ヒロインはモブの父親を攻略したみたいですけど認められません。

haru.

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ー本編ー

最後の修羅場①

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私はお父様へ決別の言葉を告げた。

怒りに任せてかなり酷い事を言った気がするけど・・・お祖父様もお祖母様も気にしなくていいと言ってるし・・・
ケイト達に至ってはまだまだ言い足りないと憤慨し続けていた。

(言いたい事を言ったつもりだけど・・・何だかモヤモヤする・・・)

こうして隣国へ行くと決めた私は家を出て王都にあるお祖父様達の別宅へと移り住み、手続きが済むまでに隣国へ行く準備をする事になった。

貴族が平民になる。
それも自ら貴族の身分を捨てる・・・簡単なように見えて陛下の承諾を得なければいけない為なかなかに時間のかかる手続きであった。

(お祖父様もお祖母様も結構有名な貴族だからな・・・引き留められるんじゃないかな・・・)

もしかしたら陛下が私達の手続きを認めないのではと懸念していた・・・

お祖父様は国において有名な剣の使い手で昔は名の知れた騎士だったらしい。
そしてお祖母様は前王妃様と周知の仲であり、社交界の顔の広さでは誰にも劣らないと言われていた。

そして二人が所有している財産は昔の賞与などを合わせると・・・王家でも把握仕切れない程だと言われている。

そんな力も人脈も金もある貴族を手放せるのか?それも国を出るなど・・・

お祖父様もその事は考えていたらしく、平民になる事を認めてくれるのならば、お祖父様が所有している鉱山や土地は王家に寄付しても良いとまで言っていた・・・

(交渉は任せろと言ってたけど大丈夫なのかな)

何週間も経ち王家からの返答もなく、身動きが取れない日々が続いていた。
そんなある日お祖父様から「陛下からの呼び出しだ。」と言い皆で王城へ向かう事になった。

急ぎ支度を整え馬車の中で話を伺うと、呼び出しを受けたのは私とお祖父様、お祖母様、そしてお父様・・・更にはルーチェ様とルーチェ様のお父様まで呼び出されていたのだ。

(ありえない・・・何を考えてるの・・・
修羅場必須の人選なんだけど・・・)

私は遠い目をしながらお祖父様の説明を聞いた

今までの話し合いでは・・・
どうやら陛下としては、やはりお祖父様とお祖母様の身分返上は認めたくない為話し合いは難航していたらしい・・・
だが陛下として、お父様とルーチェ様の婚姻を支持すると宣言したからにはそれを撤回する事も出来ない。
だから孫(私)が原因なら王家から支援はするから孫だけを他国へやってはどうかという話になっていたらしい・・・

陛下の言う事はまぁ王としては最もな事だと思うし、仕方のない決断だと私は思う。

だけどお祖父様はそんな陛下の言葉を跳ね返し怒りのあまり話し合い半ばで王城から出てきたというのだ。

本日はその謝罪?弁解?話し合い?なのかはわからないが・・・陛下から話があると呼び出されたみたい・・・

(いつの間にそんな展開に・・・)

お祖母様はその話を聞き、同じく怒りを募らせていた。

そしてお祖父様が驚愕の事実を教えてくれた。此度の件で私の為に意外な人物が陛下へと怒りをあげ、私に関するある人達へと連絡をとってくれているらしい・・・

(頭パンクしそう・・・)

多くの展開に着いて行ききれていない私は混乱した頭にある人物達を思い浮かべていた・・・

因みにお祖父様が王城へ行った際に王子様達の断罪も行われていたそうだ。
結末としては・・・王子様と婚約者のご令嬢は婚約破棄ではなく白紙の手続きをとり、ご令嬢には何の非もないと発表する事となった・・・

女に惑わされ婚約者への非道な態度、そして夜会をぶち壊した王子様は王位継承権(仮)剥奪の上、北の塔へ謹慎となった。

(陛下の子は王子様だけだから簡単に王位継承権の剥奪や臣籍降下はさせられないんだろうな。)

