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マーシャはダンジョン都市へと向かう馬車の中、外を見ながら考えていた。
この世界はやはりゲームの世界観と同じなのだと。
侯爵令嬢として生きた年月が前世と同じくらいになった今、前世と言う名の予知夢でも見ていたのかと疑いたくなる。
ゲームで見たキャラクター、冒険者というシステム、ダンジョンという不可思議な存在。細部の展開が変わっていることが不思議だけれども、自分はヒロインではなく悪役令嬢なのだから、展開が変わることは仕方がないのかもしれない。
ハッピーエンドを目指すのならば、ゲームと同じ内容ではダメなのだから。
ゲームと変わってしまった点としては、美形教師の存在があるだろう。
後期が始まり、マーシャは前期と同じく魔法科の上級魔法を選択した。
休暇で会った時には「次に会う日が待ち遠しい」と言っていたくせに、美形教師は学園を辞めていたのだった。
新しく担当となった教師に尋ねてみれば、故郷に帰ったと言われて愕然とした。
ヒロインが美形教師ルートに入ったのか?と疑ったが、ヒロインは変わらず登校していて、他に学園を辞めた生徒の話も聞かない為、理由が不明だった。
ゲームでは教師ルートを選ばなければ、そのまま学園に居続けるはずであった。
指輪をくれた時の台詞は駆け落ちを示唆するものではなかったし、そもそも選択肢すらないに等しかった。
自分がヒロインではないから、展開が別物になってしまったのかもしれない。
教師はいなくなったが、指輪はマーシャの指にある。
キープしておきたかったがいなくなったものは仕方がない。
いいアイテムをもらったことだし、後は冒険者ランクを上げて、スタンピードに備えればいいのである。
そして、林間学校での魔獣の襲来。
あれは本当はスタンピードの時、ヒロインを殺す為にマーシャが用意するはずのものだった。
何故このタイミングで魔獣が?
…考えるまでもなかった。
アンナと父が、手を回してくれたに違いない。
周到に用意された結界の魔道具と、侯爵家の金と権力を考えれば、冒険者を雇って魔獣を捕らえること等容易いことだ。
今回のことは預かり知らぬ所で起こったことだが、今後を考えれば頼みやすくなるし、やりやすくなる。
ゲームと同じように、魔獣を動かせる悪役令嬢になれるのだった。
姑息な虐めのように、すぐに足がつくような馬鹿なことはしない。
魔獣を捕らえるならば、「研究の為」とでもなんとでも理由を付けることができるし、その場限りの契約の冒険者がしゃしゃり出てくることもない。
サラを殺す為の魔獣集めを、どのように父に頼めばいいかと頭を悩ませていたというのに、本当にアンナは頼りになる。
言わなくても、察して動いてくれるのだった。
王都にあり、安全なはずの国立森林公園に魔獣が突如現れてから一ヶ月が経つが、未だに犯人は捕まらず、捜査は難航していると聞く。
おかげで森林公園でキャンプを楽しもうとする貴族は激減し、騎士団や魔術師団も見回りを強化するしか打つ手はないようだ。
上手くやってくれていることに安堵する。
今年中にスタンピードは起こるのだから、用意ができていることは大きかった。
もう十一月に入ろうとしており、そろそろのはずだった。
マーシャも今日こそはCランクに上がりたい、と準備をして臨んでいた。
正面に座る弟を見る。
最近は随分と会話が増え、姉弟らしくなって来たと思うのだが、さすがに弟は緊張しているようで、家を出てからずっと黙って座っていた。
「試験に緊張しているのかしら?」
弟に声をかければ顔を上げ、拗ねたように唇を尖らせた。
「前回、魔術師団員二名と挑んだ時には、二人がかりで回復してもらわないと体力が持ちませんでした」
「そう、大変だったのね」
「今回は大丈夫だと思いますが…」
俯く弟に、マーシャは微笑んだ。
「大丈夫よ。あなたとマークは、本当に強くなったわ。わたくしが足を引っ張ってしまうんじゃないかと心配になるくらい」
「…真面目に二人で頑張りましたから」
「ええ、本当に。わたくしがいない平日にも、泊まりがけでレベル上げをしていたのでしょう。二人で二十階まで到達できるようになったと聞いて、驚いたわ」
「一泊して、ぎりぎりですよ。…今日は姉上がいるからもっと早く到達できると思いますけど」
「わたくし週末にしか参加できなくて、明らかにレベル差があるわ。…以前よりはレベルは上がった実感があるけれど、あなた達に比べたら全然よ」
「その分薬品を大量に持ってきたんですよね?」
