の力は大きくなり過ぎていた。
各国が楽観視する事が出来ない程に。
しかし……各国ももはや動く事は出来なくなっていた。
その政府中枢、軍隊、民衆……ありとあらゆる場所で、【救世同盟】の思想を受けた者達が潜んでいたのだ。
そして彼等の考えが国の一つの考えと成った時……彼等は高々と声を上げる。
『我々こそが正義なのだ』……と。
【東京事変】から一年が過ぎ、【救世同盟】の活動が活発化し始めた頃……。
国連では彼等をテロリストとして認定する為の決議が行われていた。
国連……国際連合と呼ばれる団体。
国際平和を目的とし、ありとあらゆる紛争などに介入しては解決する為に動く、多数国家の協力から成る組織である。
以前は主に国家間の闘争問題などに対して動く組織であった。
だがフララジカ発生後……各国が魔者問題によって混乱する中で、国連は主にこの問題に対して積極的に活動していた。
魔特隊の作戦決行時にもバックアップを行っていた事が多数あったのは周知の事実である。
しかし、そんな国連議場での【救世同盟】への各国の意見は真っ二つに分かれていた。
その問題に対する論点はこうだ。
1.デュゼローの訴えた事以外にフララジカを止める方法は無い
2.【救世同盟】は少なくとも犯罪抑止力にもなっている
3.彼等を支持する者が現段階で多くを占めている
こういった事が議論に上げられ、各国の首脳が話し合う。
だがその時点で……テロリスト化推進派の意見は打ち止めだった。
もしテロリスト化した場合、【救世同盟】の思想を持った者達からの反発は避けられないだろう。
そうなった場合に巻き起こる非難を封殺する事が出来る様な決定的な意見が出せなかったのだ。
こうして、この時期をキッカケに【救世同盟】は一つの思想を持つ団体として急激な成長を遂げる。
多くの国や地域の支持を受け、気付けば彼等は国相手に戦う事すら可能となっていた。
それに対し、【東京事変】の当事国である日本は元々の不戦のスタンスを貫く事を決めた。
独自に【救世同盟】をテロリスト認定し、彼等の思想を持つ事を犯罪としたのだ。
続く国が出る事を期待し、日本は争いを許さない国として声高々に上げたのだった。
以降、何故か日本に対する【救世同盟】の攻撃の一切は無い。
彼等に認知されたのか、それとも彼等にとっての聖地だからか……その理由はわからない。
世界はなお混迷を続け、戦いを望む。
それが世界を救う事になるのか、それとも滅ぼす事になるのか……その行く末を知る者は誰一人として居ない。
例え間違っていても、正しいと信じて疑わない者が集まり、声を上げると……途端にそれが集団による正義となって対象に襲い掛かる。
インターネットが普及し、あらゆる情報が不確定のまま流れる時代になった昨今で、その在り方は更に強く、速く、そして巨大になっていった。
それをコントロールする事が出来るのは、それすらも凌駕する程の力か、絶対的な説得力。
政府圧力だったり、武力闘争だったり……あるいは著名人の発言だったり。
その中でも最も力があると言われているのは……象徴的な存在の発言。
いつの世も、そういった人物が声を上げ、民衆の心を掴み、国を、世界を変えて来た。
歴史に名を刻み、功績を積み、支持を得る……それはいわゆる偉人と呼ばれる者達の所業。
そしてこの時代に……また一人、歴史に名を刻もうとしている人物がいた。
その名はデュゼロー。
『あちら側』の人間でありながら、世界を救う為に業を背負うと宣言した男だ。
【東京事変】からおおよそ半年。
彼が没してからというものの、世界は大きく揺れ動いていた。
最初は小さな燻りだった。
世界を救う……そんなバカげた事を言う狂者なのだと。
だが日を追ってその燻りは徐々に燃え上がり、次第にその火は飛び火し大きな炎と成る。
『彼の代わりに私達が世界を救わねばならない』
たったその一文がキッカケ。
そこから同様の言葉を上げる者が次々に現れた。
日本だけではない。
アメリカでも、中国でも、ロシアでも、ヨーロッパでも、アラブでも。
世界中のあらゆる国際圏でその声が上がり始め、次第にそれは集まり、大きな形と成る。
