時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」

~Mêlée <乱戦>~

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 広大な農地が広がるこの土地で、グランディーヴァの面々が走り、飛び。
 それを見掛けた無関係な者は、これから巻き起こるであろう激戦に恐れて逃げていく。

 この地に居る者全てが戦闘員という訳では無い。
 代々に渡って受け継がれてきた土地も多く。
 デュランの屋敷がたまたま近くに出来ただけに過ぎないのだ。
 
 勇達もそんな彼等を巻き込まないよう、進行ルートの配慮を欠かさない。
 あくまでも狙いはデュラン達なのだから。

 ただ、敵意を見せて襲い掛かってくる者も居る。
 進攻してくる者達に備え、元から周囲に警護兵が控えていたのだろう。
 勇達に向けて銃を構え、容赦無く発砲を繰り返す。



 そんな敵意を向ける者にならば、もう容赦はしない。



キィィィン―――ドッバォォォンッッッ!!!



 たちまち、ディックの構える荷電粒子砲が光を放つ。
 〝オーラカノン〟などという浮く様な名前だが、その実態は超電磁砲リニアカノン
 磁力による反発力を極限に高め、超圧縮熱榴弾を撃ち込むという驚異の兵器だ。

 その光が放たれた時、瞬時にして着弾地点が爆発に見舞われる事となる。
 大地を大きく抉る程に凄まじい爆発を。

 その速度、ほぼ光速。
 それ程までの弾速・威力を誇るのである。

 この威力、もはや量産された魔装程度では防ぐ事叶わない。
 以前勇達が着ていた魔装ですら貫く威力を秘めているのだから。

 例えるならこの威力、昔の茶奈が撃ち放った【コンポジットカノン】並みである。
 
 しかも恐ろしいのは―――これが単発ではないという事。

「敵意を向けるなら容赦はしねぇ!! 皆纏めてぶっ潰す!!」

 ディックがトリガーを引けば、間も無く第二、第三の砲撃が撃ち放たれる事となる。
 
 弾数こそ制限はあるだろう。
 でもそれを撃ち尽くすまで、ディックが意思を向け続けるまで、攻撃は止まらない。
 何度でも、何度でも、敵意を向ける敵が居る限り放ち続ける。
 勇達の消耗を少しでも減らす為に。

 こうして邪魔者を排除するのが今のディックの役目なのだ。
 
 余りにも強力過ぎる砲撃は、遠目で見ただけでもわかるほど。
 そんな死亡確定とも言える砲撃へ喜んで向かう者など居るはずも無い。

 例え高性能な魔装を纏っていても。
 いくら戦闘経験が豊富だとしても。
 そんな物など全く役に立たない世界が目の前に在るのだ。

 たちまち戦意さえも失った兵士達が逃げ惑い、蹴散らされていき。
 それを追うかの様に、ディックの追撃が容赦なく見舞われる。
 ただし追撃に限ってはただの脅しで、直撃は狙わないが。

 とはいえ、その徹底した行為が僅かな抵抗心すら失わせる事となる。

 遥か先にデュラン達の屋敷が見え始めた時、もはや邪魔者は誰一人として居なくなっていた。
 自分達がこの戦いで何の役にも立たないという事を理解したのだろう。

 こうなれば後は、直接対決するのみ。
 


 だが、そう思っていたのも束の間―――遂にがその姿を現す。



「見つけたぜ乳牛女ァーーーッッ!!」

 遥か先から突如として飛来したのは、あのピューリーだ。
 目にも止まらぬ速度で真っ直ぐ突っ込んで来たのである。

「あの子が来たッ!!」

 その様子はもはや確認するまでも無い程の存在感を誇っていて。
 それ故に、茶奈もまた同様に飛び出していた。

 たちまち二つの光が飛び上がり、大空に螺旋の軌跡を刻み込んでいく。
 姿があっという間に見えなくなる程の速度で。

 そして出来上がるのは、大空を埋め尽くさんばかりの閃光軌道。
 二人の力はそれを成してしまう程に速く、強く、激しかったのだ。



 もちろんそれだけでは済まされない。
 ピューリーの登場を皮切りに、次々とデュランの仲間達が襲い掛かって来たのだ。

「ふはははーーーッ!!! これだけの筋肉ゥ!! 纏めて相手してやりたい所よォ!!」

「そうはいかねぇ!! 獅堂の借りはここで返させてもらう!!」

 次に現れたのはあの筋肉男、アルバ。
 相変わらずの荒々しい走りで距離を詰めて来ていて。

 そに対する心輝が今までにない程の速度で急接近していく。

「だらっしゃあ!!」

 刻んだ軌跡はまさに紅雷光の如く。
 雷の如き速度が遂に体現される。

 その相対速度は初見のアルバが捉えられぬ程に圧倒的。
 一瞬にしてその腹部へと潜り込む。

「おおぉっ!?」

 でもそれは攻撃のためでは無い。
 目的はあくまでも勇をこの先へと送り届ける為に。

 その時、心輝はあろう事か相手の巨体ごと凄まじい速度で飛び退けたのである。
 茶奈にも負けない程の超速度で。



 しかしそれも彼等には想定していた出来事だったのかもしれない。
 なんと退けられたアルバの背後から、蒼の一閃がナターシャへ向けて真っ直ぐ刻まれたのだ。

 それは雷光を伴う弾丸。

チュィーーーンッ!!