「ええ、あなたとマークに渡す為にね。迷惑をかけるだろうことがわかっているから、ドレスや宝石を買うお金を全て薬品に回したの。クリアしたいもの。わたくし本気よ」
「…僕達も本気でクリアしたいので、ありがたくもらいます」
「もちろん、受け取ってちょうだい。もし万が一、わたくしのレベルが足りなかったとしても薬品で支えるわ」
「本当に無理なら、またレベルを上げて出直しましょう」
一人でレベルを上げて来い、と言わない弟は成長したのだな、と思う。
「頑張るわね」
「当然です」
言葉遣いは相変わらずだが、攻撃性はなくなったように思う。
執事は反抗期、と言っていたが、本当にそうだったのかもしれない。
ダンジョン前広場に行くと、マークはすでに待っていた。
大きなバックパックを背負い、大きな斜め掛けのバッグも持っている。
「おはようございます」
「おはよう、随分大荷物だな?」
「ごきげんよう」
弟の疑問に、マークは照れたように頭をかいた。
「バックパックはマーシャ嬢のご指示で、空です。こちらのバッグには薬品を入れられるだけ詰めてます」
「空?」
弟が振り返るので、マーシャは微笑みながら頷いた。
「戦闘中、足下に置いていつでも薬品を取り出せるようにね。そのバッグには薬品をめいっぱい詰めてもらうつもりなの」
「…なるほど、本気なんですね」
「ええ、とっても本気なの。わたくしも薬品を詰め込んだバッグを持ち込むわ。…あなたは盾役だから、荷物なんて足下に置いていたら邪魔でしょう?わたくしとマークの二人で支えますからね」
「頼りにしてますよ」
「ええ、頼ってちょうだい」
持ってきた薬品は最高級品である。
効果は高い。
体力を回復するポーションよりも魔力を回復する為のポーションを大量に用意した。
マーシャは今までの戦闘経験から学んだのだ。
前衛がまともで後衛の魔力が尽きなければ、戦い続けることができる。
マークのレベルは随分と上がった。
ボス戦も余裕だろう。
もしマーシャが上手く回復ができなかったとしても、マークの魔力が尽きなければ倒すことはできる。
マーシャ自身もポーションをたくさん持ち込めば、マークのポーションが尽きた時に渡すこともできる。
指輪を持っているから、多少攻撃されても大丈夫だった。
痛みを感じなければ、冷静に対処できるはずだ。
午前八時に集合し、十一階からダンジョン攻略を開始した。
とてもスムーズに進行でき、マーシャは少しでも経験値を稼ぐ為にレベル上げに集中する。
セシルもマークも落ち着いて敵に対処しており、成長を感じた。
かくいうマーシャは、週末に参加してレベル上げに集中し、強くなったという実感はあった。
実際に魔法攻撃力も上がっているし、回復力も上がっている。
だが思った程魔力量は伸びていなかった。
これからぐんと伸びるのかもしれないと思いそれほど気にしてはいないのだが、美形教師は魔力潜在量がすごい、と太鼓判を押していたから、もっとずっと早く増えるのだとばかり思っていただけに、誤算といえば誤算である。
魔力が尽きる程追いつめられた経験もないので、ボス戦でどうなるかが気がかりであった。
保険としても、魔力ポーションは重要なのである。
一日目で十六階まで進み、十七階へと続く通路で野営となった。
セシルとマークは幾度となく野営を繰り返すことでどんどん無駄を省いていき、メイドや下男を連れず、料理人すらもなくして護衛だけで挑むようになっていた。
護衛に荷物を持たせて、走るのである。
マーシャも似たような結論に至っていたので、連れているメイドはもはやアンナ一人であった。
アンナだけは、絶対にお供すると言ってついて来てくれるのだった。
護衛の人数が増えて金はかかるのだが、走ってくれるし、力仕事もできるし、メイドや下男を大量に連れて来るよりも進行は早く無駄がない。
食事は作りたてはもはや諦め、一泊の野営なのだから出来合いの物で我慢することにした。
二人が文句も言わずに過ごしているのに、自分がわがままを言うわけにはいかない。
マーシャもまた我慢し、けれどもアンナがいてくれるだけでも随分と精神的には救われたのだった。
美味しいお茶を淹れてくれるだけでも、癒される。
早々に休んで二日目、二十階に到達したのは昼を少し過ぎた所だった。
「昼食を食べてからの方がいいかしら」
マーシャが言えば、二人は首を振った。
「食事の後だと身体が重くなります。先に戦って倒してから、外に出てゆっくり食べませんか?」
弟の提案に、頷いた。
「確かにそうね。勝利の昼食を、レストランで祝いたいわね」
