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そして、両親は末っ子オメガの亜季を全寮制のオメガだけの学校に編入させた。
長男 晴臣は父方の遠い親戚の一つに養子に出された。
直接会って亜季に謝罪ができなかった次男 冬紀と三男 夏樹の中に今回の出来事は大きなしこりとなって残った。
亜季が居なくなったことによって家族自体がバラバラになってしまった。
両親は家を出てしまう晴臣に、そのまま何もせずに家業を継がせることはできないという。「一族の中で、実力でグループの上層を目指しなさい」
父からそう言われる。
「結果を出してね」
母から言われ、晴臣は必死に努力した。
亜季が十八歳になったら番になりたい。それだけが、長兄の努力の支えだった。
晴臣はたったの二年で結果を出して、グループの事業会社の一つでトップになった。
晴臣はそこで両親に、「亜季の許婚」にしてほしいと言った。
両親も、晴臣が小さいながらも事業会社の傾いていた業績を立て直し、経営トップにまでなった手腕を素直に褒めて喜んだ。
そして、「亜季が幸せになれるなら……」とそれを承諾する。
「亜季の許婚にする。ただし、番になる、結婚するというのは亜季本人の了承をとってからだからね」
父と母からいろいろと言われたが、晴臣は亜季が高校二年生の時に無事に許婚となった。
「俺から亜季に連絡しますか?」
晴臣も忙しさにかまけて、亜季への連絡が少なくなっていた。許婚になったことの連絡をしてから、関係をすこしずつ進めようと考える。
「いきなり晴臣から連絡したら、亜季も驚くと思うの。私から連絡をしてみるわ。高校卒業後にどうしたい、どうするつもりなのかも聞いておきたいし」
母が言うことももっともだった。
長期の休暇にも返ってこられず、晴臣が家を出て、他家の養子に出たことも知っているかどうかわからない。その上、自分が許婚となった話をするとなると、実の兄との結婚に困惑するだろう──。
亜季には実の兄たちと事故を起こしてしまったという自責の念がある。
その心の傷に不用意に触れるような真似をしたくはない。
「わかりました。お願いします」
変わらない父の書斎は晴臣が一緒に暮らしていたころより明るい気がする。いつも夜に行っていたが、今の時間が昼間だからだろうか。
窓にかかるレースのカーテン越しに薄く陽の光が差し込んでいる。
まるで、自分と亜季の未来を明るく照らしてくれているように晴臣は感じた。
だが、母からの連絡で事態は困難な状況にあることが判明する。
母が電話で連絡をしたところ、亜季の様子はあまり嬉しそうではなかったと……。晴臣が許婚になったということを聞いていたかもわからないで、亜季が電話を切られてしまったということだった。
もしかしたら困惑したのかもしれない。電話では伝えきれなかったのかもしれない。
様々な考えが晴臣の脳裏に浮かぶ。
もし、喜んでいるのであれば、亜季本人から「なんで晴兄さまが僕の婚約者!? どういうこと。嬉しい」と連絡の一つでも入ってよさそうなものだ。
だが、亜季からそのような連絡は一度もなかった。
母が連絡をしても、なしのつぶて……。
会いにも行くことは出来なかった。学校は教職員含めて全員がオメガだ。
アルファであろうがベータであろうが、家族が学校を訪れることは許可されていない。
帰ってきて直接話すことができれば……。だが、亜季が連絡を取ることも、帰ってくることもなかった。
そしてそれから、一年ちょっとの時間を晴臣は亜季が卒業するのを根気よく待つことにした。
全寮制の学校、長期休暇も帰って来られない。
亜季がこの三月に高校の卒業を迎える。実に四年半ぶりの再会のはずだった──。
許婚の話が宙に浮いてしまっているが、それも帰ってきてからきちんと対面で自分の口から伝えたい。
晴臣はそう考えていた。
亜季の帰宅を両親や次男三男はもちろん喜んで待っていた。とりわけ晴臣はやっと会えると心待ちにしていた。
だが、末っ子オメガは卒業式が終わっても、家に帰ってくることはなかった。
卒業式の翌日から両親も晴臣も学校に何度も確認した。だが、部屋に人も荷物も残っていない……と。
一向に帰ってこない亜季──。帰宅予定が一日、一日とずれていく。
亜季の携帯電話に電話をしても、ずっとお留守番サービスに接続されるだけで、相手は出ない。
そのうち、本人は返ってこず、荷物だけが家に届く。携帯電話に出ないはずで、その荷物の中に電源が切られたまま入っていた。
