BL短編まとめ(現) ②

よしゆき

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心配性の恋人

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 心配性の受けと豹変する攻めのアホエロ。

 社会人 美形×平凡



─────────────────




「ねえ、明樹あきくん。やっぱり仕事辞めない?」

 拓人たくとは年下の恋人にそう言った。これははじめての事ではなく、今まで何度も口にしてきた。
 言われた明樹は、苦笑する。

「それは無理ですよ、拓人さん」
「でもぉ……」

 拓人は心配で心配で仕方がないのだ。

「明樹くんみたいな、超絶美形でイケメンで背も高くて体つきも美しくて髪の毛もサラサラで肌も艶々でスーツが似合っててネクタイ外す仕種が神がかってて仕事もできて優しくて指先が綺麗で肩幅が完璧で後ろ姿を見ただけでときめいちゃうような人間が外に出るなんて危険だよ……っ」

 半泣きで訴えるけれど、明樹は全然危機感を抱いてくれない。

「拓人さんってば、大袈裟だよ」
「そんな事ない! 明樹くんと同じ会社で働いてる人は、きっと皆明樹くんの事狙ってるよ!」
「さすがにそれはないですって」
「あるよ、絶対! どうしよう、明樹くんが襲われたら……僕の明樹くんがけがされちゃう!」
「もし襲われても大丈夫だよ。俺が鍛えてるの知ってるでしょう? 返り討ちにします」
「でもでもでも、薬を盛られるかもしれないよ! 睡眠薬で眠らされて、眠ってる明樹くんの体、好き勝手に弄ばれたら……!」
「じゃあ、人からもらったものは口にしません」
「五人……いや、十人がかりで襲ってくるかもしれないよ!? 十人もいたら、明樹くんも抵抗できないよ! 僕の明樹くんが輪姦されちゃうよぉ!!」

 拓人はまるでその現場を見たかのように青ざめ、絶望に満ちた表情を浮かべる。

「そんなの嫌だよ! だから、ね、仕事、辞めよう!? 明樹くんは僕が養うから!」

 腕にしがみつき懇願すれば、明樹は困ったように眉を下げる。

「うーん……。でも、拓人さん一人の給料だけじゃ生活できないですよね……」
「うっ……でも、でもぉっ……明樹くんが凌辱されたら……っ」
「そんなに心配しなくても、拓人さんが想像するような事は絶対起きませんから」

 本人はそう言うけれど、彼は本当に誰もが心を奪われるような素敵で素晴らしく完璧で非の打ち所のない頭のてっぺんから爪先まで洗練された、神のような存在なのだ。
 そんな彼を手に入れたいと、よこしまな願望を抱く人間は後をたたないだろう。
 拓人が四六時中見守っていられるならまだ安心できるが、彼とは職場が違う。
 毎日毎日毎日毎日、心配でならないのだ。
 だから現実的に不可能だとわかっていても、何度も彼に退職をすすめてしまう。

「明日も仕事ですし、もう寝ましょう?」
「う……うん……」

 明樹は優しく微笑んで、頭を撫でてくれる。問題は何も解決していないけれど、こうして彼に触れられると不安は少し和らいだ。
 彼に手を引かれ、一緒に寝室へと向かった。





 翌日。拓人は残業で帰宅が遅くなってしまった。暗い夜道を、早足で進む。
 安月給の拓人では、もし毎日残業したとしても一ヶ月の家賃すら払えない。対して大企業で働く明樹は高給取りで、生活費の殆どが彼の金で支払われている。
 同棲する事になった時、明樹が今住んでいるマンションを選んだ。広い高層階の部屋は家賃が引くほど高かった。
 拓人はもっと低くて安いところでいいのではないかと思ったが、セキュリティーがしっかりした部屋がいいと明樹に言われ納得した。明樹の身を守る為に必要な事だ。ストーカーが部屋まで押し掛けてくる危険があるし、セキュリティーは強固であればあるほどいい。
 結果、拓人の給料では払えないほどの高級マンションで暮らす事になったのだ。
 悲しい現実だ。でも、毎日残業して、掛け持ちで別の仕事もすれば拓人にも彼を養う事ができるのではないだろうか。
 家に帰ったら、早速仕事を探してみよう。
 そんな事を考えながら足を進めていると、急に腕を掴まれた。後ろに人がいたなんて、全く気づいていなかった。
 驚きに声も出ない拓人は、その場に押し倒される。
 フードを被り、サングラスとマスクで顔を隠した男が覆い被さってくる。