「そうしましょう」
護衛に担いで来てもらった薬品を受け取って、マークに手渡す。
自分の分のバッグも持ち、弟のウェストポーチにも入るだけ体力ポーションを詰め込んだ。
「…すごい量だな」
二人の驚いたような声音に、マーシャは平然と頷いた。
「わたくしの本気が伝わって?必ず勝つわよ」
「おう!」
「お嬢様、お気をつけて」
「アンナ、皆、行ってくるわね」
そして何度目かも忘れてしまった、二十階ボスへと挑むのだった。
中に入り、見慣れてしまったスライムを睨みつける。
「では行きますね」
「ええ、最初わたくしが攻撃してもいいかしら。どれくらい強くなったか、確認したいわ」
「わかりました。では私は回復を」
「後衛は近い位置にいましょう。いざというとき、薬品の受け渡しも近い方がいいわ」
「はい」
弟が突っ込み、マーシャは攻撃魔法を唱える。
何度か唱え、ボスがこちらを向きそうになったらマークと役割を交代する。
戦闘数も重ねただけあって、落ち着いて回復もできるようになっていた。
攻撃魔法は以前はあまりダメージを与えられている感覚がなかったが、今ならわかる。
七割はダメージが通るが、三割はレジストされているようだった。
マークにレジストはない。
回復魔法も、マークの七割ほどの回復量である。
つまりはこれが、二人とのレベル差であった。
足りない回復量は、その分回数で埋める。
ようやく、わかるようになったのだった。
だが三割足りないことで、戦闘は長引く。
マーシャもマークも魔力ポーションを惜しみなく使って魔力を維持しながら、削っていく。
セシルはよく耐えていた。
ダメージを食らった瞬間に回復魔法が発動するように調整しているマークに気づいた。
マーシャもそれを見て、同じようにやってみるが詠唱時間の差と、回復量の差でなかなか上手くいかない。
マークに回復の補助をしてもらいながら、回復魔法のタイミングを掴むべく練習をするのだが、一朝一夕にできることではない。
結果マークが回復の補助と攻撃、両方をやることになり、魔力ポーションの消費が一気に増える。
大量に持ち込んで良かったとマーシャは思うのだった。
弟は今の所まだポーションは使っていない。
ボスの体力が半分を切り、三分の一程になった頃、スライムの体積が一気に小さくなった。ぶるぶると震えながら攻撃をする様子は必死さを感じさせ、もう少しだ、という喜びにも繋がった。
「もう少しですね」
マークの言葉にマーシャは嬉しくなった。
ここまで追いつめたのだ。
「追い込むわね」
「はい」
言葉通り、マーシャは攻撃魔法を連発するが、削りきれない。
レジストされており、ボスの最後のあがきに舌打ちが漏れそうになる。
もう一発、もう一発、と繰り返していると、マークが何かを叫んでいたが、耳には入らなかった。
もう一発、と魔法を撃ち込んだ瞬間、小さくなったスライムの触手がマーシャへと伸ばされた。
「あっ」
「危ない!」
バチン、と、顔を叩かれてマーシャは吹っ飛んだ。
「姉上!」
セシルが叫び、スライムのヘイトを奪おうとさらに攻撃を続ける。
床を転がり、沼へと落ちる寸前で止まったマーシャは口から血を吐いたが、両腕をついてゆっくりと身体を起こした。
マークは弟の回復に集中していて、こちらに回復を回す余裕はない。
右目の視界が潰れており、左目はぼんやりと床を映す。
頭がくらくらし、床が回るような感覚だったが、痛みはなかった。
マーシャは冷静に、自分に回復魔法を唱える。
次の瞬間には立ち上がることができていた。
「大丈夫ですか!?」
マークが焦ったように声をかけてくるが、マーシャは微笑みながら頷いた。
「ええ、大丈夫よ。ごめんなさい、慌ててしまったわ」
服の埃を払い、元の位置へと戻る。
弟が気遣う視線を向けてくるのでこちらにも笑顔で返す。
「今のはわたくしが悪かったわ。回復を交代するから、攻撃してくれるかしら」
「はい!」
回復を交代し、マークが攻撃に回るとすぐにスライムは倒れた。
弟とマークはしばし呆然とスライムの死骸を見下ろしたまま動かなかった。
感動しているのだろうと思い、マーシャは出口側の扉を開けてから広場へ戻る。
二人は顔を見合わせ、喜びを噛み締めるような顔で震えていた。
「おめでとう。二人の力がとても大きかったわ。一緒に戦えて良かった。ありがとう」
声をかけ、素直に礼を言えば二人はマーシャを見て、首を振った。
「いいえ、三人の勝利です」
マークが言い、セシルも頷く。
「姉上が冷静だったから、僕達も冷静でいられました。ポーション、僕は使わなかったからお返しします」
