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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~ぶつかり合う意地と意地~
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「す、すげえ……あれがマヴォさんの全力かよ!?」
マヴォとサヴィディアの応酬は勇達を驚かせるのに充分過ぎた。
それだけの卓越した技術が今の数秒のやりとりに詰め込まれていたから。
でもそんな戦いに見惚れている暇など心輝には無い。
今こうしている間にも雑兵が槍を突き出していたのだから。
それを勇が弾き、今度はその拳を心輝の目前へ突き付ける。
「戦いを見ている暇なんて無いぞッ!! 死ぬ気かッ!?」
「うッ!? す、すまねぇ!!」
ただ、そうせずには居られなかったのだ。
それだけ激しく凄まじい戦いだったから。
それに、自分達を取り巻く敵の殆どは勇が仕留めていたのだから。
とはいえこちらの戦い自体はそれほど激しくはない。
どうやら二人の戦いに見惚れているのは心輝だけではないらしく。
おまけに今対峙する者も、どちらかと言えば殺意を向けてきてはいないから。
「決闘の邪魔は絶対にさせぬッ!!」
「それでそっちが死ぬ事になってもかッ!?」
「いいや、我等が戦神に負けはなぁい!!」
どちらかと言えば足止めだ。
二人の戦いに水を差させない為の。
それで必死に包囲網を維持しようとしている。
だから勇も戦い方を変えていて。
斬撃はあくまで峰打ちに、命を奪うまでには至っていない。
それでも気絶するくらいの衝撃を与える事は覚悟の上だが。
「クッ、だからってここまでする必要はないだろうッ!! 話し合えばわかる事じゃないのかッ!?」
「貴様ら人間とはもはや相容れぬわッ!! この恥知らずどもめえッ!!」
「ッ!?」
それは相手より何か得体の知れない意志を感じたから。
今までの様な復讐や怨恨といったそれではなく。
まるで誇りと気高さといった様な気位を。
こんな事を言われなくてもわかってしまうくらいに。
今までの敵性魔者はずっと獣らしくて、感情に忠実だったから。
己が怨恨の為には、時に同胞さえ殺める事も厭わないくらいの。
それだけ鬼気に満ち溢れていて、吐き気さえ催す事もあって。
けれど、【ナイーヴァ族】は今までのそれとは全く違う。
それだけ、とても人らしかったのだ。
何かを守ろうとさえしている様で。
その為に必死で抗い、力を奮っている。
それはとても当たり前の事だが、久しく見なかった事でもある。
だから勇は意図せず感情移入してしまっていたのだ。
それで逆に殺意が見出せないでいる。
お陰でつい刃をも止めてしまいそうだ。
実際、追い込みに拳や蹴りで済ませてしまう事もあって。
だからか遂には一部の雑兵までもが槍を棄て、殴り掛かってくる姿が。
これに勇が同じく拳で迎え撃ち、力で抑え、押し切って大地へ叩き付ける。
心輝達の心配などに構う事も無く。
そんな殴り合いの所為で、今やどちらも泥でグチャグチャだ。
これではもはや戦いなのか喧嘩なのかわかりはしない。
気付けば心輝達さえ無視して勇へと群がって。
一対多という大喧嘩に早変わりである。
これには心輝達もただただ唖然とする他無かった。
「このわからずや達がーーーッッッ!!!」
「「「うおあああッ!!?」」」
それさえも次々と弾き飛ばし、勇が咆える。
怒りと高揚と、それでいて戦いでしか解決出来ない現状への苦痛で。
「なら俺を止めて見せろよッ!! お前達があーーーッッ!!!」
「「「言われずともォォォーーーッッ!!!」」」
きっと心輝達はこんなに猛る勇を見た事が無いに違いない。
今の特異な状況も同じくだが。
学生としての勇はこれほど激昂したりもしなかったし、温和でもあったから。
しかし戦いにおいて、人は変わる事がある。
勇のこれはまさしくその通りなのだろう。
そんな変化を目の当たりにして、なんだか自分達が情けなくも感じてしまう。
それだけ自分達の戦いにおける意思が遊びとさえ思えてならなくて。
これだけ必死なのは心輝達を守る為だけではない。
勇は【ナイーヴァ族】の為も想って戦っているのだと。
