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2-My goddess-【千歳SIDE】
55りのだけ②
しおりを挟む男の存在は、たった一人そういう奴がいると知っただけで、重なるように連絡がつかなくなったことが不安で仕方がない。
このまま連絡がつかないまま避けられたりしたらって思うと、黒く黒く視界が塗りつぶされる。
金曜日まで普通だったのに、何かしたかと再会してからのことをひとつひとつ思い出し、りのの可愛さを再確認してさらに恋情を募らせている間に朝になった。
浅い眠りはあったように思うが、夢の中でもりののことを考えていた気がする。
ぼんやりとした思考のまま、ずっと手に持っていたスマホを確認するが、いつもの友人知人ばかりで、千歳の望む人の名前は見当たらない。
「りの」
待ち受けはりのの姿。
写真が欲しいとお断りされたので、隠し撮ったものだ。友人と笑っている姿。で、そのまま保持するには犯罪臭が漂うので、事後承諾させた。
『撮らせてくれないから、こうして自然に笑う姿のりのが欲しかった』って言えば、驚いたあと焦ったように消せと言われたけど、『今すぐ撮らせてくれるのなら、こっちは消す』って言ったら、迷った末これは許可されたやつ。
うまく誘導して二択にしたら、うーん、うーんと悩んで最終的に小さく小さく頷いた。耳だけが赤くなっていたりのは可愛かった。
そのうち、自分に向かって笑っている写真は必ず欲しい。
「りの」
目の前にいないのに、『りの』と呼ぶだけで気持ちが落ち着く気がする。
画面にそっとキスを落として、その冷たい感触に皮肉に笑みが漏れた。
──本当、どこまで俺を振り回せば気が済むのだろう。
どろどろとした内面を隠して、あとで読み返しても引いてしまわない程度に心配だという文章とともにメールを送る。
やっぱり1分1秒が長い。
どうしても我慢できず、時間が経つにつれてこんなに連絡がないのは本当に何かあったのではないかと電話をするが、それも繋がらず。
なんか、徐々に自分が狂っていくのがわかる。大事にしたいのに、踏み込ませてくれない、踏み込んでくれないりのが憎くもあって。
『下の、名前で呼んで欲しい。なんで呼んでくれないの?』
なんて、メールを打ってしまった。
心配からのそれは意味がわからないけれど、もう黙っていられず吐き出すくらい許されるなんて。それを見たりのが何か考えてくれたら、意識してくれたらって願わずにいられない。
りのだけが、この状態の俺を救ってくれる。
一つ、連絡が返ってくるだけで、この重苦しい気持ちは一瞬にして解き放たれると思うと、早く、早く、りのの反応が欲しくて。
狂ってしまう前に俺を助けて欲しくて。
そろそろ、進展がないと自分が何をするかわからないところまで来ている気がして。
今すぐ、りのの家まで駆けつけてしまいたい気持ちを我慢するので精一杯。
夕方になっても繋がらなかったら、これは出かけるしかない。それまでなら待つと、溜まっていたことをやりながらスマホを気にする時間を過ごし、ようやくりのからの連絡があった。
メールだけど、さっとその内容を読み、りのがスマホを触っているうちにと電話をかける。
長い、長い着信音の末、ようやくりのが出た。
『は、はい』
ああ、りのの声だ。なんか声が上擦っているが、電話に出てくれたという事実に歓喜する。
考えたくなかったが、もしかして避けられてるのではという思いもあって、今までのメールを見返して、出来事を振り返って、何かしたんではないかと振り返ってみるが、思い当たらなくて。
とりあえず、りのと繋がっていることに安堵する。
「りの?」
『ごめん。びっくりしてスマホ落としちゃって』
その言葉に眉をひそめるが、そのあとの会話でもりのの態度に不審な点は見つからず、メールの量を見て悪いとは思ってくれているようで、ならそのままその気持ちにつけ込んでしまえと、悪い男の欲が顔を出す。
例のメールのことには触れず、まずは土曜日のこと、そして連絡が今まで取れなかった今日のこと。りのからなにか言ってくれないかなって振ってみた。
「………………りのは休日どうだった?」
『たくさん買い物もしたし、美味しいものも食べたよ。高塚くんは?』
「俺はりののことを考えてた」
『…………』
溜まりに溜まったりのへの渇望が止まらない。いつも押さえ込んでいる気持ちが、抑えきれていない。
でも、もうそれでいいかという思いが強くなる。
沈黙の意味が知りたい。
なにを考えてるの?
りののことが知りたくて、手に入れたくて、すぐさま告白して付き合って、貪り喰いたいところまできてる。
その獣なところを必死で抑えるのに必死で、ぽろぽろと溢れるりのへの気持ちが止められない。
そんなりのを傷つけまいと必死な俺に、りのは男と、兄の友達だけどずっといたといった。
日曜の今日は家族との約束だからと聞き分けのいい振りをした。自分にりのを束縛する資格は今はまだない。だけど、なんか裏切られたと思うような気持ちが支配する。
思わず、嫌味みたいなことを言ってしまったけど、優しいりのは許してくれて、俺の我儘を聞いてくれようとする。
その優しさを向けるのは、りのが許容するのは俺だけにして欲しい。りのの特別が欲しい……。
もう、抑えられない。待った。十分に待った。
これ以上はどうなるか自分でもわからなくて、もうりのに飢えすぎて助けてほしくて、りのにすがりつく。
「りの、りぃの。来てくれるよね?」
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