「僕も、結構使ってしまいましたがまだ残っているので」
「いいのよ。これからも使うことがあるでしょう。それは持っておいてちょうだい…と言っても、持って帰るのが大変よね。持てるだけ、持って帰ってくれると嬉しいわ」
「姉上…」
「そんな」
「さぁ、帰ってギルドへ報告に行きましょう。今度こそ、駄目だなんて言わせないわ」
マーシャが受け取る気がないのを見て取った二人は、礼を言って薬品を担ぐ。
戦利品も二人で分けるように言い、入口の扉を開けてアンナ達に勝利の報告をした。
「おめでとうございます、お嬢様!坊ちゃま!」
「ありがとう、アンナ」
「ありがとう」
持ちきれない薬品を護衛に背負ってもらって、ギルドへと報告に行った。
今度は何も言われず、Cランクへと昇級したのだった。
喜ぶ二人に微笑みを向けながら、マーシャは疲れたから祝勝会は二人で気兼ねなくやりなさい、と言って送り出す。
時刻はすでに昼を過ぎ、夕方前になっていたので、戦闘時間の長さを実感した。
二人は渋っていたが、ギルドの前で別れて帰宅する。
戦闘終了後からひどく疲労していたのは本当で、帰宅しても食欲は沸かなかった。
アンナが心配するので少しだけ食べ、着替えて休むと言えば大人しく引き下がる。
ベッドに横になり、この疲れはようやくCランクへ上がれたことで気が抜けたのだろうと推測した。
目を閉じればすぐに睡魔が襲って来るので身を任せて存分に睡眠を貪った。
次に目覚めたのは翌朝だったが、身体が重く怠い感じは取れていなかった。
風邪でも引いたのかと思ったが、症状はない。
まだ疲れているのだろうと思い学校へ行くが、下校するまでが酷く苦痛で仕方がなかった。
帰宅後はまた部屋でベッドに横になるが、アンナは医者を呼ぶといって聞かず、仕方なく診察を受けたが過労だと言われ、休息が必要だということだった。
「お嬢様はCランクに上がられて、安心されたのでしょう。少しゆっくりなさって下さいまし」
「そうね…わたくしにとってCランクは鬼門だったものね」
「そうでございますとも」
夕食後に弟が見舞いに来て、マーシャは内心驚いたが表面には出さず笑顔で迎えれば、弟は心配そうな表情をした。
「姉上、大丈夫なの?」
「ええ、少し疲れてしまったみたい。あなた達の方が頑張っていたのに、情けないわね」
「そんなことはないです。休めば良くなるんでしょう?」
「ええ、数日学園もお休みして、ゆっくりしようと思ってるわ」
「そうですか。冒険者のことなんですけど…」
その顔を見て、何を言いたいのか理解したマーシャは頷いた。
「わたくしのことは気にしないで。二人で頑張って来たんだもの。満足するまで、やってみるといいわ」
「でも…」
「Cランクに上がったら、わたくしは最初からしばらくお休みする予定だったの。あなた達の邪魔はしないわ」
「姉上…」
まだ何か言いたそうな様子に、首を傾げて促す。
しばらく躊躇った後、弟は俯き加減で呟いた。
「姉上が声をかけてくれなかったら、僕は今も部屋に引きこもっていたと思う。…冒険者を続けようともきっと思わなかった。姉上のおかげです。ありがとうございました」
頭を下げた弟に、今度こそマーシャは驚いた。
「…そんな、一緒にレベル上げができて嬉しかったのはわたくしの方よ。ボスも一緒に倒してくれてありがとう。あなたが立派な冒険者としても活躍できるよう、祈っているわね」
「…はい」
退室していく弟の背中を見送りながら、内心呟く。
なんてちょろい弟なのかしら。
レベル上げは確かに頑張ったし薬品だって用意したけれど、わたくしはボスと戦うレベルには達していなかった。
それは実際に何度も戦い、多少なりともレベルアップした今だからわかることだ。
現に戦闘は三時間近くにも及び、マークに至っては用意していた薬品の半分を使う程の負担だったのだ。
マーシャは何個か使用したものの、マークの比ではない。
弟もダメージ総量で言えば計り知れない程に攻撃を受けているのだった。
マークの回復があってこそ、耐えられたに過ぎない。
二人に負担を強い、自分は楽をしてクリアする。
当初からの計画がこんなに上手く行って怖い位であった。
今度はどこからも文句は言わせない。
正々堂々とクリアしたのだから。
あの二人も不満はないようだし、何も問題はない。
後は二人で好きなようにしてくれたらいいのだった。
マーシャには王太子の婚約者になるという最大の目標があるのだ。
もう弟達に構っている暇はないのである。
少し休んで体調を戻したら、スタンピードに備えなければ。
