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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~La situation de guerre s'inverse <逆巻く戦況>~
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「勇さん、後は任せます。 私達は全力でこの場を凌ぎきりましょう。 各部防御壁の出力三十%を維持は継続、命力増幅器効率値の減衰に注意してください」
勇達を送り出した莉那達も、役目を終えた訳ではない。
最後の最後まで耐えきる事、それが彼女達に課せられた役目なのだから。
作戦が開始された以上、勇達が発見されるのは時間の問題。
だがもう【救世同盟】側の攻撃能力の減衰率は想定を超えた後だ。
こうなったからには、【救世同盟】側も下手には引き下がれない。
いつ突破出来るかもわからないアルクトゥーンを堕とすのが先か。
命令に背いてデュラン達の援護に向かうのが先か。
この究極の二択は、尖兵である彼等には判断出来ない領域なのだから。
「敵勢力、現在も攻撃体勢を維持の模様!」
「第十一波、来ます!!」
その間も当然、攻撃は続く。
もはやなりふり構わず、街が焼かれようと関係なく。
現存する兵器を全て使い、攻撃を継続する。
敵も必死なのだ。
止められる訳も無い。
だからアルクトゥーンは受け入れ続ける。
何度でも、何度でも。
勇達がデュラン達を倒すその時まで。
「出力者のコンディションどうですか?」
『疲弊こそしていますが問題無いとの事です! 継続可能!』
「わかりました。 現行の調整は本人達に任せましょう」
では何故アルクトゥーンはこうも耐えられるのか。
本来ならば四十分程度の防御で落ちるかもしれないのに。
答えは簡単だ。
落ちないだけの命力をアルクトゥーンに与えればいい。
そう、たったそれだけ。
これにもまた秘策があったのだ。
アルクトゥーン中核には巨大な動力部が存在する。
機体の全ての動力を賄う命力動力炉だ。
その力の供給源は基本的に乗組員の命力。
僅かずつ集め、効率化し、増幅して蓄積させる。
それが今までの行動に使用されてきた。
しかしその蓄積上限値も決まっており、その上限値以上の力を発揮する事は出来ない。
それがすなわち四十分の壁の正体である。
でももしそこに外部からの出力があったらどうだろうか?
アルクトゥーンへの攻撃を全て凌げるほどの外部出力があるならば―――
その継続時間は上限値に拘らず、可能な限り延ばす事が可能。
そしてアルクトゥーンはその外部出力を受け入れる機能を有している。
それは動力部のすぐ隣、外部出力供給部。
かつて空島を見つけた時、捕まった人が入れられたポッドが並ぶ部屋である。
そこに、かの三人の姿が。
剣聖、ラクアンツェ、バロルフである。
「うおおおおお!!」
「はあああああ!!」
「おぉ……おお、ぉぉぉ!!」
あのポッドは命力を供給する為の装置。
彼等はそこに入り、常に命力を供給し続けていたのだ。
本来人一人の命力など、アルクトゥーンの稼働出力にとっては微々たるもの。
だが彼等は違う。
彼等の類稀なる命力値と精神力は、アルクトゥーン防衛用出力には最適で。
だからこそ、勇達は今回適任とも言える役割を任せたのである。
「おぉ……ぉぉ……!!」
「バロルフゥ!! この程度でくたばるんじゃねぇぞぉ!!」
ただ、一人だけは少し無茶が過ぎた様だが。
とはいえさすがの剣聖とラクアンツェか。
二人の精神力はもはや常人では計り知れない程に強大。
これ程の長時間の間を防衛能力に回してもなお気力が途切れる事は無い。
むしろ余裕と言わんばかりに体を滾らせ続けているのだ。
彼等の居る限りアルクトゥーンが落ちる事は無い。
勇達もそう信じているから、迷い無く戦えるのだろう。
そう、もうこの戦いに何の疎いも存在しない。
後は―――デュラン達を叩くだけだ。
◇◇◇
