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法国の様子
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時間はほんの少し遡って、コルネリアたちが白い鳥を追いかけて森に入った頃。
法国の王宮内では、パトリックを中心に盛大な祝いの宴が開かれていた。宴の中心には、機嫌の良さそうなパトリックとマリアンネがいた。
早朝。王や第二王子の不意をついて襲い、第三王子のみ取り逃したものの、見事にクーデターに成功した。パトリックの周りに残った貴族は、私利私欲のためパトリックや宰相についたものばかり。
真っ当な意見をいう貴族は少しずつ首都から追い出し、水色衣の聖女を追い出して青衣の聖女ばかりを増やすことで神殿の力も削いだ。
(――結局この世は俺の思い通りだ)
グラスを傾けると、中の氷がコロンと音を立てる。それすらも機嫌の良いパトリックにはなぜか面白く、声を出して笑った。
「パトリック様。ご機嫌ですわね」
パトリックの隣に座るマリアンネが、にっこりと笑って言う。マリアンネは侯爵家出身で貞操観念が強く、籍を入れるまでは最後まで手を出すことを許してはくれない。
見た目も家柄もいいけれど、つまらない女だとパトリックは思っていた。
「やっぱりこの国の王には、パトリック様が相応しかったのですわ」
くすくすと上機嫌に笑うマリアンネ。甘い果実酒を飲んでいるため、少し頬が赤く染まっている。
「パトリック様」
宴中の部屋に慌ただしく神官服の男性が入る。彼はパトリックのそばに行くと、さっとしゃがんで小さな声で話した。
「聖なる湖が枯れてしまったようです」
「なんだと?」
小さな声ではあったが、隣のマリアンネにも聞こえたようだ。まぁ、と目を丸くして驚いている。
「我が国に残っていた水色の聖女は?」
「リューイ以外はみんな公爵夫人のもとへ行っています。リューイは、未だ行方不明です」
そういえば、王である父がユーリエに聖女たちの修行について許可を出していたな、とパトリックは思い出した。
なんて間が悪いんだ、と舌打ちをする。聖なる湖が枯れてしまえば、青色聖女たちは一切癒しの力は使えなくなる。しかも、水色衣の聖女は全員首都から出てしまっている状況だ。
「ユーリエのところへすぐ使者を出して、聖女を全員連れ戻せ。あと、レオンハルトとリューイの捜索の人員も増やすように。リューイは生け取り、レオンハルトの生死はどちらでも良い」
「かしこまりました」
恭しく頭を下げた神官は、すぐに部屋の外へ出ていった。
「私の力がなくなってしまいますの?」
幼い頃から青色聖女として癒しの力を手に入れたマリアンネは、自身の両手を見つめてぽつりと呟く。水色衣の聖女たちとは異なり、手入れの行き届いた華奢で美しい手だ。
「王位は俺の手に入った。この後は何とでもなるだろう」
自分に言い聞かせるようにパトリックは言い、マリアンネの肩を抱き寄せる。
(――そうだ。聖女ならコルネリアがいるな。落ち着いた頃に俺が直接迎えに行ってやろう。そうすれば、癒しの力も天気の予報もこれまでと変わりなく使える)
パトリックの脳内に、儚げで美しいコルネリアの顔が浮かぶ。
(――あんな小国の王より、俺の女になる方が幸せだろう)
「パトリック様?……ん」
コルネリアの顔を浮かべながら、マリアンネの顎を掴んで口付けをする。人前でのキスに嫌がるそぶりをマリアンネが見せるが、パトリックは気にしない。
聖なる湖が枯れた、その事実に対する不安をかき消すように、何度もマリアンネの唇に口付けをした。
法国の首都にある広場で兵士たちが、文字の書かれた看板を立てる。同様のものを法国中に用意し、国民たちへ王が変わったことを伝える。
「おい!パトリック様が王になったらしいぞ」
兵士が看板を立て終わると、国民たちがわっと集まり話し始める。看板には以下の3つの内容が書かれていた。
パトリックが王になったこと。祝いとして半年間の税金を免除すること。反逆者である第三王子を見つけたら報告すること。
「水色の方じゃないと、王になったらいけないんじゃないの?」
赤ん坊を抱っこした女性が不安そうに言うと、その肩を別の女性が笑いながら叩く。
「大丈夫よ!私たちは女神様に愛された存在じゃない。それよりも、税金が半年もなくなることが嬉しいわね」
パトリックが王になることに驚きを隠せないが、みんな税金免除に喜んでいる。彼らにとって王が誰になるのかは、それほど重要ではなかった。
法国に生まれながらに住む人たちは、今まで災害を味わったことも、病気や怪我で苦しんだ経験もない。また、全員が女神に選ばれた存在だ、という認識を持っていた。
「女神様の意思に背いているのに、今まで通りに恩恵を得られるのか?」
別の国から移住してきた人間は、不安そうにそう呟いた。その時。ざーっと激しい音を立てて、突然雨が降り出す。
「恵みの雨だ!きっと女神様も認めてくれたんだ」
国民たちは雨が降ったことを祝福だと思い、わぁっと歓声をあげた。雨は喜ぶ国民たちに降り注ぎ、いつまでもいつまでも降り続いた。