その想いが必死さとなって表れているから、ここまで戦えていると理解して。
だから恥ずかしかったのだ。
魔剣を得て浮かれていただけの自分が。
まるで、今の立ち位置が一線を引かれている様に見えてしまって。
「俺は……俺は遊びで戦いに来た訳じゃねぇ。俺だって、勇みてぇになりてぇんだ。強くて格好良くて、それでいて熱い魔剣使いに……!!」
「お兄……」
「――なってやる、ああ、なってやんよ!! クソッタレがああーーーッ!!」
そんな一線を誰よりも濃く見えてしまったから。
だから今、心輝もまた魔剣を仕舞って素拳を奮う。
例え次の瞬間には殴り返されて弾かれようとも。
少しでも勇に追い付く為に。
負けない様に、置いて行かれない様に。
「全く、シンってほんと何考えてるのかわかんないわ」
「うん。でもきっとこれが良いんだと思うよ。お兄は」
「ん、あず……アンタ柄でも無い事言うじゃん」
そんな気持ちがあずーもわからないでも無かった様で。
一方の理解しきれない瀬玲を前にこうして返す。
常々一緒に居る兄妹だからこそわかる気持ちもあるから。
「いしし、たまには賢い子ぶるあずーちゃんもいぃのです!」
「ま、ああやって単純になれるのが羨ましいって思うこともあるけどね」
時に人は、痛い目を見てでも向き合いたいと思う事がある。
それはきっと【ナイーヴァ族】達だって変わらないのだろう。
だから今こうして、敢えて勇達に合わせて拳を奮っている。
それが彼等なりのスタンスだから。
戦いは殺し合いではなく、意地のぶつかり合いなのだと知って。
ただその行き付く先が生死に関わるくらいに激しいというだけに過ぎないのだろう。
そう思える様な戦いが繰り広げられているから。
でなければこの二人も今頃襲われているだろうから。
本当なら必死にならないといけない戦いなのに。
それでもなんだか微笑ましく見えてならなくて。
だから瀬玲もあずーも自然と、必死な勇達を前にして微笑んでいたのだ。
例え好戦的な魔者でも、こうして意外な一面を見せる事がある。
きっとそれは正しく戦いに向かい合っているからだろう。
現代人にも近い倫理観を以って。
だから決して理由も無く戦っている訳では無いのだと。
しかしそんな志の見える中でも、真の死闘は続いている。
マヴォとサヴィディア、二人の戦いは今なお。
この戦いに限っては意地のぶつかり合いなどではない。
互いの力と誇りをぶつけ合う強者の決闘なのである。
マヴォとサヴィディアの応酬は勇達を驚かせるのに充分過ぎた。
それだけの卓越した技術が今の数秒のやりとりに詰め込まれていたから。
でもそんな戦いに見惚れている暇など心輝には無い。
今こうしている間にも雑兵が槍を突き出していたのだから。
それを勇が弾き、今度はその拳を心輝の目前へ突き付ける。
「戦いを見ている暇なんて無いぞッ!! 死ぬ気かッ!?」
「うッ!? す、すまねぇ!!」
ただ、そうせずには居られなかったのだ。
それだけ激しく凄まじい戦いだったから。
それに、自分達を取り巻く敵の殆どは勇が仕留めていたのだから。
とはいえこちらの戦い自体はそれほど激しくはない。
どうやら二人の戦いに見惚れているのは心輝だけではないらしく。
おまけに今対峙する者も、どちらかと言えば殺意を向けてきてはいないから。
「決闘の邪魔は絶対にさせぬッ!!」
「それでそっちが死ぬ事になってもかッ!?」
「いいや、我等が戦神に負けはなぁい!!」
どちらかと言えば足止めだ。
二人の戦いに水を差させない為の。
それで必死に包囲網を維持しようとしている。
だから勇も戦い方を変えていて。
斬撃はあくまで峰打ちに、命を奪うまでには至っていない。
それでも気絶するくらいの衝撃を与える事は覚悟の上だが。
「クッ、だからってここまでする必要はないだろうッ!! 話し合えばわかる事じゃないのかッ!?」
「貴様ら人間とはもはや相容れぬわッ!! この恥知らずどもめえッ!!」
「ッ!?」
それは相手より何か得体の知れない意志を感じたから。
今までの様な復讐や怨恨といったそれではなく。
まるで誇りと気高さといった様な気位を。
こんな事を言われなくてもわかってしまうくらいに。
今までの敵性魔者はずっと獣らしくて、感情に忠実だったから。
己が怨恨の為には、時に同胞さえ殺める事も厭わないくらいの。
