赤字国家に召喚されたので、まずは売却から始めます──でも断られたので価値を爆上げして帝国に頭を下げさせることにしました【TOP3入り感謝】

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第五章:公女の戦い

第七節:乾坤一擲の大返し

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 一方その頃、レーナ連邦官邸の一角。
 夕暮れの影が静かに床を這うなか、仄暗い回廊を数人の黒衣の影が滑るように進んでいた。

 「……もうすぐだ。間もなく女王の執務室だ」

 影のひとりが囁く。
 獣のように目を光らせた別の男が、低く笑った。

 「ふん、拍子抜けだな。公女の護衛程度であのレベルなら、女王本人も高が知れてるな。連邦ごときが、帝国に歯向かうとは……」

 扉が視界に入る。誰もいない。
 兵の姿も、気配すらない。
 まるで歓迎しているようだった。

 「──このまま突入する」

 ナイフのような声が、暗殺者たちの神経を研ぎ澄ませる。
 そして、扉が静かに開かれた。

 しかし──

 「ようこそ、遅かったわね」

 中にいたのは、堂々とした姿で椅子に腰掛けるイーリス女王。
 隣には、腰に手を置いたヴァネッサが立っていた。

 「な……」

 その瞬間、窓の外から殺気が迫る。
 兵士たちが四方からなだれ込み、背後の廊下からも一斉に足音が響いた。

 「な、なんで──ッ!」

 「……公国の公女たちが、わたしたちの安全を心配して知らせてくれたのよ。ありがたいことにね」

 イーリスの口元が皮肉気に笑った。

 「その子たち、ただの姫様じゃなかったってわけ」

 「クソッ……!」

 刃を抜こうとした刺客がいたが、それより早く、ヴァネッサが制止の合図を出す。

 「全員、武器を捨てなさい。ここはもう包囲されているわ」

 兵士たちの弓が、彼らに狙いを定めていた。
 数で、速度で、そして“準備”で、完全に上回っていた。

 「……終わり、か」

 刺客の一人が、ひとつ嘆息をこぼした。

 イーリスは静かに立ち上がり、彼らを見下ろした。
 その瞳には怒りではなく、冷たい慈悲の色が宿っていた。

 「帝国に尻尾を振るのは勝手だけど……その愚かさの代償は、払ってもらうわよ」

 その言葉とともに、制圧の合図が下された。
 常駐部隊が一斉に動き、刺客たちは瞬く間に地に伏す。

 と、その直後――

 扉の向こう、廊下の先から駆けこむ足音が鳴り響いた。
 ほこりを蹴り上げ、全身に疲労の色を浮かべた少女が飛び込んでくる。

 「ご無事ですか、イーリスさん!」

 リィナ・ミティアの声が、場の空気を裂いた。
 続いてミロ、ノアの姿も現れる。

 イーリスは目を見開き、しかしすぐに表情を緩めた。
 「……間に合わなくても、ちゃんと始末はついてたわよ?」

 背後には、すでに取り押さえられた刺客たち。
 その中の一人が呻きながら地面に伏せている。

 「まさか……詰所の部隊が、先に?」

 リィナが混乱気味に呟いたとき、背後からヴァネッサが現れた。
 「転移門よ。……あなたたちが街道で捕らえた刺客から情報を引き出した直後、ミロが官邸の警戒石板に“座標付き警告信”を打ってくれた。公国の技術ね。すぐに詰所の部隊を移送できた」

 「それで、先に……」
 リィナは言葉を失い、安堵で膝をつきそうになった。

 「ミロが簡易転移門の発信だけ、持ち出してて……」
 「……非常時用に、こっそり許可をいただいてました。叱られる覚悟でしたけど……」
 ミロが縮こまりながら言う。

 「叱らないわよ。むしろ、よくやってくれました」

 イーリスの言葉に、ミロはほっと息を吐いた。

 そしてリィナの肩をそっと抱き寄せながら、女王は静かに告げた。

 「あなたが信じたものが、わたしを救ったの。ありがとう、リィナ・ミティア」

 リィナはきゅっと唇を結び、イーリスの背中に目をやる。

 ――あの時、即座に馬を駆ったのは、無駄じゃなかった。
 例え手が届かずとも、信頼が繋がっていた。
 自分たちは、選ばれたのではない。“歩み寄る”ことで信頼を築けたのだ。

 その証として、確かに命が守られた――。








◆あとがき◆
毎日 夜21時に5話ずつ更新予定です!
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そんな物語を目指して更新していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
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