この歌声が届くまで

蒼村 咲

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9月8日 月曜日

第27話 共同戦線開始!

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 果たして桐山会長の言葉は本当だった。
 開催の許可は即日下りたし、生徒会執行部と合唱祭実行委員会は当然のように、合唱祭の主催団体として承認されたのだ。

「理事会がついてるって……いったい何者なのよあの人」

 正直、合唱祭を開催できる嬉しさに勝る勢いで空恐ろしさが募る。

「僕の推測が正しければ、現理事長はおそらく彼の祖父か大叔父あたりだろうね」

 新垣くんが言うと、中村くんが「ガチじゃないすか」と体を引いた。

「それならこれまでだって、当たり前のようにこの学校を牛耳れたんじゃないの?」

 私が言うと、乾があくびをかみ殺しながら「だろうな」と答えた。

「なんで今までは大人しくしてたんだろ。いや、なんで急に権力を行使し始めたんだろって言うべきかな……」

 誰にともなくつぶやくと、なぜか塚本くんが咳払いをした。
 その意味を察してはっと振り返ってみれば、たしかに桐山会長の姿がある。

(うわっ……)

 始業式の放課後のトラウマなのか、今でもついついぎょっとしてしまう。
 それを表に出さずにうまく隠せている自信はないので、桐山会長が気にしていない様子なのは幸いだった。いた、単にそんなくだらないことを気にしているようでは生徒会長なんて務まらないという、ただそれだけの話かもしれないけれど。

「そんな必要がなかった──それだけだよ」

「──!」

 桐山会長はさらりと言って、そのまま足を止めずに新垣くんのもとへと歩み寄った。

(私のことなんて、文字通り眼中にないんだろうなあ……そのわりにはがっつり聞かれてたけど)

 私はそんなことを思いながら、桐山会長を目で追う。
 彼は新垣くんに一枚のプリントを手渡した。

「日程は来月の第一金曜の午後を全校一斉で空けてもらった」

 詳細が記されているのだろうか。そのプリントに新垣くんが目を落とす。

「翌々週には中間テストか……。本格的な受験シーズン直前の最後のイベントってわけだね」

 心なしか、新垣くんの口角が上がっている気がする。
 と、乾が立ち上がり二人の会話に加わった。

「会場はどうすんだ? これから押さえないといけないだろ?」

「うん。時期的に今から外部の会場の予約は厳しいだろうし、時間的にも校内でやるのが現実的だね」

 新垣くんの答えにはっとする。
 金曜の午後、つまり五・六限目にあたる時間帯しか使えないのだから、校外の施設に移動する時間なんてないのだ。

「格技場では狭すぎるし、じゃあ体育館か……いや、音響を考えると講堂か?」

「ああ、あそこならピアノもあるね」

「それなら、今から僕、申請に行ってきますよ」

 塚本くんがそう言って立ち上がったので、私はびっくりしてしまった。

(なんだろうこの、みんな自分のやるべきことがわかっている感じ……)

 なんだか、私一人が無能なんじゃないかと思えて悲しくなってくる。

(って、私が勝手に一歩引いて見てるだけか……)

 副会長である庄司くんと連れ立って出て行った塚本くんを見送ると、私は意を決してブレーンチームに近づいた。

「タイムテーブルも決めないと。合計で二時間弱か……どうする?」

「せっかく二時間もあるんだし、一曲だけで終わるなんてもったいないよね」

「けど、どれくらいの人数になるかわからないことには決めようがないだろ」

「完全に未知数だからね……」

 日時と場所が決まったところで、それはイベントのほんのスタートに過ぎないのだ。私はそんな当たり前の、でも今まで全く意識してこなかったことを考えた。

「じゃあまずは参加者を募るところから始めませんか」

 後ろから聞こえてきた声に、私を含め全員がぱっと振り返る。中村くんだった。

「まあ、それが一番だろうね。問題はどうやって募集するか、で」

 けれど新垣くんの返事に、中村くんは首をかしげた。

「簡単ですよ。明日の昼休みにでも放送室をジャックして、合唱祭参加者募集の呼びかけをすればいいんです。参加希望者は放課後どこかに集合ってことで」

 中村くんが例によって何事もないように──それこそ「明日ちょっと早起きすればいいんですよ」くらいのノリで言うので、私たちは一瞬、すべての動作を停止してしまった。

「お前、放送室をジャックってなあ……。そうだ、執行部は放送部に伝手とかあんの?」

 乾が桐山会長を振り返るが、彼は「いや、ない」ときっぱり首を振る。

「だってあそこは……なんというか、異質すぎる」

 かすかに顔をしかめた桐山会長の気持ちはわからないでもない。
 その他大勢の一般生徒からは「オタクの巣窟」なんて揶揄されているが、実際のところうちの放送部は、校内きっての変わり者を集めたような集団なのだ。
 けれど中村くんは、ひとり意外そうに目を瞬いている。

「いえ、それは──」

「──それはもう、ヤツを引っ張り戻すしかないでしょう」

 中村くんの声にかぶせるようにして、廊下から突然声がした。

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