忽然と姿を眩ました亜季を家族は必死になって探した。
ありとあらゆる手段を使って捜索したが、行方はようとして知れなかった。
長男 晴臣は父方の遠い親戚の一つに養子に出された。
直接会って亜季に謝罪ができなかった次男 冬紀と三男 夏樹の中に今回の出来事は大きなしこりとなって残った。
亜季が居なくなったことによって家族自体がバラバラになってしまった。
両親は家を出てしまう晴臣に、そのまま何もせずに家業を継がせることはできないという。「一族の中で、実力でグループの上層を目指しなさい」
父からそう言われる。
「結果を出してね」
母から言われ、晴臣は必死に努力した。
亜季が十八歳になったら番になりたい。それだけが、長兄の努力の支えだった。
晴臣はたったの二年で結果を出して、グループの事業会社の一つでトップになった。
晴臣はそこで両親に、「亜季の許婚」にしてほしいと言った。
両親も、晴臣が小さいながらも事業会社の傾いていた業績を立て直し、経営トップにまでなった手腕を素直に褒めて喜んだ。
そして、「亜季が幸せになれるなら……」とそれを承諾する。
「亜季の許婚にする。ただし、番になる、結婚するというのは亜季本人の了承をとってからだからね」
父と母からいろいろと言われたが、晴臣は亜季が高校二年生の時に無事に許婚となった。
「俺から亜季に連絡しますか?」
晴臣も忙しさにかまけて、亜季への連絡が少なくなっていた。許婚になったことの連絡をしてから、関係をすこしずつ進めようと考える。
「いきなり晴臣から連絡したら、亜季も驚くと思うの。私から連絡をしてみるわ。高校卒業後にどうしたい、どうするつもりなのかも聞いておきたいし」
母が言うことももっともだった。
長期の休暇にも返ってこられず、晴臣が家を出て、他家の養子に出たことも知っているかどうかわからない。その上、自分が許婚となった話をするとなると、実の兄との結婚に困惑するだろう──。
亜季には実の兄たちと事故を起こしてしまったという自責の念がある。
その心の傷に不用意に触れるような真似をしたくはない。
「わかりました。お願いします」
変わらない父の書斎は晴臣が一緒に暮らしていたころより明るい気がする。いつも夜に行っていたが、今の時間が昼間だからだろうか。
窓にかかるレースのカーテン越しに薄く陽の光が差し込んでいる。
まるで、自分と亜季の未来を明るく照らしてくれているように晴臣は感じた。
だが、母からの連絡で事態は困難な状況にあることが判明する。
母が電話で連絡をしたところ、亜季の様子はあまり嬉しそうではなかったと……。晴臣が許婚になったということを聞いていたかもわからないで、亜季が電話を切られてしまったということだった。
もしかしたら困惑したのかもしれない。電話では伝えきれなかったのかもしれない。
様々な考えが晴臣の脳裏に浮かぶ。
もし、喜んでいるのであれば、亜季本人から「なんで晴兄さまが僕の婚約者!? どういうこと。嬉しい」と連絡の一つでも入ってよさそうなものだ。
だが、亜季からそのような連絡は一度もなかった。
母が連絡をしても、なしのつぶて……。
会いにも行くことは出来なかった。学校は教職員含めて全員がオメガだ。
アルファであろうがベータであろうが、家族が学校を訪れることは許可されていない。
帰ってきて直接話すことができれば……。だが、亜季が連絡を取ることも、帰ってくることもなかった。
そしてそれから、一年ちょっとの時間を晴臣は亜季が卒業するのを根気よく待つことにした。
全寮制の学校、長期休暇も帰って来られない。
亜季がこの三月に高校の卒業を迎える。実に四年半ぶりの再会のはずだった──。
許婚の話が宙に浮いてしまっているが、それも帰ってきてからきちんと対面で自分の口から伝えたい。
晴臣はそう考えていた。
亜季の帰宅を両親や次男三男はもちろん喜んで待っていた。とりわけ晴臣はやっと会えると心待ちにしていた。
だが、末っ子オメガは卒業式が終わっても、家に帰ってくることはなかった。
卒業式の翌日から両親も晴臣も学校に何度も確認した。だが、部屋に人も荷物も残っていない……と。
一向に帰ってこない亜季──。帰宅予定が一日、一日とずれていく。
亜季の携帯電話に電話をしても、ずっとお留守番サービスに接続されるだけで、相手は出ない。
そのうち、本人は返ってこず、荷物だけが家に届く。携帯電話に出ないはずで、その荷物の中に電源が切られたまま入っていた。
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