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第三十三節「二つ世の理 相対せし二人の意思 正しき風となれ」
~加速と連撃 深紅の稲妻の如く~
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――――――
――――
――
―
出来るならこんな事は望んで無かったんだ。
でもよ、互いに引けないっつうなら……俺は例え神にだって喧嘩を売るぜ。
アイツもそれをわかってるからこうやって俺の前に立ってるんだろうよ。
昔だったらきっと、こんな気持ちにはならなかったんだろうな。
力を得ちまったからよ、こう思えたんだろうな。
自分勝手な事くらいはわかってる。
アイツもわかってるって事もな。
でもさ、だからなんだよな。
こうやって互いにぶつかり合う事はいつか必要だったんだ。
なんたってさ、俺もアイツも……単純だからよ―――
―
――
――――
――――――
空光と紅光。
二つの光が迸り、雑木林の間で瞬き示す。
剣聖、ラクアンツェ、バロルフが小さな観覧室から。
他の仲間達は管制室から。
福留を含めた多くの観客が眺める中で。
そして瀬玲が一人、とある区画の窓から。
「結局こうなったかぁ……本当に単純なんだから」
しかし瀬玲もそうなる事を予想していたのだろう。
呆れて溜息を吐き出す中でも、慌てる様子は一切無い。
それどころか……二人の溢れ出る力を目の当たりにした時、彼女の口元に微笑みが漏れる。
「ま、こうなった以上は楽しむだけよね。 ほんと、楽しそう……フフッ」
戦いを前にした彼女の中に渦巻くのは高揚感。
未知なる力を持つ勇と、今までのらりくらりと実力を出しきらなかった心輝の全力の対決。
その戦いがどの様な事になるか……大いに興味があったのだ。
戦いにおいて貪欲なまでに欲求を見せるようになった彼女ならではの事であろう。
もちろん心配が無い訳ではない。
だからこそ、勇を行かせたのだから。
不安と好奇心……二つの感情が入り混じる。
二人の行き着く先の光景が全く見えないからこそ。
その様な思惑が潜む中で、二人の本当の戦いの幕が遂に上がる。
◇◇◇
臨界点を突破した心輝が炎を巻き上げながら、その身を屈める。
たちまち炎は閃光と共に激しい轟音を打ち鳴らし、彼の体を勇へと向けて突進させた。
ッドッバオォォォウッ!!
両腕、両脚から撃ち放たれた業炎はロケットの炎が如く。
凄まじいまでの推進力が彼の全身に掛かり、間髪入れぬ間に勇の下へと到達させる。
その右拳へふんだんに力を篭めて。
もはや彼そのものが閃光。
その姿や……紅の閃光、赤の稲妻。
そう形容出来る程の速度。
これこそ彼の持つ力の一端。
仕返しと言わんばかりに、勇へと向けて鋭く重い一撃が撃ち放たれた。
バッキャァーーーーーーッ!!
勇が両腕を交差させ、その一撃を受け止める。
しかし余りの威力で……先程の心輝と同様に空へと向けて打ち上げられていた。
だが、心輝はそれでは終わらない。
雷光一閃。
その打ち上げ速度にも劣らない素早さで、空に一迅の軌跡を刻み込む。
それはまさに一瞬の出来事。
一瞬にして……打ち上げられた勇の下へと到達したのだ。
「っしゃだらァーーー!!!」
加速に加速した速度での追撃。
しかも利き手である左腕からの渾身の一撃。
それがなお体勢を整えていない勇へと向けて撃ち抜かれた。
ドッガアッ!!
ふんだんに力を乗せた一撃は勇の頬へと打ち付けられる。
途端、激しい衝撃が彼の体の刻む軌道を鋭角に屈曲させた。
森林へ向けて降下していく勇の体。
そこになお心輝が更なる追撃を仕掛けようと追いかける。
止まらない。
宣言した通りに。
こうなったらもう、心輝は止まらない。
「ウオオオオオオオ!!!!!」
何度も、何度も、繰り返す。
敵が倒れるまで、力尽きるまで。
自身の力が尽きようとも、進む道を遮る者は全て。
それが彼の覚悟。
敵として立ち塞がった者を信念の下に打ち砕く。
全ては愛する者の為に。
「っだりゃアーーーーーーッ!!!!」
空を飛ぶ事が出来る心輝にとって、空中戦とは自身の土俵。
茶奈に王者の座を譲り渡した今でも、彼にとっては空も地上のなんら変わらぬ得意の戦闘領域である事に変わりはない。
相手が空を飛べぬ勇だからこそ、その力は最大限に通用する。
打ち上げられた勇もただされるがままに……心輝の連撃に次ぐ連撃に晒され続けた。
心輝が打ち放つのは渾身の一撃ばかりではない。
時には雨の様な連撃、回転を加えた蹴り、肘撃ち裏拳正拳……ありとあらゆる攻撃パターンで付け入る隙を与えない。
爆音と共に加速する打撃が如何なる一撃をも最大の力で打ち放たせていた。
ミシミシィ!!
