時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」

~Épée légendaire <伝説の剣> 勇とデュラン②~

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 一方その頃、アルクトゥーンでは―――

「お疲れ様です!! これより二十分程の休憩を挟んでください」

 動力炉室隣、命力供給室。
 そこに、一旦の役目を終えてポッドから出ていく剣聖達の姿が。

「おう。 どうだぁ状況は?」

「お陰でバリア出力維持が出来るどころか、現状は蓄積エネルギーだけで充分対応可能だそうです」

 その成果はと言えば―――ほぼエネルギー最大状態。
 それを成し遂げたのはさすがの剣聖達、と言った所であろうか。

 ただ一人、精も根も尽き果てたミイラ状態ではあるが。

「カ……カハ……」

「おうおうだらしねぇな、自分からやるって言っておいてよう」

 間も無く床に崩れ落ちるバロルフを前に、剣聖も「やれやれ」とお手上げだ。

 バロルフはきっと見栄を切りたかったのだろう。
 憧れの三剣魔に少しでも良い所を見せようと。

 ただ、その方向性は若干違う方に向いているのはご愛敬。
 ラクアンツェにツンツンと突かれた時の顔は、痙攣しながらもどこか幸せそうである。

「さて、さすがに疲れたな」

「そうね、ここまで全力になったのはいつ振りかしら」

 そんな余裕そうだった二人も、遂には床にぺたりと座り込み。
 額に浮かんだ汗を揃って拭う。

 例え限界を超えて命力を上げ続けて来た二人でも、ちゃんと限界はあるもので。
 今回の様に絶え間なく吸われ続ければ、こうも疲弊するだろう。

 命力は精神力によって増幅するが、同時に有限でもあるのだから。

 とはいえ、二十分の休憩でコンディションを戻せるのも二人ならではと言った所か。

「ところで、あの子達は勝てるかしらねぇ……」

 たちまち始まるのは緩い雰囲気からの会話。
 でもその内容はやはり―――

 剣聖達も不安ではあるのだろう。
 勇達の実力は良く知っているつもりだが、相手の力も相応で。
 客観的に見れる二人だからこそ、戦力の優位性イニシアチブには少し疑念を感じる様だ。

 というのも―――

「さぁな、わからねぇ。 ただデュランとかいう野郎がもしを持ってるとしたら……状況は最悪だろうな」

 そんな時見せた剣聖の表情は深刻なまでに強張り。
 太い腕を組み、溜息のままに天井を見上げていて。

 〝最悪の可能性〟とやらに疎いを見せる姿が。

「アレ……とは何で御座いますでしょうか……」

 らしくもない姿を見せる剣聖に、バロルフも気になった様で。
 床に潰れながらも、掠れて震えた声で好奇心を露わにする。

 ただ、こんな質問をすれば待っているのは当然―――

「まぁた教えてってかあ!?」

 この手の質問を嫌う剣聖のいつもの反応が待っている訳で。

 でも今はラクアンツェが居るのが幸いか。
 たちまちそのデカい口に金属製の腕がねじ込まれる事に。

「ハイハイ、面倒だから騒がないの」

「んがぁ!?」

 これがラクアンツェ流の剣聖対処方法と言った所か。
 自分の分身と言い合えるだけに、やる事は心輝と瀬玲以上のスキンシップぶりである。

「……二年前、デュゼローの戦いは見た事あるかしら?」

「ヘ、ヘイ……もちろんで御座います」

 そんなスキンシップに羨ま―――タジタジなバロルフに向けられたのは、緊張感を伴う一声。

 これにはさすがにバロルフも緊張を隠せず。
 返す言葉は更なる震えを纏っていて。

「じゃあ、あの時のデュゼローは本気だったと思う?」

「え……ち、違うので御座りまするでしょうか?」

 その緊張はキャラ崩壊一歩手前に至る程の動揺さえも纏わせる。

 だが厳密に言えば―――ラクアンツェの一言に重大な秘密を感じてしまったから。

「―――あの野郎は本気じゃなかったのさ。 当たり前だ、野郎は〝本命〟を持ち合わせていなかったからな」

「本、命……?」

「そう、本命。 何でかはわからないけど、彼はあの時、愛刀とも言える魔剣を持っていなかった。 何故かしらね?」

 ただそんな事を訊かれても、本命とやらも知らないバロルフが答えられるはずも無い。
 狼狽え、悩み、頭を抱えるだけが関の山だ。

 でもそれは単純にキッカケが無いからに過ぎない。
 本命の正体を匂わせるキッカケが。



 そう……その答えはキッカケがあるだけで充分な程に簡単だった。
 当事者ではないバロルフでさえもわかる程に。
 


「魔剣【アデ・リュプス】だ」



 その一言を聴いた途端、バロルフの顔が蒼白となる。
 絶え絶えだった息が止まってしまう程に。

 その名をバロルフは知っていた。

 彼ほどの実力者が知らないはずも無かったのだ。

「【アデ・リュプス】って、あれは伝説じゃあ……!?」

「残念だが現存するんだぁよぉ。 やべーぞぉあの魔剣は」

 そう語る剣聖にも既に余裕は無い。
 その恐ろしさを語るかの様に、見上げていた顔は既に沈んでいて。
 陰りを帯びた顔が、見てわかる程に強張っていく。



「なんたってぇあの魔剣を使うデュゼローは、俺並みに強くなったんだからな」



 これにはもはやバロルフも、聞き耳を立てていた隊員達も戸惑いを隠せない。

 余りにも指標が曖昧過ぎたので。

 いっそ「俺より強くなる」なら恐れもしよう。
 でもそこはやはり剣聖、譲れない気持ちがあるのだろうか。
 決してそんな事は言わない。

 でもこうして目の前にいる人物並みと言われても、理解出来る人間がどれだけいるやら。

 隣に座るラクアンツェも既に失笑気味である。
 
「……あの魔剣を使わないデュゼローはそれほど強くないのよ。 それこそ三剣魔を名乗れない程にね。 でもそれを良しとしなかった彼は、あの魔剣を使の。 その結果、私達と肩を並べる事が出来る様になったってワケ」