雨は同時刻に帝国でも降り、皇帝が正式に法国のパトリックを支持することを表明した。帝国民は法国のように女神の加護が得られるかもしれない、とおおいに喜んだ。
法国の王宮内では、パトリックを中心に盛大な祝いの宴が開かれていた。宴の中心には、機嫌の良さそうなパトリックとマリアンネがいた。
早朝。王や第二王子の不意をついて襲い、第三王子のみ取り逃したものの、見事にクーデターに成功した。パトリックの周りに残った貴族は、私利私欲のためパトリックや宰相についたものばかり。
真っ当な意見をいう貴族は少しずつ首都から追い出し、水色衣の聖女を追い出して青衣の聖女ばかりを増やすことで神殿の力も削いだ。
(――結局この世は俺の思い通りだ)
グラスを傾けると、中の氷がコロンと音を立てる。それすらも機嫌の良いパトリックにはなぜか面白く、声を出して笑った。
「パトリック様。ご機嫌ですわね」
パトリックの隣に座るマリアンネが、にっこりと笑って言う。マリアンネは侯爵家出身で貞操観念が強く、籍を入れるまでは最後まで手を出すことを許してはくれない。
見た目も家柄もいいけれど、つまらない女だとパトリックは思っていた。
「やっぱりこの国の王には、パトリック様が相応しかったのですわ」
くすくすと上機嫌に笑うマリアンネ。甘い果実酒を飲んでいるため、少し頬が赤く染まっている。
「パトリック様」
宴中の部屋に慌ただしく神官服の男性が入る。彼はパトリックのそばに行くと、さっとしゃがんで小さな声で話した。
「聖なる湖が枯れてしまったようです」
「なんだと?」
小さな声ではあったが、隣のマリアンネにも聞こえたようだ。まぁ、と目を丸くして驚いている。
「我が国に残っていた水色の聖女は?」
「リューイ以外はみんな公爵夫人のもとへ行っています。リューイは、未だ行方不明です」
そういえば、王である父がユーリエに聖女たちの修行について許可を出していたな、とパトリックは思い出した。
なんて間が悪いんだ、と舌打ちをする。聖なる湖が枯れてしまえば、青色聖女たちは一切癒しの力は使えなくなる。しかも、水色衣の聖女は全員首都から出てしまっている状況だ。
「ユーリエのところへすぐ使者を出して、聖女を全員連れ戻せ。あと、レオンハルトとリューイの捜索の人員も増やすように。リューイは生け取り、レオンハルトの生死はどちらでも良い」
「かしこまりました」
恭しく頭を下げた神官は、すぐに部屋の外へ出ていった。
「私の力がなくなってしまいますの?」
幼い頃から青色聖女として癒しの力を手に入れたマリアンネは、自身の両手を見つめてぽつりと呟く。水色衣の聖女たちとは異なり、手入れの行き届いた華奢で美しい手だ。
「王位は俺の手に入った。この後は何とでもなるだろう」
自分に言い聞かせるようにパトリックは言い、マリアンネの肩を抱き寄せる。
(――そうだ。聖女ならコルネリアがいるな。落ち着いた頃に俺が直接迎えに行ってやろう。そうすれば、癒しの力も天気の予報もこれまでと変わりなく使える)
パトリックの脳内に、儚げで美しいコルネリアの顔が浮かぶ。
(――あんな小国の王より、俺の女になる方が幸せだろう)
「パトリック様?……ん」
コルネリアの顔を浮かべながら、マリアンネの顎を掴んで口付けをする。人前でのキスに嫌がるそぶりをマリアンネが見せるが、パトリックは気にしない。
聖なる湖が枯れた、その事実に対する不安をかき消すように、何度もマリアンネの唇に口付けをした。
法国の首都にある広場で兵士たちが、文字の書かれた看板を立てる。同様のものを法国中に用意し、国民たちへ王が変わったことを伝える。
「おい!パトリック様が王になったらしいぞ」
兵士が看板を立て終わると、国民たちがわっと集まり話し始める。看板には以下の3つの内容が書かれていた。
パトリックが王になったこと。祝いとして半年間の税金を免除すること。反逆者である第三王子を見つけたら報告すること。
「水色の方じゃないと、王になったらいけないんじゃないの?」
赤ん坊を抱っこした女性が不安そうに言うと、その肩を別の女性が笑いながら叩く。
「大丈夫よ!私たちは女神様に愛された存在じゃない。それよりも、税金が半年もなくなることが嬉しいわね」
パトリックが王になることに驚きを隠せないが、みんな税金免除に喜んでいる。彼らにとって王が誰になるのかは、それほど重要ではなかった。
法国に生まれながらに住む人たちは、今まで災害を味わったことも、病気や怪我で苦しんだ経験もない。また、全員が女神に選ばれた存在だ、という認識を持っていた。
「女神様の意思に背いているのに、今まで通りに恩恵を得られるのか?」
別の国から移住してきた人間は、不安そうにそう呟いた。その時。ざーっと激しい音を立てて、突然雨が降り出す。
「恵みの雨だ!きっと女神様も認めてくれたんだ」
国民たちは雨が降ったことを祝福だと思い、わぁっと歓声をあげた。雨は喜ぶ国民たちに降り注ぎ、いつまでもいつまでも降り続いた。
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