まぁ数年後も変化がみられないようなら王家の血筋を辿って王位継承権を持つ者を探すか、今から陛下に子をつくって頂くかのどちらかになるらしい・・・

残った者達の断罪は割と簡単に終わった。
子息達は次男三男が多く、御家族達は本人の態度を見て、やり直す機会を与えるか考える事にするようだった。

自分達の慕っていたルーチェ様がお父様と愛しあっていたとわかり、自分の間違いに気がついた者。

家族達からの叱責を受けたのか項垂れて言葉もなかった者。

最後まで過ちに気が付けずにルーチェは騙されている!!助けなくては!と騒ぎ立てて居た者。

それぞれの態度を見てわかるとは最後の一人以外は厳しいながらもやり直しの機会が与えられる事になった。

そして覚えているだろうか・・・私に婚約者が居たことを・・・

あの夜会で気がつかなかったのだが、私の元婚約者は王子様達と共に行動していたらしく・・あの騒ぎの際も隅の方で囃し立てていて騎士達に捕らえられていたらしい。

そして断罪後の元婚約者は最後まで自身の過ちを認める事なく騒ぎ続け態度を改めなかった為、家からは縁を切られる事になっているとか・・・

(残念な方だとは思っていたけど・・・むしろ婚約破棄出来た事は幸運だったのかも・・・)

私は元婚約者の末路を知ってそんな風に思っていた・・・



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

王城に着いた私達が案内された部屋は謁見の間ではなく、議会室とでも呼べそうな大きな部屋に円卓の机と椅子があった。

室内にはお父様とルーチェ様、ルーチェ様のお父様がすでに席についており、3人はそれぞれ違った姿をだった。
お父様は薄暗い瞳の下に酷い隈を作り最後にお会いした時よりかなりやつれた様子でいた。そんなお父様を悲しそうな表情で見つめるルーチェ様は泣きはらしたような赤い瞳をしていた。

そしてルーチェ様の隣で真っ白な顔をしている男性がルーチェ様のお父様なのだろう・・・

私達が室内に入ると誰よりも先にルーチェ様のお父様が立ち上がり私達の前までやってきて地面に頭を擦り付ける勢いで頭を下げた。

「わ、私はルーチェ・イストの父親のケビン・イストでございます。この度はお嬢様の御婚約を台無しにしただけでなく、このような事になり誠に申し訳ございませんでした。」

「私の教育が行き届かなかったせいでお嬢様には辛い思いをさせ、婚約者だけでなく父親まで取り上げる真似をしてしまいました。
今更何を言っても遅いのはわかっております。本来、多くの方の婚約破棄に関わった時点で娘を修道院へ行かせるべきでした。ですが今では陛下から婚姻を支持されている身・・・修道院へ行かせる事も出来なくなりました。」

「娘のせいでこのような事態になっているというのにお嬢様にだけこのような目にあわせるなど許せる事ではないとわかっております・・」

ルーチェ様のお父様は今にも倒れそうな顔をしながら必死に私達へ頭を下げ続ける。

(・・・何て言うべきなのかな。
この人への怒りは無いし・・・ルーチェ様に対しても思う事はあってもそれが怒りなのかはわからない・・・)

私は複雑な表情をしながらルーチェ様のお父様へ顔を向けていた。

「頭を上げなさい。私達は貴公の娘に多くの物を奪われ、私達の愛する孫が傷つけられた・・・それは許しがたい事だ。
だが今回の事は貴公の娘だけではなく私の愚息が引き起こした問題なのだ・・・だから貴公達を断罪しようとは思っていない。
これより先、私達に関わらないでくれたらそれでいい。貴公の娘は私の孫の義母になる事を望んでいたみたいだが私達はそこにいる愚息と縁を切って国を出る。婚姻するのなら勝手にするがいい。私達にはもう関係ない・・・」