「なんですとぉ……」

「彼の異名である【黒双刃】は、一本目を【アデ・リュプス】として、二本目には何でも使える、という意味で付けられたのよ」

 この話を前にバロルフはもうそれだけで失神寸前だ。
 明らかにされた事実はそれ程までに衝撃的だったのだから。



 かつてデュゼローが操っていたとされる伝説の魔剣【アデ・リュプス】。
 秘められた能力は一言では語りきれぬ程に強大無比だという。

 その魔剣の在り処、それは―――





◇◇◇





「うおおおおおッ!!」
「はあああああッ!!」

 勇とデュラン。
 二人の戦士が今、遂に衝突する。

 だがまだ拳同士でのぶつかり合いだ。
 互いの力量を推し量る為に、わざわざ肉弾戦を用いたのである。

 隙を狙って大地を蹴り、鋭い動きで懐へ潜り込み。
 その度にとめどなく撃ち放たれる拳が行き交い、躱し、いなして。
 時折拳同士がぶつかり合い、天力と命力が弾け、虹色の光が激しく飛散する。

ドンッ!! ドゴンッッ!!! ッゴォンッッッ!!!!!

 その度に周囲へと衝撃波が飛んで大地を抉り。
 破響音が舞い散った草花さえも粉微塵に弾けさせる。

 それほどの応酬。
 それほどの威力。

 互いの力はほぼ同等。
 例え力の分類が違えど、二人が持つ出力はどちらもが押し切れない程に拮抗しているのだ。

 遂には両手を掴み取り合い、力の押し合いが始まる。

「があああッッ!!」
「ふぅおぉぉ!!!」

 その時放つ力の色は―――共に空色。
 青空の下が故に、放たれた光は景色に隠れてハッキリとは見えない。

 ただその強烈さ故に、まるで突風を受けた陽炎の様に激しく蠢いているが。

 それでも二人の押し合いは未だ崩れない。
 まだまだ互いに秘められた力は存分にあるのだから。

 でももしその拮抗が崩れるとしたら、有利になるのは当然―――勇だ。

 命力はあくまでも借り物の力である。
 自身の体に蓄えられる量しか放出する事は出来ない。

 だが天力は違う。
 使用者当人に意思がある限り、その根源が失われる事は無い。
 出力は能力と場合次第だが、その容量は無限に等しいのだから。

「さすが神に等しい天士と呼ぶだけの事はあるなあッ!! このパワーは伊達じゃない様だッ!!」

「お前もなデュランッ!! 命力をこれだけ発揮出来るのは茶奈以外に見た事が無いッ!!」

 力量を理解した以上、押し合いはもはや無意味。
 そう感じた双方が同時に手を放し、大きく飛び退かせる。

 それだけで大地にクレーターが生まれる程の強大な脚力で。

ザザッ……

 たちまち二人が大地を滑り、姿勢を整える。
 しかしそのまま飛び出す事はせず。

 静かに互いを睨み続けるに留まっていて。

「フゥー……やはり格闘戦ではどうにもならないね。 やはりこれしかない様だ」

 その時デュランが取り出したのは―――やはり魔剣。

 黒いローブの中からチラリと刀身だけを覗かせる。
 あのデュゼローを彷彿とさせる黒い刀身だ。

「それがお前の切り札か……ッ!」

「そうとも言えるし、そうとも言えない」

 しかしそんな勇の反応に対しても、まるでなぞなぞの様な支離滅裂の答えが返るのみ。

「正直な所、私はこの魔剣を恐れていてね。 この魔剣を使いこなせるのか、と」

「何……!?」

 ただそれもじきにわかる事となる。
 何故デュランがその様な曖昧な表現を要したのかを。

 誰よりも勇がわかる、その魔剣の本質を。

「この魔剣は―――普通ではないのでね」

 そして遂にその全容が明らかとなった時、驚愕する事ともなる。



 その柄に納められた、巨大な命力珠を目前にして。



「なっ!? その命力珠の大きさはまさかッ!?」

「そう、そのまさかさ。 この魔剣に備えられた命力珠は接触限界ギリギリのサイズなんだよ。 それでも油断したら死に至る恐ろしい魔剣なんだ」

 そう、勇は知っているのだ。
 それ程の大きさの命力珠を使う事がどれだけ危険かを。
 そしてその命力珠を使った魔剣が如何に強力かを。

 かつて勇が使っていた魔剣【翠星剣】。

 デュランはその性質にも近い魔剣を有していたのである。



「これこそが魔剣【アデ・リュプス】……同志デュゼローが私に託してくれた形見の魔剣だッ!!」



 今ここに、剣聖の疎いは現実となる。
 伝説の魔剣【アデ・リュプス】……それはやはりデュランの手元にあったのだ。

 その性質は並みの魔剣では比較にならない程の超性能を示唆させる。
 あの【翠星剣】がそうであった様に。



 その魔剣の能力―――デュランが恐れる程に、強大。


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