そう思いながら、マーシャは再び目を閉じるのだった。
この世界はやはりゲームの世界観と同じなのだと。
侯爵令嬢として生きた年月が前世と同じくらいになった今、前世と言う名の予知夢でも見ていたのかと疑いたくなる。
ゲームで見たキャラクター、冒険者というシステム、ダンジョンという不可思議な存在。細部の展開が変わっていることが不思議だけれども、自分はヒロインではなく悪役令嬢なのだから、展開が変わることは仕方がないのかもしれない。
ハッピーエンドを目指すのならば、ゲームと同じ内容ではダメなのだから。
ゲームと変わってしまった点としては、美形教師の存在があるだろう。
後期が始まり、マーシャは前期と同じく魔法科の上級魔法を選択した。
休暇で会った時には「次に会う日が待ち遠しい」と言っていたくせに、美形教師は学園を辞めていたのだった。
新しく担当となった教師に尋ねてみれば、故郷に帰ったと言われて愕然とした。
ヒロインが美形教師ルートに入ったのか?と疑ったが、ヒロインは変わらず登校していて、他に学園を辞めた生徒の話も聞かない為、理由が不明だった。
ゲームでは教師ルートを選ばなければ、そのまま学園に居続けるはずであった。
指輪をくれた時の台詞は駆け落ちを示唆するものではなかったし、そもそも選択肢すらないに等しかった。
自分がヒロインではないから、展開が別物になってしまったのかもしれない。
教師はいなくなったが、指輪はマーシャの指にある。
キープしておきたかったがいなくなったものは仕方がない。
いいアイテムをもらったことだし、後は冒険者ランクを上げて、スタンピードに備えればいいのである。
そして、林間学校での魔獣の襲来。
あれは本当はスタンピードの時、ヒロインを殺す為にマーシャが用意するはずのものだった。
何故このタイミングで魔獣が?
…考えるまでもなかった。
アンナと父が、手を回してくれたに違いない。
周到に用意された結界の魔道具と、侯爵家の金と権力を考えれば、冒険者を雇って魔獣を捕らえること等容易いことだ。
今回のことは預かり知らぬ所で起こったことだが、今後を考えれば頼みやすくなるし、やりやすくなる。
ゲームと同じように、魔獣を動かせる悪役令嬢になれるのだった。
姑息な虐めのように、すぐに足がつくような馬鹿なことはしない。
魔獣を捕らえるならば、「研究の為」とでもなんとでも理由を付けることができるし、その場限りの契約の冒険者がしゃしゃり出てくることもない。
サラを殺す為の魔獣集めを、どのように父に頼めばいいかと頭を悩ませていたというのに、本当にアンナは頼りになる。
言わなくても、察して動いてくれるのだった。
王都にあり、安全なはずの国立森林公園に魔獣が突如現れてから一ヶ月が経つが、未だに犯人は捕まらず、捜査は難航していると聞く。
おかげで森林公園でキャンプを楽しもうとする貴族は激減し、騎士団や魔術師団も見回りを強化するしか打つ手はないようだ。
上手くやってくれていることに安堵する。
今年中にスタンピードは起こるのだから、用意ができていることは大きかった。
もう十一月に入ろうとしており、そろそろのはずだった。
マーシャも今日こそはCランクに上がりたい、と準備をして臨んでいた。
正面に座る弟を見る。
最近は随分と会話が増え、姉弟らしくなって来たと思うのだが、さすがに弟は緊張しているようで、家を出てからずっと黙って座っていた。
「試験に緊張しているのかしら?」
弟に声をかければ顔を上げ、拗ねたように唇を尖らせた。
「前回、魔術師団員二名と挑んだ時には、二人がかりで回復してもらわないと体力が持ちませんでした」
「そう、大変だったのね」
「今回は大丈夫だと思いますが…」
俯く弟に、マーシャは微笑んだ。
「大丈夫よ。あなたとマークは、本当に強くなったわ。わたくしが足を引っ張ってしまうんじゃないかと心配になるくらい」
「…真面目に二人で頑張りましたから」
「ええ、本当に。わたくしがいない平日にも、泊まりがけでレベル上げをしていたのでしょう。二人で二十階まで到達できるようになったと聞いて、驚いたわ」
「一泊して、ぎりぎりですよ。…今日は姉上がいるからもっと早く到達できると思いますけど」
「わたくし週末にしか参加できなくて、明らかにレベル差があるわ。…以前よりはレベルは上がった実感があるけれど、あなた達に比べたら全然よ」
「その分薬品を大量に持ってきたんですよね?」
「ええ、あなたとマークに渡す為にね。迷惑をかけるだろうことがわかっているから、ドレスや宝石を買うお金を全て薬品に回したの。クリアしたいもの。わたくし本気よ」