それだけ鬼気に満ち溢れていて、吐き気さえ催す事もあって。
けれど、【ナイーヴァ族】は今までのそれとは全く違う。
それだけ、とても人らしかったのだ。
何かを守ろうとさえしている様で。
その為に必死で抗い、力を奮っている。
それはとても当たり前の事だが、久しく見なかった事でもある。
だから勇は意図せず感情移入してしまっていたのだ。
それで逆に殺意が見出せないでいる。
お陰でつい刃をも止めてしまいそうだ。
実際、追い込みに拳や蹴りで済ませてしまう事もあって。
だからか遂には一部の雑兵までもが槍を棄て、殴り掛かってくる姿が。
これに勇が同じく拳で迎え撃ち、力で抑え、押し切って大地へ叩き付ける。
心輝達の心配などに構う事も無く。
そんな殴り合いの所為で、今やどちらも泥でグチャグチャだ。
これではもはや戦いなのか喧嘩なのかわかりはしない。
気付けば心輝達さえ無視して勇へと群がって。
一対多という大喧嘩に早変わりである。
これには心輝達もただただ唖然とする他無かった。
「このわからずや達がーーーッッッ!!!」
「「「うおあああッ!!?」」」
それさえも次々と弾き飛ばし、勇が咆える。
怒りと高揚と、それでいて戦いでしか解決出来ない現状への苦痛で。
「なら俺を止めて見せろよッ!! お前達があーーーッッ!!!」
「「「言われずともォォォーーーッッ!!!」」」
きっと心輝達はこんなに猛る勇を見た事が無いに違いない。
今の特異な状況も同じくだが。
学生としての勇はこれほど激昂したりもしなかったし、温和でもあったから。
しかし戦いにおいて、人は変わる事がある。
勇のこれはまさしくその通りなのだろう。
そんな変化を目の当たりにして、なんだか自分達が情けなくも感じてしまう。
それだけ自分達の戦いにおける意思が遊びとさえ思えてならなくて。
これだけ必死なのは心輝達を守る為だけではない。
勇は【ナイーヴァ族】の為も想って戦っているのだと。
その想いが必死さとなって表れているから、ここまで戦えていると理解して。
だから恥ずかしかったのだ。
魔剣を得て浮かれていただけの自分が。
まるで、今の立ち位置が一線を引かれている様に見えてしまって。
「俺は……俺は遊びで戦いに来た訳じゃねぇ。俺だって、勇みてぇになりてぇんだ。強くて格好良くて、それでいて熱い魔剣使いに……!!」
「お兄……」
「――なってやる、ああ、なってやんよ!! クソッタレがああーーーッ!!」
そんな一線を誰よりも濃く見えてしまったから。
だから今、心輝もまた魔剣を仕舞って素拳を奮う。
例え次の瞬間には殴り返されて弾かれようとも。
少しでも勇に追い付く為に。
負けない様に、置いて行かれない様に。
「全く、シンってほんと何考えてるのかわかんないわ」
「うん。でもきっとこれが良いんだと思うよ。お兄は」
「ん、あず……アンタ柄でも無い事言うじゃん」
そんな気持ちがあずーもわからないでも無かった様で。
一方の理解しきれない瀬玲を前にこうして返す。
常々一緒に居る兄妹だからこそわかる気持ちもあるから。
「いしし、たまには賢い子ぶるあずーちゃんもいぃのです!」
「ま、ああやって単純になれるのが羨ましいって思うこともあるけどね」
時に人は、痛い目を見てでも向き合いたいと思う事がある。
それはきっと【ナイーヴァ族】達だって変わらないのだろう。
だから今こうして、敢えて勇達に合わせて拳を奮っている。
それが彼等なりのスタンスだから。
戦いは殺し合いではなく、意地のぶつかり合いなのだと知って。
ただその行き付く先が生死に関わるくらいに激しいというだけに過ぎないのだろう。
そう思える様な戦いが繰り広げられているから。
でなければこの二人も今頃襲われているだろうから。
本当なら必死にならないといけない戦いなのに。
それでもなんだか微笑ましく見えてならなくて。
だから瀬玲もあずーも自然と、必死な勇達を前にして微笑んでいたのだ。
例え好戦的な魔者でも、こうして意外な一面を見せる事がある。
きっとそれは正しく戦いに向かい合っているからだろう。
現代人にも近い倫理観を以って。
だから決して理由も無く戦っている訳では無いのだと。
しかしそんな志の見える中でも、真の死闘は続いている。
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