その度に心輝の体が異音を走らせる。
余りの連続攻撃、威力、加速に、体の構造そのものが付いていけていないのだ。
骨が、筋肉が、血管が……悲鳴を上げる。
だがそれでも彼は止まらない。
超回復力とはこの為に存在するのだから。
超加速、超硬度……それらを維持する為に、彼は付いていけない体すら強引に再生させる。
まさに無限機関。
自身と炎を循環させ、再生能力にすら置き換えて。
それはまるで自分自身だけで完結させる【命力循環法】。
痛みが無い訳ではない。
全て、耐えているのだ。
そうでもしなければ倒せない相手なのだから。
「っがああーーーーーー!!!!」
獣の様に咆え上げ、力を極限にまで循環させる。
炎の翼が光と共に撃ち放たれ、輝きを空へと撒き散らしながら。
相手は次代の神とも言える天士。
そしてその力を垣間見た。
手を抜く訳にはいかなかった。
加減して勝てる訳など無い。
慢心を殺し、極限にまで冷静に徹する。
それが出来るのが園部心輝という男。
彼は勇とは違うのだ。
勇の背中を見続けたからこそ、そうならない様に成れた。
良い面でも、悪い面でも、彼の背中を見続けたから……心輝はここまで強く成れたのだ。
その時、相模湖を覆う森の上に生まれたのは、心輝の閃光の残滓。
宙に残り続ける程に強く、かつ即座にして生まれた光の足跡。
雷が如く不規則な、かつ鋭角な軌道を描き……付近の草木を焼き尽くす。
それは瞬く間にして生まれた……深紅の稲妻の軌跡であった。
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出来るならこんな事は望んで無かったんだ。
でもよ、互いに引けないっつうなら……俺は例え神にだって喧嘩を売るぜ。
アイツもそれをわかってるからこうやって俺の前に立ってるんだろうよ。
昔だったらきっと、こんな気持ちにはならなかったんだろうな。
力を得ちまったからよ、こう思えたんだろうな。
自分勝手な事くらいはわかってる。
アイツもわかってるって事もな。
でもさ、だからなんだよな。
こうやって互いにぶつかり合う事はいつか必要だったんだ。
なんたってさ、俺もアイツも……単純だからよ―――
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空光と紅光。
二つの光が迸り、雑木林の間で瞬き示す。
剣聖、ラクアンツェ、バロルフが小さな観覧室から。
他の仲間達は管制室から。
福留を含めた多くの観客が眺める中で。
そして瀬玲が一人、とある区画の窓から。
「結局こうなったかぁ……本当に単純なんだから」
しかし瀬玲もそうなる事を予想していたのだろう。
呆れて溜息を吐き出す中でも、慌てる様子は一切無い。
それどころか……二人の溢れ出る力を目の当たりにした時、彼女の口元に微笑みが漏れる。
「ま、こうなった以上は楽しむだけよね。 ほんと、楽しそう……フフッ」
戦いを前にした彼女の中に渦巻くのは高揚感。
未知なる力を持つ勇と、今までのらりくらりと実力を出しきらなかった心輝の全力の対決。
その戦いがどの様な事になるか……大いに興味があったのだ。
戦いにおいて貪欲なまでに欲求を見せるようになった彼女ならではの事であろう。
もちろん心配が無い訳ではない。
だからこそ、勇を行かせたのだから。
不安と好奇心……二つの感情が入り混じる。
二人の行き着く先の光景が全く見えないからこそ。
その様な思惑が潜む中で、二人の本当の戦いの幕が遂に上がる。
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臨界点を突破した心輝が炎を巻き上げながら、その身を屈める。
たちまち炎は閃光と共に激しい轟音を打ち鳴らし、彼の体を勇へと向けて突進させた。
ッドッバオォォォウッ!!