「デュラン、どうやら一杯食わされたのは我々らしい。 敵艦は囮だ。 本命が南から真っ直ぐ向かって来ているぞ!」
「ッ!?」
デュランがそろそろレンヌへ向かおうとしていた時、事態は大きな変化を迎えていた。
屋敷周辺の監視網が勇達の存在を捉えたのだ。
だがそれはすなわち、ほぼ間も無くの到達を意味する。
「デュランッ!?」
「ああ。 こうなったら仕方ない、このまま彼等を迎え撃つ。 皆、私に力を貸してくれ」
「まっかせてぇん!!」
「承知しました。 御心のままに」
しかし彼等もまたこういう事態を想定はしていたのだろう。
場数も多く踏んで来たからか、その顔には余裕の笑みを浮かべていて。
己の思うがままに部屋から駆け出していく。
そうして気付けば、待機室にはデュランと黒鷲だけに。
「では俺も行くとしよう。 少し語り合いたい男が映像に映っていたのでね」
「貴方が? ……まぁ余計な詮索はしないでおくよ。 ここまで付き合ってくれたんだ、好きにするといい」
黒鷲はデュランの思想に組しているという訳では無いのだろう。
あくまでも軍関係者でありながら一歩引いた存在な様だ。
デュランが一番その事を把握しているからこそ、微笑みで彼を送る。
今は少しでも戦力が多いに越した事はないのだから。
そして気付けばデュラン一人に。
だがその様子はとても落ち着いていて、部屋から踏み出そうともせず。
「……リデルの計画は失敗か。 まぁでも、それなら私が直接迎えに行けばいいだけの事さ」
こうして計画が逆手に取られる事となった原因は彼にもわからない。
とはいえ、それでも関係無いのだろう。
デュランにはその計画以上に待ち望んでいた事があるのだから。
「グランディーヴァのユウ=フジサキ……やっと君に会えそうだ。 さて、待つとしよう。 君だけがここにやって来る事を願って」
そう、デュランは待つ気なのだ。
送り出した仲間達を乗り越えて、勇が突破して来るのを。
「互いに相容れない思想。 それを次代に繋ぐのは、君ではなく私であると証明する為にね」
この時デュランに浮かぶのは強い信念を秘めた瞳。
迷い無き未来を見据えた想いの形。
その意思は、誰にも負けないと自負する程に強固だから。
その意思を今、誰にも負けない強大な力へと換える。
勇達を送り出した莉那達も、役目を終えた訳ではない。
最後の最後まで耐えきる事、それが彼女達に課せられた役目なのだから。
作戦が開始された以上、勇達が発見されるのは時間の問題。
だがもう【救世同盟】側の攻撃能力の減衰率は想定を超えた後だ。
こうなったからには、【救世同盟】側も下手には引き下がれない。
いつ突破出来るかもわからないアルクトゥーンを堕とすのが先か。
命令に背いてデュラン達の援護に向かうのが先か。
この究極の二択は、尖兵である彼等には判断出来ない領域なのだから。
「敵勢力、現在も攻撃体勢を維持の模様!」
「第十一波、来ます!!」
その間も当然、攻撃は続く。
もはやなりふり構わず、街が焼かれようと関係なく。
現存する兵器を全て使い、攻撃を継続する。
敵も必死なのだ。
止められる訳も無い。
だからアルクトゥーンは受け入れ続ける。
何度でも、何度でも。
勇達がデュラン達を倒すその時まで。
「出力者のコンディションどうですか?」
『疲弊こそしていますが問題無いとの事です! 継続可能!』
「わかりました。 現行の調整は本人達に任せましょう」
では何故アルクトゥーンはこうも耐えられるのか。
本来ならば四十分程度の防御で落ちるかもしれないのに。
答えは簡単だ。
落ちないだけの命力をアルクトゥーンに与えればいい。
そう、たったそれだけ。
これにもまた秘策があったのだ。
アルクトゥーン中核には巨大な動力部が存在する。
機体の全ての動力を賄う命力動力炉だ。
その力の供給源は基本的に乗組員の命力。
僅かずつ集め、効率化し、増幅して蓄積させる。
それが今までの行動に使用されてきた。
しかしその蓄積上限値も決まっており、その上限値以上の力を発揮する事は出来ない。
それがすなわち四十分の壁の正体である。
でももしそこに外部からの出力があったらどうだろうか?
