時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
189 / 1,197
第七節「絆と絆 その信念 引けぬ想い」

~Proposal <提案>~

しおりを挟む
 勇とアルライ族の話し合いがようやく終わりを迎えた。

 試す事から始まり、目的や事情の話、そして日誌の話。
 多くを絡んだ話し合いは長い長い時間と感じさせていて。

 体の弱そうなジヨヨ村長もこうして終わった時にはグッタリだ。

 ただ、これでまだ全部が終わった訳ではない。
 次に控えるのは日本政府との話し合い。
 ある意味で言えば、勇との話し合いよりもずっと重要な訳で。 

 そんな話をちょろっと聞けば、マイペースなジヨヨが嫌そうな顔を浮かべるのも無理は無く。

 バノに一喝された上で一旦の休憩、勇の見送りはせず。
 再びその巨体に案内される形での退散となった。
 もちろん毛玉もセットであるが。



「そういえばバノさん、少し訊きたい事があるんです」

 そんな道中で、ふと勇が一つの疑問をバノへとぶつける。
 「なんかこんなシチュエーション知ってる気がするなぁ」などとデジャブを感じつつ。

「さっきの話で出てた【心の色】ってヤツなんですけど」

「おぉ? あぁ、あの話け。 ありゃまぁ一種の命力特性に近いわな。 性格にもよるがぁ、相手の心を感じ取れるくらいにゃ命力に卓越しとかにゃならん」

「なるほど、やっぱり命力の一端なんだ……」

 【心の色】……それはすなわち命力に通ずるからこその。
 翻訳能力にも似た、相互理解を助ける力の一端なのだろう。
 生まれた時から命力を誇る魔者らしい力と言える。

 でも勇は何となくだが、それが魔者だけの力とは思えなくて。

「もしかして、その力って離れてたりしても感じたりするんですかね?」

「うんむ。 基本的に命力を流して届く範囲ならどこでも読めるけぇ。 必要なんは、相手の心を覗ける程に先鋭化した感覚センスじゃ。 まぁ要するにカンの鋭い奴っちゅうこっちゃ」

「そうか……じゃあもしかして―――」

 勇がそんな質問を思い付いたのは思う所があったからだ。

 この隠れ里にやって来た時、バノは二度に渡って呼ばれたかの様に現れた。
 その行動が偶然としては余りにも不自然に思えてならなくて。
 しかも、そんな行動はとある人物とも共通点があったから。

 そう、勇は【心の色を見るの力】を持っているであろう人物に心当たりがあったのだ。

 殆ど話す間も無かったのに、すぐに自分の事を信用してくれて。
 それだけに留まらず、親愛の言葉まで示してくれた。
 そして今でもきっと想ってくれている。

 そんな、青髪の少女の事が。

「ま、この力を持つモンは『ワシら側』にゃほとんどおらんでな。 おめぇさんの思っとる奴がその域に達してるかまではワシにもわからん」

 バノはそう言うも、可能性が無いという訳でもない。
 実際に再会して、直接聞くまでは。





 そんな話を終えた頃、彼等は既に村入口の階段へと差し掛かっていて。
 御味を電話で呼びながら、一段一段をゆっくりと降りていく。
 上からだと意外にも段差が大きく見えた様で、その足取りはほんの少しぎこちない。
 それでもようやく階段を降りきり、電話も済ませて。

 後は御味が来るのを待つだけに。

 そんな時、バノが勇の肩を揺らしていて。

「一つ言っとくが、こうなったからといってすぐに提案を受け入れられる訳やない。 それだけは覚えとけぇ」

「それもそうですよね、村の人達皆がまだ納得した訳じゃないですし」

 そうして伝えられた一言に、勇もまた頷きを見せる。

 バノが言う事も当然だ。
 隠れ里の魔者達は戦いを恐れて世俗から離れる事を良しとした者達の末裔で。
 当然人間の事も恐れ、忌避しているだろう。
 カプロが言っていた、尾ひれの付いた噂を流布する程に。

 そんな先入観に縛られた彼等がすぐに人間を受け入れられるはずも無いのだから。



 だが、それにも例外という物は存在する。



「でも若もんは別じゃ。 固定概念に囚われん子供ならすぐにでも仲良くなれる可能性はあろォ」

 そんな時、足元をピョコピョコと歩き回るカプロの頭をまたしても「むんず」と掴み取り。
 まるでそう扱い慣れたかの様に、勇の前へと寄せていく。

「こんのアホンダラの様にのぉ」

 このカプロアホンダラこそが、勇達にとっての真の希望となるかもしれない。
 バノはきっと、そう期待しているのだ。
 ほんの少し頼りないが。

 それでも十分過ぎる可能性だからこそ―――



 互いに手を取り合う、嬉しそうな勇とカプロの姿がそこにあった。





◇◇◇





 その後、連絡を受けた御味が隠れ里へとやってきた。
 勇が交渉している間、ちゃなとちょっとしたドライブを満喫していたらしい。
 買ってきたばかりのペットボトル紅茶が勇へのご褒美となった様だ。