両腕、両脚から撃ち放たれた業炎はロケットの炎が如く。
凄まじいまでの推進力が彼の全身に掛かり、間髪入れぬ間に勇の下へと到達させる。
その右拳へふんだんに力を篭めて。
もはや彼そのものが閃光。
その姿や……紅の閃光、赤の稲妻。
そう形容出来る程の速度。
これこそ彼の持つ力の一端。
仕返しと言わんばかりに、勇へと向けて鋭く重い一撃が撃ち放たれた。
バッキャァーーーーーーッ!!
勇が両腕を交差させ、その一撃を受け止める。
しかし余りの威力で……先程の心輝と同様に空へと向けて打ち上げられていた。
だが、心輝はそれでは終わらない。
雷光一閃。
その打ち上げ速度にも劣らない素早さで、空に一迅の軌跡を刻み込む。
それはまさに一瞬の出来事。
一瞬にして……打ち上げられた勇の下へと到達したのだ。
「っしゃだらァーーー!!!」
加速に加速した速度での追撃。
しかも利き手である左腕からの渾身の一撃。
それがなお体勢を整えていない勇へと向けて撃ち抜かれた。
ドッガアッ!!
ふんだんに力を乗せた一撃は勇の頬へと打ち付けられる。
途端、激しい衝撃が彼の体の刻む軌道を鋭角に屈曲させた。
森林へ向けて降下していく勇の体。
そこになお心輝が更なる追撃を仕掛けようと追いかける。
止まらない。
宣言した通りに。
こうなったらもう、心輝は止まらない。
「ウオオオオオオオ!!!!!」
何度も、何度も、繰り返す。
敵が倒れるまで、力尽きるまで。
自身の力が尽きようとも、進む道を遮る者は全て。
それが彼の覚悟。
敵として立ち塞がった者を信念の下に打ち砕く。
全ては愛する者の為に。
「っだりゃアーーーーーーッ!!!!」
空を飛ぶ事が出来る心輝にとって、空中戦とは自身の土俵。
茶奈に王者の座を譲り渡した今でも、彼にとっては空も地上のなんら変わらぬ得意の戦闘領域である事に変わりはない。
相手が空を飛べぬ勇だからこそ、その力は最大限に通用する。
打ち上げられた勇もただされるがままに……心輝の連撃に次ぐ連撃に晒され続けた。
心輝が打ち放つのは渾身の一撃ばかりではない。
時には雨の様な連撃、回転を加えた蹴り、肘撃ち裏拳正拳……ありとあらゆる攻撃パターンで付け入る隙を与えない。
爆音と共に加速する打撃が如何なる一撃をも最大の力で打ち放たせていた。
ミシミシィ!!
その度に心輝の体が異音を走らせる。
余りの連続攻撃、威力、加速に、体の構造そのものが付いていけていないのだ。
骨が、筋肉が、血管が……悲鳴を上げる。
だがそれでも彼は止まらない。
超回復力とはこの為に存在するのだから。
超加速、超硬度……それらを維持する為に、彼は付いていけない体すら強引に再生させる。
まさに無限機関。
自身と炎を循環させ、再生能力にすら置き換えて。
それはまるで自分自身だけで完結させる【命力循環法】。
痛みが無い訳ではない。
全て、耐えているのだ。
そうでもしなければ倒せない相手なのだから。
「っがああーーーーーー!!!!」
獣の様に咆え上げ、力を極限にまで循環させる。
炎の翼が光と共に撃ち放たれ、輝きを空へと撒き散らしながら。
相手は次代の神とも言える天士。
そしてその力を垣間見た。
手を抜く訳にはいかなかった。
加減して勝てる訳など無い。
慢心を殺し、極限にまで冷静に徹する。
それが出来るのが園部心輝という男。
彼は勇とは違うのだ。
勇の背中を見続けたからこそ、そうならない様に成れた。
良い面でも、悪い面でも、彼の背中を見続けたから……心輝はここまで強く成れたのだ。
その時、相模湖を覆う森の上に生まれたのは、心輝の閃光の残滓。
宙に残り続ける程に強く、かつ即座にして生まれた光の足跡。
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