「…僕達も本気でクリアしたいので、ありがたくもらいます」
「もちろん、受け取ってちょうだい。もし万が一、わたくしのレベルが足りなかったとしても薬品で支えるわ」
「本当に無理なら、またレベルを上げて出直しましょう」
一人でレベルを上げて来い、と言わない弟は成長したのだな、と思う。
「頑張るわね」
「当然です」
言葉遣いは相変わらずだが、攻撃性はなくなったように思う。
執事は反抗期、と言っていたが、本当にそうだったのかもしれない。
ダンジョン前広場に行くと、マークはすでに待っていた。
大きなバックパックを背負い、大きな斜め掛けのバッグも持っている。
「おはようございます」
「おはよう、随分大荷物だな?」
「ごきげんよう」
弟の疑問に、マークは照れたように頭をかいた。
「バックパックはマーシャ嬢のご指示で、空です。こちらのバッグには薬品を入れられるだけ詰めてます」
「空?」
弟が振り返るので、マーシャは微笑みながら頷いた。
「戦闘中、足下に置いていつでも薬品を取り出せるようにね。そのバッグには薬品をめいっぱい詰めてもらうつもりなの」
「…なるほど、本気なんですね」
「ええ、とっても本気なの。わたくしも薬品を詰め込んだバッグを持ち込むわ。…あなたは盾役だから、荷物なんて足下に置いていたら邪魔でしょう?わたくしとマークの二人で支えますからね」
「頼りにしてますよ」
「ええ、頼ってちょうだい」
持ってきた薬品は最高級品である。
効果は高い。
体力を回復するポーションよりも魔力を回復する為のポーションを大量に用意した。
マーシャは今までの戦闘経験から学んだのだ。
前衛がまともで後衛の魔力が尽きなければ、戦い続けることができる。
マークのレベルは随分と上がった。
ボス戦も余裕だろう。
もしマーシャが上手く回復ができなかったとしても、マークの魔力が尽きなければ倒すことはできる。
マーシャ自身もポーションをたくさん持ち込めば、マークのポーションが尽きた時に渡すこともできる。
指輪を持っているから、多少攻撃されても大丈夫だった。
痛みを感じなければ、冷静に対処できるはずだ。
午前八時に集合し、十一階からダンジョン攻略を開始した。
とてもスムーズに進行でき、マーシャは少しでも経験値を稼ぐ為にレベル上げに集中する。
セシルもマークも落ち着いて敵に対処しており、成長を感じた。
かくいうマーシャは、週末に参加してレベル上げに集中し、強くなったという実感はあった。
実際に魔法攻撃力も上がっているし、回復力も上がっている。
だが思った程魔力量は伸びていなかった。
これからぐんと伸びるのかもしれないと思いそれほど気にしてはいないのだが、美形教師は魔力潜在量がすごい、と太鼓判を押していたから、もっとずっと早く増えるのだとばかり思っていただけに、誤算といえば誤算である。
魔力が尽きる程追いつめられた経験もないので、ボス戦でどうなるかが気がかりであった。
保険としても、魔力ポーションは重要なのである。
一日目で十六階まで進み、十七階へと続く通路で野営となった。
セシルとマークは幾度となく野営を繰り返すことでどんどん無駄を省いていき、メイドや下男を連れず、料理人すらもなくして護衛だけで挑むようになっていた。
護衛に荷物を持たせて、走るのである。
マーシャも似たような結論に至っていたので、連れているメイドはもはやアンナ一人であった。
アンナだけは、絶対にお供すると言ってついて来てくれるのだった。
護衛の人数が増えて金はかかるのだが、走ってくれるし、力仕事もできるし、メイドや下男を大量に連れて来るよりも進行は早く無駄がない。
食事は作りたてはもはや諦め、一泊の野営なのだから出来合いの物で我慢することにした。
二人が文句も言わずに過ごしているのに、自分がわがままを言うわけにはいかない。
マーシャもまた我慢し、けれどもアンナがいてくれるだけでも随分と精神的には救われたのだった。
美味しいお茶を淹れてくれるだけでも、癒される。
早々に休んで二日目、二十階に到達したのは昼を少し過ぎた所だった。
「昼食を食べてからの方がいいかしら」
マーシャが言えば、二人は首を振った。
「食事の後だと身体が重くなります。先に戦って倒してから、外に出てゆっくり食べませんか?」
弟の提案に、頷いた。
「確かにそうね。勝利の昼食を、レストランで祝いたいわね」
「そうしましょう」
護衛に担いで来てもらった薬品を受け取って、マークに手渡す。
自分の分のバッグも持ち、弟のウェストポーチにも入るだけ体力ポーションを詰め込んだ。