 ただそれも今の彼女に見切れない程ではない。
 超高速の弾丸さえも得意の剣技いなして躱す。

 しかも躱した時には既に飛び上がっていて。
 閃光を伴った跳躍は瞬時に空へ。

 一身を盾に、先に舞う青の戦士を迎え撃つ。
 
「悪いけど、君達をこの先に行かせる訳にはいかないッ!!」

「じゃあボクも君達に邪魔させる訳にはいかないよッ!!」

 エクィオが握るのは二丁拳銃。
 しかも銃剣付きの専用兵装だ。

 二刀流 対 二刀流。
 二人の戦いは例え飛行能力が無かろうとも関係なく、空地を縦横無尽に駆け巡る。



 一方で、イシュライトは既に勇達の駆ける軌道から外れていた。
 自らが望む戦闘相手を見つけていたのだ。

「見つけましたよ……貴方がサイリェンランですね。 是非ともお相手頂きたい」

「おや、僕の事を知ってるんですねぇ。 一体どこの誰に聞いたのやら」

 ただ、きっと崔もまた同様にイシュライトを狙っていたのかもしれない。
 同じ拳法家として、力を奮う者として。
 だから彼もまた走り、こうして相対している。

 共に力をぶつけ合う事を望む戦士だから。
 そんな二人の間にもはや言葉など要らない。

 故に―――そう出会った時、もう既に彼等は拳を交えていた。
 互いの鋭い拳に殺意を乗せて。



「ウオオオオッッッ!!!」
「ハァァァァ!!」

 例え策を弄しても、勇達の進攻が全て順調に行くとは限らない。
 なんとアージとパーシィが揃って突っ込んで来たのである。
 
 力と力。
 二つの合力を前にもはや砕けぬ物無し。
 容赦ない二人の打ち下ろしは電磁命導砲もろとも巨大なボディを打ち砕く。

ドッギャアーーーンッッッ!!!!

 突然の奇襲とも言える攻撃に成す術も無く、【グランドトマホーク】は爆裂炎上し。
 【ヴォルトリッター】本体もが跳ねる程に激しく転倒していく。

 だが―――

 乗っていたディック達はと言えば辛うじて難を逃れていた。
 瀬玲が咄嗟に彼を掴み、逃げる様にして跳ね上がっていたのだ。
 当然、運転していたマヴォも無事である。

 間も無く三人が揃って大地へ足を突く。
 高速で走り去る勇に背後を見せながら。

 だからこそ、瀬玲もマヴォもその場から退く気はさらさら無い。
 目前の強敵を勇へと追わせない為にも。

「ディック!! お前は勇の後を追えッ!! ここは俺達が引き受けるッ!!」

「わかった、頼むぜ旦那方よぉ!!」

「ちょっとぉ、そういう纏め方しないで欲しいんだけど!?」
 
 そんな小言が響くも、既にディックは景色の先へ。

 彼もまた常人なりに必死だから。
 その足で、そのひ弱な体で勇を支えなければならないから。
 彼もまた止まれない一人なのだ。

「久しいなマヴォ……見ない内に逞しくなった」

「兄者もな。 だが、アンタは以前よりもずっとみすぼらしくもなったァ!!」

 そしてディックを送り出した今、もはやマヴォは挑むのみ。
 アージへの様々な想いを胸に秘め、気迫を、力を滾らせて。

 父/師カノバトの想いを引継ぎし魔剣を、今その手に握り締める。

「教えて貰うぞアージッ!! あの時アンタが犯した罪の理由をなッ!!」

 突然消えたその理由を確かめる為に。



 こうなれば当然、瀬玲はパーシィと戦う事となる。
 でも瀬玲当人としてはどこか不服そうだ。

「本当はあのエクィオって奴とやり合いたかったんだけどなー」

「あらぁ、あの子とヤり合いたいなんて積極的ねぇん。 余程スキモノなのかしら!」

「アンタも相当だと思うけど?」

 パーシィはそんな減らず口を前にしても、相変わらず体をくねらせていて。
 瀬玲はそんな彼の姿に堪らず顔をしかめさせる。

 何せ、パーシィの性格は瀬玲にとって最も嫌悪すべき在り方で。
 何者にも美しくありたいと願う瀬玲にとって受け入れがたい容姿なのだから。

「んふふゥ、ならアタシのスゴさを見せつけてあげるわぁん。 ヒィヒィ泣かせてア・ゲ・ル!!」

「あーそういうのパス。 やるならさぁ―――」

 ただ、戦いとなれば話は別だ。

 瀬玲が真に求めるのは闘争・激闘・乱戦。
 血沸き肉躍る戦いこそが、今の欲望の糧なのだから。



「互いにグッチャグチャになるくらいヤりあおうよ……!!」



 だからもう、瀬玲も止まらない。

 他の皆も、デュランの仲間達も。





 こうして仲間達が拓いた道を勇が行く。
 多くの者達の想いが交錯する中で。

 デュランと相対する為に。
 リデルの願いを叶える為に。



 だがまだ勇達は気付いていない。
 この激戦の中で、一際異なる想いを描く者が居る事に。

 その者はただ一人で、誰にも従わず、誰にも邪魔されず。

 ―――ただ、その時を待ち続ける。


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