 それからというものの、話はあっという間に進んでいく。

 御味が続いてジヨヨ村長の家へと足を運び。
 日本政府代表とアルライ族代表との正式な会合が始まったのである。

 しかしそんな話し合いもすぐさま終わる事に。
 勇が予め話を通したおかげで、互いの意見に齟齬が生まれなかったからだ。

 話し合いで決まったのはほんの数件。

 日本とアルライ族、共にある程度の融和が進むまではしばらく現状維持で。
 それに並び、現代文化を学ぶ者として、アルライ族から選出した若者を特使とする。
 余計な者が近づかぬよう、本来の地主にも説明した上で一旦の国有地化も進めるそうだ。

 また、日本政府による村発展の協力も惜しまないとの話も一つ。
 この事はこれからの相互理解の度合いによって、アルライ側が可否を判断する事に。
 でも食料などに困る様であればすぐさま対応を行うと、協力姿勢は崩さないままで。

 基本的に決まったのはこんな所。

 ただジヨヨの雰囲気からして、どうやらこれだけでは済まなさそう。



 話し合いを終え、勇達がジヨヨの家から姿を現す。
 今度はさすがに〝客人〟相手ともあってジヨヨ当人の見送り付きだ。

「今日は話し合いの場を設けて頂き、本当にありがとうございました」

「礼は要らんよ。 言うならフジサキユウ殿にしといてな」

 ジヨヨ当人も、勇がこうして切り拓いて生まれた可能性に感謝していて。
 そんな勇もを見送りたいからこそ、最後は自分の足で出向こうと思っての事である。

 とはいえ、実はそれ以外にも理由がある様子。

「ほいでのぉオミ殿よ。 実はちょっとした提案があるんや」

「提案……? どんな事でしょうか?」

「実はのぉ、折角やから明日か明後日にでも交流会したらどうかとのぉ」

 それこそがこの「交流会提案」。
 これにはさすがの勇達も戸惑うばかりだ。

 何せ、今すぐの融和は出来ない、と言っておきながらのこの話なのだから。
 交流に余程の自信があるのか、それともただの閃きなのか。

 唐突とも言える話が、あの冷静そうな御味にさえも頭を抱えさせる事に。

 確かに今回は福留の代理として訪れ、しっかりと仕事をこなした訳だが―――
 実の所、御味にはそれ以外に関する〝入れ知恵〟を貰っていない。
 おまけに明日明後日の話ともなれば、彼の持つ権限ではどうしようもない訳で。

 しかもそんな御味に更なる追い打ちが。

「ボク、人間の事もっとよく知りたいッス……」

「しりたいですぅ……」

 御味の足元にはいつの間にやら例の毛玉達が。
 カプロと子供達三人がキラキラと眼を輝かせて覗き込んでいたのだ。
 この独特の破壊力を前に、子持ちの御味が耐え切れる訳も無い。

「童なら誤解無く接する事が出来ようなぁ。 じゃからこいつらだけにでも現代の文化っちゅう奴を教えてやりたいんじゃよ。 そうすりゃいずれ実になる時が来るやもしれんでな」

「そ、そうですね……でもどうしようかな」

 御味もジヨヨの想いがわからない訳でもない。
 もちろん子供達の気持ちも。

 ただこれはやはり経験の差と言った所か。
 御味には福留ほどに役割を振り回す勇気は無かった様だ。



 だが―――御味が動けなくとも、ならば自由に動く事が出来る。



「御味さん、それなら俺に任せてください!! いいアイディアがあります!!」
「えっ!? 本当かい!?」

 そう、勇ならば。

 あくまでも依頼引受人として。
 でもその行動は限り無く自由に近く、権限などに縛られない。

 そして別の意味でも自由奔放で、事情をよく知る彼等なら。





 こうして、勇の咄嗟のアイディアが功を奏し。
 ジヨヨの思い切った提案は見事受け入れられる事に。

 この日、八月初頭。

 勇の欲から始まった人間と魔者の対話は、これにより大きな進歩を迎える事となる。
 もはやその規模は国という枠を超えたに等しいと言えるだろう。

 何故なら、これから始まるのはただの交流会ではない―――



 人類史上初とも言える『人間と魔者との異種間コミュニケーション』なのだから。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...