「…すごい量だな」
二人の驚いたような声音に、マーシャは平然と頷いた。
「わたくしの本気が伝わって?必ず勝つわよ」
「おう!」
「お嬢様、お気をつけて」
「アンナ、皆、行ってくるわね」
そして何度目かも忘れてしまった、二十階ボスへと挑むのだった。
中に入り、見慣れてしまったスライムを睨みつける。
「では行きますね」
「ええ、最初わたくしが攻撃してもいいかしら。どれくらい強くなったか、確認したいわ」
「わかりました。では私は回復を」
「後衛は近い位置にいましょう。いざというとき、薬品の受け渡しも近い方がいいわ」
「はい」
弟が突っ込み、マーシャは攻撃魔法を唱える。
何度か唱え、ボスがこちらを向きそうになったらマークと役割を交代する。
戦闘数も重ねただけあって、落ち着いて回復もできるようになっていた。
攻撃魔法は以前はあまりダメージを与えられている感覚がなかったが、今ならわかる。
七割はダメージが通るが、三割はレジストされているようだった。
マークにレジストはない。
回復魔法も、マークの七割ほどの回復量である。
つまりはこれが、二人とのレベル差であった。
足りない回復量は、その分回数で埋める。
ようやく、わかるようになったのだった。
だが三割足りないことで、戦闘は長引く。
マーシャもマークも魔力ポーションを惜しみなく使って魔力を維持しながら、削っていく。
セシルはよく耐えていた。
ダメージを食らった瞬間に回復魔法が発動するように調整しているマークに気づいた。
マーシャもそれを見て、同じようにやってみるが詠唱時間の差と、回復量の差でなかなか上手くいかない。
マークに回復の補助をしてもらいながら、回復魔法のタイミングを掴むべく練習をするのだが、一朝一夕にできることではない。
結果マークが回復の補助と攻撃、両方をやることになり、魔力ポーションの消費が一気に増える。
大量に持ち込んで良かったとマーシャは思うのだった。
弟は今の所まだポーションは使っていない。
ボスの体力が半分を切り、三分の一程になった頃、スライムの体積が一気に小さくなった。ぶるぶると震えながら攻撃をする様子は必死さを感じさせ、もう少しだ、という喜びにも繋がった。
「もう少しですね」
マークの言葉にマーシャは嬉しくなった。
ここまで追いつめたのだ。
「追い込むわね」
「はい」
言葉通り、マーシャは攻撃魔法を連発するが、削りきれない。
レジストされており、ボスの最後のあがきに舌打ちが漏れそうになる。
もう一発、もう一発、と繰り返していると、マークが何かを叫んでいたが、耳には入らなかった。
もう一発、と魔法を撃ち込んだ瞬間、小さくなったスライムの触手がマーシャへと伸ばされた。
「あっ」
「危ない!」
バチン、と、顔を叩かれてマーシャは吹っ飛んだ。
「姉上!」
セシルが叫び、スライムのヘイトを奪おうとさらに攻撃を続ける。
床を転がり、沼へと落ちる寸前で止まったマーシャは口から血を吐いたが、両腕をついてゆっくりと身体を起こした。
マークは弟の回復に集中していて、こちらに回復を回す余裕はない。
右目の視界が潰れており、左目はぼんやりと床を映す。
頭がくらくらし、床が回るような感覚だったが、痛みはなかった。
マーシャは冷静に、自分に回復魔法を唱える。
次の瞬間には立ち上がることができていた。
「大丈夫ですか!?」
マークが焦ったように声をかけてくるが、マーシャは微笑みながら頷いた。
「ええ、大丈夫よ。ごめんなさい、慌ててしまったわ」
服の埃を払い、元の位置へと戻る。
弟が気遣う視線を向けてくるのでこちらにも笑顔で返す。
「今のはわたくしが悪かったわ。回復を交代するから、攻撃してくれるかしら」
「はい!」
回復を交代し、マークが攻撃に回るとすぐにスライムは倒れた。
弟とマークはしばし呆然とスライムの死骸を見下ろしたまま動かなかった。
感動しているのだろうと思い、マーシャは出口側の扉を開けてから広場へ戻る。
二人は顔を見合わせ、喜びを噛み締めるような顔で震えていた。
「おめでとう。二人の力がとても大きかったわ。一緒に戦えて良かった。ありがとう」
声をかけ、素直に礼を言えば二人はマーシャを見て、首を振った。
「いいえ、三人の勝利です」
マークが言い、セシルも頷く。
「姉上が冷静だったから、僕達も冷静でいられました。ポーション、僕は使わなかったからお返しします」
「僕も、結構使ってしまいましたがまだ残っているので」
「いいのよ。これからも使うことがあるでしょう。それは持っておいてちょうだい…と言っても、持って帰るのが大変よね。持てるだけ、持って帰ってくれると嬉しいわ」
