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「皇后陛下」
デングリーンが、不快感を隠さず言い放った。
その声には露骨な棘があり、長年権力の座にある者特有の傲慢さが滲んでいた。
広い会議室の中で、その一言が石のように響き、空気を重く沈ませる。
「国防は陛下の専権事項です。皇后が口を出すべき問題では……」
デングリーンの視線は鋭く、まるで無礼を咎める刃のようだった。
彼の言葉には、「女が政治に口を挟むな」という意図がありありと込められている。
他の貴族たちも、互いに顔を見合わせながら、目にわずかな嘲笑を浮かべていた。
だが、ジェニエルは即座に口を開いた。
その声音は静かでありながら、冷たい刃のように正確だった。
「民の命は、誰の専権事項でもありません」
その一言で、場の空気が一変した。
ジェニエルの眼差しが、デングリーンを真っ直ぐに射抜く。
怯えも、ためらいもない。
ただ、皇后として、ひとりの人間としての信念だけがそこにあった。
デングリーンは言葉を失ったように口を閉ざした。
視線を逸らしたが、顔の筋肉がわずかに引きつっている。
それを見ていた他の貴族たちは、沈黙と動揺の狭間で落ち着かず、互いに囁き合い始めた。
「皇后が出過ぎている」
「女の分際で……」
「やはり、ゼツィオードが後ろで糸を引いているのでは」
抑えたつもりの声が、重苦しい空気をさらに掻き乱す。
古参の公爵や貴族たちが、扇子で口元を隠しながら不満を漏らす姿が、視界の端に見えた。
それでも、ジェニエルは一歩も退かなかった。
まっすぐ背を伸ばし、玉座の前に立つような姿勢で言葉を飲み込み、ただ沈黙で応じた。
「……皇后陛下」
デングリーンが再び声を上げた。
だがその声音には、先ほどまでの圧はなかった。
「そのお言葉、重く受け止めましょう。しかし――」
「しかし、ではありません」
ジェニエルは遮った。
「私は王の代理として、陛下に代わり発言しているのです。王が民を守らぬならば、誰がこの国を守るのですか?」
静まり返った室内に、その言葉が落ちる。
その緊張を和らげるように、隣に立つゼツィオードが静かに言葉を挟んだ。
「皇后陛下のお考えは、理に適っております。戦は容易く始めるものではありません。民を守るための戦略こそ、国の基でありましょう」
その声は、冷静でありながら、どこか柔らかい響きを持っていた。
ジェニエルがゼツィオードを見やると、彼はほんの一瞬だけ微笑んだ。
それは、ジェニエルの勇気を称えるような、静かな笑みだった。
デングリーンが、不快感を隠さず言い放った。
その声には露骨な棘があり、長年権力の座にある者特有の傲慢さが滲んでいた。
広い会議室の中で、その一言が石のように響き、空気を重く沈ませる。
「国防は陛下の専権事項です。皇后が口を出すべき問題では……」
デングリーンの視線は鋭く、まるで無礼を咎める刃のようだった。
彼の言葉には、「女が政治に口を挟むな」という意図がありありと込められている。
他の貴族たちも、互いに顔を見合わせながら、目にわずかな嘲笑を浮かべていた。
だが、ジェニエルは即座に口を開いた。
その声音は静かでありながら、冷たい刃のように正確だった。
「民の命は、誰の専権事項でもありません」
その一言で、場の空気が一変した。
ジェニエルの眼差しが、デングリーンを真っ直ぐに射抜く。
怯えも、ためらいもない。
ただ、皇后として、ひとりの人間としての信念だけがそこにあった。
デングリーンは言葉を失ったように口を閉ざした。
視線を逸らしたが、顔の筋肉がわずかに引きつっている。
それを見ていた他の貴族たちは、沈黙と動揺の狭間で落ち着かず、互いに囁き合い始めた。
「皇后が出過ぎている」
「女の分際で……」
「やはり、ゼツィオードが後ろで糸を引いているのでは」
抑えたつもりの声が、重苦しい空気をさらに掻き乱す。
古参の公爵や貴族たちが、扇子で口元を隠しながら不満を漏らす姿が、視界の端に見えた。
それでも、ジェニエルは一歩も退かなかった。
まっすぐ背を伸ばし、玉座の前に立つような姿勢で言葉を飲み込み、ただ沈黙で応じた。
「……皇后陛下」
デングリーンが再び声を上げた。
だがその声音には、先ほどまでの圧はなかった。
「そのお言葉、重く受け止めましょう。しかし――」
「しかし、ではありません」
ジェニエルは遮った。
「私は王の代理として、陛下に代わり発言しているのです。王が民を守らぬならば、誰がこの国を守るのですか?」
静まり返った室内に、その言葉が落ちる。
その緊張を和らげるように、隣に立つゼツィオードが静かに言葉を挟んだ。
「皇后陛下のお考えは、理に適っております。戦は容易く始めるものではありません。民を守るための戦略こそ、国の基でありましょう」
その声は、冷静でありながら、どこか柔らかい響きを持っていた。
ジェニエルがゼツィオードを見やると、彼はほんの一瞬だけ微笑んだ。
それは、ジェニエルの勇気を称えるような、静かな笑みだった。
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