陛下を捨てた理由

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「陛下がいらっしゃらないからといって、このまま解散するわけにもいかないでしょう」

扉の側に控えていた男が、静かに歩み出る。
ゼツィオードがジェニエルに一礼した後、室内を見渡した。
セオドール派の貴族たちは、露骨に顔をしかめたがそれだけで室内は静かになった。
ジェニエルは言葉にはしないものの、ゼツィオードが自分をサポートしてくれる事に感謝をしながら会議を進める事にした。

「辺境の件から参りましょう」

ジェニエルが開いた資料の音が、やけに大きく響いた。
報告は予想以上に深刻だった。
ゼツィオードが治める北の辺境に近い隣国から連日脅しにも似た書状が届いていた。

「このまま放置すれば、戦火が拡大する可能性があります」

ゼツィオードの声は冷静だったが、その内容は重かった。
ジェニエルは、必死に言葉を追う。
軍事用語、地名、戦略図
聞き慣れない単語が次々と飛び交い、頭が追いつかない。
それでも、ひとつだけははっきりと理解できた。
戦争は、決して許されない。

「戦争は、絶対に起こしてはなりません」

意見を求められたジェニエルの声が、室内に鋭く響き渡った。
臣下たちが驚いたように顔を上げる。

「辺境の民は、毎日を生き延びるのに精一杯なのでしょう？そんな土地で戦争など起きれば、どれほどの人々が犠牲になるか……」

だがすぐに、冷たい声が割って入る。
セオドール派筆頭と言われるデングリーン宰相だった。