お祖父様はルーチェ様のお父様の目を見ながらハッキリと告げた。

ルーチェ様のお父様は唖然とした顔で私達を見てきた。その後ろで絶望した様子のお父様がこちらを見つめ立ちすくんでいた・・・

「え・・・く、国を出るのですか・・・」  

お父様は私達とは絶縁する事になった事を伝えていなかったのかルーチェ様が凄い勢いでこちらへとやって来た。

「どうしてですか!!!
貴女のお父様なのですよ?それをこんなにやつれるまで追いつめて、そんなに私を認めたくないのですか?
貴女の婚約をダメにしたからですか?それとも私が男爵令嬢だからですか?」

「私達は互いに愛しあっているのです!!娘なら父親の幸せを望んでくれてもいいのではありませんか!!それなのに縁を切るなど・・・親不孝も程々にされた方がよろしいのでは!」

ルーチェは穢れを知らない真っ直ぐな目をして私を咎めてきた・・・

(ああ・・・この人には私の気持ちなんてまるで見えていないんだな・・・)

(それにこの目、絶対に自分は間違っていないと思っているのだろうな・・・)

私はもう関わりを持ちたくなくて視線すら合わせたくなかった。すると・・・

パ━━━━ンッッッ!!!

「貴女はどこまで非常識な方なのですか!!!これ以上私の孫を傷つける事は許しませんよ!」

扇子を手のひらに叩きつけてルーチェ様を睨み付けるお祖母様・・・

「貴女のお父様がこんなにも必死に頭を下げているのにそれが見えていないのですか?
貴女の方が余程親不孝に見えますわ!もう少し相手の立場で物事を判断なさってはいかが?貴女は常に自分の事だけが大切なようですわ。」

「なっ!!!な、ん・・でそんなことッ・・」

お祖母様の言葉にルーチェ様の顔が怒りに染まり声を荒げようとした・・・その時・・・

「いい加減にしないかッッッ!!!」

「・・・ッ!・・・・・・」

ルーチェ様のお父様がルーチェ様の頬を手のひらで叩き怒鳴りつけた・・・

「どうして・・・」

頬に手を当てながら涙を目に浮かべていた。

「何故?私は何度も言ったぞ。
ルーチェ・・・お前は何も悪い事をしていないと言うがお前のせいで傷ついた人達は多くいると・・・それでもお前は本当に何も悪くないと言いきれるのか?
お前はヴィオレット嬢の婚約破棄の原因であり、ヴィオレット嬢の父親を奪い取った女だ。少なくとも社交界ではそう見るだろう。」

「そして今回の一件でヴィオレット嬢の名は更なる傷を負い、社交界での立場も失ったと言ってもいいだろう・・・それでもお前はヴィオレット嬢が自分達の幸せを認めてくれない女で親不孝者に見えるのか?
お前がヴィオレット嬢の家族、婚約者、名誉、居場所、全てを奪ったのに・・・
もし、そうなのであればもう私にお前を庇ってやる事は出来ぬ・・・」

「・・・・・・ッ・・・」

「ルーチェ・・・お前は1度でもヴィオレット嬢に謝罪はしたのか?
お前が原因でなくとも、お前が関わっていた事は事実であろう?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・気づいているか?
今までの事やお前のその酷い態度を目の当たりにして、言いたい事は山程ある筈なのにヴィオレット嬢は1度もお前のせいだとは言わないでいてくださってる。
そんな相手にお前の態度は本当に正しい物なのか?・・・申し訳ないとは思えないのか?」

厳しい顔をした父親の視線にルーチェ様は悔しそうに下唇を噛みしめながら俯いていた・・・

(はぁ・・・ルーチェ様は外見だけでなく、心までも幼いのかもしれないな。
ここまで言われても謝りたくないって顔に出てるよ・・・)

(父親のこんな切なる言葉が届かないなんて、もうルーチェ様のお父様が可哀想になってくるよ)



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