私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス

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満月の夜と聖女たち

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 雰囲気の良くなったコルネリアとヴァルターは、キァラの件が終わってから向かい合って眠るようになっていた。

 寝る前にヴァルターがイエスノーで答えられる質問をし、コルネリアが動作や口パクで答えていく。そんなやりとりを眠りに落ちるまでやっている。

 ふかふかの1枚の掛け布団を一緒にかぶり、コルネリアはにこにことしながらヴァルターを見つめる。

(――寝る前のこの時間が幸せだわ)

「今度は街の帽子屋に行かないか?」

 こくん、とコルネリアが頷くと、頬を愛おしげに撫でてヴァルターが穏やかに微笑む。

「君の緑の髪には明るい色が似合いそうだ」

 ヴァルターの言葉にありがとう、と口を動かして答えると、ふぁっとコルネリアが欠伸をする。

「そろそろ寝るか。おやすみコルネリア。いい夢を」

 ヴァルターがそう言うと、コルネリアに口付けをする。最近は寝る前の挨拶で、ヴァルターの方からキスをするようになっていた。

(――幸せですわ。法国にいたときからは想像もできないくらい)

 コルネリアは、胸がぽかぽかと温かくなるのを感じた。同じベッドで横にはなっているが、ヴァルターとコルネリアは少し間を空けて寝転んでいる。

 少し経つと、コルネリアの意識がゆっくりと闇に溶けて、すやすやと穏やかな寝息を立て始めた。








「コルネリア!おめでとうー!」

 ぱんぱかぱーん!と謎の音楽と共に、女神様が目の前に現れてコルネリアはびっくりして声を出す。

「わ!何事ですの?」

「女神様から聞いたよ!女狐を屋敷から上手く追い出したみたいね!」

 よくやった!とラウラが親指を立て、コルネリアに言うと、リューイが走ってコルネリアに抱きついた。

「幼なじみの女を屋敷に招き入れた時点でアウトですよ!そんな男は捨てて、法国に帰ってきてくださいよ」

 リューイの言葉にコルネリアが苦笑いをする。どうやら、コルネリアよりも先に眠った水色衣の聖女たちは、女神様から色々な話を聞いていたようだった。

「上から見ていてハラハラしたよコルネリア!」

「女神様。ご心配してくださりありがとうございます」

 ふふっとコルネリアが笑っていうと、女神が椅子に座るように促す。

「コルネリア。こちらにおいで」

 おっとり美女のカタリーナが、コルネリアを手招きする。カタリーナの隣には白髪が少し混じる女性、ユーリエが座っていた。彼女は最年長の聖女であり、ブーテェ法国の王弟である公爵と結婚している。

「ユーリエ様!お久しぶりですわ」

「コルネリア。元気そうで嬉しいわ」

 ユーリエは聖女たちにとっては母親のような存在だ。侯爵と結婚した後も、時折神殿を訪れてくれていた。

 久しぶりに会えた嬉しさから、コルネリアとカタリーナがきゃっきゃっと盛り上がる。その様子を見ていたユーリエは、穏やかな笑みを浮かべていた。

 美味しいご飯に飲み物、そして気の知れた仲間との会話を楽しんでいた聖女たち。ゆるりと足元の狼を撫でていた女神が、ぱしんと手を打って立ち上がった。

「話があります」

 女神様モードに入った女神を見て、聖女たちはすぐにその場に跪く。

「法国内で第一王子を中心に怪しげな動きがあります。どうやら、身分不相応にもクーデターを企んでいるようです」

 コルネリアたちは女神の言葉に驚きながらも、顔は下を向いたままだ。

「第三王子の力は弱いものの、今は王が実権を握っているので問題はないかと思いますが。ユーリエ」

「はい。女神様」

「国内の情勢に気をつけて、何かあれば水色衣の聖女、そして見習い聖女を保護するように」

「かしこまりました」

 顔を上げたユーリエが頷いて答えると、女神は厳しい表情のまま言葉を続けた。

「リューイ。あなたに今縁談が来ていますね?」

 え?とコルネリアが跪いた状態のまま、リューイの方を見る。

「はい。メヨ帝国、皇帝の第5夫人になるように言われています」

(――皇帝って確か今年で50歳で、好色で残虐な人だといわれている人だわ)

 条件の悪さにコルネリアが息を飲むと、リューイがあははと笑った。

「断りましたし、ご心配をおかけするかと思って黙っていました」

「もし、第一王子に強制されたなら、コルネリアのいるネバンテ国へ逃げなさい。コルネリア。お願いしていいですね?」

「もちろんですわ!リューイ。そんなことになったら、必ず来てくださいね。ヴァルター様にも言っておきますから」

「コルネリアさん。ありがとう」

 リューイが泣き笑いのような表情で、コルネリアを見て言った。責任感の強いリューイだからこそ、心配をかけまいと誰にも言わなかったんだろう。

 女神はコルネリアに声をかけた後、拳を握り俯いている。よく見るとその頬は赤くなり、握っている拳は力を入れすぎて震えている。

「もし。もし。私の大切なリアンが作った国を滅茶苦茶にして、大事な我が子たちを傷つけたら。タダじゃおかないんだから!!」

 そう叫ぶと足元に寄り添う狼、リアンに女神が泣きついた。

「みんなすまないな。我が子孫が迷惑をかけて」

 人の言葉を話すと神から遠ざかるらしく、ほとんど聖女とは話さないリアンが申し訳なさそうに言う。

(――ほんっとうにパトリックは余計なことしかしないですわ!明日の朝起きたら、すぐヴァルター様に相談しないと)

 そうコルネリアは考えると、えーん。と声を上げて泣く女神を慰めるために立ち上がった。
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