それが後に世界を揺るがす事となる【救世同盟】の誕生であった。
デュゼローを『同志』と呼び、世界を救う為に互いの世界を否定し合う。
それを成すのにもはや種族も、人種も、別世界も、何も関係無かった。
それを信じた者は相手を否定し、拒絶する。
彼等の信じられる者は自分と家族や友人のみ。
そして彼等の思想を信じる者は特に……正義感が溢れる人物が多かった。
多くは愛国心に溢れる軍人や、治安を維持する警官。
彼等は自分達の仲間達を守る為に、仇名す者達を必要以上に嫌ったのだ。
それは現代ではよくある光景だろう。
かつて戦争でいがみ合った国同士が今も互いに憎み、恨み、否定し合う。
その延長の様なものだった。
戦争が起きる訳ではない。
だが、否定の力がより一層厳しく、強く、激しくなったのだ。
【救世同盟】の所業はそれだけに尽きない。
異端と呼ばれる者達……詰まる所、犯罪者と呼ばれる者達への徹底した排除が彼等によって行われる事となる。
表だけで言えば良い事だと思われるだろう。
だがそれはとても凄惨なものだった。
例えどんなに良いことをしてきた人間でも、その者が一つ大きなミスを犯せば途端に集団からの非難を浴び、排除され、そして命をも―――
名声を浴びた者であればあるほどその排斥は度を増して激しくなる。
そんな犯罪が増え、沢山の人間が逮捕された。
だがそれでも止まらない。
それほどまでに、大きくなってしまっていた。
〝世界を救う為に〟
その免罪符たる言葉は世界を大きく包み込み、暴力を肯定し続ける。
気付けば世界では、【救世同盟】の力は大きくなり過ぎていた。
各国が楽観視する事が出来ない程に。
しかし……各国ももはや動く事は出来なくなっていた。
その政府中枢、軍隊、民衆……ありとあらゆる場所で、【救世同盟】の思想を受けた者達が潜んでいたのだ。
そして彼等の考えが国の一つの考えと成った時……彼等は高々と声を上げる。
『我々こそが正義なのだ』……と。
【東京事変】から一年が過ぎ、【救世同盟】の活動が活発化し始めた頃……。
国連では彼等をテロリストとして認定する為の決議が行われていた。
国連……国際連合と呼ばれる団体。
国際平和を目的とし、ありとあらゆる紛争などに介入しては解決する為に動く、多数国家の協力から成る組織である。
以前は主に国家間の闘争問題などに対して動く組織であった。
だがフララジカ発生後……各国が魔者問題によって混乱する中で、国連は主にこの問題に対して積極的に活動していた。
魔特隊の作戦決行時にもバックアップを行っていた事が多数あったのは周知の事実である。
しかし、そんな国連議場での【救世同盟】への各国の意見は真っ二つに分かれていた。
その問題に対する論点はこうだ。
1.デュゼローの訴えた事以外にフララジカを止める方法は無い
2.【救世同盟】は少なくとも犯罪抑止力にもなっている
3.彼等を支持する者が現段階で多くを占めている
こういった事が議論に上げられ、各国の首脳が話し合う。
だがその時点で……テロリスト化推進派の意見は打ち止めだった。
もしテロリスト化した場合、【救世同盟】の思想を持った者達からの反発は避けられないだろう。
そうなった場合に巻き起こる非難を封殺する事が出来る様な決定的な意見が出せなかったのだ。
こうして、この時期をキッカケに【救世同盟】は一つの思想を持つ団体として急激な成長を遂げる。
多くの国や地域の支持を受け、気付けば彼等は国相手に戦う事すら可能となっていた。
それに対し、【東京事変】の当事国である日本は元々の不戦のスタンスを貫く事を決めた。
独自に【救世同盟】をテロリスト認定し、彼等の思想を持つ事を犯罪としたのだ。
続く国が出る事を期待し、日本は争いを許さない国として声高々に上げたのだった。
以降、何故か日本に対する【救世同盟】の攻撃の一切は無い。
彼等に認知されたのか、それとも彼等にとっての聖地だからか……その理由はわからない。
世界はなお混迷を続け、戦いを望む。
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