アルクトゥーンへの攻撃を全て凌げるほどの外部出力があるならば―――
その継続時間は上限値に拘らず、可能な限り延ばす事が可能。
そしてアルクトゥーンはその外部出力を受け入れる機能を有している。
それは動力部のすぐ隣、外部出力供給部。
かつて空島を見つけた時、捕まった人が入れられたポッドが並ぶ部屋である。
そこに、かの三人の姿が。
剣聖、ラクアンツェ、バロルフである。
「うおおおおお!!」
「はあああああ!!」
「おぉ……おお、ぉぉぉ!!」
あのポッドは命力を供給する為の装置。
彼等はそこに入り、常に命力を供給し続けていたのだ。
本来人一人の命力など、アルクトゥーンの稼働出力にとっては微々たるもの。
だが彼等は違う。
彼等の類稀なる命力値と精神力は、アルクトゥーン防衛用出力には最適で。
だからこそ、勇達は今回適任とも言える役割を任せたのである。
「おぉ……ぉぉ……!!」
「バロルフゥ!! この程度でくたばるんじゃねぇぞぉ!!」
ただ、一人だけは少し無茶が過ぎた様だが。
とはいえさすがの剣聖とラクアンツェか。
二人の精神力はもはや常人では計り知れない程に強大。
これ程の長時間の間を防衛能力に回してもなお気力が途切れる事は無い。
むしろ余裕と言わんばかりに体を滾らせ続けているのだ。
彼等の居る限りアルクトゥーンが落ちる事は無い。
勇達もそう信じているから、迷い無く戦えるのだろう。
そう、もうこの戦いに何の疎いも存在しない。
後は―――デュラン達を叩くだけだ。
◇◇◇
「デュラン、どうやら一杯食わされたのは我々らしい。 敵艦は囮だ。 本命が南から真っ直ぐ向かって来ているぞ!」
「ッ!?」
デュランがそろそろレンヌへ向かおうとしていた時、事態は大きな変化を迎えていた。
屋敷周辺の監視網が勇達の存在を捉えたのだ。
だがそれはすなわち、ほぼ間も無くの到達を意味する。
「デュランッ!?」
「ああ。 こうなったら仕方ない、このまま彼等を迎え撃つ。 皆、私に力を貸してくれ」
「まっかせてぇん!!」
「承知しました。 御心のままに」
しかし彼等もまたこういう事態を想定はしていたのだろう。
場数も多く踏んで来たからか、その顔には余裕の笑みを浮かべていて。
己の思うがままに部屋から駆け出していく。
そうして気付けば、待機室にはデュランと黒鷲だけに。
「では俺も行くとしよう。 少し語り合いたい男が映像に映っていたのでね」
「貴方が? ……まぁ余計な詮索はしないでおくよ。 ここまで付き合ってくれたんだ、好きにするといい」
黒鷲はデュランの思想に組しているという訳では無いのだろう。
あくまでも軍関係者でありながら一歩引いた存在な様だ。
デュランが一番その事を把握しているからこそ、微笑みで彼を送る。
今は少しでも戦力が多いに越した事はないのだから。
そして気付けばデュラン一人に。
だがその様子はとても落ち着いていて、部屋から踏み出そうともせず。
「……リデルの計画は失敗か。 まぁでも、それなら私が直接迎えに行けばいいだけの事さ」
こうして計画が逆手に取られる事となった原因は彼にもわからない。
とはいえ、それでも関係無いのだろう。
デュランにはその計画以上に待ち望んでいた事があるのだから。
「グランディーヴァのユウ=フジサキ……やっと君に会えそうだ。 さて、待つとしよう。 君だけがここにやって来る事を願って」
そう、デュランは待つ気なのだ。
送り出した仲間達を乗り越えて、勇が突破して来るのを。
「互いに相容れない思想。 それを次代に繋ぐのは、君ではなく私であると証明する為にね」
この時デュランに浮かぶのは強い信念を秘めた瞳。
迷い無き未来を見据えた想いの形。
その意思は、誰にも負けないと自負する程に強固だから。
その意思を今、誰にも負けない強大な力へと換える。
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