「姉上…」
「そんな」
「さぁ、帰ってギルドへ報告に行きましょう。今度こそ、駄目だなんて言わせないわ」
マーシャが受け取る気がないのを見て取った二人は、礼を言って薬品を担ぐ。
戦利品も二人で分けるように言い、入口の扉を開けてアンナ達に勝利の報告をした。
「おめでとうございます、お嬢様!坊ちゃま!」
「ありがとう、アンナ」
「ありがとう」
持ちきれない薬品を護衛に背負ってもらって、ギルドへと報告に行った。
今度は何も言われず、Cランクへと昇級したのだった。
喜ぶ二人に微笑みを向けながら、マーシャは疲れたから祝勝会は二人で気兼ねなくやりなさい、と言って送り出す。
時刻はすでに昼を過ぎ、夕方前になっていたので、戦闘時間の長さを実感した。
二人は渋っていたが、ギルドの前で別れて帰宅する。
戦闘終了後からひどく疲労していたのは本当で、帰宅しても食欲は沸かなかった。
アンナが心配するので少しだけ食べ、着替えて休むと言えば大人しく引き下がる。
ベッドに横になり、この疲れはようやくCランクへ上がれたことで気が抜けたのだろうと推測した。
目を閉じればすぐに睡魔が襲って来るので身を任せて存分に睡眠を貪った。
次に目覚めたのは翌朝だったが、身体が重く怠い感じは取れていなかった。
風邪でも引いたのかと思ったが、症状はない。
まだ疲れているのだろうと思い学校へ行くが、下校するまでが酷く苦痛で仕方がなかった。
帰宅後はまた部屋でベッドに横になるが、アンナは医者を呼ぶといって聞かず、仕方なく診察を受けたが過労だと言われ、休息が必要だということだった。
「お嬢様はCランクに上がられて、安心されたのでしょう。少しゆっくりなさって下さいまし」
「そうね…わたくしにとってCランクは鬼門だったものね」
「そうでございますとも」
夕食後に弟が見舞いに来て、マーシャは内心驚いたが表面には出さず笑顔で迎えれば、弟は心配そうな表情をした。
「姉上、大丈夫なの?」
「ええ、少し疲れてしまったみたい。あなた達の方が頑張っていたのに、情けないわね」
「そんなことはないです。休めば良くなるんでしょう?」
「ええ、数日学園もお休みして、ゆっくりしようと思ってるわ」
「そうですか。冒険者のことなんですけど…」
その顔を見て、何を言いたいのか理解したマーシャは頷いた。
「わたくしのことは気にしないで。二人で頑張って来たんだもの。満足するまで、やってみるといいわ」
「でも…」
「Cランクに上がったら、わたくしは最初からしばらくお休みする予定だったの。あなた達の邪魔はしないわ」
「姉上…」
まだ何か言いたそうな様子に、首を傾げて促す。
しばらく躊躇った後、弟は俯き加減で呟いた。
「姉上が声をかけてくれなかったら、僕は今も部屋に引きこもっていたと思う。…冒険者を続けようともきっと思わなかった。姉上のおかげです。ありがとうございました」
頭を下げた弟に、今度こそマーシャは驚いた。
「…そんな、一緒にレベル上げができて嬉しかったのはわたくしの方よ。ボスも一緒に倒してくれてありがとう。あなたが立派な冒険者としても活躍できるよう、祈っているわね」
「…はい」
退室していく弟の背中を見送りながら、内心呟く。
なんてちょろい弟なのかしら。
レベル上げは確かに頑張ったし薬品だって用意したけれど、わたくしはボスと戦うレベルには達していなかった。
それは実際に何度も戦い、多少なりともレベルアップした今だからわかることだ。
現に戦闘は三時間近くにも及び、マークに至っては用意していた薬品の半分を使う程の負担だったのだ。
マーシャは何個か使用したものの、マークの比ではない。
弟もダメージ総量で言えば計り知れない程に攻撃を受けているのだった。
マークの回復があってこそ、耐えられたに過ぎない。
二人に負担を強い、自分は楽をしてクリアする。
当初からの計画がこんなに上手く行って怖い位であった。
今度はどこからも文句は言わせない。
正々堂々とクリアしたのだから。
あの二人も不満はないようだし、何も問題はない。
後は二人で好きなようにしてくれたらいいのだった。
マーシャには王太子の婚約者になるという最大の目標があるのだ。
もう弟達に構っている暇はないのである。
少し休んで体調を戻したら、スタンピードに備えなければ。
そう思いながら、マーシャは再び目を閉じるのだった。
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