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第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」
~意識取り戻し日の唄~
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三剣魔であるラクアンツェが敗れたという事実が勇達に衝撃を与える。
だがそれと同時に剣聖のもたらした情報は、彼等に希望も与える事となった。
まだラクアンツェを倒した者の正体はわからず仕舞いだ。
だがそれでも勇達は止まる訳にはいかない。
真実を……真に世界を救う方法を得る為に。
工房に運び込まれたラクアンツェはカプロの手によって修復がなされようとしていた。
カプロの工房には小さな魔剣修復用道具が揃っている。
アルライの里の伝統である修復技術と現代の技術が合わさった最新型の器具ばかりだ。
その中に浴槽の様な形をした大きな桶があり、真水が浅く張り巡らされている。
そこにラクアンツェの母体である頭部が沈まぬ程度に置かれていた。
口が水の中に沈まない様に茶奈が頭部を支えながら命力を送る。
その間に、訪れたばかりの瀬玲が命力の糸を張り巡らせながら一つ一つ丁寧にパーツを水の中に沈めていった。
その行為はとても重要だ。
バラバラになった部品は今、例えるなら仮死状態。
命力珠から切り離された状態の為、力が籠らない只の金属の塊に過ぎない。
だが命力珠が死んでいないので、修復は事実上可能だ。
水桶には修復用の命力珠が備えられており、それそのものが魔剣と言える。
しかし魔剣の命を維持する機能が備えられてはいるが、分解した部品までを蘇生する機能は有していない。
当然だ、普通の魔剣ならば分解した部分を新しい部品で補修すればいいだけなのだから。
そこで瀬玲が疑似的に体を繋ぎ、仮死状態を解くのである。
これによって【ウーグイシュ】に使われた希少金属を最大限に流用しつつ、補修が行えるという訳だ。
全ての部位が繋ぎ合わされ、水に沈む。
そこでカプロが力を加える事で……水面に僅かな光が灯り、命力がラクアンツェのボディへと流れ込んでいった。
「これで多少はラクアンツェさんの負担が減るはずッス」
神経がある人間の体と異なり、魔剣の体に流れる感覚はいわば疑似信号。
感じ取った物を神経を通して伝えるのではなく、物を感じたと魔剣の中枢が判断して疑似的に脳へ伝える仕組みだ。
だから体がバラバラに破壊されても常に魔剣の中枢からその信号が脳に送り続けられ、ずっと痛覚を与え続けていた。
しかしこうなった事で信号を一時的に遮断する事ができ、結果的に彼女の痛覚抵抗が無くなる。
精神面での負担が無くなり、命を維持する為の意思がその分純粋に強くなるのである。
だが修復はこれからが本番だ。
【ウーグイシュ】は平たく言えば形状記憶合金の様な物質を使った魔剣である。
使用者の意思によって剛柔を切り替える事ができ、かつ関節駆動も機械式では無く変形式だ。
しかも破壊されたのはそんな駆動部ばかり……余りにも強い威力の攻撃により、比較的脆い部分が優先的に砕けてしまったのだろう。
だがそんな事が再現出来る金属はまだ『こちら側』には存在しない。
また、それらを制御する駆動魔導式をカプロは知らない。
彼女の体を完全再現するには、今はまだ何もかもが足りないのだ。
そこでカプロは考えた。
駆動部が無いのであれば、今残っている部分を駆動部にしてしまえばいいのだと。
固定部、いわば人間でいう所の骨に当たる部分を新たに構築し、既存の部分を駆動部へと改造して流用する。
また不足部分は【ヴォルトリッター】や【ラーフヴェラ】の技術を駆使した機械式で補う。
つまり、ラクアンツェを魔剣人間から魔剣機械人間へと改造するというもの。
元々サイボーグの様なものなのだ、今更抵抗はないだろうと踏んでの事だった。
とはいえ修復だけでなく改造ともなれば時間は膨大に掛かる。
一旦の作業計画と応急修復を済ませると……そこで作業は終了したのだった。
今現在のラクアンツェは、強引に各部をお粗末に加工された金属部品と雑な魔導式で繋ぎ合わされただけの金属の塊ともいえる状態。
しかしそれでも今の彼女には十分だった。
十分だったから……彼女は目を覚ます事が出来た。
「あらぁ……貴方達だったのねぇ」
ラクアンツェが目を覚ました時、視界に映ったのは茶奈達。
彼女達を見た瞬間、ラクアンツェはなんとなく状況を把握し……慌てる事も無く優しい笑みを浮かべた。
「気が付いたんですね……良かった」
「ええ、心が軽くなったから……表に出てこれたわぁ。 ありがとうねぇ……」
彼女の意識が戻ると、それに気付いた瀬玲やカプロも顔を向けて笑顔を見せる。
