【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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 ――このまま無事に終わってくれれば……。

 そんな願いは、儚く散った。

「ラウラ・ナバーロを妻とし、愛しますか」
「愛さない」

 宣誓の言葉で、ホセがそんな宣言をしてしまった事で、周囲は騒めきに包まれる。
 国王陛下と王妃は頭を抱えたが、今更言葉を取り消せる筈もない。多くの貴族達が聞いていたのだ。
 神父も、どうしたものかと狼狽えるが、ごほん! と大きく咳払いをすると、宣誓などなかったように次の手順へと進めていった。
 しかし、貴族達の騒めきは静まる事を知らない。そして……噂大好きな貴族達は、ラウラに蔑んだ視線を向けていたのだ。

「……」

 嫌な視線に耐えがたい苦痛を感じながらも、ラウラはしっかり前を向いて、民を安心させるような笑顔を振りまき、婚姻式を気丈に乗り切った。
 けれど、式が終わった瞬間に、すでにどこかへと消えたホセ。

「すまない! ラウラ嬢!」
「そんな……」
「ホント、ごめんなさい。ラウラ……」

 花嫁を置き去りなんて、醜聞も良い所だ。
 国王陛下と王妃陛下自らが人目もはばからずに頭を下げる。それを制して、ラウラは一人寝室へと向かった。
 情けなさと悲しみで胸が張り裂けそうだけれど、ホセは王太子。自分の立場をきちんと理解している筈。
 そう信じて、湯あみをして初夜への準備を済ませ、寝室でジッとホセを待つ。
 待って、待って……待ち続けて、朝日が昇るまで。

 ――初夜すら無視される王太子妃。
 ――名前だけの王太子妃。

 初夜をあげていない事はすぐに王城中に広まり、ラウラはそんな蔑みを受けた。
 それでも、自分は王太子妃なのだ。堂々とラウラは前を向く。自分は恥じる事なんてしていないのだから。

「見て、名前だけの王太子妃様よ」
「惨めよねぇ」

 噂大好きな貴族達だけでなく、侍女や女官すらもラウラを見ては馬鹿にしたように見下した目をして、クスクスと笑う。
 そんな視線や心ない言葉にも、いつかは慣れる。
 他人などどうでも良い。ラウラにとって重要なのはホセだけだったのだから……。

「あんた達! 自分の立場を分かってるの!?」
「国王陛下が認めた王太子妃に、侍女如きが何を言ってるんだ」

 気にせず歩いているラウラだったけれど、そんな怒号が飛んできた。
 目を吊り上げて怒り怒鳴ったのは、ホセの姉と弟であるエマとミケルだ。

「も……申し訳ございません!」

 侍女達は二人を見ると、慌てて頭を下げて、バタバタと足音を鳴らしながら逃げ出して行く。
 唯一の救いとしては、ホセの家族全員がラウラの事を温かく受け入れてくれている事だろう。
 国王陛下や王妃陛下、そして義姉と義弟。
 だけれど……一番欲しいホセの心だけは手に入らない……。
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