時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」

~まさか後でお金徴収とかねーよな!?~

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 今日のクリスマスパーティは普通の会とは訳が違う。
 決して会食パーティなどではない。

 そう、この後にもイベントが目白押しなのだ。

 ただし、その題目は決して誰にも知らされていない。
 知っているのは福留のみ、勇でさえ知らないのである。

 なので開会式直後に幕で隠されたステージでは、今でも何かが蠢いている。
 料理を堪能する客達が気にしてしまう程に手早く手際良く。
 それだけ優秀なスタッフが出揃っているのだろう。

「ねぇ勇、この予定表カリキュラム、項目番号だけなんだけど。起こるまでの楽しみって事?」

「そういう事。まぁ俺も中身知らないけどさ」

 イベントに関しては全て福留に一任している。
 当人がとてもやる気を示したので。
 恐らく、福留としては勇にも楽しんで貰いたいというのがあったに違いない。

 だから勇も楽しみにしている。
 スタッフ兼参加者として。

 もちろんこれも福留の思惑通り。
 なので今は遠慮なく、料理をちゃな達と一緒に摘まんでの待機中だ。

 するとそんな時、またしても照明が消えていく。
 今度はゆっくりとフェードアウトしていくかの様に。
 外の明かりが差し込む中で。

『皆様こんばんは。今も数々の逸品をご堪能してらっしゃいますでしょうか』

 その中で一人の声がマイクを通して場に響く。
 ただし福留の声とは違う、とても透き通ったイケメンボイスイケボが。

 その爽やかなかつ滑らかな声色に、女性陣が思わず耳を貸す。
 聞き取り易い声に、男性陣もが惹かれる中で。

『ですが今一時、俺達の声だけを堪能して頂けませんか? たった一曲だけの、些細な贈り物を。皆様の心に響かせる、魂のうたを』

 まさかと思った者も居ただろう。
 夢かと思った者さえ居ただろう。
 だがこの声は、聴き慣れた者にとっては勘違いするはずも無かったのだ。

 それだけ、この声は特別なモノだったのだから。

 途端、片隅を覆っていた幕が退けられる。
 勢いよく、荒々しく。

 そうして現れたのは、とあるイケメンバンド集団だった。
 キラッキラのスーツを身に纏い、輝く楽器をその手に掴む。
 更には甘いマスクをも見せつけて、誰しも魅了し尽くそう。



 その集団の名は【嵐丸】。
 今人気絶頂と言われる超有名アイドルバンドが今目の前に。



「フゴォ!?」

 突然の推し出現で、瀬玲が料理と共に吹き出す。
 それ程のインパクトが今のシチュエーションにはあったのだ。

 当然だろう。
 イチオシのアイドルが突如として目の前に現れたのだから。
 しかも距離感はプライベートライブ、通常ライブの最前列よりもずっと近い。
 瀬玲ほどの気丈さが無ければ卒倒間違い無しの展開である。

 そんな注目を受ける中、リーダーのDAIMARU氏がマイクを寄せる。
 招待客達にウィンクを送るというサービスも忘れずに。

「今日はこんな素敵な会場へ呼んで頂いて感謝致します。俺達【嵐丸】、今宵、即興ライブの役目を承り参上いたしました」

「あばば……」

「一曲限りの演奏ですが、聴き酔いしれてください――【心よりフォーエバー】!!」

 そして遂に演奏が始まる。
 楽曲はもちろん一番人気の、渾身の一曲で。
 幾度と無く聴きまくった瀬玲にとっては、自然と身体が揺れる程に馴染み深い。

 そしてその隣ではなんと、同様に身体を揺らす莉那の姿が。

 どうやら莉那も瀬玲に負けないくらいの【嵐丸】ファンだったらしい。
 気付けば二人揃ってサイリウムまで持ち、演奏に合わせてウェーブを生み出すという。
 一体どこからそんな物が出て来たのか。

 その顔、もはや揃って涙と鼻水とよだれでグシャグシャだ。
 普段の気丈さと鉄面皮は一体どこへ行ったのやら。
 よほど感無量だったのだろう。

 もちろん酔いしれていたのは彼女達だけではない。
 ファンほどではなくとも好きな人は多く居る。
 それにあまり興味無かった者も、初めて聴いた者だって関係無い。

 皆が皆、その迫力を前に惹かれてならなくて。
 やはりライブともなれば只の音楽とはまるで違うから。

 だから誰しもがその臨場感に圧倒されていた。

 それだけの力がアイドル達にはあったのだ。
 決して外見だけとは言わせない、人気を裏打ちする実力を見せつけられたのである。

 これはたった五分間の演奏に過ぎない。
 それでも瀬玲と莉那をドロッドロにするには充分で。
 クール&ビューティをモットーとする二人も、このアイドル達を前には形無しだった。

 しかしそれでも自分を忘れる事は無い。
 照明が再び点いた時、二人の顔はいつもの綺麗さを取り戻していたという。
 一瞬で顔を整えるなど、とてつもない早業だ。

 その後は片付けの合間の触れ合いタイム、記念写真撮影が始まる事に。
 しかも推しとのツーショットまでしてもらえるというのだからファンにはもう堪らない。

 ならばと女性陣がこぞって訪れ、皆で次々と記念撮影に。
 最期はバンドメンバー全員と集合写真を撮って終了だ。

「ありがとう皆さん! これからも応援よろしくッ!!」
「「「はぁ~~~い!!」」」

 こうしてアイドル達は去って行った。
 まさしく嵐の如く、会場を感激の突風で掻き乱して。

 一発目からこれである。
 だとすれば続くのは一体何なのか。
 これには受け手側でさえ戦々恐々のご様子。

「凄過ぎんだろコレ、一体いくら掛けたんだよ。まさか後でお金徴収とかねーよな!?」

「んな事しねぇよぉ~……」

 なのでこんな筋違いな苦情が届く事に。
 関与していない勇としてはいい迷惑だ。



 なお、瀬玲と莉那はその後もしばらく記念写真に夢中だった。
 DAIMARUとのツーショット写真がよほど嬉しかったのだろう。
 常々アヒル口状態を維持していたなど、もはや体裁さえ保つ事は無かったという。
 
 とはいえ、これでこの二人にも妙な絆が生まれたらしい。
 そんな二人はフロアの隅に並んでいて。
 手を繋いでいたから、きっとこれからも仲良くしていけそうだ。



 もちろん出し物はこれだけでは済まされなかった。
 この後次々と現れる有名人達に、誰しもが驚きを隠せなくて。

 今お茶の間で人気の女性お笑い芸人コンビ【ミルキーガールズ】とか。
 かつて一世を風靡した有名マジシャン【ミスタークリック】とか。
 大御所声優二人を呼んでの即興トークバラエティとか。
 有名俳優陣による寸劇とか。

 どれも軽い芸ばかりだが、規模からしたらとてつもないものだ。
 それも、いずれもたった十数分の為に呼ばれたのだからもう。

 勇でさえその豪華さに舌を巻かざるを得ない。
 福留の人脈というか金回りというか――その凄さの底が見えなくて。
 なんだか場違いかもと感じてしまう程に。

 もしかしたら、それも福留の目論見通りなのかもしれないけれども。


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