峠は越えたと実感出来たから……安心せずには居られない。
「ずっと感じてたわ、だから大丈夫だって思ってた……心配かけてごめんなさいね」
「いいんですよ、無事ならそれで。 それよりも剣聖さんを呼びましょうか、きっと喜びますよ」
剣聖が相当心配していたという事がわかっていたから、茶奈は喜びの余りそわそわと外へと視線を向ける。
だがラクアンツェはと言えば……途端に口を窄め、眉間を寄せる表情を浮かべるのだった。
「あー……いえ、剣聖はいいわぁ……なんかこう、今は見られたくない気がする」
「ええー……」
彼女も自身の体がどんな状況になっているか、なんとなく理解しているのだろう。
そういう事もあって……見られるのはどうにも恥ずかしい様だ。
「でも剣聖には伝えておいて欲しいかな……ありがとうって」
「それ、本当は自分で言った方がいいと思いますけどー?」
体裁など気にして良い事など何も無い事を知る瀬玲だからこその答え。
しかし彼女の返しに惑うどころか……ラクアンツェは微笑み、その瞳を細めさせた。
「なら、何も言わなくていいわぁ……多分彼もわかってくれてるから」
その一言はきっと彼女達にとっては余計でしかないのだろう。
言わなくてもわかる……それ程までに彼等は家族以上の存在同士なのだから。
「んじゃとりあえず一旦修復は終わりにするッス。 続きは後日、プランを見返してから本格的に行うんで、長丁場だと思っててほしいッスね」
「了解……カプロ君もありがとうね」
その一言を受けたカプロは「うぴぴ」と一つ笑い、工房から歩いて出ていく。
それに続く様に瀬玲もまた、ラクアンツェに見える様に手を振りながら去っていった。
「それじゃ、私も行きます。 安静にしててくださいね」
「ええ、ありがとう」
外から勇達の声が聞こえる中、茶奈もラクアンツェを離して席を立つ。
勇達に彼女の無事だという話をしたいから。
喜びを共有したいから。
茶奈もまた意気揚々と……勇の下へと向けて一歩を踏み出した。
「あばぼっ! ちょばっ!! ばってぇー!! あぶぼぼ……」
途端聞こえる悲鳴。
「ハッ」として茶奈が振り向くと……そこにはラクアンツェの水面に顔を沈めた有様が。
「ああっ!? ラクアンツェさん!? 大変、カ、カプロくーん!!」
どうやら茶奈が支えていた事を忘れ、代替の支えを用意し忘れていた様だ。
その後改めてカプロは頭部ホルダーを用意し、ようやく事無きを得たのだった。
危うく溺死させ掛けたという事実に、カプロも茶奈もその後バツが悪そうな表情を浮かべていたのは言うまでもない。
そもそも魔剣人間が溺死するかどうかも怪しいところだが。
だがそれと同時に剣聖のもたらした情報は、彼等に希望も与える事となった。
まだラクアンツェを倒した者の正体はわからず仕舞いだ。
だがそれでも勇達は止まる訳にはいかない。
真実を……真に世界を救う方法を得る為に。
工房に運び込まれたラクアンツェはカプロの手によって修復がなされようとしていた。
カプロの工房には小さな魔剣修復用道具が揃っている。
アルライの里の伝統である修復技術と現代の技術が合わさった最新型の器具ばかりだ。
その中に浴槽の様な形をした大きな桶があり、真水が浅く張り巡らされている。
そこにラクアンツェの母体である頭部が沈まぬ程度に置かれていた。
口が水の中に沈まない様に茶奈が頭部を支えながら命力を送る。
その間に、訪れたばかりの瀬玲が命力の糸を張り巡らせながら一つ一つ丁寧にパーツを水の中に沈めていった。
その行為はとても重要だ。
バラバラになった部品は今、例えるなら仮死状態。
命力珠から切り離された状態の為、力が籠らない只の金属の塊に過ぎない。
だが命力珠が死んでいないので、修復は事実上可能だ。
水桶には修復用の命力珠が備えられており、それそのものが魔剣と言える。
しかし魔剣の命を維持する機能が備えられてはいるが、分解した部品までを蘇生する機能は有していない。
当然だ、普通の魔剣ならば分解した部分を新しい部品で補修すればいいだけなのだから。
そこで瀬玲が疑似的に体を繋ぎ、仮死状態を解くのである。
これによって【ウーグイシュ】に使われた希少金属を最大限に流用しつつ、補修が行えるという訳だ。
全ての部位が繋ぎ合わされ、水に沈む。
そこでカプロが力を加える事で……水面に僅かな光が灯り、命力がラクアンツェのボディへと流れ込んでいった。
「これで多少はラクアンツェさんの負担が減るはずッス」
神経がある人間の体と異なり、魔剣の体に流れる感覚はいわば疑似信号。
感じ取った物を神経を通して伝えるのではなく、物を感じたと魔剣の中枢が判断して疑似的に脳へ伝える仕組みだ。
だから体がバラバラに破壊されても常に魔剣の中枢からその信号が脳に送り続けられ、ずっと痛覚を与え続けていた。
