私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス

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ネバンテ国の出迎え

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「聖女様の乗る馬車だろうか!」

 先頭の馬に乗った青年騎士、クルトがそう叫ぶ。顔に傷のあるクルトは、威圧感のある強面だ。

 馬車にはコルネリア以外に御者しかいないため、彼女は自分で馬車の扉を開けた。

 馬車の扉が開いたことに気がついたクルトが、慌てるように馬から降りて馬車に向かって走る。

「せ、聖女様」

 息を乱したクルトが、コルネリアの前に腕を差し出す。コルリネアはにっこりと笑顔を浮かべると、その手を借りて馬車を降りた。

「で、では。あっしはこれで」

 コルネリアを乗せていた馬車の御者が、気まずそうにそう言って馬車を法国の方へ走らせる。

「何と無礼なやつだろうか。さ。聖女様こちらへ」

 御者の態度に腹を立てたようにクルトが言うと、自分達の方にある豪華な馬車へとコルネリアをエスコートする。

 クルトがエスコートし、用意された馬車へとコルネリアが乗り込む。馬車の乗り口に赤毛を三つ編みにした少女が現れ、コルネリアに頭を下げる。

「失礼します。これから奥様付きの侍女になります。カリン・フラトーと申します。奥様!よろしくお願いいたしますね」

 そう言うと、馬車に乗りコルネリアの向かいに腰を下ろした。

 コルネリアは返事をしようとするが、手元に紙やペンがないため伝えられない。

 仕方がなく微笑んで頷くと、カリンはにこっと微笑んだ。

「奥様は紅茶はどちらの産地のものがお好きでしょうか?」

 カリンはにこにこと人懐っこい笑顔を浮かべながら、馬車内のテーブルに手際よくティーセットを並べていく。

(――なんだか、すごく歓迎されてる?)

 目の前でせっせと動く子リスのようなカリンを見つめ、コルネリアはそう思った。

「奥様?」

 ぼうっと自分を見ているコルネリアに、カリンは不思議そうに首を傾げて、そして小さく飛び上がった。

「わあ!ごめんなさい!ヴァルター様に言われていたのに、すっかり忘れていました」

 そう言うと、カリンは手元のバッグを慌てたそぶりで開き、中から質の良い紙とペンを取り出した。

「こちらで奥様のお返事を聞かせてください」

【ありがとう。これからよろしくね】

 さらさら、とコルネリアが紙に書いて手渡すと、カリンがぶんぶんと首を縦に激しく振って頷く。その動きに思わずコルネリアは、笑った。

(――ヴァルター様が紙とペンを用意してくださってってことは、私のことをお嫌いではなさそうね。それに、何だか幸先が良い感じがするわ)

 機嫌が良さそうなコルネリアに、カリンはほっと一息つく。そして、テーブルの上のティーカップに、紅茶を注いだ。

 先ほどまでコルネリアが乗っていた馬車とは違い、ほとんど揺れない。また、コルネリアの足の下に引かれているラグも、毛先が長くフサフサで良質なものだった。

 出迎えてくれた騎士や侍女の態度。用意された馬車。コルネリアは気持ちが軽くなるのを感じ、柔らかな背もたれに身体をゆだねた。









「奥様。奥様」

 優しく身体を揺さぶられながら、自分を呼ぶ声にコルネリアは目を開ける。

 張っていた気持ちが緩み、睡魔に襲われていたようだ。コルネリアは控えにぐっと伸びると、起こしてくれたカリンの方を見つめる。

「せっかくお休みのところ、申し訳ございません。まもなく屋敷に到着いたします」

 しょんぼり、とした様子のカリンに、コルネリアがサラサラと文字を書く。

【気持ちよく眠れたわ。起こしてくれてありがとう】

「喜んでくださって嬉しいです。この馬車はヴァルター様が、内装からこだわって用意されたんですよ」

 そうなの?と言いたげな表情のコルネリアに、カリンが笑顔で言葉を続ける。

「この辺りは道がきちんと整備されている、とも言い難いですので。できるだけ奥様の身体に負担にならないように、急いで職人たちが仕上げたんです」

 誇らしげな様子のカリン。その姿を見ると、ヴァルターを慕っていることが分かる。

 コルネリアはふわふわと肌触りの良い背もたれを触りながら、ヴァルターに早く会ってみたいと思った。

 コルネリアが馬車を降りると、目の前には手入れの行き届いた屋敷が現れた。一国の王が住むにはこじんまりとしているが、雰囲気は良い。

「奥様。よくおいでなさいました。これからよろしくお願いいたします」

 クルトの手を借りて馬車を降りると、使用人たちが見事な整列でコルネリアを出迎えていた。
 
 
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