【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら

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11、変わらぬ日々

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 翌日もメアリは国王の執務室に向かうことになった。

「…………」

 歩を進めつつにメアリは自身の顔に指をそえる。
 そこには厚い包帯の感触があった。

(関係ないのですね)

 淡々と現状を理解する。
 切り傷も多く、顔は腫れていない場所は無いような有様だった。
 まんべんなく紫に腫れ上がっており、右目はもはや開くことも叶わない。

 首から下にしても痛みの無い場所は無かった。
 両腕共に肩から上に上がらず、左足は軽く引きずることになっている。

 それでも関係は無いようだった。
 今日もまた、国王は変わらずメアリを呼びつけてきた。

 まぁ、そうだろう。

 メアリは少し考えて納得した。
 自分は道具なのだ。
 
 少しばかり調子が悪そうだが、とりあえず使って確かめてみよう。
 そう思われる程度の存在だということだ。

 執務室の前にたどり着く。
 昨日と同じだった。
 中からは怒声が聞こえてきたが、もはやどうでもよかった。
 メアリはかまわず扉をノックする。

「メアリです」

 名乗り、返事を待たずに扉を開く。
 そこには昨日と同じ光景が広がっていた。
 父が兄が、妹が母が。
 家族がそろっている。

 また重大な失態でも起こしたのだろうか。
 淡々と疑問に思うが、しかし妙なところはあった。

 父が「おぉ!」とメアリの到来に安堵の笑みを浮かべる一方で、残りの面々だ。

 どうにも歓迎の雰囲気が無い。
 誰もがしかめつらであり、ロイなどはメアリに対し扉を指差してきた。

「おい、メアリ! 戻れ! 今日はお前の出番は無いぞ!」

 兄が叫び、残りも頷きを見せてくる。
 だが、父だった。
 どこか必死の表情で首を左右にしてくる。

「い、いや、戻るな! お前の出番だ! 重要な出番なんだぞ!」

 とのことらしかったが、一体どうすれば良いのか。

 判断に迷っていると、兄が再び怒声を上げてくる。

「いいから戻れ! 部屋で大人しくしていろ!」

「いや戻るな! お前には担ってもらわなければならない仕事があるのだ!」

 そうして国王だった。
 何を思ったのか、席を立てば駆け寄ってきたのだ。
 さらには、そのままの勢いでメアリの手を強く握ってくる。

(痛い……)

 思ったが口を開くのも億劫おっくうだった。
 そんなメアリに、父はすがるような目つきを見せてくる。

「頼むぞ、メアリ。お前もな、一年前の国境での事件を覚えていような?」

「……はぁ」

「はぁでは無いぞ! 国境近隣の領主が独断で国境を侵犯! 隣国の反感を買い、結果多くの死傷者を出したあの件だ!」

 無気力であっても、自然と思い起こされた。
 そんな事件があった。
 その顛末てんまつはと言えば、独断で国境を犯した領主が死罪を言い渡されたのだが……

 にわかに無気力が晴れる。
 嫌な予感に突き動かされて問いかけることになる。

「まさか……冤罪えんざいだったと?」

 父は眉をひそめれば首を左右にしてきた。

「え、冤罪などでは無い。全てあやつが悪いのだ。確かに命令したのはワシだがな。あのバカ王の態度が悪ければ、適当に領土を荒らしてやれと命令したのはワシだが……」

「そ、それでは冤罪ではありませんか! 陛下が自身の失態をその者に押し付けたと!」

「ば、バカなことを言うな! 悪いのは全てあやつだ! 大事おおごとになったのも、全てはあやつが加減を間違えたせいなのだ!」

 言い訳以外の何物でも無かったが、当人にそのつもりは無いようだった。
 父はさも被害者であると言わんばかりに嘆かわしげにため息をつく。

「であるというのに、まったく。今さら誰が流したものか。かの事件の責任はワシにあるなどという噂が流れているようでな」

 父は笑顔になった。
 笑顔でメアリの肩を叩いてくる。
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