しかしこうなった事で信号を一時的に遮断する事ができ、結果的に彼女の痛覚抵抗が無くなる。
精神面での負担が無くなり、命を維持する為の意思がその分純粋に強くなるのである。
だが修復はこれからが本番だ。
【ウーグイシュ】は平たく言えば形状記憶合金の様な物質を使った魔剣である。
使用者の意思によって剛柔を切り替える事ができ、かつ関節駆動も機械式では無く変形式だ。
しかも破壊されたのはそんな駆動部ばかり……余りにも強い威力の攻撃により、比較的脆い部分が優先的に砕けてしまったのだろう。
だがそんな事が再現出来る金属はまだ『こちら側』には存在しない。
また、それらを制御する駆動魔導式をカプロは知らない。
彼女の体を完全再現するには、今はまだ何もかもが足りないのだ。
そこでカプロは考えた。
駆動部が無いのであれば、今残っている部分を駆動部にしてしまえばいいのだと。
固定部、いわば人間でいう所の骨に当たる部分を新たに構築し、既存の部分を駆動部へと改造して流用する。
また不足部分は【ヴォルトリッター】や【ラーフヴェラ】の技術を駆使した機械式で補う。
つまり、ラクアンツェを魔剣人間から魔剣機械人間へと改造するというもの。
元々サイボーグの様なものなのだ、今更抵抗はないだろうと踏んでの事だった。
とはいえ修復だけでなく改造ともなれば時間は膨大に掛かる。
一旦の作業計画と応急修復を済ませると……そこで作業は終了したのだった。
今現在のラクアンツェは、強引に各部をお粗末に加工された金属部品と雑な魔導式で繋ぎ合わされただけの金属の塊ともいえる状態。
しかしそれでも今の彼女には十分だった。
十分だったから……彼女は目を覚ます事が出来た。
「あらぁ……貴方達だったのねぇ」
ラクアンツェが目を覚ました時、視界に映ったのは茶奈達。
彼女達を見た瞬間、ラクアンツェはなんとなく状況を把握し……慌てる事も無く優しい笑みを浮かべた。
「気が付いたんですね……良かった」
「ええ、心が軽くなったから……表に出てこれたわぁ。 ありがとうねぇ……」
彼女の意識が戻ると、それに気付いた瀬玲やカプロも顔を向けて笑顔を見せる。
峠は越えたと実感出来たから……安心せずには居られない。
「ずっと感じてたわ、だから大丈夫だって思ってた……心配かけてごめんなさいね」
「いいんですよ、無事ならそれで。 それよりも剣聖さんを呼びましょうか、きっと喜びますよ」
剣聖が相当心配していたという事がわかっていたから、茶奈は喜びの余りそわそわと外へと視線を向ける。
だがラクアンツェはと言えば……途端に口を窄め、眉間を寄せる表情を浮かべるのだった。
「あー……いえ、剣聖はいいわぁ……なんかこう、今は見られたくない気がする」
「ええー……」
彼女も自身の体がどんな状況になっているか、なんとなく理解しているのだろう。
そういう事もあって……見られるのはどうにも恥ずかしい様だ。
「でも剣聖には伝えておいて欲しいかな……ありがとうって」
「それ、本当は自分で言った方がいいと思いますけどー?」
体裁など気にして良い事など何も無い事を知る瀬玲だからこその答え。
しかし彼女の返しに惑うどころか……ラクアンツェは微笑み、その瞳を細めさせた。
「なら、何も言わなくていいわぁ……多分彼もわかってくれてるから」
その一言はきっと彼女達にとっては余計でしかないのだろう。
言わなくてもわかる……それ程までに彼等は家族以上の存在同士なのだから。
「んじゃとりあえず一旦修復は終わりにするッス。 続きは後日、プランを見返してから本格的に行うんで、長丁場だと思っててほしいッスね」
「了解……カプロ君もありがとうね」
その一言を受けたカプロは「うぴぴ」と一つ笑い、工房から歩いて出ていく。
それに続く様に瀬玲もまた、ラクアンツェに見える様に手を振りながら去っていった。
「それじゃ、私も行きます。 安静にしててくださいね」
「ええ、ありがとう」
外から勇達の声が聞こえる中、茶奈もラクアンツェを離して席を立つ。
勇達に彼女の無事だという話をしたいから。
喜びを共有したいから。
茶奈もまた意気揚々と……勇の下へと向けて一歩を踏み出した。
「あばぼっ! ちょばっ!! ばってぇー!! あぶぼぼ……」
途端聞こえる悲鳴。
「ハッ」として茶奈が振り向くと……そこにはラクアンツェの水面に顔を沈めた有様が。
「ああっ!? ラクアンツェさん!? 大変、カ、カプロくーん!!」
どうやら茶奈が支えていた事を忘れ、代替の支えを用意し忘れていた様だ。
その後改めてカプロは頭部ホルダーを用意し、ようやく事無きを得たのだった。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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