914 / 1,197
第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」
~蒼天を放ちし者の唄~
しおりを挟む
「ギッザッマ!! ゴロズッ!! ゴロズゥ!!」
怒りを露わにし、鼻息を激しく荒立てる異形。
握り締めた拳は持てる全ての力が篭められ、凄まじい筋肉の凝縮音がギリギリと滲み出ていた。
その視界は目の前に居る怒りの根源だけを捉え、それ以外などもはや眼中には無い。
その対象は当然……勇だ。
対する勇は……冷静だった。
今にも襲い掛からんとする異形に対し、ただ見つめながら息を整えるのみ。
その瞳に浮かぶのは……悲哀。
「すまない……もっと俺が早くこの力に目覚めていれば、君にこんな苦しみを味合わせる事は無かったかもしれない……」
勇は知っていた。
目の前に居る異形が誰なのか。
ア・リーヴェを通して彼の正体を知ったから。
だからこそ彼は今……哀れみをも力と換える。
「……必ず救う。 君を家族の下に必ず返すから……後少しだけ耐えてくれ……!!」
その決意の呟きをきっかけに……勇の体がゆらりと動く。
仲間達が静かに見守る中で、その身をそっと身構えさせた。
その時……遥か遠くで瀬玲に肩を貸していたイシュライトが驚きの余り絶句する。
「あ、あの構えは……!!」
彼の眼に映るのは、勇の取る構え。
それがいつかの対決の時に見せた自身の型と似ていたから。
左肩を前に、曲げた肘から左拳を前に伸ばし。
右手は腰部に沿える様に下げ。
僅かに腰を落とし、相手の出方に備えて力を蓄える。
それこそ、イ・ドゥールの里に伝わりし反撃の型。
相手が強大な力を持つ相手であればあるほど真価を発揮する型なのである。
オリジナルは僅かに退け気味、相手との距離を僅かでも保つ為に背が直立するのが特徴だ。
しかし勇のそれはイシュライトが見せたものと比べ、僅かに異なっていた。
左肩を前面に押し出し、前屈みの様に深く腰を落とす……前衛的な姿勢。
反撃と突撃……防御を捨てた、完全なる特攻の型。
相手は剣聖をも圧倒する力の持ち主だ。
例え勇であろうと相手の攻撃が直撃すれば死は免れない。
それでも防御を捨てて相対するという事……それは食らわないという絶対的自身の成せる技。
正気の沙汰とは思えぬ勇の判断に、イシュライトはもはや絶句する他無かったのだ。
その間にも、勇は異形を前に思考を重ねる。
自身に秘められた可能性に探りを入れるかのように。
彼が持つのは知識。
だが経験では無い。
だからこそ、今彼は試そうというのだ。
己に秘められた真の力を。
「救う為に……力を使うぞ、ア・リーヴェ!!」
その時、勇の体に力が沸き上がる。
祈りでも、願いでも、想いでも。
信念でも、覚悟でもない。
己自身の力―――天力。
全てを知った今……彼の力はもう、彼のモノ。
そこに秘めたるコトなど、もはや何も無い。
その顕現を……茶奈達は見た。
神々しくも凄まじき空色の光を全身からとめどなく打ち放つ男の姿を。
まるでその姿は、全身から光の剣を吹き出しているかの様に激しく荒々しく。
背後へ向けて烈風が如き光の波動が常に轟々と弾け飛び、空を突く程に激しく放出されていた。
茜差し始めた藍空に空色を取り戻させるほどの……強き力。
茶奈のフルクラスタを彷彿とさせつつも……それすらをも凌駕する力の放出量。
そこで彼女達は改めて気付く。
今まで見えなかったその力が見えているという事実に。
そして当然、勇自身にもまた力の在り方がしっかりと視界に映っていた。
命力と天力……似て非なる力。
ずっと勘違いして認識していた。
でもやっと心で気付けたから。
こうして彼は今、自分の力を可視化させる事が出来る様になったのだ。
見える様になった力はもはや彼のモノ。
どの様に扱うかも自由自在。
無限の可能性を秘めし天力……その力はアストラルエネマすら遥かに超える。
「ガアアアアアッ!!!!!」
その時、異形がとうとう痺れを切らして飛び掛かった。
遠く離れていたはずの勇へと、あっという間に肉迫する程の速力で。
凄まじい慣性と、重量と、凶悪なまでの腕力。
全てが合わさった拳の一撃を勇へ向けて撃ち放ちながら。
もはや直撃……逃げられぬと思える程にまで拳が迫る。
だが……その瞬間の出来事に、茶奈達がその目を疑う。
飛び掛かっていたはずの異形が……空高く打ち上げられていたのだ。
何が起きたのか彼女達にはわからなかった。
遠かったのもあったのかもしれない、夕刻で見えにくかったのかもしれない。
何よりも、それ程までに一瞬の出来事だったから。
全ては勇の早業からなる所業だった。
体を逸らして拳を躱しながらも、その力を利用し……弱点とも言える腰と背中を叩き付け、跳ね飛ばしたのだ。
そうする事で異形の力は地面へと向けられ、一瞬にして大地にぶつかり、その勢いのままに空へと跳ね飛んだという訳である。
異形は無様にも間も無く落下し、大地へと沈み込む程に激しく打ち付けられていた。
勇は視線を外す事無く、その場に立ったまま異形を睨みつける。
彼にとって今のは相手の動きを止める為だけのもの。
これから繰り出すであろう救いの一撃の為に。
再び立ち上がろうとする異形。
