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悪だくみ

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 クルトが自領でキァラの件を収めるため動いている頃。また、仲直りをしたヴァルターとコルネリアがベッドで、お互い照れながら見つめ合っている頃。

 ブーテェ法国、王宮の一室ではパトリックが目の前の男性に物を投げつけた。

「コルネリアは帰ってこないのか!」

 パトリックに怒鳴られているのは、神父服に身を包んだ中年男性。教会では熱心な神の使徒は第三王子を支持し、この男性のように金や権力を欲しがる神父は第一王子についていた。

「コルネリアが帰りたくなるよう、国民たちへ悪い噂を広めることを試みましたが、国内での支持が大きく噂は広がりませんでした」

「お前がそそのかした女はどうなってる!」

「それが…屋敷内の雰囲気は悪くなっていると報告がありましたが、それ以上はまだ分かりかねます」

 すでにキァラを使ってヴァルターとコルネリアの関係を悪化させることについては、失敗に終わっているがネバンテ国に忍ばせたスパイからの報告はまだ届いていなかった。

「そうか。あいつは男性経験がないだろからな。さぞネバンテ国王を不潔に感じるんじゃないか?野蛮な国王に無礼な国民、法国と違って洗練された文化もない」

 ニヤニヤしながら話すパトリックに、神父はご機嫌を取るように相槌を打つ。

「ネバンテ国の利用が終わった後で、コルネリアが頼むなら我が国に帰して囲ってやろう」

 パトリックにとって私生児のコルネリアと、幼少の頃に縁談が持ち上がったのことは思い出したくもない不名誉なことだった。

 しかし、歳をとるにつれて美しくなるコルネリアを見て、惜しくなった。見た目が綺麗なコルネリア。別荘で妾として囲えば、きっと楽しめるとパトリックは思っていた。

 条件の悪い国へ嫁がせたのは、女神の使徒である水色衣の聖女を減らし、第三王子派の勢力を削ぐのが最も大きな目的だった。貴族の子女がなる青衣聖女のほとんどは、第一王子派となる。

 どの水色衣の聖女でもよかったのだが、わざわざコルネリアにしたのは、彼女が泣きついてくることを期待してのことだった。

 実は何度かネバンテ国に派遣した神父を通して、コルネリアに国に帰りたくないかを尋ねさせている。

 もちろん、タイプの夫に美味しいご飯、やりがいのある仕事があるネバンテ国から出る気がないコルネリアは、笑顔でかわしている。
 
「湖の近くの別荘を片付けさせておくか」
 
 パトリックにとって都合の良い未来を思い浮かべ、彼は醜悪な笑みを浮かべた。
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