「っえ、誰!? 何なんですか……!?」
「い、い、いつも、見てたんだ、君の事……っ」
「はあ……!?」

 はあっはあっと息を荒げる男は、拓人のワイシャツの前をボタンを引きちぎりながら乱暴に開けた。
 拓人は悲鳴まじりの声を上げる。

「ああ! 何するんだ、僕のワイシャツが……!」

 男は中のインナーを捲り上げ、ワイシャツの心配をする拓人の肌を露にする。

「すすす、すごく、か、かわ、可愛いって、思ってて……」
「可愛い? 僕が? そんなわけないだろう! 僕の顔をよく見てみろ!」

 拓人はどこにでもいるような、ド平凡顔だ。特徴のない、凡庸な顔立ちだ。
 そんな拓人を、明樹は好きだと言ってくれた。可愛いと言って、惜しみなく愛情を注いでくれる。天使のような存在だ。
 あんまり帰りが遅くなると、彼が心配する。今から帰るとメッセージを送ったのになかなか帰らなければ、外に捜しに出てしまうかもしれない。こんな暗い夜道を明樹のような美貌の持ち主がふらふらと出歩けば、あちこちに蔓延る変質者の格好の餌食だ。

「大変だ!! 早く帰らないと……!!」
「ぐわっ……!?」

 拓人は渾身の力でのし掛かる男を突き飛ばした。もう明樹の事しか頭になかった。

「待ってて、明樹くん! 今帰るからね……っ」

 拓人は猛スピードで帰路に就いた。

「明樹くん、ただいま!」

 ドアを開けると、廊下の奥から明樹が駆け寄ってきた。

「おかえり、拓人さん。残業お疲れさ……ま……」

 明樹の満面の笑顔は、拓人の姿を見て凍りついた。

「遅くなってごめんね、明樹くん。今日も一日大丈夫だった? 誰かにセクハラされたり襲われたりしなかった?」
「俺は大丈夫だけど、そんな事より拓人さん……その格好どうしたの……?」
「え……?」

 言われて自分の格好を見下ろす。
 ボタンが取れてワイシャツの前がはだけ、インナーは捲れ上がったままだ。
 すっかり忘れていた。こんなだらしない姿で帰ってきてしまうなんて恥ずかしい。
 恥ずかしさを誤魔化すように笑った。

「あはは。これは帰ってくる途中で、知らない人に押し倒されてさ……」
「あ? 今なんつった?」

 え、明樹くん今何て言ったの? と訊き返す間もなく、彼に寝室へ連れて行かれた。





「あひっ、ひっあっあっあっあ~~~~っ」

 後孔に埋め込まれた陰茎をばちゅっばちゅっと激しく打ち付けられ、拓人の嬌声が寝室に響く。

「くそっ、許せないっ、その辺の変質者に押し倒されて、その上乳首まで見せたなんて……っ」
「んあぁっ、らめっ、ひっぱっちゃぁああっ」

 散々弄られ真っ赤になった乳首をきゅうぅっと引っ張られ、痛みと快感に拓人は身悶える。
 明樹にこんな乱暴に抱かれるなんてはじめてだった。いつも穏やかで優しく常にこちらを気遣ってくれる彼が悪態をつき、苛立ちを露にしている。
 拓人は怖かった。

「ひっうっ、あききゅっ、ごめ、あっあっ、ゆるひてぇっ」

 涙を流し、両手を伸ばし彼にしがみつく。

「ごめんなひゃっ、あっんんっ、嫌わないで、あきくぅっ、ひあぁっ」

 子供のように泣きじゃくり、縋った。

「捨てないでぇっ、あききゅ、に、捨てられたら、いきてけないぃっ」

 明樹に嫌われ捨てられてしまうのではと怖かった。

「はあ? 捨てるわけないだろ……っ」
「んおぉ……っ」

 ごちゅっと最奥を穿たれ、衝撃に背中が仰け反る。

「もう、二度と誰にも触らせないからなっ。もしまたこの乳首、俺以外のヤツに見せたら許さないからな……っ」
「ひゃうんっ、んぁっ、みせなっ、あっ、みせませんんっ、ちくび、あききゅんにしか、あっあっ」
「会社も辞めて、これからはずっと家にいろよ……。一人で外出なんてさせないからな」
「はひっ、はひぃっ」
「俺が帰るまで、いい子で留守番してるんだぞっ。帰ってきたら毎日玄関で生ハメするからな……ちゃんとまんこの準備しとけよ……っ」
「んぉっ、おっ、しましゅっ、まいにちぃっ、あききゅ、の、おちんぽぉっ、ぉっ、おまんこれ、おかえりなしゃいしますぅっ、しゅきなだけはめはめしてくらしゃいぃっ」
「拓人は俺のものなんだから、もう忘れるなよっ」
「あひっ、ひっ、あききゅんのものれすぅっ、僕のおまんこ、あききゅん専用れすっ、んひっ、おっおっ、僕のぜんぶ、あききゅんだけの、あっあっあっ、~~~~っ」
「可愛いよ、拓人……俺だけの拓人……愛してる」
「しゅきっ、しゅきっ、あききゅっ、だいしゅきぃっ」

 そうして拓人は一晩かけて明樹に徹底的にしつけられた。
 その日から一人で家を出る事は許されず、仕事から帰ってくる彼を家で待つ毎日を送っている。
 部屋の中はカメラで監視されてるにもかかわらず、頻繁にメッセージと電話で現状報告を求められた。
 けれど、愛する明樹に縛られているこの状況が拓人にとっては幸せなので何も問題はなかった。




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 読んで下さってありがとうございます。


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