勇はそれを前に決意を固め、右拳を強く握りしめるのだった。
怒りを露わにし、鼻息を激しく荒立てる異形。
握り締めた拳は持てる全ての力が篭められ、凄まじい筋肉の凝縮音がギリギリと滲み出ていた。
その視界は目の前に居る怒りの根源だけを捉え、それ以外などもはや眼中には無い。
その対象は当然……勇だ。
対する勇は……冷静だった。
今にも襲い掛からんとする異形に対し、ただ見つめながら息を整えるのみ。
その瞳に浮かぶのは……悲哀。
「すまない……もっと俺が早くこの力に目覚めていれば、君にこんな苦しみを味合わせる事は無かったかもしれない……」
勇は知っていた。
目の前に居る異形が誰なのか。
ア・リーヴェを通して彼の正体を知ったから。
だからこそ彼は今……哀れみをも力と換える。
「……必ず救う。 君を家族の下に必ず返すから……後少しだけ耐えてくれ……!!」
その決意の呟きをきっかけに……勇の体がゆらりと動く。
仲間達が静かに見守る中で、その身をそっと身構えさせた。
その時……遥か遠くで瀬玲に肩を貸していたイシュライトが驚きの余り絶句する。
「あ、あの構えは……!!」
彼の眼に映るのは、勇の取る構え。
それがいつかの対決の時に見せた自身の型と似ていたから。
左肩を前に、曲げた肘から左拳を前に伸ばし。
右手は腰部に沿える様に下げ。
僅かに腰を落とし、相手の出方に備えて力を蓄える。
それこそ、イ・ドゥールの里に伝わりし反撃の型。
相手が強大な力を持つ相手であればあるほど真価を発揮する型なのである。
オリジナルは僅かに退け気味、相手との距離を僅かでも保つ為に背が直立するのが特徴だ。
しかし勇のそれはイシュライトが見せたものと比べ、僅かに異なっていた。
左肩を前面に押し出し、前屈みの様に深く腰を落とす……前衛的な姿勢。
反撃と突撃……防御を捨てた、完全なる特攻の型。
相手は剣聖をも圧倒する力の持ち主だ。
例え勇であろうと相手の攻撃が直撃すれば死は免れない。
それでも防御を捨てて相対するという事……それは食らわないという絶対的自身の成せる技。
正気の沙汰とは思えぬ勇の判断に、イシュライトはもはや絶句する他無かったのだ。
その間にも、勇は異形を前に思考を重ねる。
自身に秘められた可能性に探りを入れるかのように。
彼が持つのは知識。
だが経験では無い。
だからこそ、今彼は試そうというのだ。
己に秘められた真の力を。
「救う為に……力を使うぞ、ア・リーヴェ!!」
その時、勇の体に力が沸き上がる。
祈りでも、願いでも、想いでも。
信念でも、覚悟でもない。
己自身の力―――天力。
全てを知った今……彼の力はもう、彼のモノ。
そこに秘めたるコトなど、もはや何も無い。
その顕現を……茶奈達は見た。
神々しくも凄まじき空色の光を全身からとめどなく打ち放つ男の姿を。
まるでその姿は、全身から光の剣を吹き出しているかの様に激しく荒々しく。
背後へ向けて烈風が如き光の波動が常に轟々と弾け飛び、空を突く程に激しく放出されていた。
茜差し始めた藍空に空色を取り戻させるほどの……強き力。
茶奈のフルクラスタを彷彿とさせつつも……それすらをも凌駕する力の放出量。
そこで彼女達は改めて気付く。
今まで見えなかったその力が見えているという事実に。
そして当然、勇自身にもまた力の在り方がしっかりと視界に映っていた。
命力と天力……似て非なる力。
ずっと勘違いして認識していた。
でもやっと心で気付けたから。
こうして彼は今、自分の力を可視化させる事が出来る様になったのだ。
見える様になった力はもはや彼のモノ。
どの様に扱うかも自由自在。
無限の可能性を秘めし天力……その力はアストラルエネマすら遥かに超える。
「ガアアアアアッ!!!!!」
その時、異形がとうとう痺れを切らして飛び掛かった。
遠く離れていたはずの勇へと、あっという間に肉迫する程の速力で。
凄まじい慣性と、重量と、凶悪なまでの腕力。
全てが合わさった拳の一撃を勇へ向けて撃ち放ちながら。
もはや直撃……逃げられぬと思える程にまで拳が迫る。
だが……その瞬間の出来事に、茶奈達がその目を疑う。
飛び掛かっていたはずの異形が……空高く打ち上げられていたのだ。
何が起きたのか彼女達にはわからなかった。
遠かったのもあったのかもしれない、夕刻で見えにくかったのかもしれない。
何よりも、それ程までに一瞬の出来事だったから。
全ては勇の早業からなる所業だった。
体を逸らして拳を躱しながらも、その力を利用し……弱点とも言える腰と背中を叩き付け、跳ね飛ばしたのだ。
そうする事で異形の力は地面へと向けられ、一瞬にして大地にぶつかり、その勢いのままに空へと跳ね飛んだという訳である。
異形は無様にも間も無く落下し、大地へと沈み込む程に激しく打ち付けられていた。
勇は視線を外す事無く、その場に立ったまま異形を睨みつける。
彼にとって今のは相手の動きを止める為だけのもの。
これから繰り出すであろう救いの一撃の為に。
再び立ち上がろうとする異形。
勇はそれを前に決意を固め、右拳を強く握りしめるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる